看護師の転職では、採用試験のひとつとして小論文を書かせる医療機関があります。例えば、都立病院や県立病院、国立病院機構、大学病院など公務員系の看護師を希望する場合、採用試験に小論文を課す場合が多いです。

このようなとき、「社会人の中途採用試験で小論文を書くとなると、どのような対策を練ればいいのか分からないから、なかなか書けない」と苦慮する人が多いのが現状です。

たしかに小論文をいきなり書くのは難しいです。一方、テクニックさえ押さえていれば案外スラスラと書き進めることができ、高評価を狙えるのが小論文です。つまり、小論文とは「準備して臨んだ者のみが差をつけることのできる選考基準」ともいえます。

そこで今回は、採用試験で小論文が課された場合のテーマや、その際に役に立つ「簡単に実践できる小論文の書き方テクニック・添削例文」について解説していきます。テクニックをマスターすれば、他の応募者と小論文で差をつけることができます。

看護師転職の採用試験で小論文を選考基準にする理由

まず、「なぜ看護師の転職なのに、小論文を採用基準として課すのか」について、採用側の意図を知ることが大切です。これを理解していないと、小論文で高得点を取ることはできません。

中途採用や再就職での看護師選考試験では、即戦力となる「看護技術やスキル、知識について経験豊かな人」が選ばれそうに思ってしまいます。ただ、その場合、採用試験においては小論文ではなくて「実技テストや専門知識を問う問題」を課せばいいはずです。

しかし実際の採用試験では、実技や専門知識などの選考基準を設けている医療機関はほとんどありません。多くの病院では「書類選考」「面接」「小論文」を選考基準としています。例えば以下は、東京女子医科大学の中途採用の看護師に課された小論文テーマとなります。

ただ、なぜ看護師の採用試験で評価しにくそうな小論文がわざわざ課されるのでしょうか。そこで採用する立場になって考えてみましょう。

看護師採用試験で小論文を課す目的・理由はひとつです。それは「看護師としての看護観や人間性、責任感、基礎学力、コミュニケーション能力などを見極めるため」です。つまり小論文を書かせ、あなたの人となりを判断するのです。

面接では良いことばかりを述べたにも関わらず、実際に働き始めたら確固たる看護観を持ち合わせていないばかりか、社会的なマナーさえ守れない人が多くいます。

その点、小論文を書かせると「この人物は看護師として、ちょっと危険な思想をもっている」「日頃から患者さんの立場になって考えていない」などという応募者側の本音が、書かれた文章から読みとれるのです。

同僚との間でトラブルばかり起こしたり、失礼な言動で患者さんを傷つけたりするような応募者を採用側は見抜かなければなりません。そのようなときに小論文が役立ちます。

基礎学力・コミュニケーション力が小論文から分かる

さらに、採用側が小論文を課すことで、その人の基礎学力やコミュニケーション力も知ることができます。例えば、仕事に対して熱心な看護師は、医療や看護に関する様々なニュースを日頃から見聞きして、無意識のうちに「自分だったらこのような看護を行っていたい」など、真剣に考えている人になります。

またコミュニケーション能力に優れていれば、患者さんの不安を払しょくし、安心感をもってもらえます。

このように小論文からは「看護をどのように考えているか」「患者さんのことをどう捉えているか」「仕事に対して前向きか消極的か」などを判断できます。他にも人間性や誠実さや、日頃から自分の仕事と関わりの深い医療や看護にどのくらい興味をもっているのかも分かります。

そうしたとき面接では緊張してうまく話せない口下手な人であっても、採用側が小論文を課していれば、自分の看護観や仕事への意欲を伝えられる材料となるのです。小論文は、面接に苦手意識のある転職希望者にとっては、ありがたい存在といえるのです。

しっかりした看護観をもって仕事に向き合っている人であれば、看護スキルや医療知識が劣っていたとしても、同僚からは頼られ、患者さんからは好かれる存在として、将来活躍が期待できると思われます。

