看護師が転職を考えるとき、求人先の情報を集める方法のひとつに病院見学・施設見学があります。病院側は見学を実施することで「応募者に看護の仕事内容や職場の雰囲気などを事前に掴んでほしい」と考えており、これによって転職後のミスマッチを防ぐことができます。

ただ実際に病院見学・施設見学をするためには予約をする必要があり、そのためのメールや電話をどうすればいいのか心配になる人は多いです。

また漠然と病院を見学しただけでは、分からないことが多いのが実情です。そこで病院見学・施設見学に行く場合、事前に何に気を付けて確認し、質問を行えばいいのか理解しておけば、職場の実情を把握しやすくなります。

そこで「転職するとき、看護師が病院見学をする際のメール・電話予約の方法」「実際の訪問時の注意点や聞くべきこと」について解説していきます。

病院見学・施設見学は必ず行うべき

看護師が転職するとき、必ず面接を受けることになります。このときの面接後、多くのケースで病院見学・施設見学できるようになっています。これら職場見学については、必ず実施するようにしましょう。

もちろん中には、「患者として来院したことのある病院」へ中途採用応募する人がいるかもしれません。そうなると、「おおよその様子が分かるのでわざわざ病院見学などしなくてもいいのでは?」と考えるかもしれません。

しかし、患者として来院するのと将来の職員として実際に病院の雰囲気を体験するのでは、大きな違いがあります。患者から人気のある病院であり、患者に対して医師や看護師が親切だとしても、職員にとって働きやすい職場だとは限りません。

例えば患者さんが目にする側の施設はきれいだったとしても、ナースステーションなど内部は乱雑であり、インシデントが頻発しそうなほどまったく整理整頓ができていないケースがあります。こうした実態は実際に病院見学しなければ分かりません。

病院やクリニック、施設を含めて「医師や患者さんの様子」「看護師同士の関係」「病院周辺の環境」などは、実際に希望する職場の裏側に足を運ばなければ実感できないのです。

このようなことから必ず病院見学を行い、職員のちょっとした言動などを細部まで読み取り、自分にとって働きやすい職場であるか確かめるのは必須なのです。

職場見学は転職サイト経由なので申し込みは楽

そうしたとき、どのようにして病院見学・施設見学を実施すればいいのでしょうか。これについては、一般的に看護師では転職サイトを通すことになるため、特に面倒な手続きを取ることはありません。転職サイトの担当者がすべての段取りを代行してくれるからです。

転職サイトを利用すれば、希望条件についてヒアリングされたあと、その条件に合う中途採用募集を提示されることになります。そうした条件に合致すれば面接をセッティングしますが、通常は「面接日=職場見学の日」となります。

事前に病院見学したいことを伝え、面接後に実際に働くであろう職場がどのような環境になっているのか確認するのです。もちろん、職場見学によって微妙だと感じた場合、内定辞退するのは何も問題ありません。

あなたの希望条件が合致していることを前提にして面接を受け、その後に病院見学することで、最終的な相性を確認するのが一般的な転職の手順となります。

メール・電話で職場見学を申し込む

そのため職場見学のセッティングで特別な手続きをする必要はありません。ただ場合によっては、転職サイトを通さずに自ら申し込む人もいます。その場合、事前にメールや電話で職場見学の申し込みを自分でしなければいけません。

このときは面接についても同時にセッティングしてもいいし、病院見学・施設見学だけでも問題ありません。そうしたとき、規模の大きい病院なら看護師の募集ページがあるため、そこからメールまたは電話で問い合わせするようにしましょう。

「〇〇(病院名) 看護師 募集」などで検索すれば、以下のようなページが出てくるようになります。

またクリニックや介護施設だと、こうした専用ページが存在しないケースは多いです。その場合、公式サイトにあるメールアドレスや代表番号に問い合わせするようにしましょう。

ちなみに一般的には、電話ではなくメールで問い合わせをします。電話だと相手の時間を奪いますが、メールでは相手の好きなタイミングで返信できます。そのためメールを選択しますが、以下のような文面を送りましょう。

【件名:病院見学の依頼(看護師)】

医療法人〇〇会 〇〇病院 人事課

〇〇様

突然のご連絡失礼いたします。

看護花子と申します。

現在、貴院への転職を考えており、ぜひ病院を見学させていただきたいと考えています。

お忙しいところ恐縮ですが、下記の日程のいずれかで見学は可能でしょうか。

・〇月〇日:13:00~17:00
・〇月〇日:10:00~12:00
・〇月〇日:10:00~17:00

ご多忙のなか恐縮ではございますが、ご検討いただければ幸いです。

何卒よろしくお願い申し上げます。

こうしたメールを送るようにしましょう。上記の文面をコピペし、そのまま活用すれば問題ありません。自分でセッティングする場合はどうしても面倒な作業が発生しますし、勤務するときの条件交渉も大変ですが、こうした作業を行うようにしましょう。

中途転職では服装や態度など、病院見学でのマナーを守る

なお病院を実際に見学するとき、服装や態度を含めて社会人としてのマナーを守るようにしましょう。あなたが病院や施設側の実情を確認する側ではありますが、同時に面接の延長線でもあるからです。

