看護師が定年退職したあとに、まず最初に行わなければならない手続きは「失業保険」や「給付金」についてです。

いままで社会保険などの事務手続きはすべて勤め先に任せていたにも関わらず、退職後は自分ひとりで行う必要が出てきます。退職した途端、さまざまな書類を渡されることになるのですが何から手を付けていっていいか分からず、戸惑う人も多いでしょう。

とくに最近では看護師の定年退職年齢が勤め先によって異なっていることが多いため、誰かに得するアドバイスをもらったとしても、そのアドバイスがあなたに該当するとは限りません。

このように定年後の状況はめまぐるしく変わっており、個人個人が「どのような退職の仕方をすれば損をしないで済むのか」について把握しにくくなりました。

手続きのなかには把握しにくいものもあり、その手続き次第によっては損をしてしまうことも出てきます。こちらも自分で判断して、退職後いつくかの選択肢の中から自己責任で選ばなければならないのです。

そこで今回は看護師が知っておいて損はない「定年退職後の失業保険や給付金」について、ひとつずつ確認していきたいと思います。

定年退職した看護師の失業保険の仕組み

定年退職した場合、一定の条件を満たしていれば誰しも失業保険の給付を受け取ることができます。しかし、年齢が65歳以上になると失業保険が高年齢求職者給付金に変わります。まずはそのことについて述べていきます。

65歳以上の退職は失業保険ではなく、高年齢求職者給付金になる

定年退職後は、定年退職といっても失業保険を受給することができます。失業保険は、通常「失業認定」を受けることで4週間に1回ごとに支給されます。

しかし、65歳以上で退職となると失業保険で支給される基本手当に代わり、高齢者版失業保険である「高年齢求職者給付金」といわれる一時金が支給されることになります。

高年齢求職者給付金の受給要件は以下の通りです。

・離職したことにより資格の確認を受けたこと

・働く意思や能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態であること

・離職前の1年間に雇用保険の加入期間が通算して6ケ月以上あること

高年齢求職者給付金は高齢化が進む日本において、生涯現役でいるためにも2017年1月に法改正が行われ、雇用保険の適用範囲が拡大されました。以前は65歳以上になると雇用保険に加入することはできなかったのですが、2017年1月からは雇用保険の新規加入を行えるようになりました。

改正に伴い、以下のようなメリットが得られるようになりました。

・離職しても、上記の受給要件を満たせば何度でも高年齢求職者給付金を受給することができる

・育児休業給付金、介護休業給付金の支給対象となる

・教育訓練給付金の対象となる

また失業保険の場合、基本手当を受給すると年金を受け取ることができません。しかし、高年齢求職者給付金の場合は、年金と一緒に受給することができます。このようなことから、65歳を過ぎても現役で働く環境が徐々に整えられつつあるといえます。

高年齢求職者給付金の支給額は失業保険と同じ

そして、気になる高年齢求職者給付金の支給額について述べていきます。基本的に失業保険の基本手当と同じ金額になります。

高年齢求職者給付金の支給額については、以下に挙げる2つの要素によって決まります。

・失業前の6ケ月間に勤め先から支給されていた給与額

・失業前に雇用保険に加入していた期間(被保険者期間が1年未満か1年以上か)

支給額の計算方法は失業手当の計算式と同じです。失業前の6ケ月間の給与(賞与等は除く)の合計から1日当たりの賃金日数を算出し、その金額に45~80%がかけられます。そして1日あたりの支給額である「基本手当日額」が決定します(2017年6月現在)。

転職を繰り返すと高年齢求職者給付金は何度も支給される

高年齢求職者給付金の支給回数には限りがありません。2017年1月の改正以降、65歳以上でも雇用保険に加入することができるようになったため、失業保険と同様に何度も受け取ることが可能となりました。

従来

65歳以降も同じ病院や施設で勤務するのであれば、雇用保険の被保険者資格が維持できる

ただし、65歳以上で再就職するのであれば、雇用保険に加入することはできない

2017年の改正点】

65歳以上でも新規に雇用保険に加入することができる

新制度において、失業した時点での給付金の支給回数に制限が無くなりました。すなわち、6ケ月以上の勤務期間があれば短期間で何度転職を繰り返したとしても、30~50日分の失業手当は支給される仕組みになったのです。

