派遣看護師をするなら知っておきたい「派遣法」という法律についてご存じでしょうか。派遣法の正式名称は「労働者派遣法」といい、2015年9月に改正されました。

この改正を受けて派遣看護師もまた正職員という立場でなくても、働きやすくなるメリットが増えたため、派遣の仕事を受けやすくなりました

派遣看護師は、正職員のようなボーナスはないものの、パートやアルバイトに比べると好待遇であるといえます。

派遣看護師は、時給も良く、雇用期間が定められているため人間関係のトラブルにも巻き込まれにくく、また、サービス残業のような時間外労働が発生しません。そのため、看護師ならありがちな仕事上の悩みが少なくて済み、最近人気のある働き方として注目を浴びています。

この派遣看護師という働き方が「法改正によってさらに働きやすい環境になっている」とすると、「私にもできるかも」と興味が湧いてくる人もいるのではないでしょうか。

派遣看護師としての働き方をおススメできるのは以下のような方です。

・子育て中なので正職員になるのには、まだ抵抗がある

・人間関係に疲れて看護師を辞めた。ブランクはあるけどお試しで働いてみたい

・仕事だけでなく、旅行や趣味などプライベートな時間を大切にしたい

・今の職場とは違う科で看護師の経験を積みたい

・パートやアルバイトより効率よくお金を稼ぎたい

このように派遣法の法改正により「空き時間を利用して効率的に働きたい人」にとって、派遣看護師として働きやすくなりました。

ここでは、せっかく苦労して取得した看護師免許を有効利用し「派遣看護師としての働き方の選択肢もある」ということを知ってもらい、キャリアの幅を広げていってもらえたらと思います。

また「労働者派遣法の法改正によって、派遣看護師がどのように働きやすくなったのか」について、ここでは確認していきます。

労働者派遣法の改正とは

まずは、労働者派遣法の改正について簡単にお話しておきます。1985年に「労働者派遣法」が制定されました。その時代の働き方に合わせて過去に8回、改正が行われてきました。今回の改正では、過去の法改正と比較すると最大規模の変更箇所が存在します。

もともと労働者派遣法とは、派遣労働を制限することを目的として制定された法律です。国としては、派遣という労働力は「労働力不足に対する一時的なサポート」であり、本来は「正社員になることが望ましい」と考えていました。

しかし現在では、派遣という働き方は雇用を促進するうえで、なくてはならない働き方のひとつとなっています。

今回の改正前には一般派遣(仕事の期間のみ雇用関係が発生する働き方)と特定派遣(派遣元である人材派遣会社で正社員として雇用され、別の仕事場である派遣先で就業する働き方)というものがありました。

しかし改正後にはこれら2つの派遣の形態区分をなくし、すべての派遣事業が一般派遣で行なわれるようになりました。このことは派遣スタッフを長期雇用する場合は、正職員として雇用される可能性が高くなるということになります。

「派遣スタッフを一次的なサポートであるにもかかわらず、常用代用するのを止めよう。長期雇用するのであれば派遣先は正職員にしよう」という考え方です。

厚生労働省のページにも記載がありますが、今回の法改正により、派遣される人の立場が守られる側面が強くなり、派遣としての働き方を選択しやすくなりました。法改正によって派遣される人が受けるデメリットは少ないといえます。

この変更点について下記に簡単にまとめてみました。

【改正前】業務ごとに最長3年まで

・一般労働者派遣事業(許可制)審査あり … 有期雇用(最長3年)

・特定労働者派遣事業(届出制)審査なし … 有期雇用(最長3年)と無期雇用がある

【改正後】人ごとに最長3年まで

・一般派遣のみ(許可制)審査あり … 有期雇用(最長3年)と無期雇用がある

改正後の法律では、派遣先において最長で3年の派遣契約が終了した後は、派遣先が「派遣として今後も働いてほしい」と希望しても、同じ人物ですと、これ以上派遣での雇用契約ができません。

派遣先が「3年で雇用契約を打ち切りたくない、この人にずっと働いてほしい」と願うのであれば、派遣先は派遣された人物を「正職員として雇う」ことが前提となります。

改正前は、派遣先で業務を変えることで派遣のままで働かなければならなかったのが、改正後には正職員として新たに雇用される可能性が出てきたということになります。

このように国としては、長期に労働者を雇うのであれば「派遣ではなくて正職員になってもらい、安定的な雇用を行なってほしい」というのが実状です。つまり国は正職員としての雇用を促進したいのです。

このように派遣法改正後は派遣される人にとっては、正職員になるチャンスができ安定した雇用が守られるといったメリットが出てくることになります。

派遣看護師が法改正によって与えられるメリット

では今度は法改正によって得られる「派遣看護師のメリット」について具体的にお話していきます。派遣看護師としての働き方にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは主に5つのメリットについて述べていきたいと思います。

