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「美容外科に転職してみたい」と思っている看護師は多くいます。しかし、一般医療を扱う病院やクリニックとは異なり、美容医療は閉ざされた世界であるため、情報を入手しづらくどのような業界か分かりにくい一面があります。

一般的に世間が抱いている美容外科といえば、「医師も看護師も、治療よりお金儲けを優先させている」といったイメージが多いようです。そのような美容外科で看護師として働くとなると、「自分もブラックな業界に染まってしまうことを意味するのではないか」と懸念する人もいるでしょう。

しかし、そのような世間の美容外科のイメージを一蹴するくらい日々一流の技術を研究・研磨し、美容外科クリニックで働いている医師や看護師がいるのも確かです。

美容外科で施術を受け、本人が満足する見た目を得ることで、人生の選択肢が広がるきっかけになるのです。患者さんの大切な一歩を踏み出すために、日々努力している医師やそれを手伝う看護師がいます。

看護師として、できればそのような腕のいい美容外科医のいるクリニックで働きたいものです。では、一流の美容外科医をどのように見極めればいいのでしょうか。

口コミサイトなどを参考にするといった意見がありますが、サイトに掲載されている個人的な感想はその人の主観や恨みなどの情報が入っていることも多く、一歩距離を置いて考えるほうが賢明です。症状に関する感想も個人差があるため、あくまで参考程度にしておくことが大切です。

今回は美容外科に転職する前に、医療関係者として知っておくべき「一流の美容外科医の見分け方」について紹介したいと思います。

美容医療に携わる看護師であるならば、一流の医師のもとで美容医療を受けて「明るくなれた」「人生に前向きになれた」と思える患者さんを一人でも多く送り出していきたいものです。

技術のある一流の美容外科医の見極め方

誰しも看護師であるなら、出来る限り技術の優れた信頼できる医師のもとで働きたいと思います。

「この医師のいうことは信じられない」「本当にこの薬で間違いないのか」「この施術がいまの患者さんに最適であるのか」と看護師が医師の診療に疑念を持ちながら、指示に従うことは、患者さんにとっても治療への疑念を抱かせてしまう原因となります。このことは、治療に悪い影響を与えます。

美容外科となると、患者さんは施術の出来栄えを直接目で見て、細かく確認することができます。

技術のない医師がおこなった施術のせいで「このようなはずではなかった」「あのような施術は望んでいなかった」といったクレームがでることがあります。そうしたクレームを最初に受けるのは、医師のそばにいて医療の知識を持つ看護師であることが多いのです。

そのため、美容外科を希望する看護師としては、患者さんが抱く不安に対して「この医師の治療は信頼できます。焦らないで治療を進めることが大切です」と自信をもって患者さんにいえるような治療を行っている医師のもとで働きたいものです。

そのような術を持つ一流美容外科医はどのように見極めればいいのでしょうか。

医師免許だけでは技術が優れているとはいえない

まず医師になるには、どのようなプロセスをたどるのか確認しておきます。

医師になるには高校を卒業した後、6年間の医学部・医科大学を卒業し、「医師国家試験」に合格しなければなりません。看護師と違って、この国家試験に合格し医師免許を取得したからといってすぐに独立して医師として働けるわけではありません。

その後は2年間の「研修医」として義務研修があります。それを終えてはじめて最短で26歳という年齢で、本格的に医師として勤務することができます。この義務研修さえ終えれば法律上、日本にある30以上のすべての診療科において診療行為を行うことができます。

知識や技術、経験がまったく伴っていなくても、研修を終えた日から「私は心臓外科医です」「私は脳外科医です」「私は内科医です」「私は美容外科医です」と名乗ることができるのです。

もちろんメスを一度も握ったことがなかったとしても、義務研修を終えた時点で、あらゆる外科の手術をしても違法にならないのが、いまの日本の法律です。

実際には、ある分野で特定の分野の専門医としてスタートラインにつくには、上記の2年間の義務研修を終えたのちに、さらに3~5年の間、希望する専門科の研修を受け、その科の専門医の資格を取得するようになります

よくクリニックなどに行くと、「消化器病専門医」などと書かれていることがあります。その肩書から、その専門科にどの程度知識や技術を得るために従事してきたかを把握することができます。

アメリカやイギリス、ドイツでは、診療科ごとに専門医資格の取得が必要となります。日本のように、失敗したとしても死に直結しないような内科・皮膚科・耳鼻科・精神科などであっても、自分の専門分野ではない看板を安易に掲げることはできないのです。

