「看護師として、これからどのようにキャリアアップを考えていこうか」と悩んでいるときに、キャリアアップをするための一つのカギといえるのが資格取得です。

資格を取得することは、「特定の分野の専門性を高めることができる」「最新の知識や技術を獲得することができる」といった目的を達成するための手段となります

さらには、あなたのキャリアアップを考えるうえで資格取得まで努力したプロセスは、人生のプラン設計の中で新たな道しるべになったり、キャリアアップをしていく際の自信につながっていったりします。

今回は、救急・ICU・手術室に勤務する看護師のためのキャリアアップにつながる資格について解説していきます。

救急・ICU・手術室の看護師にお勧めの資格

救急・ICU・手術室の看護師には、一刻を争うなかでの的確な判断能力が求められ、素早く処置を行うことのできる看護技術が必要となります。生命を救う現場で高いスキルを身に付けるためにお勧めの資格についてお話します。

学会認定・自己血輸血看護師

「学会認定・自己血輸血看護師」という資格は、2009年、日本赤十字社の協力を得て日本自己血輸血学会と日本輸血・細胞治療学会が、適正で安全な自己血輸血を行なえる看護師育成を目的として開始したものになります。

手術を行なうときに血液が不足した場合は通常、赤十字血液センターなどで採血された他人の血液を使います。この輸血方法では、発熱や蕁麻疹、肝炎やエイズ、未知のウイルスや細菌などの感染症、輸血後移植片対宿主病といった副作用の可能性があります。

一方、自己血輸血とは、血液を必要とする患者さん本人の血液を利用し輸血に用いる方法ですので、上記のような心配がないというメリットがあります。

一概に自己血輸血といっても、様々な方法があります。「希釈法」は、手術室で患者さんの血液を採血し、採血量に応じた輸液を行なった術後に先ほどの自己血を戻す方法です。「回収法」は、手術中や術後に出血した自己血を回収し、患者さんに輸血する方法、「貯血法」は、術前に採血した血液を術中、術後に輸血する方法となります。

この資格は、自己血輸血の専門知識をもつ看護師が患者さんに適切で正しい自己血輸血療法を推進していくことが期待されています。また、この資格は正看護師が取得できる資格ですので、いくら自己血輸血の経験や知識が豊富だといっても准看護師は取得することができません。

ちなみに自己血輸血看護師資格は、貯血式自己血輸血管理体制加算の算定において必須の事柄となっています。

取得条件

日本自己血輸血学会または日本輸血・細胞治療学会の会員であること

看護師として、2年以上の臨床経験、自己血輸血業務(自己血採血の計画の立案、自己血採血の実施、採血時の看護、回収式や希釈式の実施あるいは看護、自己血の返血実施、赤十字血液センターとしての自己血採血の指導など)の経験を1年以上有しており、通算では30例以上の実施症例をもっていること

教育セミナーや協議会指定セミナーの受講証明書を保有すること(試験後の受講も可、ただしその場合は仮登録となる)

取得までの流れ

① 受験申請

申請料:10,000円

② 合同研修・施設研修・筆記試験・面接

筆記試験(マークシート形式+小論文):自己血輸血、血液製剤、輸血療法、血液事業、法制度など輸血全般から出題される

日程:年2回(春・秋)に各々3日間、実施

会場:春は学術総会会場、秋は日本赤十字社関東甲信越ブロック赤十字血液センターなど

費用:25,000円

③ 登録

登録料:5,000円

私の友人が患者として自己血輸血を体験したことがありました。その病院の看護師にこの「学会認定・自己血輸血看護師」が在籍していました。

友人は「医師とはなかなか相談の時間を取りづらく、自己血輸血について専門的な観点から看護師に詳しく教えてもらうことができて、安心して自己血輸血を受けることができた」といっていました。

自己血輸血を行なう病棟であるならば、「学会認定・自己血輸血看護師」が在籍することで他の看護師からしても頼もしい存在となります。

学会認定・臨床輸血看護師

「学会認定・臨床輸血看護師」という資格は、日本輸血・細胞治療学会が病院における輸血医療の安全性や有効な輸血方法を推進する看護師育成を目的として2010年から新設された新しい資格になります。

もともと輸血とは、「移植の一種」と考えられているように、多くの副作用や合併症を伴いやすい危険なものです。そのため「学会認定・臨床輸血看護師」には、臨床輸血に関する正しい知識と的確な看護能力を身に付けることが期待されています。

こちらも正看護師が対象の資格となります。残念ながら准看護師は資格取得が行なえません。

取得条件

登録を行なう際には、同学会の会員であること

看護師として通算3年以上で、輸血医療を行なっている施設の看護師であること

筆記試験の前日の講習会を受講し、合格後の施設研修は必須とする

更新には、学会への参加が必要となる

取得までの流れ

① 申請

申請料:10,000円 受験料:10,000円 研修料:10,000円

申請には、看護師長などの所属長および輸血責任医師の推薦書が必要となる

② 講習会

日程:11月初旬

③ 筆記試験

受験票返送:10月上旬

日程:11月中旬

④ 研修

筆記試験に合格した者は、学会が指定する施設で研修を受ける

⑤ 登録

登録料:5,000円

⑥ 更新

登録更新料:5,000円

更新は5年ごととなる。

最終年度末の2ケ月前までに、学会参加や総会・シンポジウム出席、研究発表、教育活動などの業績によるポイントを30単位(そのうち10単位は同学会関連のもの)取得することが条件となる。

