看護師として働くことを考えたとき、公務員という選択肢もあります。看護師の就職先は多くが民間病院やクリニック、施設です。ただ公務員として看護師・保健師の資格を活かして活躍することも可能なのです。

日本で働くとき、最も安定しているといわれる職業の一つが公務員です。そのため転職で公務員を目指すこと自体は自然です。

ただ公務員の看護師として転職するには、転職サイトを通じて比較的容易に転職できるケースがあれば、公務員試験にパスする必要があるのでかなり難易度が高くなっていることもあります。そのため転職時は求人内容を見極めなければいけません。

そこで公務員にて看護師転職を行う場合、どのように考えて求人を見なければいけないのかについて、給料や仕事内容まで含めて解説していきます。

公務員には公立病院と行政保健師の2種類がある

一般的に公務員というと、県庁や市役所などで事務作業をメインとする仕事を思い浮かべます。ただ看護師については違います。公務員とはいってもそれぞれ種類が異なり、求人へ申し込む方法や公務員採用試験も変わってくるようになります。

そうしたとき、公務員看護師では大きく以下の2つに分かれます。

  • 公立病院(県立病院・市立病院・都立病院)
  • 行政保健師(保健所など)

公立病院であれば、一般的な病院と同じように看護師業務に当たるようになります。公立病院では規模の大きいケースが多く、多くは急性期病院として最先端の医療を勉強しながら業務に当たります。もちろん夜勤ありです。

一方で行政保健師という働き方もあります。保健所などで勤務しますが、この場合は求人募集の条件が厳しくなっています。それぞれの公務員について、より深く解説していきます。

県立病院・市立病院・都立病院など公立病院

都道府県や市区町村など、各自治体が運営する病院が公立病院になります。一般的な病院での勤務のため公務員という感覚は少ないですが、ここで働く職員はれっきとした地方公務員となります。

私立病院やクリニックだと、大規模から個人経営までさまざまです。ただ県立病院・市立病院・都立病院だと、規模の大きな病院で働くケースがほとんどです。もちろん診療科目は多く、その中で病棟・担当を受け持つようになります。

公務員というと、一般的には公務員試験が課せられるように思ってしまいます。ただ公立病院へ転職希望の看護師については、公務員ではあっても公務員試験を免除されているケースが多く、一般的な病院・クリニックと同じように中途採用の求人へ申し込めば問題ありません。

事実、転職サイトでも公立病院の求人は広く存在します。例えば、以下は京都にある公立病院から出された中途採用募集です。

通常だと公務員試験の関係から、公務員の求人が転職サイトに掲載されることはありません。

ただ同じ公務員でも、県立病院・市立病院・都立病院の看護師求人は例外であり、公務員試験なしにて通年採用です。そのため転職サイトであっても広く公務員の求人が存在し、看護師であれば問題なく中途採用に申し込むことで公務員になることができます。

独立行政法人国立病院機構は準公務員の扱い

ちなみに規模の大きな病院としては、独立行政法人国立病院機構も存在します。かつて国立病院とされていた医療機関ですが、2004年4月から独立行政法人化され、国立病院ではなくなりました。

独立行政法人であるため、ここで働く看護師は公務員ではありません。そのため公務員試験は存在せず通年採用です。

ただ国家公務員ではないにせよ、いまでも厚生労働省が作成した目標を基に運営されているため、国立病院機構で働く看護師は国家公務員と同じような待遇を受けることが可能です。

もちろん、これら準公務員についても広く転職サイトなどで求人を見つけることができます。例えば、以下は神奈川にある国立病院機構から出されている中途募集です。

公務員を目指すとき、地方公務員ではなく「国家公務員に準じた給与体系・待遇で働く」ことも可能です。準公務員とはいっても、中身は公務員と同じなので問題になることはありません。

保健所など、行政保健師は公務員試験がある

一方で行政保健師という働き方も広く存在します。保健所や保健センターでの勤務が基本になりますが、病院勤務ではないため世間一般的な人が想像する公務員に近いのが行政保健師です。

