病棟勤務は夜勤や残業などが多く、体力的に限界を感じる看護師が多くいます。その点、クリニックであれば一般的に夜勤はなく、自分のペースで仕事を行えるといわれています。そのため、病棟からクリニックへの転職を考える看護師が多いです。
しかし、せっかく希望するクリニックに勤め始めることができたにも関わらず、短期間で退職を余技なくされることがあります。これはなにが原因なのでしょうか。
看護師が転職する際、クリニックに関する一般的な常識やウソの情報に惑わされて、自分の思い描いていた内部事情とは異なる求人へ転職することがあります。病院からクリニック求人へ転職するにしても、病棟との違いや注意点を事前に把握しておかなければいけません。
そこで病棟からクリニックに転職したい看護師が知るべき「クリニックへ転職するときに考えるべきこと」について確認していきます。
もくじ
土曜日出勤はあるが、夜勤がないのはどこも共通
手術を行う有床クリニックは例外にしても、ほとんどのクリニックは入院設備が存在せず、結果として夜勤は存在しません。看護師として転職を考える場合、病院からクリニックへ転職するときの最大の違いがここにあるのは看護師全員が理解しています。
クリニックであっても、ほとんどのケースで土曜日出勤が存在します。ただ日曜日まで診察しているクリニックはほとんどありませんし、少なくとも日勤のみの勤務となります。
例えば、以下は大阪にあるクリニックの看護師募集です。
このように夜勤なしであり、土曜日勤務はあるが日曜日・祝日は休みです。よくある一般的なクリニックの勤務形態ですが、病棟からクリニックへの転職でこの違いは非常に大きいといえます。
24時間365日とずっと患者さんがいる病院とは異なり日勤が可能なので、そうした違いから看護師としての働き方に大きな違いが表れるのです。
給料・年収は転職によって高確率で減る
ただ夜勤なしとなるため、病院からクリニックへの転職で収入が高確率で減少することは理解しましょう。
人が嫌がる仕事ほど、その対価として多くの給料が支払われるようになります。当然、夜勤を好き好んで行いたいと考える人は稀なので、どうしても日勤のみでは年収が落ちてしまうのです。
病院の看護師の場合、地域によって給料は異なりますが、一般的には都市部だと看護師経験が少なくても年収450万円は問題なく目指せます(夜勤ありの場合)。ただクリニックは日勤のみなので、年収は350万円ほどに落ちてしまいます。
病棟からクリニックへの転職で、いままでの給料を維持するのは不可能に近いほど難しいと理解しましょう。夜勤あり・なしでは、それだけ給料に大きな差を生じるのです。
クリニックは楽?看護スキルは落ちるのか
ただ夜勤の違いについては、すべての看護師が理解していると思います。それでは病院からクリニックへ転職する場合、他にどのような違いがあるのでしょうか。
これについて病棟からクリニックに転職するとき、看護師が不安になるのは「いままで培ってきた看護スキルが落ちるのではないか」という点だと思います。
当サイトの管理人である私自身、病棟から内科クリニックに転職しています。私の個人的感想になりますが、病棟からクリニックに転職して看護スキルや知識が落ちたかといえば、そのようなことはありません。
もちろん勤めるクリニックによっては患者数が少なく、さらには看護師が担う業務の幅が狭く、診察介助や血圧測定、採血、注射くらいしかないところがあります。看護技術は身につかないものの「楽そうでいいな」と思う方は、そのようなクリニックに転職するといいです。
一方で私の勤めるクリニックでは、午前中だけでも100名近い患者さんの来院があります。そのため、看護師は常に院内を走り回っています。
さらにいま勤めているクリニックでは診察介助や点滴、心電図、CT検査、ネブライザー、吸引、創傷処置、胃カメラ検査、大腸カメラ検査(ポリープ切除を含む)、レントゲン(胸部・腹部など)、各種検査説明、検査予約など、看護業務は多岐に渡ります。
これに加えて、看護業務の合間に精密検査や人間ドックなどを行う必要があります。そのため医師から絶え間なく指示を受け、迅速かつ的確にこなしていかなければ、時間も人手も足りません。座る暇はもちろんありません。
私の場合、このクリニックに転職する前は苦手意識のあった採血業務ですが、いまでは血管に触れることの難しい患者さんの採血でもスムーズに行えるようになりました。また勉強会が行われるのは当然ですし、資格取得支援についても推奨されています。
実際のところ非常に楽なクリニックがあれば、このように忙しく看護内容が高度なクリニックもあります。そのため、病棟からクリニック求人へ申し込むにしても、どのような中途採用のクリニックへ応募したいのか事前に考えなければいけません。
病院よりも自分のアイディアを出しやすい
また病院は個人病院を除き、通常は規模が大きいです。日本の場合どの組織にも共通しますが、組織の規模が大きくなるほど、わずかな意思決定を実行するのにも時間と労力がかかります。
