精神科で看護師をしていると、「一般的な看護スキルが身に付いていないから、転職する際に苦労する」という話を耳にしたことがあると思います。精神科では高度な看護スキルが要求されるわけではないため、使えない看護師になるというわけです。

しかしそのようなことはなく、精神科から一般科の求人へ申し込むことは可能です。「私は精神科で勤めてきたから、採血などの看護スキルが少なく転職できない」と自分を卑下してはいけません。

実際のところ、一般科で使う看護スキルはその科に属して1年も経験すればそれなりに身に付きます。しかし、あなたが実際に精神科で看護を行い、培ってきた経験は短期間で身に付くものではありません。精神科での経験はあなたの強みになるのです。

そこで精神看護の知識や技術が必要とされている理由について述べ、精神科看護の経験を他の応募者にはない強みとして転職に活かす方法を解説していきます。

一般科でも精神看護の技術や知識が必要

実際のところ、一般科でも精神科で培った看護スキルや知識が必要になります。人間の精神と身体はもともと分けることが困難です。身体の健康を損なった結果、病気を抱えてしまうと精神的にも悪影響を受けやすくなります。

また、衣食住がいままでとは全く異なる環境におかれる入院生活となると、ストレスを抱えるケースも多く、身体的にも精神的にも不安定になりやすいです。

一般科において「病気や入院が原因で、患者さんがいつもと違う心の状態で苦しんでいる」という場合、看護師による精神的なサポートが求められているのです。

もちろん「うつ病患者の増加」「減らない自殺者」という社会的な背景も、一般科での精神看護が必要といえる理由の一つです。うつ病患者や統合失調症患者は精神症状ではなく身体的症状を訴えて、内科や外科など一般診療科を受診する場合が多くなっているのです。

このような現状から、一般科でも精神看護での知識や技術が必要とされるのです。

病気が精神症状を異常化させるのは普通

実際のところ、特定の病気が精神症状を悪化させるのは普通です。そうしたとき精神科看護師の経験は大いに役立ちますが、例えばがん患者さんは「がん告知に始まり、治療に伴う苦痛、再発や転移の不安」など、さまざまなストレスと対峙しなければならないため、多様な精神症状を生じやすくなります。

がん患者は特に「抑うつや不安」といった精神症状が出やすく、がん経過の中で危機的な状況に対する反応として適応障害と診断されるケースがあります。

そこで患者さんの苦痛を緩和する対応としてサイコオンコロジーなどの必要性が叫ばれています。

サイコオンコロジー(精神腫瘍学)とは、心理学(サイコロジー)と腫瘍学(オンコロジー)を組み合わせた造語です。サイコオンコロジーでは、がんが「がん患者さんとそのご家族に精神的に与える影響と対処法」について検討し、QOL(生命・生活の質)を改善していくことを目的としています。

がん患者に対する看護師は、がん患者さんの治療段階に応じて「どのような精神的反応を示すのか」を把握し、患者さんの状況に適切な対応をとることが望まれます。

精神科看護師一年目でも30代でも転職可能

なお、そうはいっても精神科看護師から一般科へ挑戦するのは大変です。一般科に比べると、どうしても看護スキルが乏しくなってしまうため、「一般科にとって最初は使えない看護師」となるからです。もちろん仕事内容はハードであり、新たに覚えることもたくさんあります。

ただ精神科看護師の一年目であっても、30代であっても転職可能というわけです。さすがに40代以降で精神科から一般科看護師を目指す人は少ないですが、30代までなら問題なく転職可能だといえます。

そうしたとき非常に忙しい急性期病院への転職を考えてもいいですが、精神科とのギャップが大きすぎるので、かなり大変な思いをすることになります。そこで、以下の求人が狙い目です。

  • ケアミックスの中規模病院
  • 内科クリニック

これらの中途募集が優れているのは、もちろん理由があります。それぞれについて、どのようになっているのか確認していきます。

ケアミックスの中規模病院を狙う

規模の大きい急性期病院だと、急患がひっきりなしに病院へ送られるようになり、精神科看護師のみの経験者だと何をどう対応すればいいのか見当がつきません。

そこで、ある程度の救急患者は受け入れるものの、救急車で急患ばかりが来る病院ではなく、中規模のケアミックス病院を考えます。こうした病院であれば、病棟が存在するとはいっても「急な大病で運ばれてきた患者ではなく、事前に医師から問診を受けて入院日を決めた後に入院する患者さん」を相手にすることになります。

そのため急性期の大病院に比べると、常に慌ただしく動き回ることはありません。また意識のしっかりしている患者さんを相手にすることが多く、そうした患者さんは手術前や手術後を含めて不安を抱えています。そうした患者さんのケアをするのは、精神科看護師の得意分野だといえます。

例えば、兵庫県にある以下のような求人募集がこれに該当します。

急性期から療養、介護まで備えるケアミックス病院になります。療養中心ではあるものの、内科や外科、整形外科、脳神経外科、リハビリテーションと幅広く備えているケアミックス病院のため、一般科の看護師として広く業務を学ぶことができます。

