看護師転職の求人数は他の一般職の求人と比べると多いため、入職希望の医療機関を一つには絞れない場合があります。そのようなとき「ひとつの志望先に絞ったほうがいいのか」、それとも「複数の志望先を併願しても大丈夫なのか」について迷うことがあります。

結論からいえば、併願して応募することは問題ありません。むしろ、中途採用へ応募するときに複数の医療機関や施設へ申し込むほうが一般的です。もちろん併願したとしても、第一希望の志望先に対して不利に働くことはありません。

ただ複数の採用先から内定をもらった場合、後日に内定辞退をしなければいけません。そのため併願する場合、内定辞退の方法についても事前に把握しておく必要があります。

そこで、「看護師や保健師が転職するとき、併願するメリット・デメリット」「併願する場合の面接回答例」「内定辞退の方法」について説明し、求人先へ併願することによる心配点を解消していきます。

併願禁止はなく、むしろ看護師・保健師はメリットが大きい

看護師・保健師が転職するとき、併願禁止に関する規定はありません。むしろ、複数の中途採用に応募し、併願するほうが普通です。このとき一般的には、医療機関や施設、企業のうち興味のある求人に対して2~3つほど並行して面接のセッティングをします。

どのような看護師であっても、転職時にいくつもの医療機関で面接を受けるのが普通であることを理解すれば、併願することは何も問題ないと理解できます。

このとき併願するメリットは次の通りです。

  • 転職期間を短くすることができる
  • 希望する病院が不採用でも他に選択肢が残っている

複数の病院の採用試験を同じ時期に受けるため、併願には転職期間を短くできるメリットがあります。一方で単願(一つの求人しか受けないこと)をする場合、非常に効率が悪いです。

「第一希望の病院が不採用だったので、次の求人先を探し、履歴書を書いて面接を受ける」など続けていると、無駄にだらだらと転職期間が長くなってしまいます。

また不採用となっても、他の病院へ併願しているのであれば、採用への選択肢が残っていることになります。

さらに併願だと面接を数回受けることになるので、最初の面接での反省点を活かして次の面接に臨むことができます。できれば第一希望の病院の面接が2~3番目になるように調整するといいでしょう。面接で極度に緊張してしまう方は、練習を兼ねて併願するのが基本です。

実際に採用試験の面接や職場見学をしなければ内情が分からない

また実際のところ、求人票や条件面を見るだけでは、職場の内容がいいかどうか不明という現実があります。

応募条件は良さそうでも「職場見学にて現場で働く看護師に内情を聞くと、毎日2時間は残業があると判明した」「院内の機器は古く、優れた医療を提供できそうにない」など、実際に面接や職場見学を体験するからこそ判断できる現場の実態は多いです。

そうしたとき、複数の病院求人へ申し込むと求人先を比較できるため、自分と相性のよい職場を選びやすくなります。結局のところ、求人先の雰囲気や風土についてホームページだけで判断するのは無理であり、実際に自分の足を運んでみなければ実感することはできないといえます。

転職で失敗する看護師であるほど、一回だけの面接で転職先を決めてしまいます。ただそうではなく、必ず併願していくつもの中途採用募集を見るようにしましょう。「どうしてもこの病院でなければならない」という強い希望がないのであれば、転職での併願は当然だといえます。

スケジュール管理が大変になり、内定辞退が必要なデメリット

ただ当然ながら、併願することでのデメリットもあります。これについては、主に以下のようなものがあります。

  • スケジュール管理が大変になる
  • 履歴書や面接準備が大変
  • 内定が複数出たら、内定辞退が必須となる

併願するデメリットは、複数の求人先へ申し込まなければならないため、スケジュール管理が難しくなる点です。特に仕事をしながらの併願だと、仕事との折り合いをつけて、複数の病院の面接日の調整を行わなければなりません。

また、病院ごとに志望動機や自己PRを変える必要も出てきます。同じような内容の志望動機であると、採用側はそのことを見抜き、採用への道は遠くなってしまいます。希望する病院でなければならないオンリーワンの志望理由を明瞭に述べるよう心がけましょう。

これが単願であれば、ひとつの希望先に絞って病院研究を行うことができます。ただ併願だと、そのつど中途採用先についてリサーチしたうえでの志望動機が必要であり、その分だけ面倒だといえます。

・内定辞退やその場での決断が必要になる

他には内定を複数もらった場合、どの求人先に転職するかの選択を迫られるようになります。つまり、内定辞退をしなければいけません。

場合によっては、その場で決断しなければいけないケースもあります。例えば私自身、いま勤めているクリニックの採用面接で質問が終わった後に、院長から「あなたを採用したいから、この場ですぐに答えを出してもらえるとありがたい」といわれました。

私はここを第一希望にしており、面接を通して院長の人柄や職場の雰囲気も良いと感じることができたので内定を即答しました。

ただ第一希望ではない病院であったり、まだ他に面接が残っていたりすると、決断を迫られてもすぐに返答できずに困ってしまう状況が考えられます。

このように併願にもデメリットがあります。ただ転職という人生を変える場面なので、こうした面倒な状況が起こっても併願して職場同士を比較するべきなのは当然だといえます。

併願する場合の面接での回答例

ちなみに面接では、「他の病院にも応募しているのか」と聞かれることがあります。そのようなときは、どのように答えるといいのでしょうか。

この質問のポイントは、正直に答えることにあります。よく中途採用の転職で「御院しか受けていません」と答えれば自己PRになると勘違いしている人がいます。しかし中途採用の転職の場合、プラスに働くことは少ないです。

