「今は看護師として勤務しているけれど、やはり保健師の夢を諦めきれない」と考え、看護師から保健師への転職の意思を固める人は多いです。

看護師と比べて保健師のほうが、「夜勤がない」「残業が少ない」「土日休みが多い」「力仕事が少ない」といった理由から家族との時間を合わせやすく、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)のとりやすい職種といえます。

男性にも女性にも保健師は人気求人であるため、履歴書の志望動機では多数の応募者の中か「ぜひ会ってみたい」と採用側が思う内容に仕上げることが大切です。

そこで「なぜ看護師のキャリアを捨ててまで保健師になりたいのか」「どのような志をもって保健師という職業に選びなおしたのか」を明確にして志望動機に記載しましょう。そうすることで、面接前から採用側は「あなたが保健師として活躍する姿」をイメージできるようになります。

このような自己PRを書くには、事前にしっかり志望動機の対策を練っておく必要があります。今回は、看護師から保健師に転職希望の方の志望動機の書き方についてお話していきます。

履歴書の志望動機は採用側に行う最初のアピール

履歴書には学歴や資格などを記載する欄があります。ただ応募者の人柄や仕事への意欲の把握には志望動機欄が重視されます。志望動機は採用側への最初のアピールの場になり、あなたの仕事への取り組み方を採用側に印象づける上で志望動機を熟慮しなければいけません。

ただ下の写真を見てもらうと分かる通り、志望動機の欄は非常に狭いです。

そのため言葉を慎重に選んで、分かりやすく伝える必要があります。簡潔に分かりやすく、しかも仕事への意欲をイメージしてもらえるように作成すればいいのです。

応募者の能力で優劣をつけがたい場合、採用側は志望動機を決め手とします。そのくらい志望動機には十分な対策を行い、「この人に会いたい」と採用側が思うように作り上げていく必要があるのです。

ちなみに履歴書の資格の欄には、看護師免許と保健師免許の両方を取得したことを記載しておきましょう。例えば、以下は私の保健師免許証です。

履歴書の免許・資格の欄に「〇〇年〇月 保健師免許 取得」と記入します。もちろん看護師免許の取得も資格欄に記入しておく必要があります。

なお、履歴書にはさまざまな種類があります。先ほど紹介した「志望動機、特技、アピールポイントなどを一つの欄にしているJIS規格のもの」だけでなく、「志望動機や自己PRなどを別々に、詳細に記入できるもの」などもあります。

このとき求人先に指定が無ければ、どのようなタイプの履歴書を使用しても問題ありません。自分を最大限にアピールできるものを選ぶといいです。

志望動機には保健師未経験でも看護師経験と保健師志望理由を書く

なお保健師を目指す場合、保健師未経験の人が多くなります。看護師から保健師に転職希望の人が多いわけですが、志望動機に必ず入れておくべきポイントがあります。

看護大学や看護学校などを卒業して新卒で保健師を目指す人と違って、あなたには「看護師をしていた」という経歴があります。つまり一般的な保健師よりも遠回りしていることになります。

ただ、看護師としてのキャリアを「保健師へ転職する際のメリットと捉えるか、デメリットと捉えるか」はあなた次第です。そこで、「看護師の経験があるからこそ、保健師として広い視点で物事を見られる」ようにアピールしましょう。

そのため「なぜ看護師から、保健師未経験で保健師へ方向転換するように考えたのか」「保健師になった際、看護師の経験をどう活かしていくのか」という二つの内容を志望動機に織り込むようにしましょう。

保健師になりたい理由ばかり書いていては、看護師経験のない新卒の保健師希望の学生が書いた自己PRと大差がありません。そうではなく、最初から保健師になった人だと身に付けていない「看護師の経験」こそがあなたの強みなのです。

中には、「新卒で保健師を希望する人のほうが就職には有利ではないか」と考える人がいるかもしれません。もちろんそうではなく、例えば以下は岐阜県にある総合病院の保健師の応募要項です。

