「私はもともと高齢者が好きだから、転職するなら高齢者介護施設で働きたい」「病院で勤務するよりも、高齢者ケア施設のほうがプライベートを大事にできそう」などと簡単に考え、高齢者介護施設に転職を考えている人がいます。

しかし、「高齢者が好き」「プライベートを大事にできそう」といったイメージだけで高齢者介護施設に転職をしてしまっては、入職したあとで「このような職場ではなかった」と後悔することが多くなります。

自分が描いていた理想と現実のギャップが大きければ大きいほど、その職場での不満が高まり、再度転職を考えてしまうことになります。できれば、今回を人生最後の転職にしたいものです。

そのためには、まず転職する前に高齢者ケア施設における現状を知り、看護師の労働環境の実態について把握することが大切です。

この記事では一般的な高齢者ケア施設の労働環境についてお話します。あなた自身「希望する施設は、どのようなところであれば良し」とするのか、一考してみるとよいでしょう。

高齢者ケア施設の労働環境とは

高齢者ケア施設で働いている看護師の労働環境の実態について述べていきます。

高齢者ケア施設での看護師のキャリアアップは可能?

高齢者ケア施設で働く看護師のキャリアアップは可能です。

高齢者ケア施設には、看護師のほかにも、介護職員、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの機能訓練指導員が在籍しています。介護職員が施設長になることもあります。

キャリアアップを狙ううえで病院と異なるのは、「看護師どうしだけでキャリアアップを競うのではなく、他職種も看護師と同様にキャリアアップを図ることができる」という点です。

では、実際にどの程度の看護師が高齢者ケア施設でのキャリアアップを実現できているのでしょうか。高齢者ケア施設における看護職員の職位は次の通りです。(日本看護協会による「平成24年度高齢者ケア施設で働く看護職員の実態調査」、本記事内の以下の回答も同様)

スタッフ… 47.3%

中間管理職(師長・主任)… 34.1%

管理職(看護部長)… 13.2%

施設長… 2.3%

このように高齢者ケア施設で働く看護職員は、中間管理職以上の役職に就いて勤務している人が、49.6%と半数を占めていることが分かります。

高齢者ケア施設で勤務する看護師は、介護・看護ケアの提供だけでなく、人材を管理するマネジメント能力も求められていることになります。

高齢者ケア施設の看護師の年代と経験は?

高齢者ケア施設に勤める看護師の約80%の方が40代以上です。さらに看護師としての経験も20年以上ある人が約70%を占めています。

高齢者ケア施設は、「介護が中心であるため、あまり看護技術は必要ない」といったイメージをもたれている人もいるかもしれませんが、実際は、40代以上で、看護師経験の豊富なベテランの看護師がかなり在籍しているということになります。

もちろん転職サイトの求人欄を見てみると、高齢者ケア施設では「未経験OK」のところが多いでしょう。「看護師免許を所有している=高齢者ケア施設で働ける資格をもっている」ことになります。

ただし、高齢者ケア施設での勤務が未経験であるのと看護師経験が少ないというのは別物です。

高齢者の場合、多くの利用者が複数の疾患をもっており、高齢者の病態に関する知識が必要となります。「高齢者の病態について詳しくない」と思われた方は、あらかじめ勉強し、知識を得ておくことが大切です。

高齢者ケア施設での有給休暇日数と取得率は?

高齢者ケア施設では、有給休暇の平均日数は22.7日です。対して、高齢者ケア施設の看護師が実際に取得した有給休暇日数は「10日未満が49.3%」で、「平均取得日数は7.1日」です。また反対に有給取得率が0日との回答も約10%の施設でみられています。

施設別の平均取得日数でいうと、介護老人保健施設で7.0日、特別養護老人ホームで7.6日、グループホームで5.5日でした。

高齢者ケア施設での有給休暇取得率は平均すると31.6%ですが、多くを占めるのが有給休暇取得率25%未満の方で、有給休暇取得率0%も5.5%となっています。

これは看護師全体の有給平均取得率46.0%と比べてみても、高齢者ケア施設のほうが「有給取得率が低い」ことが分かります。

特別養護老人ホームに勤務する私の看護師の友人に上記の内容を知らせると、以下のようにいっていました。

「確かにウチみたいに看護師の常勤が1人しかいないと交替してくれる看護師がいないから、よっぽどのことが無い限り、休めないよ。ぎりぎりの人数でやっているから、休まないことが当たり前になっているね。お嫁さんがついに分娩というときも、本当は病院に付添ってあげたかったんだけど、休ませてもらえなかったのよ」

このように、高齢者ケア施設では、「有給休暇を一般の病院と同じだけ取得できる」と思って入職していても、実際は思ったように有給休暇を取得できないことも多々あるようです。

転職時は意気込んで、「有給休暇は取得できなくても、希望する高齢者ケア施設に入職できればいい」と考える人もいます。しかし、働けば働くほど、有給休暇が消化できないことに不満を感じてくるのが人間というものです。あなたが目指すのは、満足する職場で長く働くことです。

できれば転職する前に、希望する施設の有給休暇の取得率について知っておきたいものです。

夜勤はどのような状況?

