「看護師はまだまだ人手不足といわれているので、面接で落ちることはないだろう」と考え、何の面接対策も行わない看護師が多くいます。
しかし中途採用面接を受けると、不採用が続く人がいます。売り手市場であるはずの看護師求人にも関わらず、連続して不採用となってしまうのです。ただ落ち込んで自信のない態度を採用側に示せば示すほど、ますます面接には受かりにくくなります。
そこで自己分析を行うことで長所や短所を明確にし、退職理由をしっかり考え、事前に聞かれることや逆質問を想定しておくなど対策を進めておきましょう。
転職の場面において、緊張して何も話せなくなるのは準備不足が理由として大きいです。そこで対策をするべきですが、どのようなことを聞かれ、経歴や長所・短所についてどう自己PRすればいいのか解説していきます。
もくじ
事前準備により、経歴の自己紹介や受け答えでの緊張をなくす
ほとんどの人が面接で緊張してしまいます。そのため自分の経歴について自己紹介がうまくできなかったり、聞かれたことに回答できなかったりします。
これについて、一番の原因は事前準備です。前もって面接対策を行えていないため、結果として伝えたいことを伝えられなくなるのです。そうしたとき、以下の2つについては事前に取り組んでおきましょう。
- 経歴や自己紹介などを含め、志望動機・自己PRを考える
- 長所・短所を理解し、病院について調べておく
それぞれについて、どのように考えればいいのかより深く解説していきます。
経歴や自己紹介などを含め、志望動機・自己PRを考える
面接であるため、すべての人で聞かれるのが志望動機です。自己PRでもありますが、それまでの経歴や自己紹介を含め、なぜその病院やクリニックへ転職しようと考えたのか述べなければいけません。
面接の定番質問のなかでも、志望動機は面接選考の中核を占める質問です。この応募理由について、採用側の本音は以下の通りです。
採用側の本音: 看護師として採用されれば、どこの病院でもいいのではないか。仕事に対して基本的な理解はできているか。 |
その病院でなければ実現できない看護について、具体的な理由を明確に説明することが大切です。自分の経歴をもとに、希望する病院での面接で伝えるべき内容や具体的なポイントをまとめておきましょう。
例えば、面接では志望動機としては以下のようになります。
御院の看護師の仕事内容として、外来における医師の診療の補助だけでなく、医師が行う訪問診療に看護師が同行できる点に魅力を感じました。 私の祖母は地元で訪問診療を受け、在宅で安心して余生を過ごすことができました。家族も病院ではなく、家で看取ることができて幸せだったといっております。 御院は地域において積極的に訪問診療をおこなっており、在宅で患者様が安心して過ごせる基盤を作っていることに大変感銘を受けております。私も御院の外来業務や訪問診療に携わることで、患者様やそのご家族と深く関わり、在宅での患者様の生活を支える一助となりたいと強く思い、応募させていただきました。 |
これら志望理由を事前に考えておく作業は必須だといえます。それまでの経歴や簡単な自己紹介まで含めれば、なぜ求人先の病院やクリニックへ応募するようにしたのかについて、志望動機を考えやすくなります。先ほどの回答例でも、「祖母が訪問診療を受けていた」という自分の経験を述べました。
それまであなたが経験してきた看護師での仕事やプライベートでの体験を通し、志望動機・自己PRを考えるようにしましょう。面接で緊張しないためには、志望動機を考えることが第一歩だといえます。
長所・短所を理解し、病院について調べておく
ただこうした志望動機・自己PRを述べるためには、あなた自身の長所・短所を理解し、さらには中途募集を出している病院について調べなければいけません。
自分の性格として長所・短所を知れば、どういう求人が最適なのか理解できます。分かりやすい例でいうと、「新たなことに挑戦するのが好き」という人間が慢性期病院に転職するのは、どう考えてもおかしいです。
正直なところ、慢性期病院はバイタルチェックや輸液のセットなど毎日決まったことの繰り返しになります。そのため「落ち着いた環境で働きたい」という人ならいいですが、そうでないことを自己PRすると病院側は「なぜ私たちの求人に応募してきたのだろう?」と疑問に思ってしまいます。
また同時に、応募を出している病院について事前に調べておくことも重要です。これについてはホームページを確認してもいいですし、転職サイトの担当者から特徴を聞き出しても問題ありません。
採用側が聞きたいのは「仕事内容や応募条件など似たような求人があるなかで、どうしてこの病院を選んだのか」です。これを明確に説明できないと、誠実さも仕事に対する熱意も感じられない人だと判断されてしまいます。
先ほどの面接での回答事例でも「御院は地域において積極的に訪問診療をしている」ことを志望動機に入れました。
事前に対象の医療機関がどういう取り組みをしているのか調べれば、こうした特徴を見つけられるようになり、面接での受け答えもスムーズになります。こうした事前準備は緊張対策に役立ちますし、面接に受かるためには必須となります。
面接で聞かれることは?想定質問で準備・対策をする
