日本の正看護師資格を保有している看護師は、おおまかに「大卒」と「専門卒」に分けることができます。

一般的な企業勤めの場合、大卒と専門卒での生涯賃金格差はおよそ3000万円程度で、大卒のほうが高い傾向にあります。転職やキャリアアップ、初任給において、大卒と専門卒では大卒のほうが有利とされています。

では看護師の場合、大卒と専門卒の学歴の違いで、転職やキャリアアップ、給与条件などに有利不利はあるのでしょうか。今回の記事では、大卒と専門卒の看護師の違いを比較して、転職などにどう影響を与えるのかお話ししていきたいと思います。

大卒と専門卒の看護師の違い

まずは大卒と専門卒の看護師では、何が違うのか述べていきます。下図のように看護師になるには様々なルートがあります。

引用:キャリアガーデン

看護学生のときは、「大学を卒業しても専門学校を卒業しても、取得できる免許は同じだから違いはない」といわれた人が多いのではないでしょうか。

確かに、看護師国家資格に合格するという目標をもって看護を学ぶ点においては同じです。しかし、看護系大学と看護専門学校には異なる点があります。

看護大学と看護専門学校の大きな違いは、カリキュラム内容です。それぞれのメリット・デメリットについてみていきます。

・大卒の看護師のメリット・デメリット

大卒のメリット・デメリットについて述べます。

大学では看護を学問として学ぶため、理論中心となります。そのため、大学で学んだ看護師はすぐに現場で役立つ実技習得数が少ないものの、大学は看護専門学校や短大よりも1年長く学べることから、それだけ幅広い知識や教養を身につけられることがメリットになります。

さらに大学であれば、看護師資格のほかにも、保健師や助産師国家試験の受験資格を得ることもできます。

学業については学生に任せており、自由な校風のところが多いです。4年の間に、留学やボランティア、学生交流、勉強会、サークルに参加するなど学生生活を楽しむことができます。

実習は1年生の秋口から4年生の春先くらいまでありますが、本格的な実習は3年次の9~11月、4年次の5~6月の5ケ月間のみです。

そのためデメリットといえば、実習期間が短く、身につけられる看護技術が少ない点と、以下に示すような社会性に乏しい一面が見受けられることがある点です。

私自身、国立大の看護大学を卒業したのですが、自由な校風で、本人の自主性に任せている部分が多々ありました。

例えば、平気で茶髪で実習に参加したり、親しくなった講師に敬語で話していなかったりする学生が一部いました。いま、その人たちは何をしているのかは分かりませんが、それでも単位を取得して卒業していきました。

・専門卒の看護師のメリット・デメリット

次に専門卒の看護師のメリット・デメリットについて話していきます。

看護専門学校では、「看護師になるための知識や技術習得」に特化しているため、実習が多く組み込まれており実技習得が中心となります。

3年制の専門学校では、2年生から3年生の11月くらいまで実習が入っています。4年制の専門学校でも、2年の終わりから4年の夏くらいまで実習がびっしり組み込まれています。

専門学校の場合は、看護師国家試験に100%合格させることを目標としているので、大学よりも教官が厳しく、一定レベルに達しない学生は、すぐに留年や退学処分となります。

1年次に40人クラスで始まったとしても、留年や退学者で2年次には20人弱に減るものの、前の学年から2年次が15人くらい降りてきます。最終的に4年次には当初40人いた学生が、20人弱まで減って卒業式を迎えるということが普通に起こります。

このように専門卒は、学生時代に看護の厳しさに触れているため、接遇やマナーを身につけ、上下関係をわきまえている人が多いのが特徴です。

私が学生の時に実習先の病院で、専門学校の学生と同じ部屋で待機することがありました。私たちが雑談をしているときも、専門学校の学生は静かにテキストを読んでいたり、言われなくても自分たちで進んで掃除をして帰ったりと、専門学生から学ぶことが多くありました。

また専門卒の看護師のほうが、大卒の看護師よりも実技習得数が多いため、同じ医療機関に入職した場合、「専門卒のほうが仕事ができる」と周囲から判断されやすいです。

看護師の転職、大卒と専門卒はどちらが有利?

