眼科看護師への転職について、「患者さんの移乗などの肉体労働が少なく、仕事の負担が軽い」「内科のように患者さんから感染症をうつされにくく、元気に働ける」などと考えて、安易に転職を望む看護師がいます。
確かに眼科で働く看護師には良い一面があります。ただ、眼科クリニックが特別に楽というわけではなく、中途採用で働くにしてもそれなりに大変な面があるため、仕事内容について正しく理解しなければいけません。つまり、デメリットについて学ぶ必要があるのです。
また眼科クリニックとはいっても、医療機関によって提供できる医療内容は大きく異なります。当然、それに応じて志望動機・自己PRを変えなければいけませんし、収入面でも大きく違ってくるようになります。
そこで眼科クリニックの中途採用へ応募するとき、転職時にどのような点に注意して求人を見ればいいのか解説していきます。
もくじ
仕事内容から見極める眼科看護師の仕事内容
まず眼科看護師の仕事内容について、どのような医療形態の違いがあるのか理解しなければ、転職先の求人を正しく判断することができません。このとき、眼科には大きく分けて以下の3つに形態が分かれます。
- 外来のみ
- 手術あり
- 入院あり
それぞれの眼科については、まったく仕事内容が異なります。そこで、これらを分けて述べていきます。
外来診療・コンタクトメインのクリニックは未経験でも可能
外来診療のみであれば、目の検査や診療の補助をする看護業務が中心となります。イメージしやすいのが目の検査であり、視力検査や眼圧測定などを実施します。
またメガネやコンタクトレンズで視力を矯正する患者さんのサポートも行います。コンタクトレンズの取り扱い方、コンタクトレンズ使用による目のケアなどについてアドバイスをするのも看護師です。
眼科クリニックの中で多い形態が、こうした外来診療のみのクリニックです。特にオペをすることはなく、重労働もなく、看護師としては来院してくる患者さんに対して説明や検査を実施するのがメインの仕事になります。
例えば、以下の東京にある眼科クリニックがこれに該当します。
よくある普通の眼科クリニックであり、このような中途採用の看護師募集が出されています。こうした眼科医院の場合、特に難しい看護ケアを要求されるわけではないため、基本的にはどこも「未経験・ブランクでも問題ない」となります。
なお当然ながら、採血や点滴、注射などの作業は他の科と比較すると少ないです。眼科で行う点滴といえば、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性などの蛍光眼底造影検査が多いです。散瞳後、腕の静脈に造影剤を注入し、眼底の血管に流れる蛍光を撮影する検査です。
オペ室・手術ありの眼科クリニック求人も多い
また眼科クリニックの場合、オペ室があって手術をするケースもあります。緑内障や白内障はメインの疾患になりますが、その他の眼科疾患を含めて日帰り手術を実施するのです。
そうしたとき、看護師は手術の術前術後の説明を行い、患者さんや家族へ生活上の注意点を話します。目の手術なので「5分程度で終わる白内障の手術」であっても、不安な患者さんが多いのが現状です。その不安を取り除く説明は欠かせません。
またオペ室がある場合、医師に必要な手術器具を必要時に手渡します。術中にバイタルの確認をしたり、必要に応じて降圧薬なども点滴ルートから注入したりします。例えば中途採用募集であれば、東京から出された以下の手術メイン求人がこれに該当します。
常勤看護師を求めている募集ですが、月60件以上を行う手術介助や準備がメインの仕事になります。もちろん患者さんへの説明や視力検査などは実施するものの、オペ室での仕事も行うというわけです。
当然、外来だけの場合に比べるとやるべき仕事が多くなります。ただオペ室があるので、外来だけの仕事よりも高度なスキルや知識を身に付けられるようになります。
入院を行う眼科病院であらゆる手術・処置を学べる
他には眼科クリニックに限らず、入院施設が整っている大きな規模の眼科病院も存在します。数は少なくなりますが、日帰りではなく入院が必要な患者さんに対しても医療を提供できるようになります。
こうした眼科病院だと、緑内障や白内障、レーシックなどの手術は当然として、硝子体手術などで入院が必要になる患者さんも広く受け入れるようになります。
例えば、以下は福岡にある眼科病院の看護師求人になります。
年間5,000件の手術を行う眼科病院であり、目の疾患を抱えた多くの患者さんを受け入れていると分かります。もちろん手術には緑内障や白内障なども含まれていますが、「オペ室にて手術に関わる看護」に広く携われるようになります。