医学部での勉強や研修だけでは一人前とはいえない

私たち看護師は、国家試験をパスした正看護師であっても、看護大学や看護専門学校で3~4年間ほど勉強や1年程度の実習をするだけです。そうした中、「医師を目指す者は6年間も大学で勉強しているので、診療を任せても大丈夫ではないのか」と考える人もいるでしょう。

しかし医学部での6年間は、ほとんどが講義とペーパーテストです。病院実習もありますが、それは形だけのものです。私たち看護師がおこなった実習と同様、医師の実習生も実際に採血をしたり点滴をいじったりすることはできません。これらの医療行為は、法律違反になるため見学することが主な実習内容になります。

また医師国家試験も看護師国家試験と同様、選択問題だけのペーパーテストです。記述試験はありません。難しい試験といわれていますが、合格率は看護師国家試験と同様90%前後あります。

国家試験に合格し医師免許を取得した後の2年間行われる義務研修期間は、8科目ほど本人が希望する専門科で研修を行います。平均して1科目3ケ月の研修期間となります。

さらに研修期間は、労働基準法に基づいて勤務する義務があるため、一つの科の研修は3カ月間午前9時から午後5時の間しか研修を受けていません。

この半人前の医師が医師免許を取得した途端、研修さえ経験していない30以上ある科のどれでも専門科の看板を掲げて診療を行えるのがいまの日本の医療システムです。

私たち看護師に置き換えても、一つの診療科で一人前の看護師として働けるようになるには3~5年は年月を費やします。看護師が一人でアセスメントを行い、動けるようになるにはこのくらいの期間が必要です。

どれだけ優秀な看護師であったとしても、看護師免許を取得した途端、どこかの病院の専門科でいきなりバリバリ働くことは無理な話です。

それと同様に医師も希望する診療科の専門医としてやっていくのであれば、免許取得後、研修が最低でも3~5年は必要となります。

特に美容外科医は高度な技術を求められる

本来、美容外科医として専門的にやっていこうと考えるのであれば、まずは医師免許取得後、形成外科で3~5年は研修を受けることが望ましいです。なぜなら、「形成外科技術」を応用したものが「美容外科」だからです。

美容外科では形成外科の技術を使い、正常である状態をより美しくすることが求められます。

形成外科の研修後、さらに美容外科の研修を受け、「日本形成外科学会専門医」の資格を取得した上で、美容外科医院に入ります。その後、指導を受けながら実践し腕を磨き、試験に合格して「美容外科専門医」として一人前になれます。

これは医学部を卒業してから10年以上かけ、最短でも35歳をすぎないと一人前の美容外科医とはいえないということです。

注意すべきは2つの「日本美容外科学会」の存在

そこで問題になるのは、「日本美容外科学会」といわれる団体です。実は日本には全く同じ2つの「日本美容外科学会」という名前の団体があります。下記に日本名と英語名を挙げます。

・「日本美容外科学会」(Japan Society of Aesthetic Plastics Surgery : 略称JSAPS ジェイサップス)

・「日本美容外科学会」(Japan Society of Aesthetic Surgery : 略称 JSAS ジェイサス)

この二つの学会を見比べたところ、どこが異なっているのか一見分かりません。英語の表記でPlastics(形成)が入っているかどうか(略称ではPがあるかないか)という違いだけです。

実はこの二つの団体は名前が同じでも、美容外科医としてはまったくレベルの異なる団体になります。

前者のJSAPSは、形成外科専門医の資格を持つ医師しか会員になることができない美容外科医の団体です。所属するための条件が非常に厳格で、形成外科医としても美容外科医としても訓練し腕を磨いてきた医師だけが所属することが許されます。

詳しくいいますと、JSAPSに入るには、まず日本形成外科専門医の資格を取る必要があります。

医師免許を取得し2年間の義務研修を終えた後、大学の医学部など指定された形成外科で4年以上かけて研修を受け、「日本形成外科専門医」の試験を受けます。

この試験はかなりハイレベルといわれています。以下にどのようなものか示します。

「日本形成外科専門医」の試験内容

① 本人が直接、形成外科手術を行った300症例の症例一覧表

② これら300症例のうち、20症例は図を伴う症例の記録と10症例の病歴要約(熱傷・顔面骨骨折・口蓋裂・先天異常・アザ・悪性腫瘍に関する再建・ケロイド・褥瘡・美容外科など11項目中8項目)