病院見学で気を付けておきたいマナーについては以下があります。

  • スーツを着用していく
  • かかと音のする靴を履いていかない
  • 髪色は明るすぎない色を選ぶ
  • 職員・患者さんとすれ違うときは挨拶を忘れない
  • 仕事の邪魔にならないように配慮する

例えば、以下のような服装で職場見学をするのが普通です。

病院見学といっても、採用側はすでにあなたの人柄や社会人としてのマナーをチェックしていると思っておいたほうがいいです。

ただ病院見学・施設見学のとき、「もう選考が始まっている」と極度に緊張する必要はありません。緊張しすぎると視野が狭くなり、「中途募集の職場の中身をしっかり把握する」という本来の目的を達成できなくなってしまいます。

病院見学は採用側と応募側の両方がお互いを見定める場です。病院見学を通して、あなた自身も「私が病院選考を実施している」という気持ちを忘れないようにしましょう。そうすれば職場見学の間、冷静になって求人先の良い面・悪い面を確認できます。

病院見学の流れはどうなるのか

それでは、実際の病院見学の具体的な流れはどうなるのでしょうか。個人病院やクリニック、介護施設であれば担当の人にそのまま施設を案内されることになります。

一方で大きな病院の見学では、初めに病院概要や新人看護師への研修などの説明があります。その後、担当者と一緒に院内を回り、1科につき30分から1時間ほどの見学が行われます。病院見学は半日ほどのため、見学できる科は2~3科くらいです。

そして見学した後に担当者へ質疑応答を行い、挨拶をして終了といった流れになります。

このとき見るべきは現場だけではありません。その他の部分についても確認しておきましょう。例えば病院であれば、基本的には病院内に食堂があります。そこでの値段やメニュー内容は日々のやる気に直結するため、病院見学後は個人的にチェックする必要があります。

いずれにしても、気になる部分はすべて確認しておくようにしましょう。

病院見学で確認し、質問で聞くべきこと

なお、病院見学・施設見学で担当者に案内してもらうにしても、どのようなことを質問すればいいのでしょうか。何を聞けばいいのか事前に知っておくことで、「中途採用募集を出している求人先が優れているのか」について、より深く確認できます。

このとき、「希望する科に問題なく所属できるのか」「日々の仕事内容はどのようになっているのか」を確認するのは、どの看護師であっても全員が行います。ただ、もちろんそれ以外のことを重点的に確認しなければ、本当の意味で優れる職場かどうかは分かりません。

常勤に限らずパート・アルバイトでの申し込みでも職場見学は普通なので、以下の点を確認するようにしましょう。

  • 看護師の平均年齢
  • 勉強会や委員会などの頻度
  • 福利厚生の詳細(託児所や手当など)
  • 看護師の様子や生の声

これらを確認できれば、求人票や公式サイトからでは見えてこなかった職場の現状が分かってくるようになります。

看護師の平均年齢(勤続年数)は非常に重要

第一に確認するべきは平均年齢です。ここから、どのような職場なのか平均的な勤続年数を含めて推測できるからです。一般的に、平均年齢まで公になっているケースは稀なので、職場見学の際に確認するのです。

特に急性期病院で夜勤が当然だと、仕事内容はハードになりやすいです。その結果、妊娠・出産を経験した看護師は去っていきます。つまり「平均年齢が若い=非常に忙しい職場」となります。

若い看護師で看護技術やスキルを磨きたい場合、そうした平均年齢の若い病院へ転職するのは優れているといます。一方で育児中だったり、50代など高齢での転職だったりする場合、平均年齢がある程度高い職場を選ぶほうがいいです。

またクリニックや施設なら関係ないですが、総合病院や大学病院の場合は希望する科によっても平均年齢が異なります。病院全体の平均年齢は高めだったが、希望する科の平均年齢は非常に若く、激務であるケースはよくあります。

質問の仕方としては「大変活気のある職場だと感じたのですが、看護師の平均年齢はどれくらいでしょうか」などと担当者に尋ねてみるといいでしょう。

看護師の平均年齢から「勤続年数はどれくらいか」「出産・育児といったライフイベントがあっても働きやすいか」などを推測できるようになります。

勉強会・委員会の頻度や残業時間を聞くべき

他には、勉強会や委員会が開催される頻度はどの程度でしょうか。病院によっては、自分の所属する科とは全く異なった勉強会や委員会への出席を義務付けていることがあります。またクリニックについても、勉強会を実施することがあります。

勉強会などで自分の看護技術を向上させることは大切ですが、頻繁に専門外の勉強会へ半強制的に参加しなければならないのは負担になります。

勉強会は半強制的に参加するよう入職後に強いられるケースが多く、家庭のある人だとかなりの負担に感じます。若くて勉強を望む看護師だと優れていますが、そうでない場合は微妙です。そこで、職場見学で確認しておきましょう。