新卒ばかり欲しいのであれば、応募資格には新卒のみとするはずですが、実際にはこのように「新卒・既卒を問いません」とあります。これは採用側の考えとして、新卒の保健師を採用して長期雇用を図りたい反面、看護師など他の経歴をもった応募者や経験者を採用したい気持ちがあるからです。

職場が新卒ばかりになってしまうと、その職場で教えられたことそのまま行う人が多くなります。それでは職場内の活性化は図れません。

そこで、違う経歴や職歴をもつ中途採用者によって新しい風を吹かせ、職場内を活性化させるのです。特に看護師経験がある中途採用者は即戦力になります。また、医療知識をスムーズに取り入れていくことも可能になります。

このようなことから保健師への転職では、新卒採用のときのように保健師の魅力だけを志望動機として書くのでは不十分です。

既卒者は求められることを自己PRする

また他に考えるべきポイントとして、新卒以外の他の応募者との差別化された志望動機に仕上げることが挙げられます。具体的には「なぜ他の中途採用の応募者ではなく、私を採用したほうがいいのか」という点です。

多くの応募者は、自分のアピールポイントばかりに気を取られ、他の応募者との差別化を図っているケースが少ないのです。

一般的に志望動機となると、「保健師としてやりたいこと」「保健師として求められること」ばかりを書き連ねる人がほとんどです。ただ、それだけでは新卒の入職希望者と大差はありません。

そこで看護経験を活かし、「保健師としてできること=採用先で何に対して貢献できるのか」を加えて記述しましょう。

それでは保健師に転職希望の看護師について、採用されやすい志望動機の回答例について述べていきます。一言で保健師といっても、行政保健師から企業保健師まで様々です。そうしたとき、保健師が就業している場所はおおまかに以下のとおりです。

  • 病院・クリニック
  • 市区町村・地方自治体の保健センター
  • 地域包括支援センター
  • 都道府県が管轄する保健所
  • 一般企業
  • コールセンター
  • 介護保険施設などの福祉施設
  • 訪問看護ステーション

ここでは保健師の求人募集の多い、「病院・クリニック、市区町村自治体の保健センター、一般企業」に応募する際の志望動機の書き方や例文について述べていきます。

病院・クリニックの健診センター保健師へ転職する志望動機の書き方

保健師募集といえば、かつては就業場所が「都道府県の保健所」「市町村・自治体が運営している保健センター」など行政保健師や、企業の産業保健師が中心でした。しかしいまでは、病院やクリニックでの保健師の募集が増えています。

病院やクリニックでは保健師が中心となり、健診センター内で保健指導をしたり、地域医療連携室で退院支援をサポートしたりする仕事があります。

病院での保健指導とは、生活習慣病などの患者さんに対して食事や運動の指導を担ったり、職員の健康指導をしたりする仕事になります。以下は神戸にある総合病院の健診センター内の保健師求人になります。

このように健診センター内で、保健指導や健診業務を行うのが主な仕事です。

また、地域医療連携室での退院支援であれば、治療が終わって退院となったものの、自宅や他施設での療養に不安を抱える患者さんに対して、関連施設(訪問看護ステーションや行政)との調整を行います。

ここでは求人数の多い健診センターでの保健師へ転職希望の場合の志望動機例文を挙げます。

慢性期病棟で3年間看護師として勤務していましたが、糖尿病が悪化して再入院する患者様の数の多さを実感しました。糖尿病を患った患者様では教育入院したにも関わらず、他人事のように病気をとらえ、透析に至る人が多くいました。

私は、患者様が持病を前向きにとらえられるよう予防医療の重要性について感じるようになりました。御院は予防医療に積極的で、御院での再入院の患者数は少ないと聞いております。

御院で保健師として、いままで培った看護師としての医療知識を活かしながら、患者様の自立支援に寄与していけたらと考えております。

こちらの志望動機には、いままでの自分の看護経験を活かしつつ、「保健師としてどのような貢献ができるのか」を盛り込んでいます。また希望する医療機関の強みなどを知り、それを明記することで「ここで勤めあげたい」という意思が伝わってきます。