正職員以上の給与がもらえる可能性が高い

派遣看護師の場合、法改正により時給換算すると正職員以上の給与が支払われる可能性が高いです。これが法改正以前であれば、正職員との給与や待遇に大きな差があり、派遣看護師は職場で弱い立場であることが多くありました。

しかし法改正後は、派遣看護師の場合、低賃金での労働を強いられるリスクや、人材派遣会社に中間手数料を大幅に搾取される不安が少なくなりました

正職員の看護師の平均月給は約30万円(ボーナスを含める)であるので、時給換算すると約1,800円になります。対して派遣看護師の時給は、幅があるものの1,500~2,500円です。正職員の時給と比較しても派遣看護師の時給は劣らない金額が設定されているのです。

一方、雇い先と直接雇用であるパートやアルバイトの看護師の時給は1,800円を下回っているものが多くあります。平均時給は1,500円程度とされています。

このようなことから派遣看護師の時給は、パートやアルバイトよりも高く、正職員と同等、もしくはそれ以上の給与が保証されているといえます。

また「有能な派遣看護師には派遣先で長く働いてもらいたい」とする人材派遣会社の意向もあり、派遣スタッフの時給を引き上げ、会社の取り分であるマージンを減らす人材派遣会社が多くなりました。

良い人材派遣会社を選ぶ視点をもてる

法改正によって派遣看護師の働き方で改善された点として「良い人材派遣会社を選べるようになった」ことが挙げられます。

これはどういうことかといいますと、法改正により派遣先と雇用契約を結ぶ前に、人材派遣会社の担当者から派遣看護師に対して「人材派遣会社の運営状況」や「想定される賃金」、「派遣先での待遇」についての説明が成されることとなりました。

さらに派遣される看護師には「派遣先の病院や施設が人材派遣会社に支払うマージン率を明示すること」が義務づけられました。

このマージン率は派遣会社によって違います。派遣スタッフからすればマージン率は低いに越したことはありませんが、人材派遣会社の運営状況などからこのマージン率を考慮するとよいでしょう。

人材派遣会社の担当者の説明を聞いて「今後の会社の運営と派遣スタッフのことを考えて算出されたマージン率である」とあなたが納得できるようであれば、それは良い人材派遣会社といえる指針となります。

担当者があなたに対して「運営状況やマージン率を丁寧に説明してくれるかどうか」ということを見極め、今後も付き合っていける人材派遣会社であるかどうかの視点にするとよいでしょう。

キャリアアップのための教育研修を、給料をもらいながら受講できる

法改正により1年以上、1日8時間以上の派遣雇用契約を結んでいる派遣看護師の場合は、年間で8時間以上の教育研修を受講できるようになりました。しかもこの教育研修は、無料で受けられるだけでなく、受講すれば給与が発生する仕組みになっています。

この教育研修への参加は、休日であれば「有給」扱いとなり、仕事終わりであれば「時間外手当」扱いとなります。これは「派遣会社が派遣スタッフに対して必ず行わなければならない義務」とされていますので、条件を満たした派遣看護師は必ず受講する必要があります。

詳しい内容は人材派遣会社により異なるため、人材派遣会社に尋ねてみるとよいでしょう。

正職員への道が広がる

人材派遣会社は、派遣看護師に対して下記の対応をとる必要があります。そして、この対応は3年の雇用見込みがある人は「必ず」、また1年以上の雇用見込みがある人には「努力義務」となっています。

・次の派遣先の紹介

・派遣先の病院や施設に対して、直接雇用(正職員・契約・パートなど)の申し出をする

・人材派遣会社で無期の派遣社員として雇い入れる

派遣としてこのまま働き続けることを希望する場合は、次の派遣先を人材派遣会社の担当者に紹介してもらうと良いでしょう。もし次の派遣先が決まっていない場合は、下記のような措置が取られます。

・派遣先の病院や施設で直接雇用(正職員・契約・パートなど)となる

・人材派遣会社で教育訓練を受け、キャリアアップやスキルアップをして次の職場を探す

・人材派遣会社で無期の派遣社員となる

法改正によりこのようなシステムになったメリットとしては、「自分に合った職場かどうか見極めながら今の職場で働くことができる」「派遣看護師としてある程度経験を積んだうえで正規雇用の看護師になることができる」「次の紹介がない場合であっても、教育訓練を受けたり人材派遣会社で無期の派遣社員となることができたりするため、安定した収入を手に入れることができる」といったことが挙げられます。

最長3年まで雇用期間を延長できる可能性が高くなった

派遣看護師が一つの職場で雇用される期間は最長でも3年と定められています。しかし法改正前は、現実的に最長3年間勤めることは難しく、制約がありました。その制約が今回の法改正により無くなり、最長3年間働けるようになる可能性が高くなりました。

その制約というのが、「同じ職場に派遣スタッフを雇用するのは原則1年」で、さらに「1年経過ごとに職場全体で意見聴取を行ない過半数の賛同を得る必要がある」というものでした。

