医療の専門家の一つに数えられる看護師であるため、より高度な知識やスキルを手にするために資格取得のための勉強を考える人は多いです。その中でも代表的な資格の筆頭が認定看護師資格です。

実際のところ、認定看護師資格を手にするのはかなり大変です。時間がかかるだけでなく、かなりの勉強をしなければいけません。そうしたとき、認定看護師資格は看護師転職のときに有利に働くのでしょうか。

これについて認定看護師の資格があっても、多くの医療機関で待遇が優遇されることはありません。ただ求人票を選べば、有利な条件にて転職することは可能です。

そこで転職時、認定看護師資格を有利に働かせるためのアピール方法や求人の選び方について、どう考えて実行すればいいのか解説していきます。

認定看護師資格を転職で有利にできるかは求人次第

結論から言えば、認定看護師資格を転職で有利に働かせることができるかどうかは求人次第だといえます。

「認定看護師資格をもっている人」と「看護師資格しかもっていない人」が採用面接に訪れて、同年齢で、仕事に対する意欲や看護観などが似ているのであれば、採用側はもちろん専門的な知識や技術をもっている認定看護師資格を保有する人を採用するでしょう。

しかし、いくら認定看護師資格をもっているからといって、それが待遇に反映されるかどうかは別問題です。その証拠に以下のグラフを参照してください。

出典:病院勤務の看護職の賃金に関する調査 日本看護協会

こちらのグラフは認定看護師資格取得後の待遇についての変化を表したものです。グラフを読み取ると、認定看護師資格を取得したとしても、「昇格・昇給し、さらに手当が出る」のは全体のわずか5.4%に過ぎません。

知っている通り、認定看護師資格は日本看護協会が独自に設けた資格です。せっかく認定看護師資格を取得しても、一部の医師や医療機関の間では「どのような資格で、何ができるのか」について充分に認識されていないケースが多いのです。

これではせっかく認定看護師として転職できたとしても、身につけた技術や能力を活かして働くことはできません。

そこで「認定看護師だから、〇〇ができる。〇〇という経験を貴院で活かせる」というあなたの価値は、あなた自身で採用側へ伝えなければなりません。いずれにしても、認定看護師資格によって転職での採用が有利に働いたとしても、その後に満足いく仕事を得られるとは限らないというわけです。

認定看護師の専門能力や技術をアピールし、最適な求人を選ぶ

そこで、「認定看護師の能力や技術を、面接時どのようにアピールすればいいのか」を考えていきましょう。

認定看護師はどの領域においても実践、指導、相談という3つの役割を果たすことが期待されています。これらを面接時に「具体的にどう実践に役立てられるのか」を伝えることができれば、採用側はあなたを雇用したあとのイメージが浮かぶようになります。

具体的にイメージできなれば、採用側からすれば「認定看護師を雇用後、どのように能力を発揮してもらえばいいか分からない」といえます。そこで転職するに当たり、正しいアピール方法を学びましょう。

・糖尿病看護認定看護師での事例

例えば糖尿病看護認定看護師の資格を取得しているとします。このとき糖尿病看護認定看護師の特化技術として、「血糖パターンマネジメント技法」「フットケア技術」「糖尿病ケアシステム立案技術」など、すぐに実践できる専門技術が存在します。

これらを理解したうえで糖尿病患者のサポートを実施していけば、患者さん自身も一回の血糖測定に一喜一憂せず、長い目でセルフケアを実践しながら糖尿病と付き合っていくことができます。

またフットケア技術も、ただ単に「足をケアする」のではなく、患者自身が率先してフットケアに取り組めるように支援することにつながります。

・専門技術を評価してくれる中途採用募集を選ぶ

もちろん一般的な病院やクリニックの中途採用募集に申し込んだ場合、専門看護師の技術を述べても評価されません。そこでこうした自己PRをする場合は、専門資格を評価してくれる医療機関の求人を選ぶことも必須です。