ただ最初の志望動機・自己紹介で好印象を与えたと思っていたとしても、面接はそれだけで終わるわけではありません。その後も質問を受けることになるため、引き続き質問に答えながら自己PRをしていく必要があります。
そうしたとき、志望動機以外に面接で聞かれやすい質問には例えば以下があります。
- 退職理由は何か? 当院で何をしたいのか
- 看護師としてどういう経験を積んできたのか(看護観や経験)
- 大きな失敗・インシデントはあるか
- 当院に質問はあるか(逆質問)
もちろん、病院によって面接で聞かれることは異なります。ただ、一般的にはこうした質問が多く、質問に対するあなたなりの答えを事前に用意しておくと緊張せずに回答できるようになります。それぞれについて、どのようにすればいいのかより詳しく解説していきます。
退職理由や何をしたいのかを述べる
どのような人にも退職理由があります。退職理由は志望動機にもつながりますが、何かしらマイナスの理由があって人は転職を考えるようになります。
そうしたとき、マイナスの退職理由を述べてはいけません。不安があっての転職であることは病院側も理解しています。そこでプラスの退職理由と共に、転職後に何をしたいのか述べるようにしましょう。
このときは「あなたがいままでにした経験の中から何を得て、何に貢献したのか」を伝え、それと共に退職理由や転職後に何をしたいのか述べると、採用側に好印象を与えることができます。このときの回答例としては、例えば以下のようになります。
回答例(内科から外科への転職を考えている場合): 体への負担が大きくなりやすい外科病棟にて、自分の力を発揮したいと考えたのが主な退職理由です。 私は看護師になってから、いままでずっと病棟の内科で勤務しておりました。患者様の早期離床を目的として環境調整委員会に加わり、リハビリ科の看護師や理学療法士などとチームを作り、主に早期離床のための環境調整やリハビリ促進を計画的に行う活動をしてきました。 これらの活動から約1年で院内での早期離床率が5%改善されたことが認められ、院内にて表彰されました。 こうした関わりの中で、オペ後の早期離床の重要性に気づきました。ただ現状では同じ病棟で働くしか選択肢がないため、外科にて経験を行い、より患者さんへ貢献できる仕事をしたいと考えています。 その中でも御院は早期離床に大変尽力されているとお聞きしております。そこで今後は御院で外科の看護師として転身し、多くの患者様の早期離床に尽力していきたいと思っています。 |
このように「いまの職場では仕事の内容を変えることができず、自分のやりたいことを行えない」と正直に伝えるのではなく、「これまでの経験からオペ後の早期離床の重要性に気づき、それを実現できる病院を志望した」という退職理由にしています。
これであれば、非常に立派な退職理由(志望動機)に聞こえます。そうして自己PRしていけば、優れた面接内容になります。
看護観や看護師としての経験は重要
またあなたの看護観や看護師としての経験も面接でよく聞かれる質問になります。どの質問にも、必ず採用側の本音があります。その中でも「以前の職場ではどのような仕事をしていたのか」に関する質問に対する採用側の本音は以下の通りです。
採用側の本音: どの程度、即戦力として使えるか。この病院(クリニック)で役立つスキル・経験・適正はあるのか。 |
あなたの看護観や前職での仕事内容を聞かれるのは、「倫理的に問題ない人か」「即戦力として働けるかどうか」を見極めたいからです。そのため、あなたが実際に経験してきた具体的な仕事内容を採用側の病院やクリニックのニーズに合わせて説明しましょう。
このとき、経験年数や大ざっぱな業務を相手に伝えるだけでは、採用側はあなたの看護師としての実力を把握できません。このような質問の場合は、具体的な仕事内容を伝えなければなりません。
例えば、「小さなクリニックだったため、いわば何でも屋として掃除から受付業務、看護業務まで幅広くやっていました」と回答すると、面接で落とされる可能性が高くなってしまいます。
そうはいっても、自分なりの工夫や実績を長々と話すのもやめましょう。長くても40~50秒で話せるように準備しておくといいです。例えば、以下のように短く仕事内容を話します。
回答例(同じ科のある病院に転職を希望する場合): 私はA病院の脳外科、小児科、消化器内科で14年勤務してきました。外来から検査、病棟勤務まで勤め、本人に限らず家族に対しても深く傾聴し、家族全員の不安を取り除くことに重点を置いてきました。 その中でも、ここ8年間は消化器内科に従事してきました。 特にいまの業務では上部内視鏡検査や大腸内視鏡検査において、医師の補助業務を行い、年間200症例以上携わってきました。内視鏡勉強会なども開催し、医師と看護師の連携を大切にしてきました。 そのため、御院の最新技術を用いた内視鏡検査や内科業務に関して大変興味を持っています。 |
看護観については、ここでは「本人だけでなく、病気について家族に対してもケアをする」ことを語っています。看護観というのは、どういう看護を目指しているのか簡単に述べれば問題ありません。