次に、高齢者ケア施設での看護師の勤務体制や夜勤の状況について述べていきます。

高齢者ケア施設での看護師は、全体では60.8%の方が夜勤勤務を行っています。夜勤勤務の中でも、もっとも多い勤務体制は「二交代制」です。夜勤一回あたりの平均勤務時間は16.1時間となっています。

勤務の拘束時間が長いと、それだけ「ヒヤリハットの発生率」と関係があるといわれています。いままで夜勤に慣れていない方などで、いきなり夜勤のある高齢者ケア施設での転職を希望しているのであれば、この点に注意する必要があります。

私も夜勤をした経験があります。朝方、体は無理やり起こしておくことができるのですが、頭はぼーっとして集中できません。このような状態が続いていると、「いつヒヤリハットだけでなく、重大な事故を起こしてもおかしくないな」と思った経験があります。

夜勤に自信が無い場合、高齢者ケア施設であれば、日勤だけの勤務も可能なところがあります。調べてみるとよいでしょう。

夜勤中に利用者に問題が発生したら、医師が対応してくれる?

夜勤中に利用者に何か問題が発生した場合、医師の連絡体制については、「電話での指示のみ」との回答が35.4%、「特に対応する体制にない」との回答が10.1%となっています。

この結果からすると、高齢者ケア施設では、唯一医療職である看護師に判断が委ねられることが分かります。病院などの医療機関に勤める看護師は、すぐに同じ看護職員や医師を呼び対応することが可能ですが、高齢者ケア施設ではそうはいきません。

さらに「必要時には医師が診察する体制にある」と回答した42.0%の看護師も、実際に医師に連絡を行うタイミングや、医師や他の医療職がいない中でのケアの提供や応急処置、利用者本人やそのご家族、介護職への説明、医師への報告といった、いつくもの対応を求められています。

このように高齢者ケア施設の看護師は、長時間の夜勤勤務の中で、利用者の安心した生活の基盤作るとともに、家族や他職種との調整、病院であれば本来医師が行うべき対応など、限られた人数の中で実施しているのだということが分かります。

病院でのオンコール対応との違いは?

高齢者ケア施設においては、夜勤は介護職のスタッフのみで行なう場合があります。もしそのようなときに、入居者の急変などがあれば、看護師が介護スタッフに対処の仕方を教えます。

電話口で、利用者の急変時の様子を聞き取り、その状態に応じて観察項目やケアの方法を伝えます。状態が悪いと判断した場合は、救急車の手配をする指示を出すなどします。

これが医療機関である病院のオンコール対応との違いです。

ちなみにオンコール体制を取っている高齢者ケア施設は全体の38.7%で、そのなかで自分自身もオンコール業務に従事していると回答した人は76.1%でした。

一ヶ月のオンコールに従事した平均日数は6.9日となっています。しかし、月に12日以上のオンコール業務に携わったという人も13.6%います。

実際オンコール業務に携わり、自宅で待機中に電話連絡が入った件数は、平均すると月1.3回となっています。対応に費やした時間は、1回あたり平均11分程度となっています。しかし中には、電話口で21分以上の対応をしたとする回答も10%程度あります。

また電話対応だけでは間に合わず、実際に呼び出しがかかり施設に赴くことになった回数は、平均すると月0.5回です。

「オンコール業務を行う上で、何を一番に負担に感じるのか」という質問では、「連絡や呼び出しがあるかと思うと、精神的・身体的に休まらない」とする回答が39.0%、「行動に制約が生じる」とする回答が23.5%となっています。

私の友人もオンコール業務を行う日は、「仕事で疲れて帰ってきても、ビールを飲んでゆっくり過ごすことができない」ため、大変ストレスに感じるといっていました。

オンコール手当の金額はどのくらい?

このような精神的・身体的不安があったり、行動に制約が生じたりするオンコールです。では、高齢者ケア施設のオンコール手当というのはどの程度の金額になるのでしょうか。

オンコールの支払い方法は、「1晩当たりに応じて」支払われると回答した人が54.1%、「対応時間に応じて申告する」と回答した人が44.5%となっています。後者であれば、オンコールの待機中でも、対応しなければお金が支払われないことになります。

また、「1晩オンコールに従事する」場合の平均金額は1,420円、「対応時間を申告する」場合の1時間当たりの平均金額は1,873円となっています。

さらに、オンコール業務を看護師に従事させているにもかかわらず、「オンコール手当自体が支払われていない」との回答が31.2%となっています。

このように精神的・身体的負担の大きいオンコール業務ですが、約3割の高齢者ケア施設ではオンコール手当が支払われていないという現状があることを念頭にいれておくとよいでしょう。

今の高齢者ケア施設の看護師として満足している?

