医療機関で働くのが一般的な看護師だといえます。ただそうした求人に限らず、一般企業として「外資系企業で働く看護師の仕事」も存在します。

「看護師が外資系企業に勤められるの?」と考えてしまいますが、看護師免許を保有しているからこそ需要のある仕事が存在します。

このときは外資系製薬会社や医療機器メーカーで働くことになります。中には英語が必要とされることがあれば、特に必要ないケースもあります。ただいずれにしても、看護師のスキルが外資系企業で求められているというわけです。

そこで病院などの医療機関への看護師転職とは異なる、看護師免許を活かした外資系企業での仕事内容や転職について解説していきます。

看護師から転職できる外資系企業とはどのような会社?

外資系企業と聞くと、どのようなイメージをもっているでしょうか。一般的には「社内は外国人が多く、英語で会話している。一流大学出身の人ばかりで実力主義となっており、看護師が入り込む隙はない」などの状況を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

ただ実際は異なり、海外の企業が経営している会社が外資系企業というだけです。当然、外資系企業の求人の中には「英語が全く話せない人」「一流大学出身でない人」に限らず、看護師も採用されています。

身近な例でいえばMRが該当します。外資系製薬会社としては、ファイザーやMSD、アストラゼネカなどが当てはまりますが、MRの大多数は英語を話せませんし、全員が一流大学の出身というわけではありません。要は、これと同じだと考えましょう。

そうしたとき外資系企業には、医療機関で看護師として働く以上の魅力に溢れているケースが多いです。自分の実力を試していきたい人にとっては大変働き甲斐のある職場となるでしょう。とくに外資系企業の看護師求人で多いのが以下の会社になります。

  • 医薬品メーカー(製薬会社)
  • 医療機器メーカー

これらの外資系企業に看護師求人の採用枠が存在します。どれも大企業に属するため、必然的に規模の大きい会社へ転職するようになると考えましょう。なお日本では、外資系の病院は存在しません。そのため、必然的に外資系だと一般企業への転職になります。

外資系企業が看護師を採用する職種

そうしたとき、看護師が働く場合はどのような職種があるのでしょうか。外資系企業での看護師求人としては、主に以下になります。

  • 治験コーディネーター(CRC)
  • 臨床開発モニター(CRA)
  • クリニカルスペシャリスト
  • 産業保健師
  • DI(学術職)

これらの職種について、ひとつずつ仕事内容や必要なスキル、年収などがどのような実態になっているのか確認していきます。

治験コーディネーター(CRC)に外資系企業がある

病院やクリニックなど、医療機関で治験担当医師の指示を受けて被験者(患者さん)のスケジュール管理やインフォームドコンセント(治験内容の説明など)、データ収集・データ管理などを行うのが治験コーディネーターです。

治験をスムーズに進めるために、製薬会社・被験者・医療機関の間に入り、治験の管理・調整役を担っています。

治験コーディネーターに特別な資格は必要ないのですが、実際の仕事の中で医療知識や専門性が問われます。そのため、看護師や臨床検査技師、薬剤師など医療系資格を取得している方が多い職種となります。

看護師経験があれば、被験者さんに対して精神的フォローが行えるなど、さまざまな場面で治験コーディネーターの仕事に役立てることができます。例えば、以下のような求人が存在します。

このような求人へ申し込めば、外資系企業へ転職できます。

なお治験コーディネーター(CRC)では、確かに外資系企業がたくさんありますが、実際の勤務先は病院です。所属は外資系企業であるものの、出社先は病院であり、薬剤部などに出入りすると考えましょう。

そのため外資系企業で働くとはいっても、出社先はオフィスビルではなく病院のため、他の外資系企業に比べると一般企業で働いているという意識は薄くなります。

なお治験コーディネーターの未経験者であれば、年収は300~400万円です。そのため病院看護師よりは年収が減るものの、夜勤なしにて働くことができます。

臨床開発モニター(CRA)で外資系製薬会社を支援する

また同じように治験をサポートする職業の中でも、製薬企業側を支援する職業として臨床開発モニター(CRA)があります。先ほどの治験コーディネーターは病院側の治験サポートのため、一つの医療機関に勤務することになりますが、製薬企業側のサポートがCRAであり、全国の医療機関を飛び回るようになります。

治験が法律に定められた通りに実施されているかどうかについてモニタリングを実施したり、医療機関から治験のデータを取ったりする仕事が臨床開発モニターです。また医療機関へ治験依頼を出したり、治験実施計画書(プロトコール)の説明・合意をしたりするのも仕事内容となります。

臨床開発モニターの主な就職先は製薬会社やCRO(開発業務受託機関)です。製薬会社とCROの両方とも外資系企業が国内に多く参入しているため、臨床開発モニターであれば外資系企業に就職できる機会が増えます。例えば、以下のような求人になります。

