治験コーディネーターという仕事を経験してみて、「治験という観点で患者さんに関わるよりも、やはり看護師として臨床の場で患者さんと関わっていきたい」と考え直し、治験コーディネーターから臨床看護師に戻る人もいます。

臨床看護師からCRC(治験コーディネーター)への転職に関するサイトは数多く存在し、転職情報は数多く入手することができます。しかし反対に、治験コーディネーターから臨床看護師への転職を考えている人にとっては、参考になるサイトがあまりありません。

そのため、治験コーディネーターを経験してきた自分の強みを今後にどう活かしていけばいいのか分からなかったり、看護師になった後もどのように力を発揮していけばいいのか戸惑っていたりする人が多いのが現状です。

あなたにはせっかく、治験コーディネーターとしての経験があるのです。たとえ臨床看護師に戻ったとしても、治験コーディネーターとしての経験は無駄ではありません。むしろ今後、看護師をしていく上での強みといえるのです。

そこで臨床看護師として働き始めた際、「治験コーディネーターの経験を、臨床の場でどのように活かしていけば良いのか」について今回はお話していきたいと思います。治験コーディネーターの経験がある臨床看護師だからこそ行える、治験を受ける患者さんへのケアについて詳しく見ていきます。

臨床試験・治験での臨床看護の問題点

現在、日本での臨床試験や治験は、看護領域において問題を抱えています。まずはそれらの問題について述べていきます。

治験コーディネーターの業務量は増え、仕事人としての能力も求められている

臨床試験や治験は日々、著しい進歩を繰り返しています。それに伴い、治験コーディネーターの役割も大幅に複雑化し、高度化しています。ひと昔前の治験コーディネーターの仕事量と比べると、現在の治験コーディネーターのほうがはるかに多くの仕事を抱えています。

例えば、治験コーディネーターは、医療の進歩とともに、治験以外にも臨床研究における品質管理、再生医療、ゲノム遺伝子医療、臨床試験の国際化など、幅広い臨床試験に対応しなければならなくなってきました。

治験コーディネーター養成開始の1997年当初であれば、治験コーディネーターの役割は「治験の質の向上への貢献」だけでした。しかし現在、治験コーディネーターは、より多くの知識や能力を必要とし、さまざまな役割を担わなければならなくなっています。

それに伴い、下記のような能力が仕事で必要とされています。

治験コーディネーターが仕事で必要とする能力

・コーディネーション力

・マネジメント力

・コンサルテーション力

・問題発生に対する対応力

・コミュニケーション力

・担当領域に関する知識力

・医療人としてふさわしい行動能力

これらの能力は看護師にも必要です。しかし看護師の場合、単独ではなく一般的にはチームで行動するため、これらの能力の必要性に対して重圧を感じることは少ないです。

一方で治験コーディネーターは、単独で行動することも多く、仕事において多くの能力とそれに伴う責任も求められているのです。

元治験コーディネーターのあなただからこそ、治験コーディネーターが携わる山のような仕事量と各TPO(時と場所、場合に応じて方法や態度などを使い分けること)に合わせた仕事人としての能力の必要性については熟知していることと思います。

治験コーディネーターが携わる仕事は「今でも精一杯である」と思っているにも関わらず、さらに「しなければならない仕事」が後から追いかけてくるような状態が日常です。要領を得て作った空き時間は、さらに新たな業務で埋まるのが日常茶飯事です。

医師や依頼者(製薬会社など)、上司などから要求された仕事を優先し、被験者や被験者の近くで心情や状態を把握している看護師とは十分な意思疎通がとれていないのが現状です。

病棟看護師は、治験の情報を与えられる機会が少ない

一方、「病棟における臨床看護師の治験に対する現状」はどのようなものなのでしょうか。

現在、一部の革新的な医療機関では、臨床看護師への「治験教育プログラム」を開催していたり、看護師が主となり被験者(治験を受ける患者さん)へのI.C(インフォームドコンセント)やデータ収集への貢献をしたりと、看護師の治験への積極的な関わりを促しています。

しかし、まだまだ多くの病院では、患者さんが治験について不安を訴えてきたとしても、治験について詳しい内容を知らされていない看護師がほとんどです。

治験は医師が主導となって行われています。治験を行なう際、看護師には治験の目的や結果など具体的な説明もなく、単に指示された薬剤の投与やバイタルサイン測定を時間通りに行うことしか求められていないのです。

そのため被験者やその家族に治験のことで何か質問されたとしても、「あなたが受けているのは治験なので、私たち看護師にはよくわかりません。治験に関することは、医師に直接お尋ねください」と答えるしかありません。

看護師からこの言葉を聞いた被験者は、治験に対しての不安が増すだけでなく、病棟でたった一人、孤独で辛い治療を選択した状況に身を委ねなければならないのです。これが今の日本における治験の現状なのです。

臨床では積極的に看護師が治験に関われていない

ではなぜ、臨床で看護師は治験に関与できていないのでしょうか。それは「治験におけるチーム医療が最初から成り立っていない」という背景が原因の一つに挙げられます。

患者さんの近くに寄り添い、24時間観察を行えるのは看護師であるにも関わらず、治験を主導する医師や治験コーディネーターから「治験の目的や方法」など必要な情報が提供されていないのです。