例えば、以下では糖尿病認定看護師の資格を必須にしている医療機関が中途採用募集を出しています。

それだけでなく、この医療機関ではこうした認定資格を有することによって給料にも反映されるようになっています。

参考までに、先ほどの求人に申し込んだとき、糖尿病認定看護師の資格を有することで以下のような優遇措置があります。

看護師としての基本給に加えて、認定看護師資格に関する手当が追加で月72,000円も加わります。ここから、こうした求人で認定看護師資格をアピールすることで、優れた転職を実現できることが分かります。

認定看護師は専門性を具体的にアピールするべき

ただ通常の医療機関の場合、認定看護師の資格を有していたとしても、一般的な看護師と比べて仕事内容や役割は同じです。資格を保有していれば自動的に適切な仕事が与えられるわけではないため、自分から保有する技術や能力をアピールし、看護の質を向上できるように自ら動かなければ実践の場では役立ちません。

また求人側の意識も重要であるため、先ほど述べましたが認定看護師資格として活躍できる中途採用へ申し込むのが最適です。そこで、以下のように特定分野の認定看護師を欲している求人を探す必要があります。

「あなたが認定資格で勤務可能なことをアピールする」「求人先が認定看護師資格の重要性を理解している」という両方の条件が揃ったときのみ、認定看護師資格を活かしながら優れた条件にて転職できるといえます。

認定看護師の優良求人は転職サイト利用が大原則

それでは、認定看護師を優遇してくれる求人はどのように探せばいいのでしょうか。これについて、残念ながら独自で探したとしてもほぼ発見できません。どの医療機関でも、公式サイトに「〇〇の認定看護師資格を有する人を募集している」とは書かれていないからです。

そこで、転職サイトを利用するのが大原則になります。求人はみずものであり、必要なときに急に募集が出され、採用できたら求人募集はなくなります。そのため公式サイトには載らず、転職エージェントに中途採用募集が出されるのです。

例えば以下では、脳神経外科・循環器科の専門病院にて認定看護師資格を有する看護師の募集が出されています。

大阪にある急性期病院の求人募集ですが、緩和ケアや感染対策、化学療法に関する認定看護師を募集しており、即日からでも採用されることが分かります。

ただ、こうした求人を自ら探すのは現実的ではないため、認定看護師資格を活かして転職したい場合、転職サイトを利用する必要があります。

履歴書の志望動機にて自己PRの書き方を学ぶ

こうして求人票の見つけ方を理解した後は、実際に中途採用募集に申し込むようになります。このときは履歴書を作成し、採用されるように志望動機の書き方を学ばなければいけません。

認定看護師資格を履歴書で活用する場合、志望動機の欄に「認定看護師としてのいままでの取り組みや成果、今後取り組みたいこと」について具体的に書くと効果的なアピールとなります。

そこで認定看護師の志望動機の一例を挙げてみます。

【感染管理認定看護師の志望動機例文】

私は感染管理認定看護師として、前職では医療処置関連サーベイランスを中心に取り組んできました。手術後の抗菌薬の種類や投与方法について、医師・麻酔科医・手術看護師に検討案を伝え、実施した結果、経済効果も含めて改善させることができました。

今後取り組みたいこととしてはさまざまな感染症に関するデータを収集し、治療から現場まで多面的に感染症対策アプローチを行い、患者様だけでなく医療者側も安心して過ごせる場を作っていきたいと考えています。


【緩和ケア認定看護師の志望動機例文】

私は緩和ケア認定看護師として、がんの進行に応じてリンパドレナージュや口腔ケア、緩和ケアなどの呼吸理学療法を実践してきました。また私自身も患者様を受け持ち、他の看護スタッフへ指導したり、相談を受けたりしてまいりました。

今後は貴院の緩和ケア外来にて、患者様やご家族に対して、病気の進行に伴うギアチェンジや治療中断の選択、最期の迎え方などの倫理的問題にも取り組んでいきたいと考えております。