それなりに激務ではありますが、臨床開発モニターは年収が非常に高いことで知られています。2~3年の経験で年収500万円前後、経験を6年以上積むと600万円以上、10年を超えると800万円は普通です。医薬品開発のため、製薬企業の中でも花形となる職業の一つが臨床開発モニターなのです。

なお国際共同治験のように世界で同時に治験を実施するなど、臨床開発モニターでは英語力が求められます。また35歳以下でなければ転職できず、若い人ほど外資系企業の臨床開発モニターへ転職できるチャンスが増えます。

クリニカルスペシャリストで医療機器メーカーに就職する

他にはクリニカルスペシャリスト(クリニカルアドバイザー)という職業もあり、これについては医療機器メーカーに所属して、医療機関へ自社製品の宣伝や営業、説明を行います。

例えば、人工呼吸器や人工心肺など高度な医療機器製品を取り扱う医療従事者(医師や看護師など)に、それらの製品の説明やトレーニングなどを実施します。

病棟勤務の看護師であれば、スーツを身に着けたこのような営業マンらしき人物から医療機器の説明を受けた機会があるのではないでしょうか。あの人たちがクリニカルスペシャリストやクリニカルアドバイザーといわれる職種の人です。

必ずしも看護師免許が必要というわけではありませんが、元看護師であれば看護師の立場になって医療機器の説明を行えます。そのため、クリニカルスペシャリストに看護師求人があるのです。

医療機器メーカーも外資系企業の参入が多いため、これらの職種を視野にいれて転職を考えれば、外資系企業へ転職できる可能性が高くなります。

例えば以下は、大阪にある外資系医療機器メーカーから出されたクリニカルスペシャリストの中途採用募集です。

循環器領域の経験者を強く望んでいることから、心臓に関する医療機器メーカーであると分かります。もちろん循環器領域の経験者でなくても応募可能ですが、いずれにしてもこうした外資系の医療機器メーカーから看護師求人が出されるのです。

なお外資系企業のクリニカルスペシャリスト求人の場合、英語力を重視する傾向にあります。本国で作られた新製品の医療機器の取扱説明書は日本語に翻訳されていないケースが多く、英語の文献を解読する必要があります。これらの説明書を解読できれば迅速に業務を遂行できるため、英語の読解能力が重要視されます。

外資系企業の産業保健師で働く

なお中には、看護師や保健師の資格を活かして活躍したい人もいます。その場合は産業看護師・産業保健師という選択肢もあります。大企業の産業保健師募集について、外資系企業が中途採用募集を出しているケースもあるのです。

この場合、外資系企業に勤務する社員の健康管理や感染症対策、メンタル管理などを行うのが産業保健師です。健康診断による特定保健指導を実施したり、海外出張時の感染症対策などを任されたりします。予防医学や健康相談といった仕事に携わりたい方にはおすすめの職場です。

例えば、東京にある外資系コンサル企業から出された以下の求人がこれに該当します。

この求人の場合、応募するためには保健師の経験が必須となります。産業看護師・産業保健師については、「看護師資格だけでも問題ない」「保健師資格が必須」「保健師の経験が必要」など条件が異なるため、これらを見極める必要があります。

なおこの会社については条件が非常に良く、土日休みで日勤のみにも関わらず年収430万円以上です。病院看護師では夜勤ありで、ようやく年収450~500万円ほどになるため、そのように考えると外資系企業の産業看護師・産業保健師は優れているといえます。

外資系製薬会社や医療機器メーカーのDI(学術職)

他には外資系製薬会社や外資系医療機器メーカーのDI(ドラッグインフォメーション:学術職)という選択肢もあります。

医師や薬剤師などの医療関係者から問い合わせを受けたり、MRを支援したりするのがDI職です。コールセンターのようなものになりますが、問い合わせをしてくる人が医師や薬剤師になるため、かなり高度な質問内容となります。

また医学論文を読んだり、本社からの説明書が英語で書かれていたりするため、英語力が要求される職業でもあります。そのためコールセンターとはいっても、看護師など医療知識を有している人が広く募集されます。

例えば、以下は大阪の外資系製薬会社から出された中途採用募集です。

このようにDI職の募集にて、看護師免許を必須としています。またこの求人では中枢神経(CNS)の経験者を歓迎しているため、「精神科」「神経内科」「小児科(ADHDなど)」などの領域を経験している看護師だと採用されやすいです。

ただいずれにせよ電話対応が主なため、体力仕事がなく腰や膝の悪化は少なくなります。それでいて今まで培ってきた医療知識を発揮し、仕事を行うことができます。

外資系企業に勤めるメリットは高い給料

そうしたとき外資系企業に勤めるメリットとしては、給与水準の高さがあげられます。一般的に製薬業界だと、国内企業よりも外資系製薬会社や外資系医療機器メーカーのほうが年収は多くなります。