なかには「私は看護師にも医師と同じ資料を渡し、協力していた」とする治験コーディネーターもいるでしょう。

しかし、もし資料が提供されていたとしても、他の担当患者さんのケアも行わなければならない看護師がわざわざ時間を割いて、治験のことに詳しく携われるでしょうか。

時間や業務に余裕のない治験コーディネーターが看護師に渡す資料は、看護師向けに作られた「治験について把握できるような情報」になっていないことが多いのです。そのため、看護師は情報をうまく利用できず、治験に積極的に関われていないことが考えられるのです。

さらなる問題点として、看護師に「治験の基礎知識」が教育されていないという点も挙げられます。

新薬開発の流れ(第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相など)やGCP「Good Clinical Practice:医薬品の臨床試験に関する基準」などを看護師も知っておけば、治験は「得体の知れない業務を増やしそうな厄介ごと」ではなくなります。看護師の間で、治験は「今後の医療進歩において必要なこと」という認識が高まれば、看護師の協力が得やすくなるはずです。

また看護師の認識として、もともと治験自体「医師と治験コーディネーターだけの間で行なわれるもの」という認識が一般化しているということも挙げられます。どうしても治験となると、治験コーディネーターは主導となる医師に重きを置いて、看護師は二の次として捉えがちになります。

このような認識を払拭し、医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師などを含め「チーム医療で治験に取りかかることが大切だ」という概念を作っていかなければ、看護師が治験に入り込む隙はできないのが現状です。

CRCの経験を活かした臨床看護師になる

前項で挙げた問題点について、確認していきました。では元治験コーディネーターのあなたは、看護師として臨床でどのような改善を行っていくことが可能なのでしょうか。

治験コーディネーターに出席してもらい情報交換を行う

先ほど臨床看護師が治験に関われていない理由として、「治験に関する情報が提供されていない問題点」を挙げました。

そこで「被験者ケア」について、治験コーディネーターを招いて情報交換やカンファレンスを開くよう病棟に提案してみてはいかがでしょうか。

これは治験コーディネーターの立場と看護師の立場の両方を把握している「元治験コーディネーターのあなた」だからこそ、声を大にして行える提案なのです。

「現場で被験者と接する時間の一番多い看護師に、治験の情報をもっと流してほしい」と治験コーディネーターに訴えることができるのは、治験コーディネーターの仕事も知っている「あなた」しかいません。

看護師用に医師とは別の資料を用意するとなると、一見「仕事が増えて大変になる」と治験コーディネーターに嫌がられることもあるでしょう。

しかし長い目でみると看護師に協力しておけば、治験コーディネーターは被験者の情報収集もしやすくなるし、被験者への対応も取りやすくなるのです。そのメリットについても治験コーディネーターに伝えると良いのです。

もちろん治験が行われる際には、「スタートアップミーティング」なるものを行っている場合もあります。しかし、被験者に関わる看護師全員が参加できているとは限りません。

しかも治験コーディネーター側から主催したミーティングですと、看護師は参加を強制されているように感じ、積極的な意見交換は行えないことが多いです。しかし看護師側から治験の情報交換を依頼したとなると、話は変わってきます。看護師が依頼したミーティングとなると、日頃、疑問や不安に思っていることを質問しやすくなります。

臨床看護師は、疑問に思っている「治験に関する情報」を提供してもらうことができれば、「どのように被験者に関わっていけばいいのか」「被験者にどのような声かけを行い、サポートしていけばいいのか」を知ることができます。

そうなれば看護師は、治験という「治療効果も、安全性も、危険性も、不確実な実験的治療」に参加する患者さんへの看護に積極的に関わることができていくのです。

治験コーディネーターと看護師とが、協働していける環境づくりを行う

治験を行う患者さんは、治験が「ある種の医療的研究」とはいえ、「自分の権利や安全が守られたい」と思うのは当然です。また、治験に参加したからといって「治験の実施により、生活の質(QOL)を低下させたくない」と考えるのも納得いきます。

患者さんの治験を受ける不安を汲み取ったうえで、「患者さんの権利や安全を守り、生活の質が低下しないように苦痛の緩和を図っていくこと」が臨床看護師としての役割となります。そして、治験コーディネーターとしての役割は、治験の専門的知識を患者さんに、分かりやすく説明することになります。

臨床看護師と治験コーディネーターの両輪で患者さんの治験を支えていくことが、患者さんの権利や安全、生活の質の維持につながっていくのです。

例えば、治験を始めるにあたって、最初に患者さんと医師、治験コーディネーターの間でI.C(インフォームドコンセント)が行われる場面があったとします。

治験コーディネーターは医師が行った治験の説明で、分かりにくかったところなど被験者候補の患者さんに補足説明をして「不安を軽減させる役割」を担っています。

しかし患者さんにとって、治験コーディネーターはどちらかというと「治験推進者である」と思われていることが多いです。そのため、「本当は治験に参加したくない」と思っても、治験コーディネーターには自分の本当の気持ちを伝えることが難しい場合があります。