以下は東京にある保健所ですが、こうした場所で勤務することになります。

ただ行政保健師の場合、看護師資格だけ保有してもダメです。必ず保健師資格が必要であり、保健師資格を有していない場合は求人に申し込みすらできないことを理解しましょう。

さらに保健所や保健センターの保健師になるには公務員試験があるため、事前に筆記試験の対策をしなければなりません。市区町村によっては公務員試験(教養試験・専門試験など)が免除されることがあるものの、受けなければいけないケースは多いです。例えば、以下は奈良県での保健師採用試験内容です。

このように保健師の採用では、一般的な公務員試験を受けるために勉強する必要があり、かなりハードルが高くなっています。

それだけでなく試験日が明確に決められているため、通年採用ではありません。採用予定日が決められており、特定の日に採用となることでようやく働き始めることができます。

一般的な公務員試験を受けなければならず、通年採用ではないので条件は非常に厳しいです。実際のところ転職しにくいのが行政保健師であり、転職時に保健所や保健センターを選ぶ人はほとんどいません。かなり気合を入れて勉強しなおす必要があるからです。

事前に小論文の対策を考える

なお、公務員を目指すときに看護師として公務員採用試験が免除されていたとしても、履歴書などの応募書類を送ると共に、小論文・面接(適性検査)を受けなければいけないケースが多いです。これは、公立病院でも同様です。

例えば、以下は国立病院機構の募集概要ですが「論文試験(800字ほどの小論文)がある」と明記されています。

このとき面接については、すべての転職の場面において必要になるため大きな問題にはなりません。ただ小論文を書くとなると、どのように対応すればいいのか見当が付かないといえます。

しかし、こうした公立病院や行政保健師への転職は応募倍率が高いこともあり小論文対策を講じていなければ、「不採用」となってしまうケースがよくあります。そうしたとき、小論文で考えるべきは以下になります。

【小論文対策】

小論文には課題が出されます。看護知識などではなく、看護観が問われる課題が多く、自分自身の考えを論理的に述べる能力が求められます。

文章を書くことに苦手意識をもっている方は、「最初に結論を述べ、具体例を挙げ、まとめる」という方法で書いていくと分かりやすい文章になります。大まかな文章の流れをあらかじめメモしておき、それに具体的なエピソードを肉付けしていけば説得力が増します。

私立病院や個人クリニック、施設などへの転職と比べて大きく異なるのが小論文だといえます。公務員を目指す以上、小論文で何を書けばいいのか戸惑わないように準備しておきましょう。

給料・年収が低くならない公務員看護師

そうしたとき、公務員の看護師へ転職するときの給料はどうなるのでしょうか。これについて公立病院や独立行政法人国立病院機構(国立病院)で勤務する場合、民間病院に働く看護師とそこまで待遇は変わらないと考えましょう。

民間病院に勤務する看護師の平均年収は500万円前後です。公立病院でもこれと同程度であり、公務員だからといって低収入になることはありません。

高度な知識が必要な専門職であっても、公務員は一般的に給料が低くなります。しかし公立病院については、事務ではなく病院勤務になるのでそうしたことがないのです。現場で医療に従事し、夜勤もある看護師は公務員という立場であるものの、それなりの年収も確保できるのです。

・保健所だと収入は低い

ただ、保健所など病院勤務でない場合は当然ながら収入は低めになります。保健師資格を保有していたとしても給料は少なめであり、例えば以下は「北海道の保健所が出している募集要項の給与例です。

このように初年度は年収322万円ほどであり、10年勤務しても年収は約400万円です。

病院であれば、看護師だと最初から年収450万円以上は普通です(夜勤を含む)。それに比べると、同じ公務員でも公立病院の看護師と行政保険師では収入がまったく違ってくることを理解しましょう。

・能力に応じた給与が見込めない

なお公務員なので当然ですが、毎年の昇給率は決まっており、能力に応じた給与を見込むことはできません。何らかの役職に就かなければ、いくら看護能力や知識、スキルがあったとしても給料の格差はありません。

