看護師10年目といえば、中堅看護師として経験豊富で、ベテランの領域に達しています。自分の実力を試してみたいとして、看護師10年目を人生の節目と考えて、転職を行う人がいます。

しかし、充分なキャリアがあるにもかかわらず、希望するような転職を実現できないことがあります。なぜ、看護スキルも知識も豊富なのに、満足する転職を実現できないのでしょうか。

そこで今回は「看護師10年目でキャリアがあるにもかかわらず、転職が難しい場合の原因とその解決方法」について述べていきます。

10年目の看護師が転職時に求められる能力

まず、10年目の看護師が転職する場合に、採用側に求められるものについてお話ししていきます。「採用側が求めるもの」をもっていなければ、当然ですが、満足いく転職は難しくなります。

10年目の看護師に求められるのはリーダーシップ能力

新卒看護師と10年目の看護師では、転職時に求められるものが異なります。

新卒看護師であれば、その人の伸びしろ・将来性・勤勉性などが採用基準です。一方で、10年目の看護師であれば、伸びしろや将来性、勤勉性はもちろんのこと、看護スキルや知識、さらにはリーダーシップ能力が求められるのです。

10年目の看護師であれば、ある程度の看護スキルや知識を備えている方がほとんどです。それでも思ったような転職ができないのは、リーダーシップ能力をうまくアピールできていない場合が非常に多いからです。

リーダーシップ能力とは直訳すれば、指導力のことです。それをさらに詳しく説明すれば「チームの目標を達成するために、メンバーに対して行使する対人的な影響力」を指します。すなわち、トップとしてチーム全体を見渡し、メンバー一人ひとりが最大限の力を発揮できるように人を動かしていく能力のことです。

しかし、このリーダーシップ能力を勘違いしている看護師がいます。

看護師10年目ともなればチームのリーダーを任されることがあります。勉強会や講習会の役員を任命されたこともあるでしょう。また、リーダーという役に就いていなくても、チームや患者さんの抱える問題解決のために、自らが先陣をきって動いたことがあるかもしれません。

そのような働きを実行していても、「自分はリーダーとして特に目立つような働きをしてこなかった。前任の行っていた仕事を事務的に引き継いだだけだ」と考えます。つまり、自分には「リーダーシップをアピールできるような実績は無い」と勘違いするのです。

しかし、それは間違いです。あなたにもリーダーシップ能力はあるのです。

・誰にでもリーダーシップ能力はある

リーダーシップといわれて、真っ先に思いつくのはどのような人物でしょうか。一般的にリーダーシップ能力がある人といえば、次に示すような人物だと考えられます。

【性格】

  • はっきりとした価値観・看護観をもち、善悪をわきまえている
  • 勇敢で、理想のためには自己犠牲をいとわない

【行動】

  • みんなから賞賛を受けるような模範を示す
  • 現状から逃げずに、勇気をもって大胆な策を実行する
  • 明確な目標を示し、理想を貫くために実際に行動に移す
  • 全体の利益のためには、自分の利益を犠牲にする

【行動の結果】

  • 勇気や献身といった教訓を同僚や後輩に与え、重要な価値観を残す
  • 改革や変革を起こす
  • みんなから賞賛され、感謝される

まさに看護師のドラマや漫画の主人公のような人物です。例えば、「横暴な医師に対して物おじせず立ち向かい、賞賛を浴びる看護師」といったところでしょうか。

「このような人物はドラマや漫画の中だけの話。実際にそのようなリーダーシップなど取れるはずがない」と思う人が大半でしょう。しかし、そのような行動をとれる人が「リーダーシップ能力に優れている」というわけではありません。

実際、職場でチームのトップであるリーダーが何らかの問題に直面したときにとる行動とは、どのようなものでしょうか。

理想を掲げて、問題解決に向けて直接対決を挑むことはほとんどありません。自分の評判やキャリアなどを守りながら時間をかけ、少しずつ問題解決を行っていくのが一般的です。

問題に対して「こうあるべきだ!」と能動的に対処するようなドラマのリーダーシップ像とは異なり、実際には現実の問題にどう向き合えばいいのかじっくり検討しながら、リーダーは対処していくことがほとんどです。では実際の場面で、リーダーシップをとる人とはどのようなタイプなのでしょうか。

・実際のリーダーシップ能力とは

「実際にリーダーシップ能力を備えている人」とは以下のような人を指します。

【性格】

  • 自制心がある
  • 謙虚である
  • 波風を立てることを嫌う
  • 慎重に物事を進められる
  • 現実的に物事を考えられる
  • 粘り強い一面がある

