「30代や40代で保健師の経験がなくても、保健師になれるものなのだろうか」と30代・40代で保健師免許をもっている方や30代から保健師養成学校や大学院に行って免許を取得しようとしている方は疑問を抱くことがあります。

せっかく苦労して取得した保健師免許です。医師免許と同様、一度取得すれば更新する必要はなく、生涯有効であるこの免許をこのままにしておくのはもったいない話です。

看護師と保健師の免許を両方取得したときは、「看護技術を身に付けたい」という思いで看護師として最初は働く方が多いです。しかし現実問題として、看護師の仕事は夜勤があり体力を必要とし、休暇が取りにくく、残業も多いため、年齢を重ねるにしたがって続けて働くのが辛くなってくる仕事という一面もあります。

一方、保健師の雇用条件の多くは夜勤がなく、残業も少なく、土日が休みで家族との時間が合わせやすいといったメリットがあります。そのため、30代・40代になってから「せっかく保健師免許を取っていたのだから、もっと若いうちに保健師になっておけばよかった」と悔やむ方が多いのも確かです。

「30代・40代で、保健師未経験だと採用先はない」と諦めるのはまだ早いです。条件によっては、年齢を重ねていても保健師になれる可能性がまだ残っているからです。

そこで今回は、保健師未経験でありながら、30代・40代での保健師としての採用の有無や就業事情についてお話していきます。

都道府県・市町村の保健師の就業事情

まずは就業保健師人数が一番多い、都道府県と市町村の保健師の就業事情について解説します。

公務員希望であれば年に一回の採用試験

就業保健師の約8割は、都道府県の保健所や市町村の保健センターなどの公務員として地方自治体で勤務しています。この地方自治体の正規の職員として働くためには、4月~8月くらいに行われる職員採用試験を受ける必要があります。

この職員採用試験は年に1回が一般的です。4月から勤務を開始するとして、前年度の春から秋にかけて募集要綱が公表されます。春くらいから希望する自治体のホームページをこまめにチェックして募集が出ていないか確認しましょう。

保健師の採用は基本的に1~2人です。そのため退職する予定の人がいなければ、保健師の募集をしない年もあります。

年齢制限がない自治体もある

多くの自治体の応募要項によると、30歳程度までとする年齢制限が設けられています。しかし、自治体によっては40歳程度まで応募が可能なところや、ごく少数ですが年齢制限を設けていないところも存在します

保健所などの都道府県の多くは応募年齢が30歳前後としているところが多いです。保健センターなど市町村ですと、35歳程度までしか受験できないというところが多いです。

しかし、東京の特別区ですと応募年齢は40歳未満(39歳まで)と定められています。また、千葉県市川市は年齢制限を設けておらず、公務員として定年を迎える60歳未満(59歳まで)ですと受験が可能です。

もしどうしても保健師として働きたい場合は、ある程度広い範囲の自治体を視野に入れて検討することで、年齢がある程度上でも保健師として採用される可能性が高まります。また、一度不採用になったからといって諦めずに、翌年以降に再度チャレンジして合格を勝ち取った方も多くいるので、「一度不採用だったから」といって諦めないことが大切です。

また、まれにですが、臨時募集や通年採用を行う自治体もあります。そのため自治体のホームページや広報をチェックするだけでなく、学校の先生や保健師の先輩にも「もし保健師の募集があれば教えてください」と伝え、保健師採用情報をこまめに収集しておくことが大切です。

保健師資格が未取得でも採用試験の受験は可能

もし保健師採用試験を受験する時点で、保健師養成学校や大学院で学んでいる途中のため保健師資格が未取得であったとしても、勤務開始年度までに保健師免許を取得することを前提に、自治体の保健師採用試験を受験することが可能です。保健師免許取得見込みでの受験となります。

もし保健師採用試験に不合格であった場合や、単位不足で保健師養成学校や大学、大学院を卒業できなかった場合などは、保健師採用の内定が取り消されてしまいます。

看護師資格しかもっておらず、保健師国家資格を取っていない状態で保健師採用試験を受験して内定が出た場合は、必ず翌年の保健師国家試験に合格をし、内定を取り消されないようにしましょう。

多くの保健師採用試験を受けるのは難しい

「違う自治体を受験するのであれば、行政の保健師採用試験を数多く受けられる」と考える方がいます。しかし、とくに近隣の自治体の場合ですと、保健師採用試験の日程が重なってしまうことが多く、手あたり次第に試験を受けるのは難しいのが現状です。

こういった場合は、できるだけ多くの自治体の保健師採用情報を集めて、試験日が重複しないよう希望する自治体から選択して受験するようにしましょう。

保健師採用試験の科目は多岐に及ぶ

採用試験は5月から9月くらいに行われます。試験が1次試験だけということは少なく、2次試験、3次試験まで行われることがあります。試験科目は各自治体によって異なります。一般的には、教養試験、専門試験、論文、面接が実施されます。