・残業時間について

また、残業時間についても具体的な時間を聞くといいです。この場合、「みなさんはどのくらいの時間に帰宅されているでしょうか」と尋ねましょう。

看護師の残業は当たり前という風潮の求人先がそれなりにあります。残業時間は必ずチェックしておきたいポイントのひとつです。

託児所や手当など福利厚生は労働環境に影響する

他にも重要なのが福利厚生です。先ほど少し解説した「食堂の値段やメニュー内容」にも共通しますが、福利厚生の内容がどうなのかは、あなたにとって働きやすい職場かどうかに直結します。

例えばママ看護師であれば、託児所の実態がどうなのか気になります。「託児所の教育内容」「預けられている子供は楽しそうか」「預かり時間はどうなっているのか」などは確認しなければいけません。

これらを病院見学のときに確認するべきなのは、実際にその場に出向いてこの目で確かめてみなければ内情が分からないからです。

他にも、住宅手当など細かいことを聞かなければいけません。例えば以下の求人票では「住宅手当の支給には条件有」なっており、具体的な条件が記載されていません。

また「住宅手当がある」とだけ記されており、具体的な金額が記載されていないケースも多いです。そこで、こうした細かいことをヒアリングするのです。

年収や労働条件の交渉とは異なり、福利厚生は医療機関や施設ごとに既に決まっています。そのため福利厚生の具体的な内容を聞くことは失礼ではないですし、聞きやすい質問の一つだといえます。

現場で働く看護師の生の声を聞く

さらには、職場見学で非常に重要になるのが「実際に現場で働く看護師の様子」です。特に入社して間もない看護師が楽しそうに働いており、あなたが職場見学のときにそのような看護師へ質問しやすい環境となっているかチェックしましょう。

病院見学で新しい看護師に笑顔が見られなかったり、何か微妙な印象を受けたりするようであれば、あなたも将来、同じ状態になる可能性が高いといえます。

また面接をする人は師長や院長など上の立場となりますが、実際に現場で働く看護師にヒアリングするからこそ分かる実状は多いです。例えば有給休暇や育児のしやすさ、残業時間など「ぶっちゃけどうなっているのか」は現場の看護師に聞けばすべて把握できます。

職場見学というのは、担当者に案内されて気になる箇所を確認するだけでは不十分です。そうではなく、将来の同僚になるかもしれない看護師から積極的に生の情報を聞き出すようにしましょう。

病院見学後に実施したい「お礼状メールの送付」

こうして病院見学を終えた後、中にはお礼状を送付しなければいけないと考える人がいます。これについては、転職サイトを通して面接&病院見学を実施している場合、お礼状を送付する必要はありません。すべての段取りは転職エージェント経由になるからです。

一方でホームページなどから個人的に申し込んで病院見学を行う場合、あなた一人のためだけに病院の採用担当者は病棟との細かいスケジュール調整をしてくれています。そのため、見学終了後すぐに採用担当者にお礼状を送るようにしましょう。

これは、社会人のマナーだといえます。

ただお礼状とはいっても、手紙を送付する必要はありません。相手にとって、わざわざ手紙を開ける手間が面倒ですし、あなたにとっても煩雑となり郵送料も発生します。そうではなく、メールにてお礼状を出すようにしましょう。

このときのテンプレートは以下のようになります。

【件名:病院見学のお礼】

医療法人〇〇会 〇〇病院 人事課

〇〇様

本日はお忙しいなか、病院見学をさせていただき、誠に感謝申し上げます。

〇〇様から実際に病院内部のお話を伺い、また貴院の医療に対する誠実性に触れることができ、改めて貴院の一員となりたいという思いを強く抱きました。

本日は、貴重な経験をさせていただき、大変感謝しております。

まずはお礼を申し上げたくメールさせて頂きました。

今後ともよろしくお願い申し上げます。

お礼状メールでは感謝の気持ちを伝えると同時に、採用担当者に対してあなたの心象を良くする目的があります。ただ内容は上記のような感じになるため、そのままコピペして活用しても問題ありません。

ただ前述の通り、転職サイトを利用する場合はお礼状は不要です。ほとんどの看護師は転職エージェントを活用するため、実際のところ不要となるケースは多いですが、自分ですべてのセッティングをする場合はこうしたお礼状メールを送るようにしましょう。

病院見学・施設見学で採用先の情報を集める

看護師が転職するとき、中途採用の募集先にて面接を受けるだけでなく、他に必ず実施するべきものが病院見学・施設見学です。

病院見学では職員の様子や仕事ぶりを確認することで、「自分がこの病院で働いたらどうなるのか」と具体的にイメージできるようになります。また求人票の内容や条件面だけでは分からなかった内情を把握できるようになります。

これらの情報は大変貴重です。どのような人が働いているのか知れるだけでなく、現場で働く看護師にヒアリングすることで「実際のところ職場環境はどうなのか」まで聞けます。

こうした情報を積極的に集めるからこそ、入社後のギャップがなくなります。転職時に職場見学をするのは必須です。事前にどのようなことを確認し、質問すればいいのか理解したうえで、病院見学・施設見学にて優れた求人先かどうかを判断するようにしましょう。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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