【行動】

  • 現実を冷静に理解している
  • 時間を上手に使うことができる
  • 規則を曲げられるよう、創意工夫を凝らす
  • 引きと押しを巧みに使い分ける
  • 利害関係者に根回しができる
  • 表には出ず、裏で立ち回る
  • 探りを入れながら、少しずつ行動・言動範囲を広げていく
  • 名よりも実をとる

【行動の結果】

  • 自分の評判やキャリアを下げることなく、バランスを取りながら問題に対処する

実はこのようなリーダーシップ能力は誰でも発揮しているのです。看護の仕事をしている限り、問題は日常的にいつでもどこでも起きています。問題とは、人間関係や労使関係、患者さんへのケア方法など実にさまざまです。

これらの問題に「対処しよう」と具体的に動くことこそが、実はリーダーシップ能力を発揮していることになるのです。

次に事例を交えて、具体例を2つ紹介します。

事例1:【看護師の給与アップに関する交渉】

Aさんが看護副師長を務める医療機関では、患者さんのニーズを満たすだけの看護師数が不足していました。そのため、そこで働く看護師は常に過剰な仕事を任されており、疲弊する様子がみられました。

特に、「育児や介護で夜勤回数を減らした看護師の補充分を、他の看護師で担っている現状」の問題が見受けられました。疲弊困憊となった看護師の退職が相次ぎ、Aさんは退職予定の看護師の面接を行い、悩みを聞くことにしました。

すると、数名の看護師から「労働に見合った給与額であれば、ある程度は我慢できる」という意見を聞くことができました。

そこでAさんは、近隣の同じ規模の医療機関の給与額を調べ、院長や事務長に「同じくらいの給与水準に上げてほしい」と交渉にいきました。しかし院長から「いまでもなんとかやりくりできているのだから、現状の給与で我慢してほしい」といわれ、話は並行線をたどりました。


病棟に戻ったAさんは、病棟の看護師の負担をまとめてみました。そこで「看護師間での夜勤回数の不公平感が増していること」「労働対価が見合っていないこと」「過重労働をさせていること」に問題があることが分かりました。

給与をアップさせることは病院経営上、非常に大きな負担であるとは分かっていました。しかし、Aさんは「このままの給与額では、育ててきた看護師が退職する経営的リスクのほうが大きい」と考えました。

そこでAさんは、以前のように直接「給与を上げてほしい」と訴えることは控え、「院長はどのような話であれば興味をもつのか」を考えました。

他の事務員から「院長は経営者視点での具体的な数値に対して興味をもちやすい」ということを教えてもらったAさんは、経営会議に出席させてもらうことにしました。

その会議で、Aさんは過去5年間の自院と近隣医療機関の看護師数の増減をグラフ化し、その違いを明らかにしました。また、看護師の退職者を減らし、増員させることでもたらされる診療報酬上の費用対効果のシミュレーションも行いました。

Aさんの話を聞いていた院長や事務長から「現場の看護師の人員不足の状況について」の質問が上がるようになりました。そこでAさんは「給与額について改めて検討するべき」という主張を行いました。

会議終了後、Aさんはその足で組合幹部のもとに行き、「今回の会議により、あと一押しで給与が上がる」ことを伝えました。そして、組合からも給与アップの要求が上がるように仕向けることに成功しました。

Aさんのように行動すれば、院長や事務長が納得したうえで給与を上げることができます。しかし十分な説明がないまま、ただ「労働対価に見合っていないから給与を上げてほしい」といわれても、経営側は納得いきません。

Aさんは裏方として、両者が納得できるような立ち回りを担うことに成功したのです。

次に病棟でのリーダーシップ能力についての例を挙げます。

事例2:【暴力行為のあるターミナル患者への対応

大腸がんのターミナル期にある女性患者Bさんが、看護師に対して常に不満を訴えていました。その患者さんは看護師に対して、罵倒するのはもちろんのこと、ときには暴力行為も行っていました。Bさんは独身で、面会に訪れる家族や友人がいませんでした。

Bさん担当の看護師はみな、Bさんへの嫌悪感や恐怖感をも抱いていると同時に、十分に看護ケアを行えない後ろめたさも感じ、悩みを抱えていました。

「ターミナル期における死の不安や恐怖、孤独からBさんは暴力的になっているのだ」と捉え、看護師たちは我慢するしかありませんでした。主治医もさじを投げている状態で「亡くなるまでの辛抱だから」と声にするほどでした。


このような暴力行為を繰り返すような患者さんの場合、一般的には患者さんの病状が安定しているようであれば、強制退院となります。しかし、Bさんはターミナル期であるため、強制退院が行えません。

Bさんに対して、C看護師は何とかならないかと悩んでいました。

C看護師もまた他の看護師と同様に「できることなら自分もBさんをできるだけ敬遠したい」という思いがありました。しかし、「24時間四六時中、怒鳴り続けられる患者さんはいない」と思い直し、あえてBさんのベッドサイドに何度も訪れるようにしました。