ちなみに履歴書の志望動機欄はそれほど大きくありません。そこで端的に述べましょう。

また志望動機は面接でも必ず聞かれる内容です。面接のとき、具体例を出しながら詳しく述べるといいです。

中には、書きたい内容が多いからといって志望動機欄を小さな文字でぎっしり埋めてしまう人がいます。その場合、採用側からすると「読みづらさを気にしない自分本位な人間」と捉えられてしまう場合が多いです。

志望動機欄は「自分のいままでの取り組みや成果」「今後取り組みたいこと」を簡潔にまとめるように心がけましょう。

求人先での面接対策を行い、認定看護師資格をアピールする

その後、面接へと進むことになります。面接では「自分は具体的どのようにに動き、成果を出していける看護師であるのか」を十分にアピールするように心がけましょう。

まずは、自分が認定看護師として実践してきた仕事内容や成果について書き出してみます。そうして、今後は新しい職場でどのようなことに取り組んでいきたいのかをアピールしましょう。

先ほどの感染管理認定看護師の履歴書の志望動機を踏まえると、例えば以下のような面接になります。

採用面接官:

前職で医療処置関連サーベイランスを中心に取り組んだとありますが、感染管理認定看護師として他にはどのような成果を出したことがあるでしょうか。

あなた:

ほかには、手術部位感染サーベイランスにおいて、下部消化管手術の感染症の改善に取り組みました。外科医と手術室看護師の協力を得て、手術中の予防策を具体的に検討し実施した結果、感染発生率を低減させる結果となりました。

採用担当官:

このとき苦労したことは何ですか。

あなた:

手術中の感染予防策は医師の手技に関わるため、看護師の立場からは指摘しにくかった点に苦労しました。そこで私は手術室看護師に対して、感染予防の必要性を理解してもらうための勉強会を開催し、まずは看護師全体の協力を得ることができました。

そこで次に、手術室看護部長に外科医と話し合う機会をつくっていただき、そこで具体的な検討案を出しました。そうして実施することに成功しました。

採用担当者:

今後の取り組みとしては、具体的にどのようにしていきたいですか。

あなた:

御院は感染症対策に非常に熱心であると聞きました。

そこで例えば、薬剤耐性菌が新規に検出された場合、すぐに患者様のもとへラウンドして、患者様の状態や治療内容を確認したいと思っています。また交差感染防止のために必要な感染対策に対して、看護スタッフへアドバイスを行い、感染被害を最小限にしていきたいと思います。

面接のときに具体的に回答する必要があるからといって、だらだらと話し込んではいけません。30秒から1分間くらいの間に質問内容に答えるように心がけましょう。

履歴書の内容をもとに面接に臨むことになりますが、それまでずっと認定看護師として活躍しているのであれば、いままでの経験や改善点を語るだけなのでそこまで難しくないはずです。そこで、積極的に自己PRするようにしましょう。

認定看護師は中途採用募集を選んで申し込むべき

認定看護師は時間や労力を含めて取得までに非常にハードルの高い資格であり、こうした資格の保有者は特定の分野の専門家として活躍できます。ただ通常だと、一般的な看護師と同じ扱いになってしまうため、転職時は認定看護師資格を評価してくれる医療機関の求人に申し込まなければいけません。

頑張って取得した認定看護師資格であり、いくら履歴書や面接でアピールしたとしても、求人先がその重要性について認識していなければ意味がありません。これが、認定看護師の転職で転職サイトを活用し、資格を評価してくれる中途採用募集を発掘するべき理由です。

そのうえで、あなたが保有する認定看護師資格について「これまでの成果」「今後に取り組みたいこと」などを求人先に伝え、志望動機や自己PRとして積極的にアピールしましょう。

それまで努力して取得した認定看護師資格を活かすには、正しい転職方法を理解しなければいけません。これらを認識したうえで、あなたが保有する認定看護師資格の効果を最大限に発揮できる病院で活躍しましょう。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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