40代・50代の転職希望の看護師が面接で直面する問題があります。それは「答えにくい質問に対して、相手が納得いくような的確な回答ができない」ことです。

この年代になると看護経験やスキルが豊富にあるといえます。そのためどのような質問であったとしても、「採用側が納得する的確な答え方をしなければならない」というプレッシャーが生まれます。

しかし、この年代だからこそ「大切な面接での注意点」を知らないまま、何の対策もせず自己流で面接に臨んで結果が出ないという人も多いのです。「答えづらい質問」を受けて、多くの方が面接の場で焦ったり戸惑ってしまったりしてしまい、マイナスの評価を受けているのです。

そこで今回は「40代・50代の転職面接で志望動機や質問への回答に対する注意点、さらにはその対策と回答例」について解説していきます。

40代・50代の転職を考える志望動機・退職理由の注意点

40代・50代ともなると、看護スキルや経験が豊富であるため、「今までの看護経歴を語れば、何とかなるだろう」と安易に考え、面接に対して十分な対策を講じていないことがあります。しかし、この年代だからこそ、採用側にとって納得のいく回答をするための事前準備が必要だといえます。

転職時の面接では、「なぜ私たちの病院を選ばれたのですか」「前職を辞めた理由は何ですか」といった項目は必ず質問されます。

このとき、「まだ御院に入職していないので分かりません」「前職を退職したのは一身上の都合です」と答えてしまう40代・50代の看護師がいるのも事実です。

ただ、これでは志望動機や退職理由とはいえません。採用側は「あなたについて知りたい情報」が何一つ得られないため、ダメな回答例だといえます。

採用される40代・50代看護師の傾向

まず転職市場では、年齢の若い人ほど価値が高いです。そのためいくら経験があったとしても、40代や50代の時点でかなり不利であることを認識しましょう。そこで志望動機・自己PRはかなりしっかりと考えなければいけません。

このとき、志望動機では「自分の経験について、相手先が求めていることとマッチしているか」を考えるようにしましょう。例えば、以下は神奈川県横浜市にあるケアミックス病院ですが、50代や60代の人でも受け入れています。

そのため40~60代の人でブランクありでも問題なく応募できる求人ですが、この場合は「なぜケアミックス病院なのか」「なぜ応募先の病院なのか」を志望動機として述べなければいけません。

例えば、以下のようになります。

育児が落ち着いたため、病院看護師として復帰しようと思い志望しました。以前は急性期病院に勤務しており、循環器の患者様を看護していました。ただ年齢やブランクもあり、慢性期病棟を含む病院で活躍したいと考えています。

御院はケアミックス病院として地元でも有名であり、ブランク明けの50代看護師であっても積極的に活用してくれると転職サイト経由で聞いています。急性期よりも落ち着いた環境にて再び活躍したいと考えています。

この場合は「ブランクあけの看護師」を想定しての志望動機にしました。子育てがひと段落した後だと、家の近くで働くのが基本ですし、病院を目指すにしてもあくせく働く大病院ではなく慢性期病棟を含む中規模病院を目指すのは普通です。そこで、そうしたことを志望動機に含めています。

このようにあなたの状況や相手先の医療機関をつなげたうえで志望動機や自己PRを述べれば、自然な内容になりやすいです。

聞かれたくない質問の対策と回答例

しかし実際の面接では、志望動機や自己PRを聞かれるだけではありません。他にも質問を受けることになります。このとき転職希望者だと、誰しも「転職せざるを得なかったネガティブな理由」を抱えています。

私はいまの職場で働きながら、看護師転職希望の多くの方と会い、その方々の話を伺ってきました。ただ、このとき「バラ色の退職理由があって転職を考えた看護師」には会ったことがありません。転職を考える人は誰しも「聞かれたくない理由」を抱えているケースが多いのです。

そうしたとき、「嫌な質問」「困るような質問」「答えられない質問」を受けたとしても、慌てないようにしましょう。

面接で慌ててしまう人は採用担当者からすると、緊急の場面に遭遇したときにも慌ててしまいパニックになる看護師とみなされます。このような看護師を採用するわけにはいきません。そのため、あらかじめ「聞かれたくない質問」に対しては対策を練っておきましょう。

このとき40代や50代の面接において、いくつか聞かれる質問についての対策や回答例について解説していきます。

なぜ前職を辞められたのですか:退職理由

答えにくい質問の中でも、面接時に高確率で聞かれる必須項目が退職理由です。「退職理由の正当性」と「同様の理由で当院も辞めるのではないか」を確認する質問になるため、採用担当者は特に真剣に尋ねる質問になります。

