40代くらいまでは何の疑問をもたずに働いてきたにも関わらず、50代になり老後が現実化してきたときや体調不良・親の介護などで転職を考えはじめる看護師が増えてきます。
ただ人手不足の看護業界だといっても、50代での看護師転職は狭き門であるケースが多く、不採用となる可能性が高いです。また転職できたとしても新しい職場に馴染めず、結局もとの職場に戻ってしまう人もいます。
しかし私の身近には50代で看護師の転職に成功し、充実した働き方を手に入れた人が多くいます。50歳や55歳の看護師でも転職の方法さえ間違えなければ、充実した新しい働き方を手に入れることは可能です。
ではその人たちは、どのようにして転職に成功したのでしょうか。今回は50代看護師の転職失敗理由を挙げ、採用側が50代看護師に求めるものを知り、満足いく働き方を実現していく方法について述べていきます。
50代看護師が転職に失敗する理由
50代看護師はどのような理由で転職に失敗するのでしょうか。これには、おおまかに以下のような理由が挙げられます。
- 記憶力や体力がついていけない
- 納得する年収・給料を貰えない
一般的に転職市場は年齢が若い人ほど価値が高いです。どれだけ経験のあるベテランだったとしても、50歳や55歳など年齢が高いだけで転職では不利になります。そこで、それぞれの理由について具体的に話していきます。
ブランクありの復帰を含め、記憶力や体力がついていけない
転職して新しい仕事に従事すると覚えることが多く、50歳や55歳の看護師は若い看護師のように仕事についていけないことがあります。
20代・30代の頃とは異なり、一度聞いたことでも忘れやすくなっているだけでなく、他の医療機関で身につけたクセが抜けにくく、新しい仕事に苦戦するケースが多いのです。
実際のところ体力を必要とする職場であれば、若い看護師と同様に働くのは難しい一面があります。いままでの仕事で腰痛やひざ痛で悩んでいる50代の看護師は多いです。例えば以下の写真のように、病棟勤務では中腰で立ちっぱなしの姿勢が多くなります。このような姿勢では、もともと腰痛もちの人であると長く働き続けるのが難しいです。
また夜勤や時間外勤務が多くなると、心身共に若いときのような回復力は期待できません。
それだけでなく、50代では子育てが落ち着いて復帰を目指す人も多いです。こうしたブランクありの再就職では、看護スキルや知識が落ちているにも関わらず、転職するときに20代や30代などの若い人と勝負することになります。
こうした理由があり、50代で急性期の大病院や忙しいクリニックへ転職を考えると失敗するのは当然ですし、自分の体調や体力を考えて職場選びを慎重に行わなければ、転職できたとしても長続きしません。そこで、背伸びしすぎずに職場を選びましょう。
50代はパート勤務を含めて受け入れ、納得する年収・給料は貰えない
また50代が転職する場合、あなたが納得する年収を提示されることは基本的にないと考えましょう。ブランクありの復帰は当然として、これまでずっと働き続けてきた50代看護師であってもこれは同様です。
長年勤めてきた職場では年々給与がアップするため、ある程度の給与額に達しています。ただ新しく勤め始めるとなると、経験は考慮されても職場での評価は一旦リセットされるため、以前と同様の給料をもらうのは難しくなります。
また最初からパート勤務での転職を考えている人なら問題ないですが、常勤勤務を考えている人であっても、求人先からパート勤務を提案される場合もあります。もちろん常勤に比べると、パート勤務はフルタイムでも収入が低くなります。
またパート勤務まではいかなくても、「お試し勤務」を提案されるのは普通です。要は中途採用を出す求人側にとって、50歳や55歳の看護師を採用するのは不安なのです。
ただ変なプライドを捨て、50代の転職ではパートやお試し勤務を含めて広く受け入れることを考えなければ、実際のところ転職を受け入れてくれる就職先はかなり限られるようになります。そこで給料は下がってもいいと考え、常勤以外の勤務方法についても広く見据えましょう。
年齢制限のある就職先・平均年齢の低い求人は避ける
そうしたとき、50代の看護師が転職を成功させて満足いく働き方を実現するためには、年齢制限があったり、平均年齢が低かったりする求人を避けるようにしましょう。
実際、求人票には掲載はないものの、看護師採用であれば「35歳まで」といった年齢制限を設けている医療機関が多くあります。中途採用の募集で「30代・40代が活躍している病院」「未経験、第二新卒歓迎!」と求人票にメッセージが書かれていれば、20~40代の年齢層の看護師を採用したいという意図が分かります。
例えば以下のような求人です。こちらは東京にある整形外科・内科のクリニックになります。
このように「30~40代看護師が活躍」などと求人票に記載があれば、比較的若い看護師を募集している意味が含まれています。つまり、50代看護師の採用は難しいのが現状です。
それよりも、シニア層の看護師であっても積極的に採用している求人を中心に選びましょう。例えば以下は、神戸にあるケアハウスの看護師求人になります。
このように定年なしにて、高齢の看護師を広く受け入れています。50代であっても、ブランクありの復帰・再就職であっても、正しく中途採用募集を選べば問題なく転職できます。ただ、そのときの求人先は選ばなければいけません。