以前ですと65歳以上になると雇用保険に加入することができなかったことを考えると、今回の改正はかなり大きな特徴といえます。

また嬉しいことに、2019年までは65歳以上の方が再就職をして雇用保険に加入した場合、雇用保険料は免除されます。

さらに、一般的な失業保険の基本手当は数回に分けられて給付されるのに対して、高年齢求職者給付金は一時金で一気に支給されます。一時金で支給というのは、失業認定を一回受けただけで、高年齢求職者給付金が30日分の支給で15万円、50日分の支給で25万円をすぐに受給されるというわけです(仮に基本手当日額が5,000円だとした場合)。まとまったお金がすぐに必要という人には嬉しい仕組みです。

このように65歳以降に再就職を行うと雇用保険の手当の面でさまざまなメリットがあります。

高年齢求職者給付金は給付期間が短い

高年齢求職者給付金の法改正が行われることによって、65歳以上になっても現役で働くメリットが増えたことは確かです。しかし、64歳までが加入できる失業保険と比較すると、高年齢求職者給付金の給付日数は短いのがデメリットだといえます。

高年齢求職者給付金の給付日数について下記に表にしました。

65歳以上
被保険者期間が6ケ月以上1年未満 30日分
被保険者期間が1年以上 50日分

次に一般的に65歳未満の方が退職をする場合の失業保険の給付日数です。被保険者となっていた期間によって90~150日間、基本手当を受けることができます。下記の表を参考にしてください。

65歳未満
被保険者期間が10年未満 90日
被保険者期間が10~20年未満 120日
被保険者期間が20年以上 150日

このように、一般的な失業保険の給付日数と比べて、高年齢求職者給付金は給付日数が短いのが玉にキズだといえます。

65歳の誕生日の前の月で定年退職が有利

いままでお話してきたことから、65歳未満の退職者と65歳以上の退職者ではその仕組みが大きく異なることがお分かりいただけたかと思います。

失業保険と高年齢求職者給付金のメリット・デメリットを考慮して、雇用保険を上手に使う方法は、「65歳になる誕生日の前に定年退職をする」ことです。そうすると「給付日数の長い失業保険を受給できるため得する」といえます。

そのため、できるだけ多くの雇用保険を受給したい方は65歳の誕生日の前に定年退職をすると、得になるといえます。

注意すべきは年齢の計算方法

では「65歳未満で一度退職をしておくほうが失業保険の支給を受けるには得」ということは「65歳の誕生日の前日に退職したらいいだろう」と思う方もいるでしょう。

しかし、実はここに落とし穴があるので注意が必要です。「年齢計算に関する法律」に準じ、「誕生日の前日が次の年齢に達する日」と考えられており、年齢が数えられます

例えば、7月1日に誕生日の人であれば「前日の6月30日に次の年齢になる」とされています。7月1日が誕生日であっても、6月30日に65歳に達することになります。そのため7月1日に誕生日の人が6月30日に退職をした場合は、失業保険の基本手当ではなく、「高年齢求職者給付金」の該当年齢となってしまいます。そうなれば30~50日分の給付しか受給することができません。

それに対し、65歳になる年の6月29日より前に退職した場合は、退職時の年齢が64歳に該当するため、失業保険の基本手当の該当となります。こちらが該当する場合は、90~150日間の失業手当の受給があるのです。支給金額に3倍以上の差が出てしまうことになります。

たった1日の違いで、金額的にも手続き的にも大きな差が生じるため、退職日については勤め先と慎重に検討することが大切です。

退職日は職場に相談することが大切

あともう一点、注意してほしいことがあります。定年が65歳と定められている場合、定年よりも早く退職してしまうと、退職金が大幅に減額される設定をしている病院や施設があるということです。

勤め先の退職金制度を事前に確認し、「定年になる前月に退職しても退職金が変わらないかどうか」について確認してみるとよいでしょう。

また、病院の就業規則によっては、長年働いてきたとしても、65歳の誕生日になる前月の退職だと「自己都合退職」とみなされてしまうこともあります。自己都合退職となると、失業保険や高年齢求職者給付金の差額以上に退職金の金額で大きな差が生じてしまうこともあります。

さらに、自己都合退職になってしまうと、3ケ月の給付制限を受けることになり、すぐには失業手当を受給することができなくなってしまいます。

よく職場と話し合い、退職に関して融通をきかせてくれるかどうかを確認しておくことが大切です。

定年退職は病院都合?自己都合?