試験内容は、自治体のホームページなどに過去数年分が掲載されていることが多く、どのような問題が出されるのか一度全体的に解いておくと安心です。特にみなさんが苦手とするのは教養試験です。試験内容は各自治体の保健師の位置づけによって難易度が全く異なります。

大学卒業程度ですと「上級」、短大卒業程度ですと「中級」、高校卒業程度ですと「初級」と区分されています。同じ区分わけで「Ⅰ種」、「Ⅱ種」、「Ⅲ種」、あるいは「大学卒業程度」、「短大卒業程度」、「高校卒業程度」といわれることもあります。

下記は平成27年千葉県の保健師の教養試験の一部を抜粋したものです。こちらは上級教養問題となります。

A~Dの4人が喫茶店に入り、各人が、お菓子をチーズケーキ、シュークリーム、アップルパイの3種類のうちから1種類又は2種類選び、更に飲み物を紅茶、コーヒーの2種類のうちから1種類選んで注文した。これに関して次のことが分かっているとき、正しいといえるのはどれか。

・  アップルパイを注文した人は2人であり、2人とも紅茶を注文した。

・ Aは2種類のお菓子とコーヒーを注文した。

・ Bは、Aと同じお菓子は注文しなかった。

・ CとDは同じ飲み物を注文した。

・ Dはお菓子を1種類だけ注文したが、それはシュークリームではなかった。

・ 3人が注文したお菓子があった。

1.シュークリームを注文したのは1人だった。

2. コーヒーを注文したのは2人だった。

3. Bはチーズケーキを注文した。

4. Cはシュークリームを注文した。

5. Dはアップルパイを注文した。

(正答 1 )

このような問題のほかにも、「地震の震源と地震波に関する質問」や「世界各地の独立運動に関する質問」など理科や社会など出題範囲は多岐に及んでいます。

教養科目は中学校や高校で学んだことが多く出題されるのですが、近年は応募人数も多いため、難易度が年々高くなっている傾向にあります。特に30代、40代は学校で学ぶことから年数が経っているため、これらの過去数年分の問題を解いて試験問題の勘を取り戻しておく必要があります。

上記のような問題が難しくて解けないといった場合は、公務員向けの教養問題の参考書が多数出版されていますので、解き方やそれぞれの科目の要点を覚えておくことが大切です。自治体によって上級、中級、初級が異なっているため、それぞれの自治体に合わせた問題を何度も解いて慣れておくと良いでしょう。

それでもどうしても問題が解けない、このような問題は苦手という方は、公務員の採用試験に特化した予備校や専門学校がありますので、それらを利用することも視野に入れておくとよいでしょう。

ただし、教養科目はただの足きりで行われることが多いです。また、教養科目の点数が高くても、専門科目の点数が低いと合格点には至りません。

専門科目というのは、基本的には保健師国家試験と同様か、それよりやや難しい問題が出題されます。保健師養成学校に通っている途中ですと、夏に試験を受けるとして、まだ習い終わっていない科目が多く残っていることを考慮しておかなければなりません。教科書を先取りして理解し、内容を修得しておかなければ合格は難しいといえます。

一方、大学院修士課程で2年間保健師課程を学んできた人は、保健師国家試験に対応した科目は1年目にほとんど終了していることが多く、採用試験のときに有利に働くといえます。

面接や論文に関しては、面接官に「保健師としての意欲と意志」を伝えることが大切です。また保健師としての専門知識も必要となりますので、しっかり準備をして臨むようにしましょう。

給料は新卒と同じ扱いになる

そして30代で保健師として採用されたとしても、最短で採用された新卒の22歳と同じ給与になります。行政で働く公務員には等級がつけられており、看護師など他の社会人経験がいくらあったとしても、保健師としての経験の有無だけが問われます。

このことを踏まえた上で保健師を目指すのであれば、できるだけ早く行動をおこし経験を重ねるようにしましょう。

産業保健師の就業事情

では次に産業保健師の就業事情についてお話します。

産業保健師は募集年齢に幅があることが多い

産業保健師は30代、40代でも応募可能というところがあります。しかしこの場合、未経験より経験者が優遇される傾向にあります。大企業の医務室に勤務することになっても、1~2人しか在籍していないことが多いです。そのため1人で自信をもって働くには、ある程度の保健師の経験が必要となります。

中には、未経験でも可という案件もありますが、それはとても希少求人案件になります。その場合は、看護師としての臨床経験を最大限にアピールして採用を勝ち取るようにしましょう。

産業保健師の場合、個人的なツテで採用が決まってしまうことが多く、求人自体がなかなか出ません。できれば、保健師の知り合いや学校の先生に求人がでたら紹介してもらえるよう頼んでおくとよいでしょう。