また目の手術を行うと、片目もしくは両目が一時的に見えない状態になり、生活に不都合を生じます。そのため食事や歩行といった日常の何気ない動作にもさりげない介助をして、事故やストレスを減らす役割が看護師にあります。
肉体労働がほぼなく、生死に関わらないメリット
こうした仕事内容の違いを認識し、眼科クリニック(または眼科病院)の中でも、どのような形態の眼科に転職したいのか先に見極めなければいけません。
そうしたとき、眼科に勤務する看護師に共通するメリットがあります。これについて、一番のメリットは「肉体労働から解放される」ことがあります。
病棟看護師であれば入院した患者さんの移乗・介助やおむつ交換、全身清拭など様々な面で力仕事・汚れ仕事を行うケースが多いです。例えば以下は、病院にあるリハビリテーションセンターでの様子です。
こうした力仕事は病院勤務の看護師だと日常茶飯事です。
一方で眼科の場合、こうした介助はありません。また入院があったとしても、身体はいたって健康な患者さんがほとんどのためある程度自立しています。そのため毎日入浴介助、おむつ交換、ベッド移乗などで「なんとなく腰が痛い」と思っていた看護師であっても、眼科看護師になってからは腰痛がなくなるのは普通です。
また力仕事が少なく、体への負担が楽になるだけではありません。基本的に眼科では、命に関わる治療に従事することがありません。
患者さんは目の疾患や矯正で来院するため、「関与した患者さんの容態が急変した」という事態に陥ることはありません。そのため生死に関わるという、看護師にありがちな精神的なプレッシャーを受けるケースが少なくて済みます。
病院にて夜勤があったとしても楽
ちなみに眼科については、入院施設がある場合は夜勤が当然ながら発生します。ただ眼科病院での夜勤については、その他の病院に比べると圧倒的に楽です。
眼科に入院する患者さんについて、基本的に身体は健康であると先ほど解説しました。そのため夜にナースコールが鳴り響くことは少なく、一般の病棟よりは夜勤がかなり楽であるといえます。
そうしたことから、たとえ夜勤があったとしても「雑誌を読んだり仮眠を取ったりして、後は簡単な片付けだけしていると、気づけば仕事終了の時間がきていた」などは珍しくありません。
もちろん中には、手術後に興奮して寝られなくなる患者さんもいます。ただこうした患者さんが頻繁にナースコールをすることはないため、そこまで大きな問題にはなりません。
看護スキルや技術は活かせない
一方で眼科は専門的すぎて、いままで一般の科で培った看護スキルや技術を活かせません。また反対に、眼科看護師で培ったスキルや技術を一般病棟で活かすことは難しいです。
私についても、過去6ヵ月ほど眼科看護師として勤務したことがあります。その後は内科看護師になりましたが、眼科で習得した知識や技術は活かすことができませんでした。「眼科から来た看護師」となると、新しい職場で即戦力とは思われないのです。
眼科は専門的なスキルや技術を習得できますが、「将来的に眼科看護師以外の仕事をしてみたい」と考えている方は眼科に進まないほうがいいです。
また、これまで様々な科で経験があったとしても、他の科での知識が眼科で役に立たないことから、眼科クリニックへ転職する場合はゼロから覚えることが山のようにあります。各検査の手順や器械の使い方なども最初から覚えていくと考えましょう。
手術を行う眼科クリニックであれば、それぞれの手術器具の名前や器械の取り扱い方、手術手順なども覚えなければなりません。確かに肉体労働は少なく未経験・ブランクありでも申し込み可能ですが、こうしたデメリットがあることは事前に把握しておきましょう。
眼科看護師の給与・年収は一般的
そうしたとき、眼科で勤務する看護師の収入はどれくらいになるのでしょうか。これについて、眼科看護師は他の科と比較すると、基本給が特に高いわけではありません。他のクリニックと比べてみても一般的な水準です。
基本給は20~25万円ほどが基本であり、これに資格手当や通勤手当が付きます。また手術があれば手術介助手当、夜勤があれば夜勤手当などが付与されます。
例えば、以下は大阪にある眼科クリニックの常勤看護師の募集です。
この求人だと、月収は24万5,000円です。これに住宅手当や通勤手当などが加わります。また基本的に鳴ることはないものの、オンコール手当も付与されるようになります。看護師転職のクリニック求人でよく見る中途募集ですが、眼科クリニックだとこのような給与体系となります。
なお眼科病院で夜勤がある場合、夜勤手当が加わるので年収はより高くなります。
レーシックなど自費治療メインだと収入は高い
ただ場合によっては、眼科クリニックであっても高収入を実現できるケースもあります。これには、自費治療がメインの眼科クリニックが該当します。
