保健師を一生の仕事として考えている人は、「保健師という職業はこれからも社会に必要とされ、保健師として一生働いていけるのだろうか」という不安が、一度は脳裏によぎったことはないでしょうか。

保健師は「縁の下の力持ち」といわれるように、地域の人や労働者など関わった方々の健康を裏方として支えるのが主な役割です。ときには自分がおこなってきた活動を年単位で考えなければ成果が表れないことがあります。保健師の仕事は地道な活動が多く、ドラマの主人公のように社会の前面で華々しく活躍する仕事ではありません。

そのため保健師という職業自体あまり世間的には知られておらず、社会的には保健師の役割や専門性が分かりづらいといった一面があります。このようなことが保健師という職業を一生涯の仕事として選択するにあたって、やや不安に感じさせてしまう点といえます。

これから日本社会が抱える様々な健康問題に対して、保健師は今後どのような位置づけとなると予測されるのでしょうか。今回は、日本の将来における社会環境の中での保健師の今後の展望と役割、スキルアップの方法について解説していきたいと思います。

保健師の今後の展望と役割

まずは、保健師の日本の社会での今後の展望と役割についてお話します。

日本はさらに超高齢化社会が進むため健康が大切になる

内閣府の調査によると、日本の総人口のうちで65歳以上の高齢者が占める割合は2013年で25.1%、2014年度で26%となっています。これは2014年の時点で、高齢者1人に対して15~64歳の現役世代2.4人が支えている計算になります。

これが2014年から計算して46年後の2060年になると、高齢者の占める割合は約40%になるといわれています。高齢者1人に対して15~64歳の現役世代が1.3人で支えることになります。

2017年時点で、日本の医療費はすでに40兆円を超え毎年過去最高額を更新し続けています。国民一人当たりの年間にかかる医療費は平均すると32万円程度です。しかし、これが75歳以上の高齢者にかかる医療費の平均額となると、年間一人当たり93万円以上だといわれています。このままの状態が続くと医療費はさらに増え続け、現役世代の負担はさらに増大してしまいます。

高齢化は医療費だけの問題ではありません。現役世代の老後に対する考え方の問題も出てきます。

人は誰しも年を取ると身体が弱くなり、健康状態に問題が出てきやすくなるのは自然の摂理です。「生活習慣に気を配らず、その結果病気になり医療費を使って現役世代に負担をかける高齢者」を見かけると、現役世代の方は「年は取りたくない」と考え、これから迎える老後に嫌気がさしてしまいます。

一方、予防できる生活習慣病などの疾病を早い段階から予防し、健康を維持した状態で楽しく人生を謳歌している高齢者がたくさんいるのも確かです。このような方々の生き生きとした背中をみていると、現役世代は「人生は素晴らしい、年を取ることは素敵なことだ」と前向きに老後を迎える準備ができます。元気な高齢者の姿は社会に活気を与えることになります。

日本人の平均寿命と健康寿命の差は、女性で約13年、男性で約9年あるといわれています。

健康寿命とは、健康上問題がない状態で日常生活を送れる寿命のことを指します。毎年「日本人の平均寿命が延びた」と新聞やテレビで騒がれていますが、平均寿命が延びるより健康寿命が延びるほうが高齢者だけでなく、いずれは老後を迎える世代にとっても明るいニュースといえます。

このように医療費を減らし、健康寿命を延ばす役割をもつのが保健師です。「健康でいる」ということは、本人とその家族、周囲の人を幸せにするだけでなく、日本の社会全体を明るくすることにつながります。

地域の健康を支え、健康が重視されるようになると、保健師の活動の場は広がりをみせていきます。実際、近年、医療や福祉の制度が度々改正され、保健師の仕事は拡大してきました。

2006年に行われた介護保険制度の改正により、高齢者の悩みに耳を傾けられる相談窓口として、「地域包括支援センター」が全国に設置されるようになりました。このセンターには保健師(もしくは保健師に準ずる者)を配置するようになっています。地域包括支援センターは市町村から運営を委託された社会福祉法人などから保健師の募集がされるようになっています。

さらに2008年には、生活習慣病対策として、特定健診(メタボ健診)・特定保健指導が医療保険者に義務付けられており、健康診断とその後の保健指導は保健師が行う仕事の一つとなっています。

以上のように高齢化社会になればなるほど、保健師の仕事は重要性が増してくるといえるでしょう。

新たな健康問題の出現による保健活動の活発化

さらに昨今、新しい健康問題が私たちの周りを取り巻いているといえます。超高齢化社会におけるがんや認知症患者の増大だけではありません。

一例を挙げますと、若者のうつ病や引きこもり、自殺、虐待などのメンタルヘルスの問題、エイズ、ジカ熱、新型インフルエンザ、SARSなどの新しい感染症対策なども保健師が関わらなければならない社会問題といえます。その上さらに、次々と起こる大規模災害の救助活動、震災後における被災者の健康の維持、その後の被災者支援など、次々といままでとは違う新しい健康問題に立ち向かっていかなければならない状態にあります。