それに加えて、どのような経験をしてきたのか述べるようにしましょう。いままの経験がどう転職先に活きるのか説明するのです。もちろん同じ科で転職するときに限らず、別の科や異業種へ転職するときについても、これまでのスキルがどう活かせるのか話せるように準備する必要があります。
大きな失敗・インシデントからも看護観を図られる
さらには医療職である以上、失敗・インシデントについて面接で聞かれるケースは多いです。看護師業務の失敗に関する質問は、もともとは看護への取り組み姿勢や問題解決力など、看護師としての基礎スキルを判断するのが狙いです。
この質問の場合の採用側の本音は以下のとおりです。
採用側の本音: 仕事に対する問題意識の高い人間か。看護業務に対する責任感(看護観)をもっているか。 |
この質問で避けたいのは、「インシデントを起こしたことは一度もありません」「思い当たるような大きな失敗はありません」という回答です。看護師という職業上、仕事での失敗は誰にでも必ずあるからです。
失敗を自覚していない看護師は「失敗を受け止める問題意識や看護観が低い」「責任をほかに転嫁して、自分の失敗とは感じていない人である」とみなされてしまう可能性があります。
看護師が犯す重大な医療事故やインシデントの多くは、ささいなミスや思い込みから生じます。この質問を通し、「小さなミスであっても、大きな事故やインシデントにつながる可能性を自覚しているか」を問われているのです。
そこで失敗をどう解決・克服したのかに加えて、「インシデント再発防止のために努力したこと」「失敗をきっかけに業務改善に取り組んだこと」など、失敗体験を糧にした行動も簡単に説明しましょう。例えば、以下のようになります。
私のミスで、患者様を取り違えたことがあります。 外来で診察の順番になったので、患者様の名前をフルネームで呼びました。しかし、ご高齢で耳が遠かった別の患者様が、自分が呼ばれたと勘違いされました。診察室から出てきた私と目が合ったからです。そのため本来呼ぶべき患者様とは違う患者様が、診察を受けてしまいました。 その患者様の診察が終わり、受付で会計をするときに、患者様を取り違えていたことが判明しました。誤診にもなりかねず、患者様に対して多大な迷惑をおかけしてしまいました。 そのことは受付で気づき、検査や処置などがなかったため、事なきを得ました。それを機にいまでは、患者様の近くまで行き、名前を何度も確認するように心がけています。 この件以来、他の看護業務においても曖昧なことについては確認を行い、さらには思い込みを排除するように意識して行えるようになりました。 |
小さなミスが大きな失敗を招くことはよくあります。そうしたインシデントを通し、何を学んだのかを伝えられるように対策をしておきましょう。ここから病院側はあなたの看護観を知れるため、スムーズに伝えることで自己PRにもつながります。
逆質問として病院・クリニックへ質問する
看護師転職でこれらの面接質問に回答していると、求人先から「最後に私たちに質問はありますか?」と聞かれることがあります。これは逆質問と呼ばれます。
これについて、特に難しい逆質問をする必要はありません。一般的な逆質問としては、以下のようなことを聞くといいです。
- もし内定をいただいたら、事前に準備することはあるか
- 勉強会や研修などの頻度はどれくらいか
- 看護業務以外で看護師が行う仕事は何があるのか
逆質問のときは「何もないです」と回答するよりも、こうしたことを聞くほうが印象は良くなります。ただ逆質問は事前に想定していないとスムーズに質問できないため、事前にどのような逆質問をするのか考えておくといいです。
・給料や休みなど、条件面の調節は転職サイトを通して行う
なお逆質問のとき、年収や休みなどの条件面を聞くのはダメです。そうした条件のことを面接の場で聞くのが逆質問ではありません。
こうした待遇面については、転職サイトの担当者を通して行うのが基本です。面接の場で逆質問として聞くのではなく、勤務時の条件面は転職エージェントに任せるようにしましょう。
緊張せず、アピールポイントを具体的に伝える
これらを理解したうえで、求人先の面接に臨まなければいけません。何も準備・対策をしていないと緊張するのは当然ですし、微妙な回答ばかりしていると看護師といえども面接で落とされるようになります。
そこで事前に聞かれることを理解しておきましょう。また志望動機や自己紹介の場面ではアピールポイントをできるだけ具体例を伝え、採用側が明確にイメージできるように自己PRしましょう。
そのためには事前にあなたの長所や短所を理解し、「中途採用の募集を出している求人先が求める人物像」を把握しなければいけません。それに沿った自己PRを行い、想定質問を考えることで、本番での緊張が軽減されて面接時に問題なく対応できるようになります。
条件面の調節はすべて転職サイトの担当者に任せ、あなたは「転職先の病院・クリニックでどう活躍できるのか。どういう看護観をもっているのか」をアピールすることだけに注力しましょう。こうした事前対策をするのが看護師転職の面接で重要になります。
求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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