例えば公立病院で「どれだけ忙しい科であっても、反対に暇な科であっても、給料は同一」なのは公務員の宿命だといえます。

育休や時短勤務を含め、福利厚生が優れるメリット

そうしたとき、公務員で働くとき一番大きなメリットとして福利厚生が挙げられます。下手な大企業よりも、公務員のほうが福利厚生という意味ではしっかりしているといえます。

まず公務員の場合、産休を取れるのは当然として、育休を最大3年間取得できます。民間病院やクリニックだと、通常は育休1年ですが非常に長く休むことができるのです。

また子供が小学校へ入学するまで時短任務が可能であり、民間病院のように拒否されることは確実にありません。さらには、子供が小さいときは夜勤を含めた時間外勤務が免除されるようになります。女性にとって、子育てという意味では公務員が優れています。

以下は東京の看護師での公務員募集要項ですが、実際に「育休は子供が3歳になるまで」「時短勤務は子供が小学生になるまで」と明記されています。

それに加えて、公立病院だと「託児所が完備されている」「寮に安く住める」などの福利厚生もあります。

民間病院だと、妊娠中であっても夜勤が必要など大変な環境で働かなければいけないケースがあります。しかし公務員では、そうしたことがありません。

失業保険が受けられないデメリット

ただ公務員看護師の場合、反対にデメリットもあります。その中でも多くの人にとってデメリットに感じるのが失業保険です。

公務員は雇用保険に入ることができません。そのため、失業したときに失業保険を受けることができません。

公務員看護師でいる限り、法律によって身分が保障されており、民間の医療機関のように景気変動による倒産や経営破綻の心配がありません。そのため、「雇用保険の適用除外となっているのです。

これは公立病院や行政保健師に限らず、国立病院機構の看護師も同様だと理解しましょう。例えば、以下は私が国立病院機構で勤務していたときの給与明細であり、「雇用保険の支払いがゼロ」であると分かります。

ここから、公務員や準公務員を含めて雇用保険(失業保険)を利用できないことが分かります。もし体調などを崩して公務員看護師を辞めてしまっても、失業保険が出ないことを覚えておきましょう。

副業が禁止されているは理解するべき

また看護師の中には、「いまのスキルを磨いていきたい」「活動の幅を広げていきたい」「今の収入だけでは生活できない」などの理由から副業をする人がいます。

例えば空いた時間を有効利用して、いま働いている医療機関とは別に派遣看護師をしたり、時短パート勤務で別の医療機関で働いたりすることが該当します。しかし公務員の場合、こうしたことはできません。

ただ本当はダメですが、派遣やパート・アルバイトなどではなく、パソコン一台で稼ぐ副業をこっそりしている公務員看護師がいるのは事実です。例えば私の知り合いの公務員看護師だと、子供用品の転売の副業をしており、月10万円ほど稼いでいます。

一般的には副業が禁止されているものの、こっそりしている看護師がいるのも事実です。その友人については、「仮にバレても他の病院へ転職すればいい」と開き直っていました。しかし一般的には、公務員看護師は副業禁止のデメリットがあることを理解しましょう。

看護師の公務員求人は種類がある

公務員は非常に人気であり、安定している職業だといえます。ただ一般的な公務員とは状況が異なるのが看護師です。

看護師の場合、市や県が採用するとはいっても、その多くは公立病院になります。また国立病院機構で働いても問題ありません。一方で保健所など行政保健師を目指してもいいですが、公務員試験や通年採用の関係もあり、中途採用で目指す人はほとんどいないのが現状です。

こうした現状を理解したうえで、どのような公務員を目指したいのか考える必要があります。特に公立病院の場合、公務員だからといって給料が低いわけではなく、それでいて産休・育休などの福利厚生はしっかりしています。

ただ小論文など公務員ならではの試験を課されるケースが多いです。そこで求人先の募集がどうなっているのか確認し、事前対策をしたうえで公務員看護師への転職を目指すようにしましょう。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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