看護師をしていると、「保健師の仕事のほうが給料は安定し、時間内に勤務が終わり、夜勤や体力仕事も無い」と考えることがあります。そのため運よく求人があれば、看護師から保健師へ転職したいと考える人は多いです。

ただ保健師は人気求人のため、募集があっても採用までのハードルが高いだけでなく、準備している間にすぐに求人募集が終わってしまう可能性があります。そのためすぐに行動に移して、チャンスをつかまなければいけません。

看護師から保健師になるには転職に有利な情報を事前に集め、条件の合った求人募集があれば、すぐに準備を整えて応募できるようにしておくことが採用の秘訣になります。

そこで、看護師から保健師へ転職を希望する場合の就職方法から、履歴書の志望動機の書き方、採用面接までの転職のステップについて重要なポイントを解説していきたいと思います。

看護師から保健師になるには?転職方法は複数ある

なお保健師になるためには、保健師資格を保有している必要がると一般的に考えられています。私であれば保健師資格を持っており、以下のようなものになります。

ただ実際には、保健師資格がなかったとしても問題なく保健師として活躍できるケースがあります。つまり、大学・専門学校などに編入・入学し直して勉強する必要はありません。これは、保健師だと就職先が多種多様だからです。

看護師が転職を考える場合、病院やクリニックなどが一般的です。一方、保健師の就職先としては以下のように様々です。

  • 都道府県や市区町村の保健師(行政保健師)
  • 産業保健師
  • 学校の保健室の先生
  • 社会福祉協議会の保健師
  • 病院の保健師

看護師に比べて、保健師のほうが働く場はさまざまなことが分かります。もちろんそれぞれ応募先によって、転職方法には違いがあります。そこで、一つずつ解説していきたいと思います。

都道府県・市区町村の保健師求人は広報で確認

看護師が都道府県や市区町村の保健師(行政保健師)を希望するのであれば、年に1回開催される採用試験を受ける必要があります。これは公務員として地方自治体の職員になることが前提となっているからです。

当然、大学を出たばかりの新卒や中途採用を含め同じ試験となっています。看護師としての経験があっても就職試験で優遇されることはありません。採用後は、新卒と同様の給与体系から始まります。例えば、以下は東京都の保健師募集要項(東京都職員1類B)です。

受験申込書などの書類を出すのが6~8月となっています。

都道府県や市区町村の保健師に応募する場合、注意する点があります。それは公務員試験であるため、一般教養や専門知識の試験があることです。つまり、専門の試験対策をするために勉強を頑張らなければいけません。

例えば以下は、東京都の保健師の試験問題の一例です。

引用:特別区職員採用試験 試験問題

このような試験問題の対策をするために、事前に勉強する必要があります。

一次試験(一般教養などの筆記試験や専門知識の試験、小論文など)に通過したら、面接などの二次試験(口述試験)を受けることができます。これらすべてが終わるのが、11月の終わりくらいになります。以下のように、試験日は公式サイトで発表されます。

また勤め始めるのは新卒も中途採用も同じ翌年の4月1日からとなります。さらにはこうした行政だと、年齢制限があり多くは30歳までとなります。

こうした一般的な公務員試験を受ける必要があり、さらには募集時期や就職開始時期も明確に決まっているため、非常にハードルが高いです。そのため看護師から保健師を目指すとき、都道府県や市区町村などの行政保健師を考える人はほとんどいません。

産業保健師の求人は転職サイトの利用が必須

一方で保健師のなかでも人気の高いのが産業保健師です。都道府県や市区町村の保健師は年齢や経験に応じて一定の昇給となりますが、産業保健師は能力に応じて給料が上がっていくケースが多く、やりがいを感じられる環境になっています。

しかも先ほどの行政保健師と異なり、「30代や40代の年齢で保健師未経験」でも看護師としての経験を優遇してくれる求人先があるため、看護師から保健師になるには最も働きやすい環境にあるといえます。例えば、以下は大阪にある産業保健師の求人案内です。

必須条件に看護師資格はもちろん、看護師としての臨床経験1年以上としています。中には臨床経験が3年以上の産業保健師求人もあり、行政保健師よりも産業保健師のほうが看護師としての経験を重視する傾向にあります。

なお保健師資格は必須でないため、保健師資格がなかったとしても問題なく申し込みできます。

産業保健師の求人の探し方ですが、転職サイトの利用なしには、あなたが求める「待遇がよく優良な労働条件の整った求人」に巡り合えることは、ほぼありません。

また看護経験を優遇してくれる産業保健師求人であれば、転職サイトの担当者が年収や勤務条件などをすべて交渉してくれます。面接時での個人的な給料交渉は難しいため、転職のプロである転職サイトのコンサルタントに条件面の相談をしてみるとよいでしょう。