③ 形成外科の一般知識についての筆記試験

④ 研修記録に関する口頭試問

これらの試験に合格することができて、晴れて「日本形成外科専門医」の資格を取得できます。しかし、医師国家試験のように一度取得したら一生使えるというわけではなく、5年ごとに資格の更新を行わなければなりません。

美容外科手術を行うときに基本となるのが形成外科の知識や技術ですので、この資格を取得しているかどうかが信頼できる美容外科医の最低条件となります。

さらにJSAPSの専門医の資格を取るには、「日本形成外科学会専門医」の資格取得後、美容外科医院に勤務し研修を受けて腕を磨く必要があります。その後、JSAPSの「日本美容外科科学会」の試験を受けます。こちらも合格するのに非常に難関な試験です。

JSAPSの資格取得をするには、下記のような5年以上かけた困難な手順が必要となります。

① 美容外科の手術の全範囲における20症例の手術実績の記録を提出する。(手術実績の記録を準備するには最低5年という年月が必要になる)

② ①をもとにJSAPSの審査を受け、試験に合格する。

試験内容が難しいことから、JSAPSに合格した医師こそ一流の腕をもつ美容外科専門医といえます。JSAPS会員になるには義務研修を終え、「日本形成外科学会専門医」の資格取得後、美容形成外科だけを専門として頑張ったとしても最短で35歳という年齢になります。

JSASは形成外科での経験がなくても取得できる資格

一方、JSASは医師免許さえ持っていれば義務研修を終え、形成外科の研修を受けなくても、美容外科で5年間の勤務をすることで取得できる資格になります。

JSASの専門医資格は「5年以上の美容外科臨床を研修した者」だけです。形成外科での経験は特に必要ありません。

そのため26歳で義務研修を終了した後、美容外科で手術を行い5年経過すれば、JSAS専門医の受験資格が与えられます。その試験に合格すれば、JSASの美容外科専門医として看板を掲げることができます。

義務研修が終わった後、すぐに美容外科医院で勤務するということは、美容整形のベースとなる形成外科での知識や技術がないまま、いきなり外科手術を行うことになります。形成外科の研修を受けていないため、JSAS専門医は美容外科医としての腕に疑問が残ります。

比較的簡単に日本美容外科学会専門医を名乗れるJSASの会員のほうが、JSAPSと比較すると圧倒的に多いのが特徴です。90%以上の美容外科医で、日本美容外科学会専門医と名乗っているのはこちらのJSASの専門医になります。

サイトで一流美容外科医を見分ける方法とは

上記のことを踏まえて一流の美容外科医を見分ける方法とは、クリニックが出しているホームページなどからある程度の情報を拾うことが可能です。

まずは医師の資格を慎重にみる

サイトで医師の経歴を見る際は、日本美容外科学会(JSAPS)の専門医か、もしくは日本形成外科専門医の資格が記入してあるかどうか確かめましょう

もちろん一流の美容外科医である条件としては、「日本美容外科学会(JSAPS)」の専門医であるに越したことはありません。しかし「日本形成外科専門医」の資格をもつ医師もまた形成の分野で腕を磨いてきた医師だといえます。

形成外科医として、人体の組織や構造、解剖についての専門的な知識を有し、それに基づいた手術や治療の経験があると認めることができるからです。

一方、ただ単に「日本美容外科学会専門医」と書いてある場合は、注意が必要です。ほとんどの場合はJSASの専門医であることが多いです。JSAPSかJSASのどちらの美容外科学会の専門医なのかを判断することが大切です。

JSAPSのホームページには、「名医を探そう」というタブから正会員である医師の氏名や経歴をみることができます。日本でJSAPSの会員は100名に満たないのが現状です。日本形成外科専門医も日本形成外科学会のホームページから会員の一覧をみられます。

次のような美容外科クリニックのサイトは注意が必要

形成外科での研修が美容外科医になるための重要な科であることは、上記で説明しました。しかし、まったく形成外科研修を受けていなくても、形成外科で研修をしてきたかのようにみせるサイトがあるので注意が必要です。

例えば、以下のような美容外科クリニックのサイトです。

① 「日本形成外科学会」の会員であるとうたっている

「形成外科学会会員」という資格があります。これは、「日本形成外科専門医」の資格とは異なるものです。「会員」になるには、「日本形成外科学会」に2名の会員の推薦と年間2万円の会費を納めるだけで、医師であるならだれでも会員になれます。