保健師はこれらの健康問題の先頭で舵をきる人間として、問題解決のために活躍することが期待されています。

新しい健康問題が出現した場合、病気そのものに対する対策や環境整備だけでなく、個人個人がその病気に打ち勝つ身体づくりのサポートを行うのが保健師の仕事といえます。

具体的には、病気になると「病院にいって治療を行い治す」ということを繰り返しているだけでは、病気そのものを減らすことはできません。病気を減らすためには、病気にならない身体づくりを行っていくことが大切です。

さらに保健師に求められる仕事とは、個人の健康問題だけではありません。地域の人々の健康状態を分析し把握することで、新たな地域の健康課題をみつけ、地域全体の健康を促進し疾病の予防策をとる必要があるのです。

このように保健師の仕事は、個人から集団までの関わりのなかで新たな健康問題の発生により拡大しているのが現状といえるでしょう。

保健師の新たな活躍の場

次に、保健師としての新たな活躍の場としてどのような可能性があるのかをお話します。保健師として働くには、企業に勤めたり、都道府県や市の公務員として勤務したりすること以外にも、フリーランスや独立といった方法も今後出てくる可能性があります。

中小企業向けにフリーランスとして活躍できる可能性がある

保健師は中小企業の保健師としてフリーランスとして活躍できる可能性があります。いま現状として、産業保健師が活躍している場は大企業や健康保険組合などが中心となっています。

産業保健師は、「労働安全衛生法」に基づいて、事業者の安全配慮を行い、有害業務対策を含む健康診断の実施やその後の仕事と健康の調整など、労務管理部門と連携しながら、個人の健康を支援する仕事をしています。

また、職場環境改善の提案を行ったり、健康教育や健康づくり活動を推進したりすることで、働く人の健康を支援し、生産性の向上や企業のリスクマネジメントにもつなげていっています。そのため、企業は積極的に保健師を雇用する傾向になってきました。

このように産業保健師の重要性がさらに社会全体に認識されるようになれば、産業保健師を常勤職員として雇えない中小企業などは司法書士や社会保険労務士のようにフリーランスで保健師を活用する可能性が広がります

独立開業している保健師もいる

現在、保健師として保健活動を行い、独立起業している人もいます。例えば、予防医療事業を展開している「ケアプロ株式会社」などがあります。男性保健師の方が代表となっています。

この企業はセルフ健康チェックサービスといって、来客者に自分で採血をしてもらい、その血液を検査するサービスを行っています。医療機関と違い、予約や保険証が不要なため、生活習慣病で気になる血糖値やコレステロール値、骨密度などを手軽に知ることができます。一つの検査が500円のワンコインという価格設定も人気がある秘密でしょう。

このように独立して、保健事業を展開している保健師もいます。

保健師のスキルアップの方法

では保健師としてのスキルアップの方法について解説していきます。

働きながら大学院に進学する

保健師は専門職として、最新の知識や技術を身につけていくことが大切です。そのため医学の進歩や社会の変化に応じ、学び続けなければなりません。保健師は常日頃から、研修会や学会に出席してスキルアップの方法を勉強しています。

これらの勉強より、もっと体系的な知識を身に付けるために働きながら大学院の修士課程に進学する保健師も多くいます。

保健師には相談者の心情や理由を探し当てる能力が必要です。例えば、「体重を減らさなければいけないのは分かっているけれど、どうしても食べてしまう」といった人には、その背景に何らかのストレスを抱えているのかもしれません。そのストレスを探し出し、うまくストレスと付き合っていけるように導くことで、はじめて体重減少といった結果につながります。

このように、保健師には奥深い原因究明と分析能力で相談者が抱えている原因を突き止め、解決策を考えだして結果を残していく問題解決能力が必要となります。

問題解決能力とは、研究力です。研究といっても、学士、修士、博士の段階別によって身に付けられる能力が異なります。

4年制大学の卒業生(学士)は、現象を科学的に理解する力を身に付けることを目的としています。

大学院修士、もしくは博士前期課程修了者(修士)は、広い視野で深い学識をもち、高度の専門性が求められる職業を担うための能力の修得が目的とされます。

大学院博士後期課程修了者(博士)になると、専攻分野における研究者として研究活動を行い、新しい知見を創造する力を身に付けることが求められます。

一人前の保健師として成果を出し活躍していくためには、修士レベルの分析力が必要です。そのため保健師だと、大学院の修士課程まで学ぶ方が多く存在します。保健師として第一線で活躍するには、大学院レベルの研究力が求められることを現場で働く保健師は実感しているのだと考えられます。

専攻する分野としては、看護系や看護系以外の大学院で公衆衛生学に関するもの、精神保健、心理、経済、行政、法律、社会福祉などです。保健師は施策化する力も求められるため、経営学や政策学を学ぶ方もいます。