できれば、以下のような看護系雑誌、看護観に関する本に目を通しておき、他の看護師の仕事に対する姿勢などにアンテナを張っておくと良いでしょう。

ちなみに看護師採用試験の小論文では、誤字脱字や「て・に・を・は」などのミス、原稿用紙の使用方法などを多少間違えていたとしても、大きな減点とはなりません。

また、ナイチンゲールが成し遂げたような大きなスケールで現代医療界の問題点を述べたり、奇想天外なアイデアを提案したりする必要はありません。

常識や良識の範囲内で、自分の考えや具体的なエピソードを述べればいいです。そうして採用側に「この応募者は常識やマナーの点で問題がなく、しっかりとした看護観をもって仕事をしてくれそうだ」と評価されれば問題ありません。

看護師転職における小論文・作文の違いと書き方のコツ

次に看護師転職における小論文の書き方のコツについて述べていきます。

まず、小論文と作文の違いについて確認しておきます。よく小論文と作文の違いついて理解しないまま、小論文を書き始める人がいます。実際に小論文と作文は一緒のものではありません。次に小論文と作文の違いを以下にまとめました。

  • 小論文:課題に対して自分の意見を述べ、根拠や理由を用いて説明する
  • 作文:自己PR文であり、自分の思いや体験、感想を綴る

つまり小論文では、論理的に文章を展開していくことが評価基準となります。

小論文で高評価を得るための3つの注意点

そうしたとき採用側から高い評価を得るには、以下の3点を念頭に置く必要があります。

①文章の内容が課題に合っているか

小論文の課題の意味を把握しておらず、自分の得意な話にもっていき脱線してしまう人がいます。出された課題に対する内容を記述することが小論文の鉄則です。


②論理的な説明が行えているか

作文では自分が体験したことから、あなたが思ったこと、感じたことを書き綴れば大丈夫です。一方で小論文の場合、「あなたの小論文を読んだ人を説得できるような文章」に仕上げなければなりません。

自分の出した結論に対して、なぜそう考えたのかを論じる必要があるのです。さらに根拠を与えるため、具体的な実体験やデータを提示して、読み手を納得させます。これが小論文における論理的な説明となります。


③文章の構成は崩れていないか

小論文を書く際、「序論・本論・結論」で構成すると読みやすい文章となります。他にも小論文には起承転結法など様々な構成方法があるものの、看護師転職の小論文では王道を外れた方法で小論文を書くことはおすすめできません。

大学で提出する論文のように、何十ページ、何百ページも書く必要はありません。看護師採用試験の小論文は800~1200字ほどです。最も分かりやすい構成方法で論じていくほうが、読み手にも伝わりやすい文章となります。

あなたの書いた小論文は上の3つの注意点から外れていないか、確認してみてください。もし外れている場合は、次の項の具体的な書き方を参考して書き直してみましょう。

小論文の基本的な構成

それでは小論文を書くにあたって、「序論・本論・結論」という基本的な構成を覚えておきましょう。「序論」「本論」「結論」を一段落ずつ、全体では三段落で書きます。

【第一段落:序論(問題提起)】

与えられた課題に対して問題提起を行い、それに対して自分の考えを述べる(字数割合:10%)

  • 「~だろうか」問題提起

まずは、序論の部分で問題提起を行います。最初は課題に対して「~だろうか」と問題提起を述べます。

【第二段落:本論(理由の説明)】

自分の考えに対する根拠を、事実や調査をもとに説明し、自分の考えの正しさを証明する(字数割合:80%)

  • 「たしかに~である」反対意見
  • 「しかし~である」自分の考え
  • 「なぜなら~だ」事実や調査による裏付け 具体例を挙げる

次に本論の部分で、「たしかに~である」と反対意見に対してそれを受け入れ、「しかし~である」と自分の考えを述べます。

そして自分の述べた考えに対して、「なぜなら~だ」と事実や調査、実体験をもとに具体例を提示して証明し、裏付けを行います。

【第三段落:結論(まとめ)】

再度、第二段落で行った理由付けを行い、自分の考えを明確に述べる(字数割合:10%)

  • 「このようなことから~だ」結論

そして最後に結論で、「このようなことから~だ」と結び、結論とします。

看護師転職での小論文テーマの例文見本

それでは次に、先ほど紹介した小論文の書き方を念頭に置き、小論文の例文見本を挙げたいと思います。そこで「認知症患者の終末期ケアについて、あなたの考えを述べなさい」というテーマについて書いていきます。