精神科から一般科看護師を目指す場合、こうしたケアミックスならある程度まで落ち着いて仕事することができ、さらには一般科での病棟業務・仕事内容を経験できます。

内科クリニック求人で一般科看護師スキルを身に付ける

他には、内科クリニックで勤務するという方法もおすすめです。もちろん、「小規模で問診メインの内科」だと高度な医療技術を学ぶことはできません。ただ内科クリニックによっては、大型の医療機器を用いるなど、それなりの設備を備えているケースがあります。

例えば私が勤めるクリニックだと、人間ドックでの健診を行えるようになっています。そのためそれなりの設備を備えており、例えば以下は院内にあるCT検査の機器です。

精神科から一般科の看護師を目指す場合、必ずしも病院だけがすべてではありません。もちろんクリニックなので、大病を患った急患が訪れることはありません。ただ、病院の一般科で働く看護師が身に付ける技術の多くを内科クリニックで習得することは可能です。

・有床クリニックでも問題ない

または、有床クリニックで勤務しても問題ありません。これであれば、ケアミックス病院で働く看護師と同等の技術を学べるようになります。例えば東京にある以下の有床クリニックがこれに該当します。

成人から高齢者の患者さんがメインであり、入院では肺炎や尿路感染症、イレウス、心不全などの症状が基本となります。また病床数が限られているので療養ではなく、数日ほど入院して帰宅していく患者さんがメインです。

そのため慢性期病棟のように同じ看護の繰り返しとなることはなく、それでいて一般科看護師としての技術を得るには優れているといえます。また患者さんを看取ることもなく、そういう意味では精神的にも楽です。

一般科で精神看護を活かす

これらの求人を見据えたうえで、精神科から一般科への転職を考えなければいけません。こうした求人であれば、精神科としての経験を活かしつつ、一般科の業務についても広く学べるからです。また、いまの仕事とのギャップも少なくて済みます。

それでは、実際に一般科へ転職するにしても、精神看護の活動をどう活かせるようになるのでしょうか。例として、抑うつのある患者さんへの対応についての具体例を挙げます。

Sさんは80代の男性で、肝臓がんの患者さんです。この病気を患ってから、悲観的で泣いてばかりいました。Sさんは「このような病気になってから、年老いた妻に迷惑をかけるだけ。遠くに住んでいる息子にも娘にも申し訳が立たない。早く死んだほうが家族のためだ」と訴えていました。

あるとき同じ病室の患者さんが亡くなり、家族が泣いているのをカーテン越しにSさんは聞いていました。「泣いてくれる家族がいるのはいいですね。私のときには泣き叫んでくれるのかな」とケアに来たY看護師に言いました。

精神科で経験のあるY看護師は、Sさんの思いを受け入れて「泣いてくれる家族がいるのは良い人生を送ってこられた証ですね」というと、Sさんは軽く頷きました。

それからSさんはY看護師に「奥さんと結婚してからの苦労話や子育てで自分が頑張った話」など、ときには泣きながら、ときには怒りながら語るようになりました。

Sさんは若いころの思い出について繰り返し語るようになってから、表情がだんだんとイキイキとしてきて、楽しそうな様子を見せるようになりました。「愛のある家庭で育って、愛のある家庭を作ってきたんだな」とY看護師はSさんから伺うことができました。

依然として「早く死にたい」という言葉を発するものの、Sさんからは笑顔も見られるようになりました。

患者さんから「早く死にたい。私には価値がない」という訴えを聞くと、看護師として「そんなことはない」と否定したり、頑張るように励ましたりしたくなります。しかし、それでは患者さんの助けにはなりません。

まずはY看護師のように相手の思いを否定せず、受け入れることが大切です。

しかし、抑うつ状態にある患者さんは自分のなかにある狭い世界でしか物事を考えられなくなっているケースが多いです。そのため、患者さんの気持ちを受け入れつつも、異なる考えや価値観を示さなければいけません。

そうしたとき、精神科での勤務経験が役に立ってきます。病気と精神状態の悪化は切り離せない存在ですが、精神科で学んだことは一般科でも活かすことが可能なのです。もちろん転職時では、履歴書や面接でそうしたことを自己PRすることにより、採用されやすくなります。

精神科で培った看護経験は患者さんの支えとなる

人にはそれぞれに生きてきた歴史とストーリーが存在します。そのため、病気やケガの受けとめ方や対処の仕方は人によってさまざまです。

まずはその違いを認めるところから患者さんへの心のケアが始まります。このような看護については、精神科で勤務してきた看護師だと能力が長けているといえます。もちろん一般的な看護技術は劣ってしまいますが、患者さんへの同調スキルは高いのです。

そこで、こうした技術を一般科でも活用するようにしましょう。もちろん採血くらいしかできない場合、最初は「使えない看護師」となるかもしれません。ただ最初は全員がスキルゼロの状態から始まりますし、一般科ではあっても1年も経てば、問題なくあらゆる技術を習得できるようになります。

ただそうはいっても、申し込む中途採用先は選ぶようにしましょう。おすすめはケアミックス病院や内科クリニックですが、こうした求人への転職であれば、精神科看護師として学んだことを活かしつつ一般科で活躍できるようになります。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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