仕事の満足度ですが、「満足している」「とても満足している」「やや満足している」の合計割合が49.8%と約半数を占めています。

これらの満足度の合計割合を施設別でみてみると、介護老人保健施設で47.4%、特別養護老人ホームで56.2%、グループホームで70.8%でした。グループホームで勤務する看護師のほうが満足度が高いことが分かります。

では反対に、「いまの高齢ケア施設を辞めたいと考えているか」という質問には、「辞めたいと思う(「いつも思う」と「時々思う」の合計)」人は、全体で62.0%となっています。

こちらも施設別で合計割合をみると、介護老人保健施設で63.4%、特別養護老人ホームで58.7%、グループホームで41.5%でした。

「高齢者ケア施設を辞めたい」と思う原因としては次の通りです。

・人間関係が良くない

・思うような看護ができない

・キャリアアップができない

高齢者ケア施設は、病院のように「内科」「外科」「整形外科」「心臓外科」「心療内科」…といったさまざまな部署がありません。そのため、スタッフの部署異動がよほどのことが無ければ、ありません。

人間関係の悪い施設だとしても、「ずっと耐えて仕事をするしか選択肢がない」といったこともあります。

また高齢者ケア施設で勤務する看護職のキャリアアップの実態については、病院のように明確な評価基準がない施設がほとんどでしょう。「なにをどのように達成していけば、キャリアアップができるのか」といった査定や評価の仕組みが職場で作られていないと、目標を明確に定めることができないでしょう。

施設内外の研修に参加できる?

たまには施設外に足を運び、新しい看護知識や技術を取り入れ仕事に役立てたいと考える人もいるでしょう。

高齢者ケア施設に勤務する看護師が、「施設外での看護研修に参加した」とする割合は69.8%で、参加回数は年に「2~4回未満」が44.2%と一番多くなっています。平均参加回数は年に2.8回となっています。

一方で、「施設外の研修に参加しなかった」とする人は28.0%です。参加しなかった理由は「仕事や家庭のことが忙しかった」が43.2%、「希望する研究内容が無かった」が33.1%となっています。

では施設内の研修というのは開催されているのでしょうか。自施設や同じ法人グループ内での看護研修が「あった」人が82.5%で、その研修に実際に「参加した人」が91.6%です。これらの研修に参加した平均回数は年4.6回です。

医療機関での勉強会に比べるとはるかに少ない開催件数ですが、高齢者ケア施設でも、研修自体はなんらかの形で行われていることが伺えます。

さらに、これらの研修に参加している人のほうが、前項での「仕事に満足している」と考えている人の割合が高いという関連結果が出ています。

確かに積極的に研修に参加する人ほど、一般的には「仕事熱心である」と捉えることができます。

しかし、一概に「研修に参加できない=仕事熱心ではない、仕事に満足していない」ということにはなりません。研修に参加できない背景として、「高齢者ケア施設での看護師の人手不足や多忙のために、研修にやむ負えず参加できなかった人が約半数もいる」という現状があるからです。

もし入職後、仕事のために研修会に参加できないようであっても、自分が関心をもったことに関しては、必ず勉強をして日々スキルアップを図っていくように努力すると、少しずつですが自信に変わっていきます。

高齢者ケア施設は課題が満載

このようにいろいろお話をしてきましたが、高齢者ケア施設での看護師の勤務を、「介護分野だから精神的には楽そう」「看護技術が要らなそう」「プライベートを大事にできそう」といったイメージだけで決めてしまってはいけないことが分かります。

高齢者ケア施設の看護師は、決して精神的に楽な仕事ではなく、看護技術を必要とし、人手不足のために多忙であることが多いのです。

高齢者ケア施設に勤務する看護師は、精神的・肉体的負担の大きいオンコール体制とその貧弱な手当の実態、仕事に満足していない人の多さ、研修への不参加度の高さなど、まだまだ改善が必要な労働環境の真っただ中にいるといえます。

さらに、少ない人員のなかで、介護スタッフと連携・協働しながら、ケアの最大の効果を発揮していくマネジメント能力まで求められています。

高齢者ケア施設は利用者にとって、大切な生活の場です。この中で看護師は、任せられる裁量の範囲が広く、看護の力量が試される一方、大変やりがいのある社会的にも重要な役割を担っているといえます。

まだまだ高齢者ケア施設は課題が満載で、いろいろ改善していくべき点が多いのが実状です。

これらの課題を把握したうえで、「どの高齢者ケア施設が自分にとって働きやすいのだろうか」「どのような条件ならば充実して働くことが可能だろうか」ということを考え、新しい職場探しを行うことが大切です。

そうすれば、きっと、理想と現実のギャップの少ない満足する職場が現れてくることでしょう。


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