看護師から学校保健室の先生になる

保健師の場合、学校の先生(養護教諭)という選択肢もあります。看護師から保健室の先生になる方法には注意すべきポイントがあります。それは、私立学校か公立学校かによって応募方法が異なるという点です。

公立学校であれば、主体は都道府県か市区町村になるため、保健室の先生となる場合は公務員になります。行政保健師と同様に、募集要項の確認は市区町村のサイトか広報誌などからになります。そのため、看護師から公立学校の保健師を目指す人は、ほぼいません。

一方で、私立学校の保健師求人は転職サイトや学校のサイトに募集が出ます。また、年齢制限を設けていないケースが多いです。このとき養護教諭の資格が無くても、看護師資格さえあれば応募が可能な求人もあります。例えば、以下は栃木県にある私立の認定こども園での保健室求人です。

養護教諭か看護師の資格のどちらかで応募可能となっています。このような保健室の求人があるので、養護教諭の資格をもっていない看護師も保健室の先生の求人を探してみるとよいでしょう。

ただ、学校サイトから保健師求人の有無を確認するのは大変な作業です。また求人が出ても、すぐに埋まってしまい応募のタイミングを逃してしまう可能性もあります。このような理由から産業保健師と同様に、看護師から保健室の先生になるには転職サイトを利用して就職活動を行うようにしましょう

例えば以下は横浜にある、「幼稚園から小学校、中学校、高等学校、大学までを一貫してもつ私立学校の学校保健師」の求人であり、転職サイトからの求人募集となっています。

もともと学校の保健室の先生に関する求人は、ほぼ出回ることがありません。かなりのレア求人になるため、情報網を張り巡らせておきましょう。

社会福祉協議会の保健師求人は保健師資格なしの未経験・経験なしで可能

他にも保健師の求人はあります。例えば、社会福祉協議会です。社会福祉協議会と聞くと「公務員扱いになる」と考える方がいるかもしれません。しかし、社会福祉協議会は営利企業ではなく、高い公益性を保った民間法人に位置付けられています。

そのため、社会福祉協議会の保健師求人は、転職サイトに掲載されることが多いです。例えば、以下は転職サイトにある名古屋の社会福祉協議会の保健師求人になります。

社会福祉協議会の保健師は主に、地域包括支援センターでの勤務となります。そこでは、高齢者虐待の相談など健康・福祉・介護といった総合的な面から高齢者をサポートする仕事を担当します。

社会福祉協議会の保健師は基本的に土日が休みであり、保健師資格ではなく、看護師の資格だけでも構わないケースが多いです。社会福祉協議会なので職場環境が整っているところが多く、以下のように福利厚生などの手当が整っているのが特徴です。

一般的に退職金支給は勤続年数3~5年以上とするところが多いのですが、多くの社会福祉協議会は1年以上の勤務で退職金が出るところがほとんどです。産休や育休、子育て中の時短勤務なども取得しやすく、働きやすい職場が整えられています。

病棟で看護師をしていると、どうしても子育て中は仕事と家庭の両立を難しいと感じる場面に遭遇することが多いです。しかし、社会福祉協議会の保健師求人のように労働環境が整えられている職場であれば働きやすく、長く続けやすい職場であるといえます。

ただ、このような未経験で保健師資格なしでも可能な求人は他の人も探しています。そのため、社会福祉協議会の保健師に興味をもったのであれば、転職サイトの担当者に求人が出たらすぐに教えてほしい旨を伝えておくと良いでしょう。

病院の保健師求人は看護師よりも待遇が良い

さらに、病院でも保健師の求人を出していることがあります。病院といえば、「夜勤や残業が多く、看護師と同じような働き方になる」と考えて敬遠する人が多いです。ただ、保健師での応募となれば労働環境は全く異なります。

看護師資格とは別に保健師資格は必要であるものの、看護師経験があれば保健師未経験でも求人へ応募できるのです。例えば、以下のような千葉県にある病院の保健師求人がこれに該当します。

病棟勤務とはなっていますが、日曜日や祝日は休日であり日勤のみの働き方ができるため、子育て中の家庭をもっている方も勤務できます。

病院での保健師業務といえば、各種健康診断に対応したり、特定健診や特定保健指導を担当したりするのが主な仕事です。元気な方を対象としているため、車いすへの移乗や入浴介助、オムツ交換などの体力仕事がありません。

また病院で行われる健康診断や人間ドックは、以下のように予約制になっているケースがほとんどです。

そのため、看護師のときのように「緊急で入院が入ってしまい、急きょ残業になった」「患者さんの容態が急変し、帰れなくなった」という事態が起こりません。病院内での保健師業務であれば、定時で帰れるケースがほとんどです。

また看護師から保健師へ転職希望の人だと、看護師としての経験を活かすことができるので採用時に優遇される場合が多いです。そこで病院での保健師業務に興味をもったのであれば、良い求人が出次第、すぐに応募できる状況を整えておきましょう。