これについて、最も分かりやすい回答はストレートな理由です。ストレートな理由として挙げやすいのは、以下のような退職理由です。

  • 子供がまだ小さく、よく病気にかかるので日勤がいい
  • 親の介護が必要となり、今までのような勤務が難しくなった
  • 夫が転勤となり、転居することとなった

このように自分が発端となった退職理由ではなく、「家族のことを考えて退職せざるを得なかった」といった理由ですと、採用担当者も納得しやすくなります。

ただそうではなく、ネガティブな理由も非常に多いです。そうしたとき、ネガティブな転職理由をポジティブに伝えるようにしましょう。

退職するに至った理由として、「何かしらのネガティブな要因があるから辞めた」ことを、採用担当者も分かっています。

しかし、「有給休暇がもらえなかった」「上司と揉めた」「仕事内容が合わなかった」「人間関係に疲れた」「労働対価が合わなかった」などの前職の悪口・誹謗中傷といった本音を語ることは絶対にNGです。

そこで「本音をベースにしつつ、ポジティブな面を訴える方法」が最善だといえます。すなわち、「単なる不平不満からではなく、現状では叶えられなかった強い想いがあるから辞めたのだ」とするのです。以下に退職理由の模範回答例について載せておきます。

人間関係が嫌になり退職した場合の回答例

前職は「看護師長からの命令が絶対的な組織」であり、師長しか行えない看護業務がありました。そのため師長が不在のときは、その看護業務に支障が出てしまい、患者様にご迷惑をかけることがしばしば発生してしまいました。

私はこの問題を放置することができず、何度か院長に訴え改善提案を試みました。しかし、院長は「看護師長と院長との間の業務に支障がでる」のを恐れ、聞く耳をもってもらえませんでした。

このまま不信感を募らせ患者様の看護を行うことは、自分の気持ちが付いていかず、「双方のためにならない」と考え、退職を決意いたした次第です。

前職への信頼感が薄れていくという経緯から、「ネガティブな気持ちのまま看護を続けることはできない」と見切りをつけた内容としました。「双方の仕事への看護観が異なるため、退職を決断した」とし、退職理由を明確にしています。

このように、いずれにしても単なる前職の悪口を述べるのではなく、プラスとなる言葉に変えましょう。

仕事をしていて、人間関係に困ったことはありますか

人間関係について聞かれることもあります。この質問で採用担当者は「人間関係でトラブルを起こすことなく、周囲のスタッフと協調してやっていけるか」を見極めたいと考えています。また、人間関係でのトラブルに対して、「どう対処し、どう克服しているのか」という人間関係修復力も確認したいと思っています。

20代の看護師とは異なり、この年代になると、周囲とぶつかりながらも成長していっているはずです。「人間関係に全く問題はない」と答えることで、かえってマイナスの印象をもたれてしまいかねません。

また当然のことですが、人間関係でのトラブルで、相手を一方的に非難したり、中傷したりするのはNGです。「自分は正しかった」とアピールしたい気持ちは分かりますが、「自分にも非があったため、このように行動すればよかった」といった改善点を示すと印象が良くなります。

これらを踏まえて、回答例を次に示します。

私は前職で、副師長が一部の新卒看護師ばかりに目を向け、他の新卒看護師は無視されている状況に気づいたことがあります。そのことを気にして精神的に参っている新人もいました。

私は「このままではいけない」と考え、副師長に「新人を無視している状況」を改善してもらえるようにすぐに訴えにいきました。しかし、「必要だから無視しているの!」といわれ、私まで無視されるようになりました。

そこで私は看護師長とも相談し、看護師長・副師長・私の三人で話し合う場を設けてもらうことにしました。

そのときに副師長が新人を無視していたのは、「新人の態度が悪いから叱咤激励するためだ」と伝えられました。しかし、それでは「コミュニケーション不足で、新人が育たないのではないか」と私の意見も伝えました。

何度かの話し合いのあと、副師長は無視をしなくなり、新人も元気を取り戻すことができました。

私は一時的ではありますが、副師長に対し自分の意見ばかりを感情的に伝えたため、聞く耳をもってもらえず、問題を長引かせてしまいまいました。この出来事以降は、冷静に相手の意見や考えを把握し、コミュニケーションを取れるように努めております。

相手を非難するだけでなく、自分なりの反省点やこの経験で得た仕事への取り組み姿勢を述べて、フォローしています。

このようなフォローがあれば、採用担当者は「応募先の医療機関でも人間関係でトラブルを起こすことがない」とイメージできるようになります。

今までの看護経験上、一番大きなミスはなんでしょうか

インシデントも看護師転職で定番の質問です。何十年か看護師をしてきて「ミスをしたことがない」という方はいないでしょう。この質問をすることで、採用担当者は、そのミスに対して「どのように対処し、その失敗をを今後の仕事でどう活かしているのか」を知りたいです。