まずは序論(問題提起)を書いていきます。800字程度の小論文であれば、80字程度(3~4行)を目安にまとめます。

【序論(問題提起)】

現代の日本社会では、認知症患者の終末期は病院や施設で過ごすケースが80%を占めている。ただ、多くの認知症患者の希望として在宅での看取りを希望される方が多く、出来る限り本人の意思を尊重することはできないのであろうか。

このように、課題の内容について常識の範囲内で問題提起を行うようにしましょう。

極端な例ですが、小論文で「認知症患者は家族の手を煩わせ、多くの看護の手が必要であるため、絶対に病院で終末期を迎えたほうが良い」などと反社会的な意見を述べてしまう人がいます。

大学の講義などで提出する小論文であれば、突拍子もない問題提起をしても、相手が納得できる内容と認められる可能性があります。

しかし、あなたは看護師採用試験で小論文を書くのです。看護師採用試験で小論文を課す理由は、あなたの看護観や常識、良識を判断することにあります。常識や良識からずれず、思いやりや優しさをもった看護を行えるような問題提起を行うように心がけましょう。

次に自分の考えに対して、理由説明を行います。この本論の部分が全体の8割を占めると考えてください。例えば、以下のようになります。

【本論(理由の説明)】

たしかに近年の認知症患者の増大とともに、在宅での看護や看取りは家族にとって負担が大きい。深夜の徘徊や体位変換、急な症状悪化などに対して、家族だけでは充分な対応をとることは難しいだろう。

しかし患者側から考えてみると、いままで過ごしてきた家で家族に囲まれ「最期を迎えたい」とする気持ちをなおざりにしてしまうのは、看護の怠慢ではないかと考える。なぜなら、患者に近い存在である看護師が医療チームの中心となり、地域と医療機関を連携することができれば、家族だけに介護負担を強いることなく手助けを行えるからである。

私が以前受け持った終末期の認知症患者は常に在宅での看取りを希望していた。家族もまた可能な限り在宅療養を引き受けていたが、自信がないようであった。そこで私は医師やケアマネージャーと相談し、訪問看護・介護のサポートを受けられる体制を整えてもらい、患者を在宅に戻すことを実現した。

その患者は在宅療養となって3週間目に息をひきとった。しかし、家族からは「在宅介護の間、母親らしい笑顔に戻り、後悔せず最期を送り出せた」と感謝された。

上記のように自分が実際に実施した具体的なエピソードなどを加えると、説得力を増すことができます。「たしかに」と反対意見を述べ、「しかし」で自分の主張を行い、「なぜなら」で具体例を出し説得力のある文章に肉付けするのです。

そして最後に、結論でまとめます。こちらも序章と同じで、全体の1割程度に留めましょう。

【結論(まとめ)】

このようなことから、私は患者の家族に介護の余力と意思を確認できれば、認知症患者であっても在宅での看取りの可能性を最初から否定したくない。チーム医療で患者家族を支えながら、患者の意思を最期のときまで尊重できる看護を実践していきたいと考える。

このように、まず課題に対する「問題提起(序論)」を行います。そして、「理由の説明(本論)」を続けます。最後に結論でまとめれば、小論文が完成します。

出題されやすい小論文テーマ

それでは、看護師採用試験で出題されやすい小論文の課題は何になるのでしょうか。これについて、テーマとしては「看護・医療」の関連がほとんどです。もし苦手だと思われる課題があれば、実際に一度は小論文を書いてみることをおすすめします。

実際の看護や医療の課題について、具体例を以下挙げます。

看護】

  • 患者中心の医療とはどのようなものですか
  • あなたの看護観について教えてください
  • 医療スタッフとして求められている心構えは何がありますか
  • 看護師として医療ミスをなくすために心がけるべきことは何ですか
  • 看護を実践していく上で大切なことは何ですか
  • 問題行動を起こす患者へ、どう対処するのが最善ですか