自己都合退職であれば、失業認定を受けたとしても3ケ月の給付制限があります。その期間は失業手当を給付してもらえない、待機時期となります。

では定年退職はどうなのでしょうか。その答えとして、定年退職は病院都合となります。

しかし、定年退職の場合となると、何年も前から退職日が決まっており、解雇や閉院のように突然生活の糧を奪われ、生活が困窮するような状況にはありません。解雇や閉院と異なり、定年退職後の生活設計や転職活動はある程度計画を立てることができます。

そのため、失業保険の区分として定年退職は、自己都合退職と同様に一般の退職者の給付日数が適用されることになります。

ただし定年退職はあくまでもあなたの都合による退職ではないため、自己都合退職に適用される3ケ月の給付制限がありません

65歳以上だと老齢厚生年金も一緒に受け取れる

「65歳前に失業保険を受け取ると、年金を受け取れない」と聞いたことがあると不安に思われている方もいるでしょう。確かに、65歳前に失業保険の基本手当を受け取ると年金を受け取ることはできません。

しかし高年齢求職者給付金ですと、老齢厚生年金と高年齢求職者給付金の両方を受け取ることができます

そのため「65歳の前々日までに退職し、失業保険の基本手当を受け取る。その後転職をし、年金との併給調整の必要のない65歳以降に高年齢求職者給付金を受け取るとタイミングが良い」といえるのです。

失業保険と高年齢求職者給付金の上手な受給例

そこで更に詳しく、失業保険と高年齢求職者給付金の両方を上手に貰える具体例について下記に挙げてみます。

・15年勤めた病院を65歳の前々日で定年退職→失業手当の基本手当日額の120日分が支給される

・その後67歳から半年間、施設で勤務し自己都合で退職→高年齢求職者給付金の基本手当日額の30日分が支給される(老齢厚生年金と併用で受給)

・さらに69歳から3年間、別の施設で勤務し自己都合で退職→高年齢求職者給付金の基本手当日額の50日分が支給される(老齢厚生年金と併用で受給)

このように制度をうまく利用して、65歳過ぎても最低で6ケ月以上勤めれば、高年齢求職者給付金は何度でも支給することができるというわけです。

高齢でも転職をすることは可能

以上述べてきました通り、高年齢求職者給付金では半年以上勤めた場合、給付金の受給対象となります。しかもボーナスのように一時金で支給されるため、一気にまとまったお金を手に入れることができます。さらに、6ケ月という短期間で転職を繰り返しても何回でも受給できるという特徴もあります。

先ほどの受給例のように、うまく転職を繰り返すことができれば良いのですが、「高齢になって、何度も自分の条件にあった仕事を見つけられるかどうか」については疑問が残ります。

そこで、ひとつの方法を提案します。それは看護師専門の転職サイトに複数登録する方法です。転職のプロであるコンサルタント(転職エージェント)が、ネットワークを駆使して65歳以上でも受け入れ可能な事業所を探してくれます。

また、厚生労働省による「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)」という制度があります。これは、65歳以上の雇用受け入れをすると求人先には雇用給付金が支払われる仕組みになります。

こちらの条件にあなたが該当するようであれば、あなたに代わって転職コンサルタントが求人先に特定求職者雇用開発助成金の説明を行い、あなたを雇い入れる判断材料のひとつとして上手に活用してくれるでしょう。

こちらの制度を利用すると、採用後に求人先の人件費の負担が少なくてすむため、65歳以上の看護師でも採用しやすくなります。

このように今後は、ますます年齢的に難しいといわれる65歳以上の再雇用のハードルが低くなる可能性が充分に出てきます。あなた一人で就職活動を行うには不安があるという場合は、看護師専門の転職サイトのコンサルタント(転職エージェント)に相談してみるとよいでしょう。

転職サイトでの相談は無料になっているため、コンサルタントの相談だけでも受けてみる価値はあります。

今後の定年退職後は年金だけで生活していくことが難しいと予測されています。楽しく働き生涯現役でいられるよう人生設計を行っておくことが大切といえるでしょう。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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