履歴書の志望動機・自己PRは看護師経験を活かす

なお看護師から保健師へ転職する場合、まずは書類選考となるため、履歴書を提出しなければなりません。その際に重要なのは、履歴書の中でも特に志望動機や自己PRになります。

志望動機の書き方ですが、「自分はどのような保健師になりたいか」といった目標だけでなく、保健師未経験であっても「いままでの看護師の経験をどのように保健師に活かせるのか」といった内容まで加えておくと、あなたならではのアピールを実現することができます。

例えば、以下のような志望動機に仕上げるとよいでしょう。看護師から産業保健師への転職のケースになります。

私はK病院の内科で5年間看護師として勤務してきました。働き盛り世代のうつ病や生活習慣病の改善に関わり、行動変容を促す看護を実践してきました。PDCAモデルを駆使し、患者様により効果的な方法を提案することを得意としています。

今後はより専門的に保健活動を担いたいと考え、御社に応募させていただきました。御社ではがん治療を続けながら働く人や、うつ病からの職場復帰を果たした方々が多く在籍していると聞き、感銘を受けました。

これまで内科で培った専門看護を活かし、働きやすい労働環境を形成していく一助になっていきたいと考えています。

志望動機には、その会社で「どのように保健活動を実践しているのか」の具体例などを織り込みつつ、看護師経験をもつ自分を採用することで得られるメリットについてもアピールしています。

志望動機を作成するにあたって、「希望する企業では保健師はどのように活躍していて、どのような成果を出しているのか」をしっかり下調べしておくといいです。そのための情報については、応募企業の公式サイトや転職サイトの担当者から詳しい内容を把握しておきましょう。

志望動機を完成させたら、何度も読み直して「求人先ならではの転職理由になっているかどうか」を確認しましょう。どこの求人先にでも通用する志望動機・自己PRではなく、中途採用を出している求人先にのみ通用する転職理由である必要があります。

看護師の経験を活かすことを考えるべき

参考までに、保健師求人の中には「医療機関での看護師経験のある人を歓迎する」と記した求人があります。例えば、静岡県にある大手自動車部品メーカーから出された以下の産業保健師求人がこれに該当します。

医療機関等での看護師の業務経験を有しているほうが、新卒の保健師で就職希望の人よりも歓迎されます。そのため未経験・経験なしだからといって、保健師を目指すことについてためらわなくても問題ありません。

それでは、なぜ採用側は保健師求人であるのに看護師経験を重視しているのでしょうか。それは、「保健師は未経験であっても、いままで看護師としての経験や修得した知識により、保健師としても主体的に仕事をこなしていける」と見込んでいるからです。

主体的とは「誰かに指摘される前に仕事を見つけ出し、自分の判断に基づいて行動を起こしていくこと」を指します。

看護師は患者さんを観察して、異常を早期発見したり、予防的にアドバイスをしたりします。人手不足の職場の中で、これらの業務を的確にこなしてきた看護師だからこそ、保健師となったときに力を発揮していけるのです。

保健師希望なら転職サイト利用は必須

ただ看護師から保健師へ転職希望であるなら、転職サイトの利用は必須です。一般企業へ転職する際は基本的にハローワーク経由ではなく、転職エージェント経由で応募するのが当たり前となっています。

特に産業保健師など大企業の求人はハローワークには出回らないケースが多く、転職サイト経由が大前提です。

ただ、転職サイトはどこでもいいわけではありません。全国規模で展開している口コミ・評判のよい転職サイトでなければ、保健師自体の求人がありません。

大手でも保健師求人は案件が少ないので、3社以上には登録をするようにしましょう。できるだけ選択肢を多くしなければ、保健師未経験の状態から保健師を目指すのは難しくなります。

なお転職サイトを利用すれば、仕事内容や新人研修の有無、離職率など、求人先内部の詳細についても教えてくれます。転職サイトを利用して、満足いく転職ができるように最善を尽くしましょう。

看護師から保健師になるには情報収集を大切にする

看護師から保健師になるには、なによりも情報収集が大切です。保健師の求人数は、看護師と比べると数が少ないです。そのため、できるだけ多くの求人情報を集め、あなたの条件に沿った転職先を選択しなければなりません。

ただ看護師とは異なり、保健師では求人の業態が幅広いです。その中でも公務員になるための勉強・試験が必要な保健師は排除するにしても、その他の保健師の中で何を目指したいのか事前に考えるようにしましょう。それらをもとに、転職サイトの担当者に希望を伝えるといいです。

しかし、事前の対策はかなり練らなければいけません。保健師は看護師と比較して離職率が低く、多くの保健師にとって長く勤められる職場が多いです。そのため競争の激しい求人でもあります。

そこで早めに準備を行い、中途採用を出している求人のみ通用する転職理由を考え、あなたの望む転職を実現できるように行動するといいです。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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