一方でクリニックの場合、すべては院長の裁量次第だといえます。そのため院長がOKすれば、その瞬間にさまざまな制度が採用されるようになります。つまりクリニックでは、病院組織よりも自分のアイディアを出して業務を改善しやすいメリットがあります。
クリニックの看護師だと、「採血や点滴など同じような仕事を繰り返すことが多くなってしまう」と考える人がいます。もちろん楽で同じ作業の繰り返しだと、日々の作業は単調になります。ただ院長自体が勉強熱心で患者数が多い場合、看護師の立場から意見を述べることで変えていけるケースが多いです。
例えば私だと、大腸カメラ検査の説明を行うときの説明用紙がA4で2枚になっていて見づらく、「患者さんへの看護師の伝え忘れ」が発生していることに気づきました。
そこで私はクリニカルパス(入院診療計画書)を応用して、A3の用紙1枚に「大腸カメラ検査の検査説明日程」を作成しました。それが以下の通りになります。
いま、私の勤めるクリニックでは、この用紙を大腸カメラ検査前の説明に使うようになりました。
この用紙を説明に使うようになってからは、検査前に行わなければならないことが時系列で記載されているため「分かりやすくなった」と患者さんからも看護師からも好評です。
このようにクリニックでは病院経験という強みを活かし、すぐに実際の仕事に反映させることができます。同じ業務をしていても様々な考えをもって改善点を探しながら、やりがいをもって仕事を遂行できるのがクリニックの看護師です。
クリニックのほうが病棟よりも残業が少ないのはウソ
それでは、他に違いは何があるのでしょうか。これについて、「クリニックのほうが病棟よりも残業が少ない」と考える人は多いですが、これについては違います。もちろん患者数の少ないゆったりしたクリニックは定時退社できますが、忙しいクリニックは必ず残業が発生します。
例えば私の勤める内科クリニックは、終業時刻は18:00となっていますが、掃除や後片付けをして実際にタイムカードを押すのは18:30くらいになります。
これは季節によっても異なります。インフルエンザに感染した患者さんが多くなる12~3月にかけては、仕事が終わるのは19:30くらいです。気候の落ち着く4月や10月のみ、来院患者数が少なくなり、定時をちょっと過ぎたくらいで帰れる場合が多くなります。
ただ近所にある地元でも有名な耳鼻科・小児科クリニックでは、私たちが帰宅する19時以降でも駐車場がいつも満車であり、患者さんが玄関から溢れています。ちなみにここで働く看護師だと、いつも22:00まで残業していると聞きます。
そうしたとき「終業時刻が18:00までとなっているが、夜の22:00まで残業をする」となると、クリニックより病棟勤務のほうが残業時間は少なくて済みます。
このようなクリニックに転職した看護師は、家庭と仕事の両立が難しく短期間で退職してしまうことが多くなります。そのため病棟からクリニックへ転職するにしても、どのような求人でもいいわけではなく、実際の勤務形態を把握しなければいけません。
またクリニックの場合、看護師は医師の都合に合わせて、休日出勤をしたり往診同行したりする仕事も担っています。
例えば私の勤めるクリニックでは、木曜日は午後休診となっていますが、木曜の午後に院長はいつも往診に出かけます。当番制にはなりますが、月1回ほどの当番では往診に同行して仕事をすることになります。
看護師が少なく、クリニックは休みを取りづらい
なおクリニックは看護師の人数がギリギリなので、休みをとりづらいと考えている人がいます。これについては、まさにその通りです。病院のように多くの人数がいるわけではないため、クリニックだとさらに休みにくいと考えましょう。
実際に私の勤めているクリニックでは、看護師の人数がギリギリであるため、休みを取りづらいのが現状です。総合病院などで勤めていたころも有給休暇は非常に取りにくかったですが、さらに休みにくいのがクリニックの現状です。こうしたデメリット部分の違いについても、転職時は見極めなければいけません。
例えば私の場合だと、いまのクリニックで看護師が現在7名在籍しているのですが、2名が60代後半、2名が50代、残り3名が30~40代です。そのため30~40代は若手という位置づけがされています。
60代の先輩看護師がいうには「働く気はあるけれど、大腸カメラ検査など神経を使う検査業務はなかなか体がついていかない」ようであり、介助が大変な業務はすべて若手看護師に任されています。
そのため30~40代であるにも関わらず、一応は若手である私は休みを取りづらいです。看護師2人での介助が必要な検査がいくつかあるため、私が休んでしまうと、患者さんにもスタッフにも迷惑をかけることになります。検査自体できなくなってしまうからです。
このようなことから私の勤めるクリニックの場合、有給はほぼ使えていません。そのためどのようなクリニックを目指すのかによりますが、自由な有給休暇取得や子供の急な発熱で休みたいなどの要望がある場合、それを実現できるかどうか求人の詳細を確認しなければいけません。