派遣看護師が3年間、同じ職場で雇用され続けるには、2回も職場の過半数の方の賛同を得なければならなかったわけです。以前であれば派遣看護師は正職員に今後の契約延長の可否に対する実権を握られており、正職員との格差を感じ働きにくい環境にあったといえます。

それが今回の法改正により、もしあなたにとって働きやすい職場であれば雇用期間を延長しやすくなったといえます。もちろん、「この職場は私には合わない」という場合であれば、雇用期間を過ぎれば契約を延長する必要はありません。

さらにいえば、3年間、派遣看護師として働いてみて、その派遣先が気に入ったのであれば、派遣先に「正職員になりたい」と希望を出すことができます。

採用面接を受けることが必要になることもありますが、その職場の内情を知っているため、志望動機を明確に述べることができます。

特にお子さんがまだ小さくて育児から手が離せない時期は派遣看護師として過ごし、家庭と仕事のバランスを取りながら、正職員になるチャンスを見計らうのも派遣看護師として働く一つの方法です。

派遣法改正で注意しておきたい点

今回の法改正で注意しておきたい点が1つあります。

単発で派遣看護師を行なうには制約がある

今回の法改正で派遣を行なう場合に「ある制約」ができました。その制約とは30日以内の雇用において、単発派遣が禁止されるようになったことです。単発派遣とはいわゆる1日~30日限りの派遣の仕事です。

この制約は派遣看護師の単発という働き方にも影響しており、派遣看護師ももちろん制約の対象となります。

しかし例外措置として下記の方は、単発の派遣看護師として働くことが可能です。

・本業の収入が500万円以上あり、副業として派遣看護師を行なう場合

・世帯収入が500万円以上あるが、世帯主ではない方が派遣看護師として働く場合

・60歳以上の方が派遣看護師として働く場合

こちらの方ですと、単発、日払い、スポットで派遣看護師を行なうことができます。国としては、日雇い労働者を減らし、収入を安定させることが目的です。「安定した収入があれば、単発、日払い、スポットを行なってよい」としているのです。

そのため、病院に勤務している看護師が単発での派遣看護師を希望する場合、前年の収入が500万円以上か、もしくは世帯収入が500万円以上であるという証明を人材派遣会社に提示しなければなりません。

もし例外措置に当てはまらない人が単発で派遣看護師をしたいなら

「世帯年収が年収500万円に手が届かないけれど、単発の派遣看護師の仕事に興味がある。できればイベントナースやツアーナースをやってみたい」と思っている看護師であれば、次の方法があります。

人材派遣会社と「雇用期間を30日以上にし、週20時間以上」とした3ケ月程度の派遣契約の仕事を結び、空き時間でイベントナースやツアーナースを行なうという方法です。このようにすれば「長期の派遣」とみなされ、単発や短期の仕事には該当しなくなります。

「時間がないのに週20時間も働けない」と思う方もいると思いますが、こちらはあくまでも見込みの時間です。労働時間の週20時間を守らなければ罰則を受けるというようなものではありません。しかし、できるだけ達成させるように労働時間を割り振ることが大切です。

長期の派遣の仕事をかけもちで行なえば、週20時間以上という労働時間を達成することができます。例えば、週に3日間で1日8時間、健診や訪問入浴を行ないつつ、ツアーナースやイベントナースといった求人が出れば、そちらを紹介してもらうといった方法です。

ツアーナースやイベントナースといった仕事は人気の求人ですので、すぐに求人募集が終了してしまうことが多いです。そのため人材派遣会社の担当者に希望を出しておき、求人依頼があったら、すぐに紹介してもらえるように態勢を整えておきましょう。

どうしても単発で仕事をしたいのであれば、派遣にこだわらず、アルバイトで直接雇用される方法もあります。

しかし、こちらはなかなか求人が出ないことが多かったり、自分で条件に合う求人を探す手間が出てきたりと、できれば人材派遣会社とのつながりをもっておいたほうが仕事を紹介してもらえる確率が高くなります。

法改正により派遣看護師は働きやすくなった

以上いかがでしたでしょうか。労働者派遣法の改正により、派遣看護師は以前よりも格段に働きやすくなったといえます。派遣看護師の地位は「人材派遣会社と派遣先に板挟みになって労働を強いられる」といった状況から、改正後は「自分で主体的に仕事を選びながら賢く働くことができる」といった状況に変化しました。派遣看護師は、職場でも正職員と同等の給与がもらえ、時間外労働も強いられることはありません。期間も決まっているので人間関係のトラブルにも巻き込まれにくくなると考えてよいでしょう。派遣看護師は、短期の働き方では条件が厳しくなりましたが、代わりに派遣でも長期的で安定した働き方が実現できるようになりました。

派遣看護師だからこそ、あなたの望む看護師としての働き方が追及できるのではないでしょうか。

今後はさらに派遣看護師にとって好待遇、高時給の働きやすい環境が整っていく見通しとされています。もし、あなたが派遣看護師に興味があるとすれば、挑戦してもらいたい働き方の一つといえます。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

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一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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