市区町村・自治体の行政保健師へ転職希望の自己PR例文

次に、市町村の行政保健師(公務員)を希望している方への志望動機の書き方です。まずは市町村の保健センターで働く行政保健師の業務内容を知ることが大切です。

市町村の行政保健師が担う業務の中心は、多い順に母子保健、地区担当、健康づくり、精神保健、生活習慣病となっています。保健センターに勤務する保健師の多くは、母子保健業務と地区担当業務に関わっています。

母子保健業務とは、「妊婦さんが健康を維持しながら安心して出産を行い、出生した赤ちゃんが健やかに育ち、産婦さんの育児に対する困難を少なくするよう支援する仕事」になります。

具体的な仕事内容としては、母子健康手帳の交付、母親教室、新生児の訪問指導、乳児健診、3歳児健診などです。

地区担当業務では、一人の行政保健師に一定の地区が任されます。その地区内の育児相談、精神疾患患者の支援、身体障がい者の支援など健康にかかわる相談を担当するのが主な仕事です。個別の相談に応じて解決していくだけでなく、担当地区全体が健康になるように分析して健康づくりを推進していきます。

例えば、以下は埼玉県にある保健センターの臨時職員の求人になります。

仕事内容は、健診業務や保健指導、健康教育などです。保健センターでは臨時職員を雇用する求人が出ることが多く、希望する市区町村の求人を見逃さないように気を付けましょう。

次に市町村の行政保健師の業務の中でも、地区担当業務を希望する場合の自己PR例文をあげてみます。

私は精神科の看護師として4年間勤務してきました。あるとき私の担当の患者様に「再度、在宅に戻り家で暮らすことができる」という話が出て、私は初めてその患者様の笑顔を見ることができました。

これを可能にしたのは「保健センターの保健師さんの支援があったためだ」という事実を知りました。このときから私は生まれ育ったB市の保健師になりたいと強く願うようになりました。いままで培ってきた精神科看護の経験や知識を生かしながら、精神疾患の患者様をはじめとして多くの人々の笑顔を引き出せるよう、活躍していきたいと思っています。

上の志望動機は、看護師として体験した具体例を提示し、市の保健師の業務内容を入れた内容となっています。

志望動機に体験談を入れて具体的な内容に作り上げるほうが、採用側にとってイメージしやすく分かりやすい内容になります。具体例はダラダラと伝えるのではなく、要点を簡潔にまとめるほうが読みやすくなります。

産業保健師(企業保健師)希望の志望動機例文

次に、一般企業に勤める産業保健師(企業保健師)の志望動機例文について述べていきます。

産業保健師は健康診断や保健指導などを通して、企業に勤務する様々な年代の社員の健康維持・増進を担当し、企業全体の生産性を向上するよう支援します。

企業の一員として健康管理センターで働くほか、労務部門の総合職として勤務したり、企業の健康保険組合や独立した労働衛生機関、検診機関などで働いたりする保健師もいます。

産業医と協力して、健康に問題を抱えた社員が医療を受けられるように促したり、うつ病などの精神疾患で長期間休養を取っていた人が再び働けるようにサポートしたりする業務があります。

産業保健師の場合は、保健師といっても企業の一員となるので、その企業の経営方針や理念などしっかり情報収集し志望理由に活かしましょう。企業理念と自分の経歴や経験で使えそうな部分を取り出して深く掘り下げ、志望動機に活用するとよいでしょう。

一例を挙げると、以下は東京都にある労務管理や健康管理部門のコンサルティングをしている企業の保健師求人になります。

規模の大きな企業の保健師であるほど、福利厚生や賞与、昇給率などが良く、人気の求人になるため、早めの応募が必須です。この企業と決めたら、すぐに情報収集に取り掛かるようにしましょう。

