病院で療養生活や終末期を迎える患者さんにとって、看護師とは家族よりも長く一緒の時間を過ごします。在宅においても終末期の訪問看護師は患者さんにとって大変心強い存在といえるでしょう。

急性期の看護とは異なり、療養や緩和、終末期という領域を選んだ看護師は、「患者さんとじっくりかかわる」ことで看護のやりがいを感じている方が多いです。

この領域で「新たに資格を取得したい」という看護師は、「看取りのときに、もっと安楽で安心した看護をすることができたのではないか」「患者さんを多角的に支え、かかわりを深めていきたい」「患者さんの苦痛に対するコントロールを看護師がもう少し踏み込むことで、安楽な最期を迎えられるのでないか」などといった患者さんを想う強い志をもっています。

つまり、「看護師としての専門性を生かして、何か自分にできることを探したい」という気持ちが強いのです。

そこで今回は、療養や緩和、終末期の看護に携わる看護師が「患者さんの苦痛を少しでも和らげることができる」ことを目的とした資格について解説していきたいと思います。

療養・緩和・終末期の看護師におすすめの資格

療養・緩和・終末期の看護は、患者さんの安楽を第一に考えることが大切です。そのために身につけておきたい知識を習得できる資格についてお話します。

日本褥瘡学会認定師

日本褥瘡学会認定師とは、実際に褥瘡医療に携わる医師、薬剤師、看護師、介護職員、栄養士、理学療法士などの医療従事者が褥瘡に対しての適切な知識や技術の向上、予防を目的とした資格です。

褥瘡とは、寝たきりの患者さんが長期間同じ体勢で過ごしていた場合、ベッドと体の過度の接触が原因で血流障害をおこし、周辺組織が壊死してしまうことをいいます。同一箇所に2時間持続的に圧が加わるだけで褥瘡発生の一因となってしまいます。

褥瘡は仰臥位ですと、ベッドと体の接触面である、仙骨部、頭骨部、肩甲骨部、踵部などにできやすいとされています。悪化すると、組織が欠損したり、皮膚に潰瘍を形成したりするなど、皮膚に穴があいたような皮膚の壊死がみられ治癒まで長期間かかることが多々あります。

高齢化に伴い、医療現場での褥瘡の適切な知識や技術の需要の高まりに応じ、資格取得者は医師や看護師が多くを占めます。

【取得条件】

継続して4年以上、日本褥瘡学会の会員であること

看護師の免許を取得してから、4年以上経っていること

4年以上、褥瘡予防や褥瘡医療・看護に従事していること

5症例の予防記録、5症例の医療記録、2回以上の日本褥瘡学会公認教育セミナーまたは在宅褥瘡セミナーを受講していること

【取得までの流れ】

① 書類審査

申請受付期間:2月~3月の間

審査日:6月末まで

認定審査料:10,000円

② 認定

認定登録料:10,000円

認定期間:5年間

③ 更新

更新審査料:10,000円

更新登録料:10,000円

看護学生のとき、老年看護を教える先生に「患者さんに褥瘡を作ることは看護の恥」という言葉を嫌というほど叩き込まれたのを思い出します。

看護師として褥瘡を予防するためには、褥瘡発生の危険因子を究明する「するどい視野」が必要となってきます。するどい視野とは、患者さんのADL(日常生活諸動作)、身体可動状況、栄養状態、血液バランス、代謝障害、基礎疾患の有無など、患者さんの全体像を捉えたアプローチの仕方を実践することをいいます。

褥瘡に関して「予防や医療の視野を身に付ける」ということは、3割以上が高齢者を占めるこれからの日本社会にとって、患者さんに一番近い存在である看護師としては重要な看護の視点となるでしょう。

日本統合医療学会(IMJ)認定士

統合医療とは、「対症療法」と「原因療法」という二つの療法を統合することによって、両方の療法のメリットを最大限に活用し、患者さん一人ひとりに合わせた包括的医療を提供しようとするものです。この医療を推進するのが日本統合医療学会(IMJ)です。