企業によりますが、年収は国内医療機関の看護師よりも2~3割ほど高くなるケースが多いです。看護師の年収が400万円であるとすると、これよりも100万円ほどプラスになる計算です。

なかには「未経験でも年収500万円から」という外資系企業もあります。また初任給は低くても、昇給率が高く、すぐに同年代の夜勤あり看護師の平均給与を抜くのは普通です。参考までに臨床開発モニター(CRA)だと、外資系企業では年収1,000万円を超えるのはわりと普通です。

日本の看護師の労働対価と比べると、外資系企業で勤めるほうが労働に見合った報酬をもらえることから大変魅力的だといえます。給与水準が高いのは、「働くうえでのモチベーションを保つための大きなメリットのひとつだ」といえます。

向上心のある人だと評価されやすい

また国内企業よりも、外資系企業のほうが実力を評価されやすい風土にあるといえます。医療機関で看護師として勤務する場合、「他の人よりも自分の能力のほうが高い」と思っても、給与に差がない場合がほとんどです。

日本の医療機関で看護師として雇用される場合、年功序列で少しずつしか給与額は増えていきません。これは国内の製薬会社や医療機器メーカーでも似た傾向があります。日本では苦労して実力をつけていっても、その実力を認めてくれる風潮は少ないのです。

一方で外資系企業であれば努力をし、実力をつけていけばいくほど、大きなリターン(報酬)として返ってきます。例えば英語を本気で学んで仕事に活かせるように努力すれば、年収や役職を短期間で上げていけるのが外資系企業なのです。

日本の医療機関で働くことに限界を感じている看護師にとっては、外資系企業で働くほうが実力を認められる多くのチャンスが転がっています。

有給休暇を取り放題で仕事とプライベートを分けやすい

また外資系企業の大きな特徴として、仕事とプライベートの線引きが明確という点が挙げられます。病棟勤務の看護師のように、「遅くまで勤務するほど、仕事熱心で素晴らしい看護師だ」といった考えはありません。

ただこの点については、外資系企業に限らず国内の製薬会社や医療機器メーカーにも当てはまります。つまり、医療に関わる大手メーカーでは「勤務時間は仕事に集中し、退勤の時間が来たらさっと退社できる人」が優秀となります。

また有給休暇はいつでも自由に取得できることが広く知られています。病院やクリニックで働く看護師では考えられないほど休みを取りやすいです。

実際、あなたの医療機関を訪れるMRに「有給休暇は取りやすいか?」と聞いてみるといいです。内資系や外資系に限らず、どのMRも「いつでも自由に有給休暇を取得できる」と回答するはずです。当然、上司が長期で連休を取得して海外に旅行に出かける姿を見るのは普通です。

病棟・クリニックで働く看護師のように、休みを取得するだけでみんなに頭を下げたり、責められたりするような空気になることはありません。

雇用はきちんと保障される

なお「外資系企業は実力主義」というと、成果を出せない人は会社にとって不要とみなされ、解雇されるように思ってしまいます。

ただ外資系企業ではあっても、日本の法律に従う必要があります。日本では正社員を自由にクビにすることはできず、広く守られるようになりますが、これは外資系企業であっても同様だと考えましょう。

事実、あなたが勤務する医療機関にも「なんだか仕事のできなさそうなMRのおじさん」が訪問する場面があると思います。

MRという営業の最先端であったとしても、外資系企業を含めすべての会社は自由に社員をクビにはできません。

もちろん国内の製薬会社や医療機器メーカーに比べると、外資系製薬会社や外資系医療機器メーカーは前述の通り実力主義の側面が強いため、常に勉強して結果を出していく必要があります。ただ、ブラック企業などでよく起こる突然のクビは心配しなくても問題ありません。

外資系企業は自分の能力を試すチャンス

このように看護師として活躍するとき、「自分の力を試したい看護師」「さらに上の年収を目指したい看護師」「病院以外で挑戦したい看護師」などは、外資系企業で自分の能力を試してみることをおすすめします。

病院だと外資系企業は存在しませんが、製薬会社や医療機器メーカーなどの一般企業であれば、外資系企業の中途採用募集が存在します。実力さえつければ、土日休みで日勤のみであるものの、病院看護師よりも高い給料となるのが外資系企業で働く看護師です。

ただ外資系企業の看護師求人はレア求人のケースが多く、あまり求人数が多くありません。また年齢が若い人ほど採用されやすくなるため、いますぐ転職活動を開始しなければ、採用の可能性は年齢が上がるにつれて低くなっていきます。

こうしたポイントを理解したうえで、医療機関の看護師から外資系企業を目指すようにしましょう。外資系企業の中でどの職業に興味があるのか見定め、年齢の若い早い段階から転職活動を開始していきましょう。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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