参考までに、以下は産業保健師の志望動機例文です。

私の前職は内科の看護師でした。私は患者様に強制するのではなく、患者様の行動や生活習慣を聞き出し、患者様の行動変容を促す関わりを意識してきました。

その結果、多くの患者様が自分から病状改善に取り組み、患者様の職場復帰の一端を担えてまいりました。これは御社の「共に解決していく」という理念に近いものであると自負しております。

これまでの看護師知識や経験を活かし、今後は保健師としての専門性のもと、保健活動に従事させていただきたいと考え、御社への入社を強く希望いたします。

上記の志望動機は企業理念を理解していることを織り込みつつ、「私を採用するメリット」についてもアピールしています。企業の場合は企業理念を研究し、志望動機に入れておくとよいでしょう。

このときは「企業風土がよさそうだから」「育児環境が整っているから」「雇用条件が良いから」など、誰もが分かっている内容を書くべきではありません。

志望動機を書き終わったら何度も読み直して、どの企業でも通用しそうな志望動機になっていないか確認しましょう。もし数社の履歴書を書く場合であっても、応募先の企業ごとにオリジナルの志望動機作成が原則となります。

保健師希望なら転職サイトを利用すべき

病院・クリニック、行政、企業の保健師の志望動機の書き方についてお話してきました。保健師はとても人気のある求人であり、ときに倍率は10~20倍を超してしまうケースがあります。

また、応募を考えたときにはもう募集が終わっていたということも考えられます。そのくらい保健師の倍率は看護師求人の比ではありません。

保健師採用という狭き門を突破するには、求人が出たら自分の条件に合っているかを見極め、履歴書や面接、筆記試験の準備をすぐに始めることが大切です。そこで、3社以上の転職サイトに登録しておいたほうが良いです。

選択肢を増やしておくほど、多くの求人の中から保健師の募集を選ぶことができます。さらにはあなたが仕事で忙しくても、転職サイトのほうから保健師の求人情報を教えてくれたり、希望する企業は「どのような人物を今回の求人で採用したいか」といった具体的なアドバイスを提供してくれたりします。

特に企業への転職だと、いまは転職サイトを利用するのが当たり前となっています。転職コンサルタントが年収・給料交渉などをあなたの代わりにしてくれるため、勤め始めから満足した労働環境を手に入れられるようになります。

市区町村などの行政保健師も転職サイトで募集がある

なお、「市区町村などの行政保健師の求人は市から申し込みを行うのであって、転職サイトでは募集していないのではないか」と不安に思う人がいるかもしれません。

しかし、市区町村の行政保健師も転職サイトから募集がかかっているケースが多々あります。実際に私は保健師資格をもっているため、年に1~2回、登録している転職サイトから「市の保健師求人が出たけれど、どうだろうか」といった電話がかかってくることがあります。

実際に、以下は転職サイトに出ている、市が管轄する地域包括支援センターの保健師求人です。

このように、転職サイトは行政とのつながりをもっていることがあり、市区町村の保健師など行政希望の看護師も転職サイトを利用したほうがいいです。

保健師へ転職する履歴書の書き方を理解する

保健師への転職を考えるとき、既に保健師としての経験がある人に限らず、既卒の看護師が未経験で保健師を目指す場面が多々あります。

もちろん保健師の経験者であれば、履歴書を書くのはそこまで難しくありません。ただ既卒の看護師であっても、看護師としての経験があるので、これを強みとして履歴書で自己PRすれば問題ありません。

このときは新卒の保健師希望の人のように、志望動機に自分が実現したいこと、希望していることを単に述べるだけでは十分なアピールとはなりません。そこでこれまでの経験を記載し、さらには「求人側があなたを保健師として採用するメリット」について志望動機にしっかり書き込んでいきましょう。

そこで書き方や例文を含めて記しましたが、これらを参考にしたうえで、あなた独自の志望動機を考えましょう。そうして、保健師として最初の書類選考を突破するといいです。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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