「対症療法」というのは、いままで近代西洋医学を根本とした考えで、救命救急や外科手術などの臨床の場で使われています。

一方、「原因療法」というのは、伝統医学や相補・代替医療を根本として、単に出現している病だけを診るのではなく、人間の心身全体を診る療法で、慢性疾患の治療や療養、対症療法では治療不可能とされた症状などに有効性が報告されています。

近代医学の貢献を認めつつ、原因療法も相互に用いることで、患者さん中心のこれからの医療の在り方の一つといえるでしょう。

患者さんの入院生活には欠かせない存在である看護師がこの日本統合医療学会認定士を取得することは、包括的にケアする役割の中核を担うものとして期待されています。

【取得条件】

正看護師、もしくは准看護師である場合は3年以上の経験を有すること

1年以上、IMJ正会員であること

IMJが定める単位を25単位取得していること

IMJ本部主催の認定のための教育セミナーに総論・各論ともに1回以上、合計で2回以上出席していること

IMJ学会年次学術大会に1回以上出席していること

【取得までの流れ】

① 講習会

年4回開催 受講料:1日21,600円

② 認定試験(選択式筆記問題)

「統合医療 理論と実践」理論篇・実践篇から出題される

年1回 申請料:20,000円

③ 合格・認定

登録料:10,000円

④ 更新

3年間

更新料:10,000円

前述の伝統医学としては、具体的には、インド伝統医学(アーユルヴェーダなど)、ギリシャ医学(ギリシャ・イスラーム医学など)、中国伝統医学(中医学など)が挙げられます。これらすべてが科学的に証明されているものではありませんが、長年の歴史のなかで経験に基づき多くの人に支持されている医学の一つともいえます。

医療は気候・風土・食べ物・習慣などそれぞれの地域に根差した文化的な側面をもっています。それらが古来より、伝統医学として発展してきました。

このような伝統医学を対症療法と統合することで、より「患者さんの症状に合わせた医療を行なうことができる」とされています。

認知症ケア専門士

認知症ケア専門士とは、日本認知症ケア学会が設立した資格で、認知症ケアに対する「知識・技能・倫理観」を備えた専門技術士の養成を目的としてつくられました。日本における認知症ケアの技術の向上、および保健・福祉に貢献することが期待されています。

試験内容は、認知症ケアの基礎から実践までを網羅した日本認知症ケア学会が出版している「認知症ケア標準テキスト」から出題されます。

【取得条件】

特になし

【取得までの流れ】

① 一次試験(筆記試験)

出願期間:3月中旬~4月中旬

日程:7月上旬

会場:札幌、仙台、幕張、名古屋、京都、小倉

受験料:一分野につき3,000円(四分野あり)

② 二次試験(面接・論述試験)

出願期間:8月中旬~9月中旬

日程:11月後半

会場:札幌、仙台、東京、名古屋、神戸、博多

受験料:8,000円

③ 認定

認定料:15,000円

④ 更新

更新料:10,000円 5年間で所定の講座に参加するなど、30単位の取得が条件となる

この認知症ケア専門士の資格取得を通して「認知症ケア専門士の資格の勉強をして役に立った」「認知症のケアに対してさらに知識を深めていきたい」と更なるステップアップを狙う方は、「認知症ケア上級専門士」という資格もあります。

メンタルケア心理士®

メンタルケア心理士®は、メンタルケア学術学会が開設した資格となります。

医療・福祉・教育・産業・公共サービス等での相談援助や心理カウンセリング、心理療法によるカウンセリング業務従事職やコミュニケーション向上で求められる基礎能力を保有していることを証明できる資格です。

【取得条件】

① メンタルケア学術学会指定教育機関において、メンタルケア心理士®講座の受講を修了した者

② 認定心理士の資格を保有している者

③ 産業カウンセラーの資格を保有している者

④ 文部科学省の定める4年制大学心理学部、学科、もしくは心理隣接学部、学科卒業者

上記のいずれかであること

【取得までの流れ】

① 試験

3月後半(在宅試験となる)