では次に転職においては、大卒か専門卒のどちらが有利になるのか述べていきます。「専門卒は実践力があり、大卒は幅広い教養を身につけている」という点においては、それぞれ有利不利がありそうです。

しかし転職の際に、大卒か専門卒かで有利不利はありません。

会社に就職するのと同じで、人気のある医療機関や施設には多くの応募者が殺到し、その際に学歴はあまり関係ありません。学歴よりも人物重視です。転職では、その人のもつ人柄や看護観、仕事に対する意欲を重視します。

大卒で身につけられなかった実践力は仕事をすれば、すぐに身についていくものですし、専門卒で身につけられなかった幅広い教養も仕事を通して培われていくものです。

つまり、その人がもつ仕事に対する意欲さえあれば、それぞれの足りない部分はいくらでも補い合えるということです。そのため、転職では学歴を重視していません。

・学歴は第二新卒などで看護キャリアが浅い場合に使える

ただ、第二新卒や、私のように30代で看護師免許を取得した人の場合、転職で学歴を利用することができます。看護キャリアが浅い場合、学歴や職歴の欄に記入する内容が少なく、空白が多く目立ってしまいます。

その場合、大卒・専門卒に関係なく卒業した学校に応じて、あなたの強みを書き出すことができます。

例えば、大卒であれば、大学での専攻や卒業論文のテーマなど自分が身につけた知識や教養について、履歴書に記入するとよいのです。精神科に入職希望の人で、精神看護に関連する卒業論文を書いているのであれば、それはアピールポイントになります。

また大学在学中に海外留学やボランティアなどを経験している場合は、そのことを履歴書に付記しておけば、自分から進んで視野を広げる努力をしていることを伝えられます。

また専門卒の場合は、仕事ですぐに役立つような専門的な技術や知識を身につけてきたことを面接で伝えると好印象を与えることができます。

このように学歴はケースに応じて使い分けることができるので、自分に有利に働くように履歴書などで積極的に利用するようにしましょう。

・留年や中途退学の場合は聞かれるまで触れない

看護系の専門学校では、留年者・中途退学者は多数います。その場合、履歴書や面接などで留年や中途退学について「単位を落としてしまったため留年」などとマイナス要因を自分からあえて触れる必要はありません。

留年について聞かれた場合は、「単位を落としたため留年しましたが、それから一念発起して頑張りました」と前向きに伝えるようにしましょう。

一旦退学した場合は、「一旦は〇〇看護大学を単位が足りず退学いたしましたが、〇〇看護専門学校に再入学し勉強を続けました」と伝えれば、問題ありません。

ただ、「2年次に交通事故に遭遇し1年間休学」「1年次に家庭の事情で一旦退学」などのやむを得ない理由があった場合は、その旨について書き記しておきましょう。休学なら「入学」と「卒業」との間に、退学なら「退学」の下にその理由について一言、書いておきます。

そうすれば採用側は、あなたから納得のいく答えを得ることができます。

大卒と専門卒、給与・昇給率は異なる?

次に、大卒と専門卒の給料の違いについてお話しします。次の表を見てください。こちらは看護職員の平均月額給与です。

引用:日本看護協会「2017年 病院看護実態調査」 結果報告

大卒と専門卒の給与総額を比較すると、大卒の初任給のほうが約7800円多いことがわかります。

そして勤続10年もすれば、大卒か専門卒かの垣根はなくなります。初任給の違いにより多少の差はあるでしょうが、大卒のほうが昇給率が格段に高いということはなく、一律となっています。

ただし、一部の医療機関では大卒と専門卒の給与体系を分けているところがあります。その場合は、大卒か専門卒かによって年収にすると10~20万円の差が出る場合があります。

学歴に応じて差が出やすい医療機関といえば、例えば、都道府県や市区町村などが運営する医療施設などです。そこで働く看護師は、地方公務員となります。公務員の場合、棒給制度を取っているため、大卒か専門卒かで初任給や昇給率が異なってきます。

看護師転職で初任給・昇給率にこだわらなくてもよい

ただ一般の医療機関に転職する場合、学歴による初任給・昇給率にこだわる必要はありません。

転職の際に、大卒か専門卒かは関係なく、「前職でどのような看護知識や技術を身につけてきたのか」で初任給が決定されます。さら昇給率に至っては、「いかに転職先で職務を全うし、自身の能力を発揮したか」が重要視されます

一昔前であれば、看護師の昇給率といえば、年功(年齢や勤続年数など)を採用しており、その職場で歳を重ねるごとに給与は上がっていきました。職務や能力は全く関係ありません。

しかし、年功序列の体系は徐々に崩れつつあります。下の表を見てください。

引用:日本看護協会「2017年 病院看護実態調査」 結果報告より

正職員の基本給の決定に際して、「年功のみ、もしくは年功と能力・職務など多要素との組み合わせ」を採用している医療機関は全体で79.5%となっており、約8割を占めていることがわかります。一見、看護能力や職務は関係なさそうに思えます。

しかし前回2012年の調査と比較すると「年功のみ」の割合が減り、「年功・能力・職務」の組み合わせが増えています。看護業界では徐々に、年功だけでなく、能力や職務などを組み合わせた昇給率に変わりつつあることが分かります。

つまり、専門卒で初任給などでは多少不満があったとしても、その後「どのように看護能力を身につけていくか」や「職務を全うしていくか」によって、いくらでも挽回する機会が設けられているということです。

長く勤め、さらに自分の能力を発揮しながら働いていける看護師であれば、大卒や専門卒といった学歴は関係なく昇給していく医療機関が増えていっています。

そのため、やりがいをもって長く、自分らしく働ける職場を見つけることが今後ますます重要になっていくのです。

大卒のほうがキャリアアップに有利?