ブランクありの50代看護師でも採用されやすい再就職先
それでは、50代の看護師が採用されやすい再就職先としては何があるのでしょうか。
50代の看護師となると、バタバタと動き回る体力勝負の急性期医療機関よりも療養型施設や訪問看護ステーション、クリニック、精神科など、ゆったりとした環境の医療施設が向いています。
どうしても体力の衰えを感じる年齢だからこそ、忙しい職場を目指すのは優れた選択ではありません。これがブランクありの復帰だとなおさらです。もちろん常勤だけではなく、非常勤(パート・アルバイト)まで視野に入れて求人を探すようにしましょう。
その中でも、50歳や55歳の転職で特に向いている中途採用が以下になります。
老人施設(特養、老人ホーム)やデイサービスなどで再就職先を狙う
老人施設とはいっても形態はさまざまであり、例えば特別養護老人ホーム(特養)だと要介護3~5の高齢者が入居することになります。一方で有料老人ホームであれば、そこまで要介護度の高くない人も存在します。
これがデイサービス(通所介護)だと、同じ介護であっても自宅から通ってくる人なので自立している老人が相手になります。いずれにしても、こうした施設で看護師は健康管理や医療処置を行い、他にも入浴・排泄・食事介助・機能訓練を行うようになります。
そうしたとき、どうしてもこうした介護施設では若い人からの応募が少なくなります。看護スキルや知識を身に付けることを考えたとき、このような技術・知識を磨くことができないからです。
そのため、結果として介護施設は50代の看護師を広く受け入れています。もちろん、ブランクありの復帰・再就職であっても特に問題ありません。例えば、以下は神戸にある特養から出た中途採用募集です。
このように50代の常勤が広く活躍しており、パート(非常勤)では定年後の人がほとんどと記されています。つまり50代に限らず、より年齢が上の看護師であっても広く活躍できる職場であり、長く働きたい看護師にも向いているのです。
また、意外と高めの給料になりやすいのが老人施設の求人なので、そこまで年収を落としたくない人にも向いています。
訪問看護ステーションで在宅医療を支える
看護師の転職先としては、訪問看護ステーションもそれなりに50代が活躍しやすい職場といえます。自宅療養を行う患者さんが利用し、看護師はバイタルチェックや入浴介助、採血などの看護ケアを提供するのが訪問看護です。
訪問看護の未経験者であり、50歳や55歳とそれなりに年を重ねていたとしても、訪問看護であれば看護師として転職できます。例えば、以下は大阪の訪問看護ステーションから出された中途採用募集です。
「50代でも問題なく活躍できる職場である」と求人票からも分かりますし、訪問看護の経験がなくても問題ないと記されています。
なお介護施設とも共通しますが、訪問看護ではパート(非常勤)の求人もたくさん出ています。そのためフルタイムの常勤勤務に限らず、パートとして働きたい看護師にも向いています。
ちなみに訪問看護では一人だけで患者さんの家に出向くのが基本のため、「ブランクありの復帰で選ぶ再就職先というよりも、それまで看護師として別の医療機関で経験のある看護師の転職先」として優れる傾向があります。その代わり、訪問看護ステーションでは給料が高くなりやすいです。
もちろんブランクありの看護師でも広く受け入れてくれる訪問看護ステーションはあるものの、いずれにしても看護師として一人ですべての対応をすることが求められます。
患者数の少ないクリニックでゆったり働く
他には患者数の少ない、比較的落ち着いたクリニックで勤務する方法でもいいです。クリニックなので入院施設のないところがほとんどであり、慢性疾患で通う人が多く、看護師は問診やバイタル測定、採血、点滴、検査補助など医師の補助業務を担うことが中心になります。
患者数の多いクリニックだと、業務内容が大変になるので50代の看護師にはおすすめしません。それよりも、給料が低めでもいいのでゆったりとした環境のクリニックを目指しましょう。
例えば、以下は福島から出された「50代職員でも応募可能な求人募集」になります。
未経験でも問題なく、ブランクありで復帰を目指す50代看護師でさえ問題なく応募することができます。
ちなみにこの求人では、「看護師常勤1人、看護師パート1人」という職員数です。そのため小さいクリニックですが、職員が少ないのでデメリットとして休みにくいことが挙げられます。
この点はどこのクリニックにも共通することですが、患者数が少なくゆったりしている職場だと、看護師の絶対数も少なくなるので休みにくくなります。
そうしたとき、パート勤務でのクリニックを視野に入れても問題ありません。クリニックへ50歳や55歳で転職・再就職する場合、常勤かパート(非常勤)かを考えるようにしましょう。
精神科や慢性期病棟で看護師を目指す
また病院であっても、急性期ではなく慢性疾患の患者さんがメインの場合だと50代でも広く受け入れてくれる病院が多いです。要は、精神科や慢性期病棟への転職となります。
看護師はバイタルチェックや入浴介助、食事介助などの看護ケアが多くなります。看護技術は磨けませんが、看護師として精力的に働くというよりも、ゆったりとした環境の常勤やパート(非常勤)で働きたい人に優れています。
例えば、以下は精神科病院から出された看護師の常勤募集です。