受験料:7,700円

② 認定

認定証書発行手数料:3,600円

患者さんが入院などによるストレスの増加で、うつや不眠症、無気力、食欲低下などになった場合、心理療法の側面から治療に取り組むことができる資格です。

試験では、精神解剖生理学、精神医科学、カウンセリング基本技法などが問われます。

タクティール®ケアIコース認定資格

タクティール®ケアとは、日本スウェーデン研究所が行なう、理論づけされたタッチケアのことです。タクティール®とは、ラテン語の「タクティリス(Taktilis)」から由来した言葉で「触れる」という意味合いをもっています。

マッサージのように相手を押す、揉むなどはせず、手で優しく包み込み10分間触れることでケアする方法です。

1960年代に未熟児ケアを行っていた看護師によって開発された方法です。このタクティール®ケアを受けた未熟児は、体温の安定や体重増加がみられたと報告されています。

現在では乳児から高齢者まで幅広い層でタクティール®ケアが活用されています。

【取得条件】

講演会受講、実習記録の提出をすること

【取得までの流れ】

① 講習会

申し込み・日程:全国各地

2日間 受講料:認定試験料込みで64,800円

② 実習

対象となる者5名に対し、各20回

③ 試験

筆記試験と実技試験の両方がある

④ 認定

認定期間は5年間

⑤ 更新

更新料:2,160円

日本では昔から「手当て」といって、「手を当てることで傷を癒やす」とされるケア方法があります。

私は眼科でオペの外回りに携わったときに、あまりの緊張から日ごろと異なり、血圧が200を超えてしまう術中の患者さんの手の上に優しく自分の手を置いてみました。すると震えていた手が止まり、血圧も低下して通常通りに戻ることが多くありました。

「人が愛情をもって行なうタッチケアは、患者さんに良い効果をもたらすのではないか」と思う経験をすることができました。このようなタッチケアをさらに専門的に学ぶというのも興味深いです。

笑い療法士(3級)

笑い療法士とは、癒しの環境研究会事務局が行なっている資格制度です。患者さんをただ単に笑わせるのではなく、笑いを引き出すことによって、患者さんの自己治癒力を高めてもらうことを目的とした資格です。

病院での療養生活が長い利用者さんや終末期を迎える患者さんはなかなか笑うことができません。しかし笑い療法士がいると、なぜだか笑顔がこぼれてしまう、心温まる笑いを提供することを期待されているのが笑い療法士です。

笑いは患者さんが幸せに生きることを支えることができます。

【取得条件】

講習会の受講・課題研修

【取得までの流れ】

① 書類審査

受付期間:3月~5月初旬まで

手数料:2,000円

② 講習会

日程:8月初旬2日間

会場:日本医科大学教育棟講義室(東京)

受講料:25,000円

③ 課題研修

講習後に出題される課題を実践し、実践報告のフォローアップ論文を9月初旬に提出

④ 認定

認定発表:10月中旬

会場:日本医科大学教育棟大講堂

認定料:10,000円(認定されたのちは、癒しの環境研究会に入会することが必須)

認定期間:2年間

⑤ 更新

更新料:事務手数料のみ2,000円が必要

癒しの環境研究会の活動の一つとして、国内の「癒しの環境」を実践している病院や高齢者施設等を見学するなどを、実施しています。こちらの資格は3級から1級まであります。

音楽療法士

音楽療法とは、音楽を患者さんの心身障害の回復や機能の維持改善、QOL(クオリティオブライフ:生活の質)の向上などに役立てるというものです。

落ち込んだ気持ちでいるときに自分の好きな曲を聴くと、自然と元気が湧いてきます。また音楽に合わせて体を動かすことで気持ちがハツラツとしてきます。音楽療法士は、このように音楽をリハビリの一環として治療に取り入れる仕事を行なう人のことをいいます。