C看護師が何をしてもBさんは罵声を浴びせ、ときには食器を投げつけることもありました。その中でもC看護師は、輸液のチェックを行ったり、布団を整えたりと、Bさんのために何か一つ、どのような小さなケアでも良いので実行してから退室するように心がけました。

C看護師はBさんのもとを訪れられないときは、他の看護師に「できれば、小さなケア一つでいいので行ってほしい」と伝えました。

あるとき、Bさんが眠っているときに入室したC看護師は、Bさんの手の上に自分の手を重ねました。ふと目を覚ましたBさんは、一瞬怪訝そうな表情をしましたが、C看護師に罵声を浴びせることはなく、C看護師にされるがままでした。

いまが良い機会だと考えたC看護師は、やさしく「どこか辛いところはないですか。一番気になっていることは何でしょうか」とBさんに話しかけました。すると、Bさんは「余命宣告をされて、心が折れた。早く死にたいけれど、いつかは分からない、その日が怖い」と自分の悩みや不安を語り始めました。

ナースステーションに戻ったC看護師は、ミーティングでそのことを他の看護師に報告しました。それからBさんへのケアは他の看護師でも行うことができるようになりました。

Bさんは最期、窓の外の景色をみながらC看護師に「夕日って奇麗だったんだね。C看護師さん、気づかせてくれてありがとね」といいました。

この事例を読むと、「上記の事例は自分の仕事の体験談をアレンジされたのではないか」と思った人もいるのではないでしょうか。看護師の仕事を長年行っていれば、上記のようなことは日常的にみられる光景であり、目標を達成するために発揮したリーダーシップ能力なのです。

自分のもつリーダーシップ能力に気づく

ドラマの主人公のような恰好良さはありませんが、このように立ち回れる人もまた、目立たず、騒がず、静かに、しかし確実に目標を達成するために動いているリーダーといえます。

このようなリーダーは、あなたのイメージするリーダー像とは異なるかもしれません。

しかし、誰が見ても優秀で、自分を犠牲にしてまでチームの目標を達成するリーダーだけがリーダーシップをとって活躍しているわけではありません。例で挙げたようなリーダーもまた、チームの目標を達成するために、裏で静かに、一歩ずつ着実に努力していることが分かります。

このようなリーダーシップ能力を発揮する人は、いまの時代に突然出現したわけではありません。いつの時代でも場所を問わず存在していました。ただ、「このように立ち回るタイプの人をリーダーシップ能力がある」と認識していなかっただけなのです。

静かに着実に人の心を動かしていく人もリーダーシップ能力があるといえます。目標を達成するために、周囲に影響を与えているからです。上の例でいえば、C看護師は、患者さんへのケアを通して周囲の看護師を動かすことに成功しています。

実際のリーダーシップが取れる人というのは、問題が起きている状況を冷静に理解し、自分の限界を知りながらも、じっくり時間をつかって協力者を見極め、徐々に目標を達成していきます。

もちろん、リーダーとして必要な交渉力・想像力・企画力といった能力や、粘り強さ・柔軟さ・チャレンジ精神なども目標を達成するためには求められます。

そして、どこにでもみられるリーダーシップ能力だとしても、誰にでもできることではありません。やはり10年程度の経験を積んだ看護師だからこそ、発揮できるリーダーシップ能力です。

このリーダーシップ能力を発揮するには、経験学習が必要なのです。

看護師としての経験が10年程度ある、あなた自身もまた自分の仕事を思い返すことで、このようなリーダーシップを発揮しているのではないでしょうか。

転職時には具体的なエピソードを交える

実は以上のようなエピソードを転職時にアピールすればいいのです。目標を達成するために、人を動かしたことがあるとすれば、それはあなたのリーダーシップとしての能力なのです。

このようなリーダーシップ能力をもっている人は、仕事での問題発生時に、円滑に問題解決に向けて立ち回ることができます。具体的にどのように動けば、誰も傷つくことなく問題解決が図れるかについて知っているのです。

このようなリーダーシップ能力は、病院組織において大変重宝される能力です。あなたがそのような能力をもっていると分かれば、採用側はあなたのことを必要な人材だと認識するはずです。ぜひ、試してみると良いでしょう。

キャリアを活かして満足いく転職を

新卒看護師とあなたの異なる点は、看護師10年というキャリアです。看護師歴10年となると、やはりリーダーシップ能力についてはアピールしたいものです。

いままであなたが行ってきた看護を思い返して、周囲を動かしてきたエピソードがあれば、それを面接の場で語りましょう。

リーダーシップ能力をどのようにアピールできるかで、希望する病院への採用が近づきます。看護師10年のキャリアを活かすも殺すもあなた次第なのです。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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