精神科の未経験でも問題なく、さらには50代でも申し込める中途採用募集であることが分かります。
精神科病院は給料が高めであり、救急がなく患者さんの症状は安定しています。ただ看護スキルを磨けないことから不人気になりやすいです。しかし50代の看護師にとってみると、大変な業務が少なくなるのでむしろ好都合です。もちろんブランクありの再就職先としても優れるため、常勤やパートを含めて転職できます。
また精神科に限らず慢性期メインの病院でも、同じように救急患者はおらず、症状は安定しています。そのため同じ理由で慢性期病院への転職も広く50代の常勤やパート看護師を受け入れています。
50代の看護師転職は転職サイト利用が必須
なお、このように50代看護師を広く転職を受け入れてくれる医療機関や施設があるとはいっても、どうしても若い人に比べると求人数が少なくなるのは必然です。
つまり、50代や55歳のシニア看護師に対する求人の絶対数は少ないです。例えば、以下は16,000件以上の求人数を誇る、それなりに規模の大きい看護師専門の転職サイトを利用して「50代」で検索したときの求人数です。
このように、日本全国で求人数は70件だけです。もちろん求人票に「50代歓迎」などの表記がなかったとしても、実際には申し込める中途募集は存在します。ただ、求人票に記載してまで積極的に50代を受け入れているわけではないのです。
参考までに次に挙げるのは、50代看護師に「ブランク」を加えて検索した結果です。ブランクありだと、以下のようにさらにヒット数が少なくなります。
このように非常に求人数が少ないことから、1社ではなく3社以上の転職サイトに登録して、できるだけ多くの求人の中からあなたに合った職場を選ぶのが当然です。
多くの選択肢の中から優れた求人を探さないと、本当の意味であなたが望む常勤やパート(非常勤)の中途採用を見つけることはできません。転職サイトを複数利用し、それぞれを比較しながら優れた求人へ申し込むようにしましょう。
履歴書や面接での志望動機・自己PRを考える
なお、たとえ看護師経験の豊富な50代だったとしても、応募先の医療機関からすれば新人看護師です。
私の勤める職場にも「特別養護老人ホームで看護師長をしていたけれど、より専門的に看護技術を学びたい」と考えて50代の新人看護師が中途採用で入職してきたケースがあります。
その看護師はスタッフ全員に敬語で話しかけ、分からないことが出てくれば「すみませんが、教えてもらえますか」と丁寧な口調で尋ねていました。妙に高いプライドはなく、仕事と割り切って若い看護師にも丁寧に接していました。
50代看護師を雇うにあたり、雇用側は「若い看護師の中に年齢の高い看護師が入ることで、チームワークや士気が低下してしまうのではないか」と心配します。
そこで面接官の不安を払拭するためにも、「仕事と年齢は無関係という認識であり、新人として頑張る姿勢」を示す必要があります。そこで年下の上司のもとで働いた実績などがあれば、履歴書や面接でその事実を志望動機・自己PRとしてアピールすると好感触を与えることができます。
例えば以下では、面接での一例を挙げます。
これまで仕事上で年齢を意識したことは特にありません。感性や話題の面でも、若い看護師との間にギャップを感じたことは少ないです。 前の職場では20代・30代の看護師が多く、同僚や後輩から仕事だけでなく、恋愛などのプライベートな相談もよく受けていました。私に相談を持ちかけてくれる人たちとの間には、年齢差という垣根を越えての人間関係を構築できていたのだと思います。 直属の上司をはじめ役職者も年下の方でしたので、職場での年齢のギャップには抵抗感がありません。 |
このように実年齢とは無関係に、看護師としての職務を全うしたい気持ちをもちましょう。
ポイントとしては、あなたの答えた内容によって採用側が「応募者の仕事ぶりをイメージできる」ようにするといいです。「意欲がある」と採用側が感じる回答を表情豊かに伝えると、面接官の好感度が上がります。
履歴書や面接でどのように自己PRできるのかによって、採用されるかどうかが違ってきます。そこで、50歳や55歳の転職では事前に志望動機や自己PRの内容を考え、どう回答するべきかシミュレーションしておきましょう。
50代の転職が成功するかどうかはあなた次第
看護師が転職するとき、いままでの働き方を見直したりブランクありの復帰を目指したりと、人によって転職理由は異なります。
ただすべての看護師に共通するのは、若い看護師に比べて求人数が少なく、内定をもらえるハードルが上がってしまうことです。もちろんブランクありでも問題なかったり、50代歓迎の求人へ申し込んだりすればいいのですが、そうした中途採用募集の絶対数が少ないのです。
そこで、複数の転職サイトを利用しながらできるだけ多くの求人を集め、老人施設やクリニック、精神科病院など、忙しくない職場の中からあなたに見合う中途採用募集を見つけるといいです。
こうして常勤やパートとして再就職先を見つけ、新たなスタートを切るのが50代看護師の正しい転職方法です。若い人とは転職のやり方が全く違うため、注意するべきポイントを理解したうえで転職活動を進めるようにしましょう。
求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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