一方で、看護師は毎日顔を合わせている患者さんに近い存在といます。入院に関する不満や病気に対する不安など、患者さんが心を開いて話してくれるのは看護師であることがほとんどです。

この日頃の会話の中で患者さんの価値観や病気の受け入れ具合を引き出しながら、治験を無理強いするのではなく、治験に安心、納得してもらったうえで、意思決定に向けて患者さんを支援していくことが可能なのです。

治験コーディネーターよりも看護師のほうが、患者さんの治験に対する本音を表出させやすく、患者さんの立場を尊重した支援を提供することができるのです。治験コーディネーターは治験を始めるにあたり、患者さんの「不安の軽減」を行い、看護師はさらに不安を「安心」に変えていくよう協働することが可能なのです。

そのためにも、治験コーディネーターから「治験の基礎知識や情報」を看護師にも読みやすく、分かりやすい内容で提供してもらい、治験を病棟に浸透させていくことが大事です。

これは、治験コーディネーターと看護師の両方の立場を把握しているあなただからこそ、声を大にして行える役割といえるでしょう。病棟の看護師と治験コーディネーターの橋渡しを行うのです。

看護師が治験に積極的になった場合のメリット

では実際に看護師が治験に積極的に関わっていくようになれば、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。

被験者の一人ひとりに合わせたセルフケア支援が可能

先ほどもお話しましたが、看護師は他の医療従事者と比べて、患者さんのそばに寄り添える時間が一番長く、患者さんが心情を表出しやすい立場にあります。患者について多くの情報をもっている存在だともいえます。

治験では被験者へのアドヒアランス(患者さんが積極的に治療方針の決定に加わり、治療を受けること)が、試験の有効性や安全性、そして正確なデータ収集に大きく影響を及ぼしています。

近年、被験者が「支持療法薬(副作用を軽減する治療薬)の使用(一般的に治験中は結果が分かりにくくなるため、支持療法薬を使用できない)」や「QOLを尊重したいと訴えること」が多く、短期入院や外来通院で治験を受ける人も増えてきています。

在宅での治験ということもあり、患者さんへのアドヒアランスやセルフケア能力を向上させることが、より重要な事項となります。

このことを踏まえると、治験に看護師が担う仕事が出てくることが分かります。

「被験者に、治験に関わる多くの規定を遵守してもらうこと」「有害事象に対する予防措置をとってもらうこと」「症状出現時に被験者やその家族が適切な対処を行えること」など看護師が中心となってセルフケア支援を行っていかなければなりません。

これは治験コーディネーターひとりでは行えません。被験者の情報があまりに不足しているからです。やはり看護師の役目になるといってもいいでしょう。

被験者にとって、治験を在宅で継続的に実行してもらうためには、「その被験者の生活習慣」「身体的状況」「問題に対するこれまでの対処方法」「在宅におけるサポート状況」「治験に対する思い」などをトータルに考える必要が出てくるのです。

被験者一人ひとりに合わせたセルフケア支援を行っていかなければ、治験は可能にはなりません。

精神的にサポートする全人的なケアが可能となる

被験者にとって、治験は「残された最後の積極的治療」であるともいえます。そのため、被験者は「治験が中止される」ことを恐れ、自分に現れた症状を医師に伝えることを躊躇する場合があります。

このような場合、被験者が本音を表出しやすいのは、やはり看護師なのです。もし看護師に症状を訴えなかったとしても、看護師は被験者の日頃の食事量、睡眠状況、表情、言動といったことから異変をいち早く捉え、察知することが可能なのです。

これらの看護師の強みを活かし、看護師が積極的に関わっていくことができれば、被験者への適切な看護ケアの提供が行え、治験に対しても円滑な遂行が可能となります。

新しい治療やケアを創出する力となる

看護師が治験に関わるということは、看護師もまた治験に関わる医療チームの一員としての医療の進歩に一役果たしていくことになります。

看護師もまた今後同じ病気を患う患者さんの生存期間を延長したり、有害事象の軽減につながる新しい治療方法を確立したりする医療関係者の一人としての役割を担うことになるのです。

また新しい治療方法が確立するということは、新しい有害事象を発生させる危険性を含んでいます。その有害事象に対する新たな看護ケアを作り出すべく、看護師もまた看護ケアに対して臨床試験を計画し、実施する研究者の一人となることも可能となっていくのです。

治験コーディネーターの経験は、あなたの強み

このように、治験コーディネーターの経験をもつあなたは、看護にも治験にも新しい大きな力を吹き込むことが可能なのです。これは、まさしく「あなたの強み」といっていいでしょう。

治験コーディネーターと看護師、お互いがなんとなく距離を置いていた現在の状況に対し、歩み寄り積極的にコミュニケーションが取れるようになるには、あなたという「橋渡し」が必要であるということを覚えておいてください。

今後の治験を変え、被験者の安全と権利を守り、QOLを重視した看護の向上に一役、担っていってもらえたらと思います。


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