では、大卒のほうが看護師長や看護副師長になるには有利なのでしょうか。先に結論からいってしまうと、ほとんどの医療機関では看護師のキャリアアップに学歴は関係ありません。

ただ、勤める医療機関によっては、「師長などの管理職は大卒に限定する」という規定を設けているところがありますが、それはごく一部の医療機関に限ります。

例えば、ある特殊な医療機関では、その医療機関の付属看護大学を卒業して、ずっとそこで働き続けている看護師しか管理職に就けません。

また、私の知り合い(国立大卒)は、40代・50代の看護師が占める地元の中規模病院に30歳で転職し、2~3年程度勤めた後、院長に呼び出されました。そして「初めて雇用した国立大卒の看護師」ということで、33歳でいきなり看護師長に昇格しました。

しかしこれは、レアなケースです。

一般的な医療機関では、大卒よりも専門卒の看護師が半数以上を占めており、専門卒でも師長職に就いている人が数多くいます。ほとんどの医療機関では、「大卒でなければ管理職になれない」という規定は設けられていません。

師長は学歴ではなく、人間力やリーダーシップ力、マネジメント能力が問われる仕事です。

いくら大学で管理職になるための知識や教養を身につけていたとしても、現場で実際に後輩を育成したり、委員会に参加して人を動かしたりして経験を積まなければ、学べないことが多くあります。要は、管理職になるには現場の経験が必要なのです。

そのため、一般的な総合病院では、師長や副師長へとキャリアアップしていこうと思えば、必要なのは学歴ではなく、管理職昇格に必要となる勤続年数と昇進試験・適性検査に合格することです。

この試験や検査に合格すれば、学歴は関係なく、早い人であれば30代前半で師長に昇格することが可能です。

・キャリアアップは本人の努力次第

このようなことから看護師のキャリアアップは、学歴ではなく現場に出てからの本人の努力次第といっても過言ではありません。

私自身、いまの職場に入職して数年で看護副師長にまで昇進しましたが、これは大卒だからというわけではありません。積極的に勉強会などを開いたり、外部の研修で学んだりしているからです。

院長に「あなたは大学を卒業しているから副師長にする」といわれたことはありません。副師長に任命されたときは、「一生懸命働き、学び得ようとする姿勢をもっているから」と評価されました。決して学歴が出世に有利に働いたのではありません。

ただ、「社会人経験を経て、30代でせっかく看護系の国立大学で学んだのだから、もっと自分の能力を発揮していきたい」という強い思いは自分の中で持ち続けています。

そして、結果として学歴が評価されるのは、転職時ではなく、仕事をし始めてからです。

仕事で自分の能力を発揮して初めて、「あの人は大卒だから知識をもっている」「あの人は専門卒だから技術に長けている」といわれるようになるのです。

ちなみに、もし勤め先の医療機関が「キャリアアップの際は大卒を優遇する」というのであれば、働きながら1年間で放送大学や通信制大学で必要な単位を取得し、大卒になることは可能です。通信での大卒資格を職場が認めないとするのであれば、転職を考えるとよいでしょう。

学歴にこだわり続けるのではなく、現場で看護を学び、そして働き続ける姿勢がキャリアアップには大切です。

学歴を活かすも殺すも、あなた次第

学歴を活かすことができるのか、そのままデメリットが強調されたまま終わってしまうのかは、これからあなたが行う転職活動にかかっています。

あなたに合った職場で働くことができれば、うまく学歴を活かすことができるでしょうし、あなたに合わない職場に勤めることになれば、せっかくの学歴は埋もれてしまうことになるでしょう。

自分に合った職場かどうかは転職時にはなかなか把握できません。そのようなときは、転職のプロである転職サイトを上手に利用することが成功の近道になります。

複数の転職サイトに登録をして、その中から自分に合った転職コンサルタント(転職エージェント)を見つけ、あなたにとってぴったりの求人を紹介してもらいましょう。そのほうが満足いく転職を手に入れることができます。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

派遣看護師として転職する

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