学び方としては働きながらでも、夜間や土日、サテライトキャンパスに通ったり、通学が困難な方は通信制で学べたりする大学や大学院を選択する人が多いようです。通信制になると、インターネットを介したバーチャル講義やDVDなどの講義録画など仕事の合間をぬって学ぶことが可能です。以前よりも学びやすい環境が整いつつあるといってもよいでしょう。

またどうしても、夜間や通信制では学ぶことが困難だと考えられる場合は、休職して進学する人もいます。地方自治体などでは進学のための休職制度を設けている職場が多いため、そちらを利用する人もいます。

もちろん、休職中は給料が支払われません。それにもかかわらず、学費プラス社会保険料などに支払いが生じるため、大学院進学は経済的に厳しい一面があります。

さらに公務員や社員としての肩書をもったままだと、奨学金などが基本的には受けられません。休職するのであれば、大学院修士課程の1年目は夜間で単位を取得し、2年目のみ休職をして修士論文に取り組むといった方法をとったほうが経済的に比較的楽だとされています。

また、学士や修士取得にこだわるのでなければ、聴講生として学びたい科目を受講する方法もあります。「放送大学」など、好きな科目を履修する通信制の大学もあるので興味がある方はみてみるとよいでしょう。

産業保健師なら産業カウンセラーの資格取得を目指す

企業で産業保健師として働く保健師は、産業カウンセラーという資格を取得すると業務に役立ちます。産業カウンセラーとは、心理的手法を用いて働く人たちが抱えている心の問題を自分の力で解決できるようにサポートしていくことを主な業務としています。

受験資格は、4年制大学で心理学もしくは心理学隣接諸科学、人間科学、人間関係学のいずれかの名前がついた学部の卒業者か、産業カウンセラー協会が実施する講座を修了した人となっています。

産業保健師が4年制大学で学び直すことは困難なケースが多いので、産業カウンセラーのほとんどの受験者は後者の産業カウンセラー協会の講座を修了した人となります。

産業カウンセラーは相談室で相談者の話を傾聴するだけでなく、「現場で実際に行動するカウンセラー」となることを目指します。企業に特化したカウンセラーになるので、産業カウンセラーの資格を取得し、知識を身に付けた産業保健師が在籍していることは事業者にとって大変心強い存在といえます。

産業カウンセラーの資格を取得したのち、さらに産業カウンセラーよりも高度なシニア産業カウンセラーという資格もあります。シニア産業カウンセラーは産業カウンセラーよりもさらに深い知識を有し、事業者全員を対象として、職場で人間関係やストレスに悩んでいる方のカウンセリングとケアを実施する専門家といえます。

シニア産業カウンセラーの受験資格は産業カウンセラー試験に合格して3年経過したのち、シニア産業カウンセリングの講座を終了した人、もしくは、産業カウンセラーの資格を有し大学院で心理学もしくは心理学隣接諸科学、人間科学、人間関係学のどれかの名前がついた学部の卒業者となっています。

さらにカウンセラーとしての専門性を深めていきたい方は、認定心理士、臨床心理士という資格もあります。こちらですと、大学か大学院を修了することが受験の条件ですので、時間も費用もかかりますが、産業分野だけでなく、保健師兼心理士としての活動の場の広がりが期待できます。

地域包括支援センターの保健師は健康運動指導士や介護支援専門員の資格取得をする

地域包括支援センターで働く保健師には、健康運動指導士や介護支援専門員の資格取得がお勧めです。

健康運動指導士とは、医学的観点や運動生理学の観点から運動の知識を深め、健康維持や改善の指導を行うための資格となります。地域で定期的に行う運動教室などで、リハビリの重要性や高齢者の健康促進のために正しい運動の仕方を教えるために必要な知識といえるでしょう。

さらに、地域包括支援センターには、介護支援専門員(通称ケアマネージャー)の方が在籍しています。その資格を保健師が取得しておくことで他の介護支援専門員との知識を共有することができ、さらに仕事の幅が広がってくるでしょう。介護支援専門員は看護師か保健師での実務経験が5年以上あれば、受験資格が与えられます。

これからの保健師として活躍の場は多い

以上、いろいろお話してきましたが、保健師としてこれから活躍する場は、あなたの行動次第でますます増えていくと考えられます。

生活習慣病が増え、医療費が国政を圧迫している日本では、予防医療にこれからもっと注目が集まってくることでしょう。病気になってから治すのではなく、病気にならないように予防する予防医療や、治療後の再発防止、リハビリテーションを通じて社会復帰する、さらには健康な人がより健康になるための行動をサポートすることが保健師として重要な活動となります。

保健師の仕事は探せばいくらでも見つかります。反対に問題を探そうと行動しなければ、仕事が見つかることはありません。

健康問題を見つける目を養い、その問題を解決する能力を身に付けていきたいと考えるあなたにこそ、保健師として活動していってもらいたいと思います。保健師になったのちも決して楽な道のりではありませんが、その困難に打ち勝って勉強を続けることで、関わった人を健康にして笑顔を引き出す保健師になってください。


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