日本音楽療法学会による新認定制度によると、必修講習会を受講したり、学会に参加したりすることで、ポイントが取得可能となり、受験資格が得られるようになりました。

【取得条件】

日本音楽療法学会の正会員であること

臨床経験が5年以上ありそのうち2年以上は音楽を使用していること

音楽療法関連分野(医学・心理・福祉・教育)18単位を取得していること

学会参加を行ない、200ポイント取得していること

【取得までの流れ】

① 申請

学会正会員であること

② 必修講習会や音楽療法関連分野を履修

講習会受講費:240,000円(3,000円×80コマ)

音楽科目試験:10,000円

③ 認定

認定申請費用:10,000円

認定料:30,000円

音楽は常に人間の生活の一部として存在しているものです。その音楽を患者さんの治療に役に立つ方法の一つとして取り入れてみるのも、病棟全体が明るくなって良いのではないでしょうか。

グリーフケア・アドバイザー2級(初級)

グリーフケアとは、「亡くなった人を想う気持ちから、喪失感に心が占有されそうになる状態」と、「この窮地から何とかして立ち直ろうとする状態」の間で揺れ動いている人にさりげなく寄り添い、サポートすることをいいます。

グリーフケア・アドバイザーとは、日本グリーフケア協会がつくった資格で、死別悲嘆の感情を癒やすアプローチ法を身に付け、ケアについての実践法を学び、悲しみのケアの担い手になることを目的としています。

グリーフケア・アドバイザーには、2級のさらに上の資格として、中級である1級、特級である上級があります。

【取得条件】

認定時に日本グリーフケア協会の会員であること

申請時、18歳以上であること

【取得までの流れ】

① 講習会

年2回(春・秋ごろ)

申し込み:5月下旬、11月下旬に日本グリーフケア協会のサイトより発表される

会場:法学館(東京)

講習料:32,400円

② 認定

③ 更新

更新料:無料

近しい人の死の体験からくる苦痛の期間は、誰しも「人生の危機的状況」にあるといえます。

しかしこの時期に、グリーフケアアドバイザーのようなグリーフケアの専門的知識がある人に対処してもらえれば、その人の今後の発想や生き方までも前向きに変えられるようになることがあります。

「どのように傾聴すれば、この人はこの不安定な状況から立ち直ることができるのか」を考えながら遺族の悲しみを傾聴してくれ、さりげなく寄り添ってくれるグリーフケア・アドバイザーのサポートは心強いものといえます。

看護師ならば誰しも一度は経験したことのある「患者さんの死」に対して、残された家族はどのように向き合っていくのか考えることのできる資格といえるでしょう。

専門的資格は患者さんとのかかわりが深まる

療養や緩和、終末期を担当する看護師は、日々、死と近い場面に直面することが多いでしょう。

この領域の看護師は、患者さんと接するなかで「自分ではどうしようもできない」と自分の看護の限界を感じやすいといえます。

と同時に、何もできない状況のなかでさえも「患者さんの苦しみを少しでも和らげることはできないだろうか」とどうにか患者さんの苦痛を緩和させ、なんとかしたいという気持ちをもって看護に臨んでいる看護師がいます。

「何もできない」と諦めることができずに自分の無力さを恨み、苦しんでいる看護師はたくさんいます。

そのようなときに、少しでも患者さんやそのご家族を癒やすことができるような専門的な知識を身に付けることで、患者さんだけでなく、自分自身の苦しみも和らげることができます。

看護師は死に直面した患者さんに対して「何もできない」のではなく、「何かできる」を探してみましょう。その何かが見つかり、あなたがそれを患者さんに行ない喜んでもらえたとき、患者さんは自分に与えられた人生を前向きに受け入れていくことができるのです。

それは「手を握る」でも「笑いを提供する」でも「音楽を聴く」でも「愚痴を受け入れる」でもいいのです。

患者さんの一番近くにいる看護師は「患者さんのもっている力を引き出すことを考えるべきであり、決して諦めないでほしい」と思います。諦めないで看護を行なうことで、あなた自身がこれから切り開いていこうとする「あなたらしい看護の道」にもつながっていきます。

資格取得で知識や技術を深めて、患者さんの癒しと笑顔につなげていってもらえたらと思います。