美容外科を含め、自費治療メインの医療機関は高めの給料になっている場合が多いです。これはレーシックなど自費治療を積極的に採用している眼科クリニックも同様なのです。例えば、以下は東京にあるレーシック手術がメインの眼科クリニックです。
緑内障や白内障など一般治療も実施するものの、基本はレーシック専門というわけです。こうした眼科クリニックで常勤看護師を募集していますが、給料は高めに設定されています。
以下は実際に出されている「先ほどと同じ求人での給料」です。
このように正看護師だと、基本給に各種手当が加わって月の収入は35万円です。これに通勤手当が全額支給されます。
ただ自費治療メインのクリニックの場合に多いのですが、賞与(ボーナス)についてはあなたの業績が大きく関わるようになります。つまり営業をする必要があり、そうしたインセンティブによって年収が大きく変動することは理解しましょう。
パート・アルバイト(非常勤)の時給は普通または高め
ちなみに眼科の常勤ではなく、パート・アルバイトの非常勤については、眼科看護師の時給は普通または高めです。
例えば東京だと、時給1,700円ほどになるのが一般的です。ただ眼科で働く看護師だと、探せば時給2,000円に近い求人を見つけることができます。例えば、以下は東京にて募集しているパート・アルバイトの非常勤求人です。
行う仕事内容は「採血・注射・診療介助」であり、オペはありません。そうした眼科クリニックのパート求人ですが、時給1,900円と高めです。
もちろん田舎の地域になると、時給相場はこれよりも低くなります。ただ地方であっても、東京や大阪と同じように「通常よりも時給相場の高い非常勤求人」を見つけられるのが看護師の眼科求人です。
履歴書・面接で採用される志望動機を考える
なお実際に眼科クリニックの中途採用へ応募することを考えたとき、志望動機を考えなければいけません。退職理由や自己PRを含めた志望動機については、履歴書や面接で必ず聞かれる項目の一つであり、事前に考えておく必要があります。
そこで、なぜ眼科クリニックや眼科病院への転職を考えたのか説明できるようにしましょう。もちろん「肉体労働がなさそうだから」「前職の職場環境がきつかったから」などの転職理由では不採用になります。そうではなく、眼科クリニックを目指した明確な理由を述べなければいけません。
ただ自分が置かれている状況や目指したいことを志望動機にするのは問題ありません。例えば、次のようになります。
子供の関係で日勤のみの仕事へ転職を考えましたが、その中でも専門性を磨ける貴院を志望しました。前職では病院勤務を行い、その中で「手術に対して不安に思っている患者様をケアし、丁寧な説明をすることで感謝される」ことにやりがいを感じていました。 そうしたとき目の手術には不安をもつ方が特に多く、看護師の役割が大きくなります。そのため日勤のクリニックでありながら手術件数の多い貴院であれば、病院看護師として経験を活かしながらも継続して活躍できると考えています。 |
単に「夜勤ありが嫌だから転職した」という志望動機だと、かなり微妙な内容になってしまいます。ただ、子供の関係でどうしても日勤のみでなければならず、さらに転職先の特色を含めた志望動機に設定したことでプラス思考の志望動機となっています。
このようにして志望動機を考え、眼科クリニックや眼科病院で働くときの自己PRや退職理由を履歴書・面接にて述べるようにしましょう。
看護師で中途採用募集の選択肢になる眼科医院
クリニックや病院勤務の看護師の中には、眼科を志望する人もいます。眼科は未経験・ブランクありでも問題ないケースが多く、幅広く看護師を受け入れている中途採用募集になります。
ただ眼科クリニックや眼科病院とはいっても、「外来のみ」「手術あり」「入院あり」によって行う業務がまったく違ってきます。特に入院ありの場合、眼科ではあっても夜勤が必要になってきます。また他の科でのスキルが役に立たず、最初から覚えなおさなければいけません。
しかし肉体労働は非常に少ないですし、多くは日勤のみの仕事になります。また夜勤があったとしても、他の科に比べると非常に楽なのが眼科看護師です。
目の検査やコンタクトレンズに限らず、眼科クリニックでは仕事内容が幅広いため、どのような眼科で勤務したいのか事前に考えるようにしましょう。その後、看護師として希望する眼科クリニックや眼科病院へ転職するといいです。
求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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