具体的に述べると、「ミスの影響範囲の調査・分析」「その解決方法の検討」「再発防止策」まで分けて答えると伝わりやすくなります。

そして必ず、「そのミスから得た教訓はどのようなものか」「ミス防止のために、どのようなことに取り組んでいるか」といった点をアピールするようにしましょう。

40代・50代の看護師であれば、自分のミスとして認め、今の看護に活かしていることを伝えることが重要です。下記に回答例を挙げます。

私は前の職場で誤薬をしてしまったことがあります。ご家族がかかりつけのクリニックの薬を持参されており、「指示に従って服用させてほしい」とのことでした。

薬袋に「4×1毎食後・就寝前服用」とあったので、私が受け持ちの夜勤の時間帯、その薬を3回服用してもらいました。

しかし、その薬は実際には頓服用でした。私は他の患者様にあたっていたこともあって、薬の内容を確かめることなく、患者様に服用させてしまったのです。すぐに上司や医師に報告し、1時間おきにバイタル計測を行うこととなりました。

その後、何も患者様の容態は変化することなく事なきを得ました。患者様とご家族には、私のミスでご心配・ご迷惑をおかけしてしまったことを謝罪し、ご理解をいただきました。

しかし看護師として、「このようなミスは絶対にあってはならないことだ」と認識しております。

この件は、「忙しいことを理由に中途半端にしか確認していなかったダブルチェック体制を、以降徹底させる」ことにつながりました。そのおかげで、今日まで誤薬ミスのゼロを継続することができています。

回答例ですが、まず「ミスの内容」「それを発生させてしまった背景」について、端的に述べました。またそれまで仕事の忙しさを言い訳にして機能していなかったダブルチェック体制を徹底させ、その後の誤薬ミスをなくす取り組みを継続させたことが伺えます。

ミスをミスのまま終わらせない姿勢をみせることが、看護師面接では重要です。

あなたの希望する給与額について教えてください

ある程度の年齢になると、どのように給料を考えているのかも重要になります。ただ給与額についての質問は本音で言っていいのか、それとも謙遜すべきなのか、とても迷う質問であるといえます。

40代・50代の看護師の給与額は、経験・能力・実績といった「その人ならではの要素」によって決定されます。どこの学校を出ようが横並びの状態である新卒とは異なり、決まりきった給与テーブルにはうまく乗らない年代です。そのため、希望する給与額については、具体的な金額を伝える必要があります。

ありがちな間違いとして挙げられるのが「御院の規定に従います」といった答え方です。このような一辺倒の答え方では、的を射ていない回答であるといえます。

一方で好き勝手に主張してもいけません。例えば前職で430万円だった人がいきなり550万円以上を希望する場合、この差額の120万円アップの根拠について誰もが納得いく理由や説明が必要です。

当然、子供の学費や家のローンなどプライベートな内容ではなく、前職ではなかった役職が付いたり夜勤をしたりといった「業務に関連した内容」を説明する必要があります。

採用側の想定する給与額とあなたが希望する給与額に乖離があると、選考のとき通過しにくくなります。希望する給与は、仕事ぶりをみて後から判断してもらうことも可能です。そのため、最初はあまり高い給与額を主張しないほうが得策です。下記に回答例を示しました。

450~500万円の範囲を希望します。前職の前年度の年収は450万円でした。御院で採用していただきましたら、管理職候補ということと、月に3回の夜勤が加わるため、その責務に見合った金額として設定させていただきました。

今後の私の働きぶりを見て、その時期に再度給与額を考察していただけると幸いです。

このようにある程度まで給与額に幅をもたせ、「今後の働きぶりをみて再考してもらえる」ように伝えておくといいでしょう。

答えにくい質問についても、的を射た回答を行う

40代や50代での転職だと、看護師としての経験があることから、さまざまな質問を受けます。そうしたとき、事前に志望動機・自己PRの内容を考えておくようにしましょう。

また、面接時には答えにくい質問を投げかけられます。ただ答えにくいのはあなただけではありません。応募者の誰もが答えにくいと感じ、その場で取り繕ったり、慌てたりするケースが多いです。

そのような質問だからこそ、事前にしっかり準備しておいて、慌てず誠実に答えるようにしましょう。そうすれば他の応募者との差が生まれ、好印象を与えることにつながります。

「いつも面接で不採用となってしまう」といった方は、答えにくい質問を受けたとき無意識のうちに目が泳いでいたり、慌てたりしている場合が多いです。そこで事前対策を行い、万全の準備をしたうえで面接に臨むようにしましょう。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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