【医療】

  • 医療ミスに対して、どのような対策を行えばいいか
  • 終末期医療をどう実現していくといいか
  • 再生医療についてどう考えているか
  • 地域医療はいまどのような問題を抱えているか
  • チーム医療のメリット・デメリットを述べてください
  • 精神疾患患者が在宅で暮らすため、何が必要か

難しい専門的な医療知識を求められることはまずありません。もし、難しい医療知識が求められた場合、他の応募者も答えられないので心配する必要はありません。自分の知っている範囲内で、実際に体験した具体例を挙げて論ずるようにします。

もしこの具体例の中で「理解できていない、分かりにくい」と思ったテーマがあれば、事前に調べておくとよいでしょう。特に新聞などのニュースに目を通しておくと、医療系の話題のテーマが分かります。

ただ他にも、医療や看護と関係のない課題が出題される場合があります。それは以下のようなテーマです。

医療や看護と関係のないテーマ

  • 今までの人生で熱中したことは何か
  • 看護師を目指した理由を教えてください
  • 自分の性格で良い面・悪い面の両方を教えてください
  • あなたにとって友情とは何でしょうか
  • どのようなキャリアアップを望んでいますか

このように将来の夢などのテーマであっても、作文にならないように注意しなければなりません。先ほどの「序論・本論・結論」のある論文としてまとめるようにしましょう。

ちなみにインターネットなどで検索したり、転職サイトの担当者に尋ねたりすれば、過去にどのような小論文のテーマが出題されたかを把握することができます。

過去問さえ分かれば、テーマとして時事問題や医療問題が出るのか、それとも全く違う問題が出るのかなどの傾向を把握できます。小論文の情報を事前に得られるため、小論文試験を受ける前に必ず調べておくようにしましょう。

転職サイト登録で小論文を添削してもらえる

しかし小論文の書き方のコツを掴むには、ある程度の訓練が必要になります。「小論文を書いたのはいいものの、これが本当に高評価を得られるものかどうか確信がもてない」と不安に思う方は、看護師転職サイトの担当者に添削してもらう方法があります。

転職サイトを利用する良い点として、あなたにマッチした転職の求人探しから、履歴書・職務経歴書などの応募書類、面接での回答の仕方や小論文の書き方まで、転職の一連の流れを無料で教えてもらえることが挙げられます。

練習で小論文をある程度自分で書いてみて、それでも自信がもてないようであれば、転職サイトの担当コンサルタントに確認してもらうとよいでしょう。

ちなみに転職サイトであっても、転職サイト経由で公立病院(県立病院・市立病院・都立病院)や国立病院機構(国立病院)へ応募できるようになっています。以下は実際に転職サイトから出された国立病院機構の中途採用募集です。

公務員求人は通常、転職サイトに存在しません。ただ看護師の場合は公務員試験(一般教養試験など)を免除されるため、例外的に転職サイトに求人が出されるというわけです。ただ小論文試験を課せられることがあるため、事前の対策が必要となるのです。

あなたの書く小論文にはどのようなクセがあるのか、自分で考えても答えを見つけ出すことは難しいです。そこで小論文試験のある大病院や公立病院を志望する場合、試験にパスする看護師ほど転職サイトの担当者をフル活用している実態があります。

看護師の転職では小論文が有利に働く

小論文といえば、誰しも「面倒くさいし、大変で嫌」と考えがちです。しかし、小論文が原因で採用の枠から落ちるのはもったいないです。小論文は事前の対策が取れるからです。

そこで「小論文試験があるのは、むしろ自分にとって採用で有利に働く」と思えるくらい過去問を活用し、小論文対策を行うようにしましょう。そうすれば、他の応募者と圧倒的な差をつけることが可能です。

採用試験の小論文を有利にするためにも、今回の内容を参考にして事前に対策を行いましょう。どのようなテーマが提示されても大丈夫な状態にしておけば、採用への道は近づきます。

一見すると面倒な小論文対策ですが、何を考えて行動すればいいのか理解し、転職サイトなどを活用しながら事前に練習しておけば特に困ることはありません。転職サイト経由で過去問を入手して対策し、希望する病院から高い評価をもらい、採用通知が手元に届くよう最善を尽くしましょう。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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