第1回の2010年は133名、第2回の2011年度には153名の看護師の合格者が輩出されており、年々増加傾向にあります。

輸血療法には、看護師が関わる場面が多くあります。「輸血が必要になるか」という判断を行なう採血、医師の指示による血液製剤の申し込みと受け取り、患者さんへの輸血製剤の説明と点滴投与、輸血中や輸血後の患者さんの観察、輸血後感染症採血の説明などです。

この過程のなかで患者さんの不安の軽減と安全性への考慮、輸血療法にかかわる他職種とのスムーズな連携のコーディネートを行なっていくことが求められます。

周術期管理チーム看護師

「周術期管理チーム看護師」とは、術前・術中・術後の麻酔科医の補助、モニタリング、医療機器や使用薬剤の準備など、麻酔科関連業務を麻酔科医と共同して行なうための専門的な知識と技術をもった看護師の育成を目指している資格となります。

「日本麻酔科学会」が開設した資格となります。2014年に第一回認定試験が実施された新しい資格といえます。

取得条件

看護師として麻酔科標榜医が年間200例以上の麻酔科管理を行なっている手術室での勤務が2年以上あること

日本麻酔科学会が主催する周術期セミナーに2回以上参加していること(3年以内)

日本手術看護学会年次大会、もしくは麻酔看護研修に2回以上参加していること(3年以内)

取得までの流れ

① 試験

受験料:10,000円

② 登録

登録料:20,000円

③ 更新

認定された日から3年間

この資格を取得することによって、「手術室に長く勤めたい」とする看護師の勤務希望がかなえられやすくなる可能性があります。

過去の問題は「周術期管理チーム認定制度」というHPに掲載されていますので、興味があるかたは確認するとよいでしょう。

また、まだ実現しておりませんが、この資格をより確かなものにするために、診療報酬制度の中に「チーム医療・周術期管理チーム制度加算(仮)」といったものを加えようという動きがあります。

手術看護実践指導看護師(愛称:ジョナサン)

「手術看護実践指導看護師」は、日本手術看護学会によるクリニカルラダーをもとに、レベルⅢ相当の看護師の実践力を認定するために「日本手術学会」が2014年に設立された新しい資格となります。

この資格は手術看護経験や学会での活動、事例報告をもとにして、「手術看護の質の保証」と「現場で働く看護師の意欲の向上」を目的としています。

取得条件

看護師免許があり、手術室経験が5年以上ある

10年以内に通算3年以上の学会正会員であること

受験資格ポイントを50点以上取得していること

手術看護実践事例を2例提出すること

クリニカルラダーレベルⅢの認定証明書を提出すること

受験料納付済み証明書を提出すること

取得までの流れ

① 認定審査(書類審査)

受験料:30,000円

② 更新

更新期間:5年間

審査料・登録料:30,000 円

日本看護協会がおこなっている「手術看護認定看護師」を取得するには、半年間の認定看護師教育を受けるために休職しなければならず、実現困難な看護師が多いのが事実です。

そこで日本手術看護協会が、手術看護の経験が豊富で、臨床において手術看護に貢献し責任を果たしている看護師のために、新たに「手術看護実践指導看護師」という資格を作りました。

日本看護協会が行なう「手術看護認定看護師」と比較すると提出する書類は多くなりますが、実現が困難な認定看護師の資格よりは「手術看護実践指導看護師」のほうが簡単で安価に取得することができます

職場の人手が不足しているにもかかわらず、「認定看護師の資格を取得するために休職する」とはなかなか言い出せない看護師にとってはありがたい資格といえます。

できれば、忙しく職場を離れることができない看護師でも取得が比較的簡単に行える資格がたくさんつくられると、看護師の質の保証と意欲の向上にもつながります。今後それぞれの専門の看護協会に期待したいと思います。

その他の資格

救急・ICU・手術室の看護師は患者さんの容態が急変しやすいため、「BLS(Basic Life Support )ヘルスケアプロバイダー(一次救命処置)」と「ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)プロバイダー(二次救命処置)」および「PALS(Pediatric Advanced Life Support)(小児二次救命処置)」という資格を取得しておくと、今後役立つといえます。

他にも、「3学会合同呼吸療法認定士」や「呼吸ケア指導士」といった資格も専門知識を深めていくことができるのでお勧めです。

これらの資格は特に専門の経験を問われないで取得できる資格となります。そのため、当サイトの「看護師が未経験分野への転職を成功させる有利な資格とは」に詳細をまとめていますので、興味がある方は参考にしてください。

現在では高齢化により、循環器や腎臓の既往をもつ手術患者さんが増加傾向にあります。それに伴い、急変する可能性も高まってきているのが臨床の場です。

資格取得は新たな道ができる可能性も

どの領域の看護師にもいえることですが、できれば救急系の資格を取得し、患者さんに急変があった場合は、正しい知識をもって、迅速に正確に看護活動を行なうことが期待されています。

私の友人は、呼吸器科に勤務していますが、もともと救急救命に興味があり、BLSヘルスケアプロバイダーの資格を取得していました。

ある日病棟をラウンドしていると突然、患者さんが呼吸困難になっており、急変の事態が起きていたそうです。しかし、BLSヘルスケアプロバイダーの知識をもっていたために「医師が到着するまで冷静に行動することができ、医師に感心された」と興奮気味に話してくれました。

その彼女は今、さらに「BLSインストラクター」を取得し、各病棟においてBLSの指導を行なう立場になりました。

このように、自分が少しでも興味をもった資格を取得しておくことは、看護師としての技術や可能性を伸ばし、いざというときに有効に使うことができます

また将来、専門看護師や認定看護師を目指すときの、看護の知識や自信にもつながっていきます。

なにかの資格を取得してキャリアアップを考えているのであれば、いまから少しずつ動き始めてみてください。きっと新しい道ができてくることでしょう。