福利厚生はクリニックによってバラバラ
ちなみに病棟からクリニックへの転職では、一般的に規模の大きな病院のほうが福利厚生は優れているといわれます。しかしクリニックによっては、規模の大きな病院とは異なるアットホームな福利厚生を享受できることがあります。
例えば私のクリニックだと、自院で診察を受けた場合は医療費と薬代が無料となります。スタッフの家族も基本的に無料です。
さらに年に4回行われる院内飲み会(忘年会・新年会・お花見会・納涼会)での費用も院長が支払ってくれます。私は宴会部長に任命されており、下記のような院内飲み会を開催しました。
ここは市内でも一番の高級焼肉店であり、A5ランクの高級肉を院長におごってもらいました。他にも、「提携している弁当屋さん」にて昼のお弁当を注文すれば院長が支払ってくれます。つまり、昼食代は負担ゼロです。
それだけでなく、年に1回の国内外の院内旅行があります。ハワイ、台湾、北海道、沖縄などスタッフ全員を連れて行ってくれますし、その旅費とお土産代まで院長もちです。
規模の大きな病院では、退職金などがしっかり整備されています。一方でクリニックには、クリニックなりの独自の福利厚生があります。クリニックの福利厚生は院長次第ですが、スタッフを大切にしてくれる職場であれば、満足して働くことができるといえます。
転職時は院長の人柄が最重要
なお私は総合病院からクリニックへ転職した身ですが、求人を選ぶときのポイントとして、院長の人柄が最重要だと考えています。クリニックに転職する際の決め手ともいえますし、むしろこれだけを重視してもいいのではと思います。
例えば私が以前勤めていた眼科クリニックの院長だと、患者さんに対しては信頼ある大変優しい医師だったのですが、スタッフに対しては怒りをぶつけやすい方でした。
その眼科クリニックでは院長がオペ中にイライラし始め、看護師に怒鳴りながら指示を出すのは当たり前でした。一般業務中でも何か小さなミスをすれば、精神的に立ち直れなくなるまで徹底的に怒られました。
そのような劣悪な環境のためか、スタッフ間の関係もぎくしゃくしており、私についても先輩看護師から強烈ないじめにあって半年ほどで眼科クリニックを退職・転職した経緯があります。
一方でいまの院長は仕事については厳しい面があるものの、人間的に優れており、同じ職場で働く看護師同士の仲もいいです。周囲のクリニックで働く友人を見ても、優れたトップで働ける場合、人間関係も優れているケースが多いように感じます。
そこで院長の人柄に加えて、あなたがクリニックに対して望むことを明確にしましょう。
例えば、私の勤めるクリニックに入職した新人看護師の中には「つらい」といって早期に退職してしまう人がいます。その理由として、「有給が取得しづらい」「このように忙しいクリニックに勤めたことがない」などが挙げられます。
ただ私の勤めるクリニックでは年齢層に幅がみられるように、仕事にやりがいを感じたい看護師にとっては、長く勤められる職場です。職場ごとに特徴が大きく異なるため、病棟からクリニックへ転職するにしても、事前にクリニックに望むことを具体的に挙げておくようにしましょう。
総合病院・大学病院からクリニック看護師を目指す
看護師の中でも、総合病院・大学病院からクリニック勤務を考える人は非常に多いです。私も総合病院からクリニックの求人へ申し込み、看護師となった人間の一人です。
そうしたとき特に病棟からクリニックに転職したい看護師だと、今までの自分のキャリアや知識を活かして仕事をしたいと考える傾向が高いです。そうしたとき、クリニックであっても高度な看護スキルを身に付け、勉強しながら活躍できる職場はいくつも存在します。
もちろん忙しくない職場がいい場合、ゆったりとしたクリニックが優れています。どのような職場でも、人によって「合う合わない」があります。その職場に何を求めるのかによって、やりがいや働きやすさは異なってきます。
ただ病棟からクリニックへ転職する場合、「年収が下がりやすい」「院長の人間性を重視するべき」など転職時の注意点・ポイントがあります。これらを理解したうえで、優れた中途採用募集を探すようにしましょう。
求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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・美容クリニック・美容皮膚科への転職
夜勤なしで高年収を実現できる求人として、美容クリニック・美容皮膚科があります。死と隣り合わせの職場ではなく、患者さんを美しくする手伝いを行うのが美容クリニックです。
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「今月は苦しいため、もう少し稼ぎたい」「好きなときだけ働きたい」など、こうしたときは高時給を実現できる単発・スポットバイトが適しています。健診やツアーナースなど、看護師ではさまざまな単発案件が存在します。