これは、雑誌を定期購読するような感覚で取得できる資格です。日本形成外科学会の会報の購読者であれば、形成外科学会会員になれます。

② JSAPSの「関連会員」と掲載している

JSAPSの会員として、「日本形成外科学会専門医」の資格を有する「正会員」とは別に「関連会員」というのが存在します。関連会員は、正会員の資格要件を満たさない医師が申請をすればなれます。

ちなみに「準会員」ですと看護師など医療関係者もなれます。「賛助会員」になると一般の人でもなれます。

中には関連会員の「関連」を省略して、JSAPS会員として経歴に書いている美容外科の医師がいます。注意して見極めることが大切です。

③ 義務研修を大げさに書いている

また、クリニックのサイトに「2年間の義務研修中に経験した約3カ月の形成外科での研修」を何行にもわたって大げさに掲載していることがあります。研修期間中に大きな手術を自分の責任で担当することはまずありません。もし手術をしたとしても医療助手となります。

経験が少ないために、このような義務研修も大々的に取り上げて書く必要がある医師は注意が必要です。

実際にカウンセリングを受けてみる

経歴を含め、医師の資格などから腕のいい医師を見分ける方法を書いてきました。ただ、それだけでなく人格もまたその医師のレベルを判断する材料になります。

「来院した患者さんのことを思って手術を勧めているのか」「カウンセリングの時間がもったいないために患者さんの悩みを聞かず、その場で手術を受けさせようとしているのか」など医師の人格も重要な見極めポイントです。

実際、日本形成外科専門医・日本美容外科学会専門医(JSAPS)でなくても、独学や海外に行って熱心に研究を重ね、誠実な施術を行っている美容外科医もいます。

もし可能であるなら、一度友人や家族などのカウンセリングについていかせてもらったり、自分でカウンセリングを受けてみたりするなど医師の人柄などを見極めることが大切です。

医師がカウンセリングを行う場合、30分5000円程度かかります。無料の場合は丁寧なカウンセリングを行ってくれないことも多く、「実際にこの医師のもとで働いても大丈夫なのか」と考えさせられることが出てくるかもしれません。

これらを踏まえてあなたが実際に希望するクリニックの医師に会うことが、医師の人格がわかる一番の方法です。

本当に患者さんのことを考える誠実な医師であるなら、患者さんが納得するまで説明をします。家族とも話し合いの時間を作らせ、それでも本人の気持ちが変わらないなら、もう一回来院することを勧めるのがいい医師です。患者さんを焦らせず、常に患者本位で考えています。

カウンセリングを適当に扱っているクリニックというのは、施術に対する真剣さが足りないことにつながります。このようなクリニックに転職すると、患者さんとのトラブル処理に追われることが多くなる可能性が高いです。

患者さんの悩みや辛さ、どうなりたいのかを少しでも多く聞き出し、本人が十分に理解・納得をしたうえで施術を行うのが理想の美容外科医の姿です。

焦らず、じっくり美容外科への転職を行う

美容外科へ転職して成功するかどうかは、医師の腕という要素も関わってきます。

患者さんが「この医師なら任せて大丈夫」と思えるような信頼できる美容外科医のもとで看護師として勤務することは、充実した看護師生活を送れるかどうか重要なポイントの一つでしょう。カウンセリングが適当で手術を推し進めてしまうような医師だとトラブルも多く、その下で働いている看護師にはクレーム処理がまわってきます。

しかし、なかなか美容外科の転職情報は入手することが難しく、その場の運任せで転職してしまい失敗してしまうことが多いです。そうならないためにも、自分で探せる情報は自分で得ておくことが大切です。

それでも探しきれない情報(人間関係や雇用条件、給与など)は、美容外科専門の転職サイトに頼ってみるのも一つの方法です。情報を得れば得るほど、美容外科の転職で失敗する可能性は減っていきます。運に任せて転職を繰り返していては、経歴にキズがつくだけでなく心身ともに疲れが溜まってしまいます。

焦らず、しかも確実に転職を成功に導くために、美容外科の情報をたくさん入手することから始めていきましょう。一流の医師のもとで一流の技術を学びながら、看護力を高めていけるような、理想的な環境で働けるようにすることが大切です。