転職サイトやハローワークに求人がでていることも

少ないですが転職サイトでも保健師の求人を扱っていることがあります。また、まれにハローワークにも出ていることがあります。転職サイトやハローワークで扱っているのは行政保健師以外の企業や事業所、委託の地域包括支援センター、病院や健診センターなどがあげられます。

保健師自体の採用人数が少なく、公務員以外ですと先輩や学校の教員などの推薦で採用されるケースが多いのが現状です。もしこのようなツテがなければ、複数の転職サイトに登録して自分でツテを作っておくことが大切です。

最初は非常勤で勤務し、ツテを作っておく

常勤の産業保健師は倍率が高いばかりか、経験者を優遇することが多いので採用されるには狭き門となってしまいます。そのような場合は、ハードルを下げて、未経験でも比較的OKとするパートや非常勤でいったんは産業保健師になり、保健師の経験を積んでおくという方法があります。

産業保健師の経験を積んでおけば、他の保健師の求人が出た際に経験者として応募することができますし、保健師のツテもできます。また、仕事の頑張りによっては常勤になる道も可能性としては出てきます。

学校保健師(養護教諭)の就業事情

最後に学校保健師の就業事情についてお話します。

公立の小・中学校の年齢制限はバラバラ

公立の小・中学校であれば、採用するのは都道府県か市町村になります。ただ、上記の行政保健師とは別枠の採用となることが多いです。

気になる年齢制限ですが、これは行政によってバラバラです。35歳までとすることもあれば、50歳まで応募可というところもあります。ただ、なかなか求人が出ることがないため、各自治体に問い合わせてみるなどして、情報を得ることが大切です。

私立の小・中学校は早めに求人情報を手に入れる

私立の小・中学校ですと、その学校独自のやり方があり年齢制限なども異なります。とくに新しく設立される学校は早く情報を仕入れ、学校保健師の求人がないか聞いてみましょう。学校法人の求人は雇用条件が良いことが多く、倍率が高くなることが予想されます。

早めに求人情報を手に入れ、各学校の校風に合わせた試験や面接の対策をとることが採用への近道になります。

保健師の求人探しに困ったら転職サイトに登録しておく

もしどうしても自力で見つけられない場合は、複数の看護師転職サイトに登録しておくことをお勧めします。なぜなら、転職サイトが保健師求人の希少案件を抱えている可能性があることと、求人が出た際にチェックし忘れていたとしても、いち早く連絡が来るからです。

「しつこく電話がかかってくるかもしれないから転職サイトは苦手」と思っている方もいると思います。しかし、「保健師の求人のみを探している」ことを伝えれば、保健師の案件があったときにしか電話はかかってきません。このことを苦手としていたら、あなたに特別なツテがないかぎり、有益な情報は入ってきません。

私も転職を行う際、看護師希望で複数の転職サイトに登録をしていました。そのとき登録していた転職サイトのコンサルタントから、私が保健師の資格ももっているということで、「看護師希望だけれども、保健師の希少案件があるので受けてみないか」という連絡をもらったことがありました。その案件によると、未経験でも応募可能とするものでした。

ちょうどその前の週に看護師として採用が決まっていたため、丁重にお断りをしました。あとで調べてみると、この情報はハローワークにもその企業のサイトにも掲載されていない超希少案件でした。

「転職サイトからの応募だと、企業側は転職サイトにお金を支払うことになるから採用は嫌がられるのではないか」と感じる方もいるでしょう。しかし、上記のようにハローワークにも企業のサイトにも掲載されていない求人があることがたまにあります。これは保健師を採用するにあたって、企業が転職サイトに「お金を支払ってでもいいから、ふさわしい人材を紹介してほしい」ということなのです。

いい人材には優れた企業はお金を支払います。その分、あなたがその企業で保健師として活躍してくれれば、企業はすぐに元を取り戻すことができるのです。「転職サイトに支払うお金がもったいないから、転職サイトから応募した人は採用しない」という企業ですと、入社した後で給与面などに不満を抱える可能性が高いともいえます。

保健師の求人はまさに希少案件です。募集人数が1人の枠しかないことが多く、それも個人的なツテで決まりやすいため、なかなか保健師の求人自体、表に出ることが少ないです。そのため求人があるとわかったら、いち早くその求人をつかんで履歴書や面接の準備に取り掛かったほうが採用に有利になります。

そのための転職サイトです。転職サイトのコンサルタントは、転職のプロです。転職サイトを上手に利用して情報を得ることが採用につながります

履歴書や面接において困るようなことや不安なことがあった場合、担当コンサルタントに相談すると解決策を提案してくれたり、面接対策を実際に行ってくれたりするため転職において大変心強い味方になります。

保健師への転職は長期戦になると覚悟しておいたほうがいいでしょう。長い目でみて、確実に採用を手にするように計画的に動いていくことが30代・40代の保健師未経験の人にとっては大切なことです。