そこで正直に答えましょう。ただし、例外があります。「看護師のほかに、保健師など他業種に応募している」「救急病棟と高齢者施設など仕事内容が全く異なる業種を併願している」などです。このような場合、「転職の軸がブレている」と採用側に思われることがあります。

その理由をきちんと説明できないようであれば、併願していることに敢えて触れないほうが得策です。

その一方で、他の求人先の病院の面接で高評価をもらっている場合、そのことは採用面でプラスに働きます。選考が進んでいる他の病院の進捗状況を面接で伝えるといいでしょう。

例えば、「A病院の面接の日程が早く、採用をいただきました。いまは返答を待ってもらっている状況です。私としては、できれば御院で長く働いていきたいと考えております」などです。

このとき実際に採用となれば、A病院に「あなたという貴重な人材」を取られてしまわないように、給与面で待遇を良くするなど好条件になる可能性が高くなります。併願で内定をもらっている事実があれば、あなたにとって武器になるのです。

このとき実際の面接での回答例ですが、次のようになります。

【複数の病院に応募している場合の面接回答例】

現在は、総合病院の内科に3院ほど応募させていただいております。

転職という人生を左右する転機であるため、できるだけ多くの病院と出会いたいと思っております。実際に病院を見たり、説明会で話を聞いたりしたうえで、面接で直接話を伺わなければ病院の雰囲気を掴むことはできないと考えています。

最初に面接を受けた病院の内定は頂きましたが、いまは返事を待ってもらっている状況です。

御院は説明会で看護師の仕事内容について親切丁寧にご説明いただき、自分が御院で活躍できるイメージをもつことができました。可能であれば私は御院のスタッフの一員となり、患者様とそのご家族の立場に立ち、尽力していきたいと考えております。

正直に併願状況について話したあと、最後に応募先の医療機関に好感をもっていることを伝えると面接では評価されやすくなります。

併願するなら応募先は2~3つに絞る

ただこのとき、あまり多くの医療機関に併願しないようにしましょう。いま仕事を続けながら転職活動をしているのであれば、先に少し触れましたが申し込むのは2~3つくらいが丁度いいです。それ以上になると、仕事をしながらでは面接日の調整が必要で大変です。

ただ現在離職していてフリーの状態である場合、4~5つくらいまでなら併願しても大丈夫です。あなたが自由に使える時間を考えたうえで、応募する求人先の数を決めるといいです。

しかし複数応募しても、実際に働けるのは1つの医療機関や施設のみです。手当たり次第に応募すればいいわけではありません。

1つだけに応募するのは失敗する原因の一つですが多すぎても大変になるだけなので、併願するときは応募先を絞るようにしましょう。

内定を辞退するときの対処法を学ぶ

しかし併願をする場合、複数の病院から内定をもらうことはよくあります。その場合、どのように対処すればいいのでしょうか。

これについて、看護師が転職するときは転職サイトを活用する場合がほとんどです。そうしたとき、実は内定辞退は非常に簡単です。転職エージェントの担当者へ「いくつか面接を受けた求人のうち、〇〇病院に決定します」とメールを一通送るだけです。

その後の内定辞退の電話をあなたが行う必要はなく、すべて転職サイトの担当者が代行してくれます。

なお2~3社以上の転職サイトを利用することが一般的なので、いくつかの転職サイト経由で複数の医療機関へ併願しているケースもあると思います。ただこのときも同様であり、断るときでも「他の転職サイト経由で内定をもらった先に就職します」とメールを送るだけで問題ありません。

志望動機を考えたり、面接の日程調整をしたりするのはそれなりに大変です。ただ内定辞退の連絡については、転職サイトの利用が基本なので圧倒的に楽だといえます。

独自で採用を受けた場合は電話・メールで内定辞退の連絡をする

ただ中には、転職サイトを利用せずに独自に面接を受ける人もいます。この場合、求人先への内定辞退の連絡はあなたが行わなければいけません。

内定を辞退する場合、一般的には電話となります。または採用担当者が不在の場合、メールで伝えてもいいです。内定辞退となると、採用担当者に対して申し訳ない気持ちになります。「連絡したくない」という気持ちが本心かも知れません。しかし「連絡をしない」のは一番やってはいけないことです。

そこできちんと連絡を取り、電話やメールでは「面接の機会をいただけたこと」「内定をくださったこと」「今回は辞退させていただくこと」など感謝の気持ちを伝えるとともに、お詫びの言葉も添えるようにしましょう。具体例は次のとおりです。

電話

お世話になります。このたび、看護師募集の件で内定をいただきましたAです。採用担当の方はいらっしゃいますでしょうか。

先日は内定のご連絡、誠にありがとうございます。

大変申し上げにくいのですが、検討させていただいた結果、御院よりいただいた内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。

本来であれば、直接お詫びに伺うべきですが、失礼ながらお電話でご連絡を述べさせていただきました。御院には大変ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんでした。失礼いたします。

メール

件名:内定辞退の件でのご連絡

本文:

医療法人 A総合病院 採用担当者

B様

お世話になっております。看護師採用の件で、内定をいただきましたCです。

先ほどお電話をさせていただいたのですが、ご不在でしたので、メールにて失礼いたします。

このたびは内定をいただき、ありがとうございました。

大変申し上げにくいのですが、内定を辞退させていただきたく連絡をいたしました。

面接で温かいご対応をしてくださり、貴重なお時間を私のために割いてくださったにも関わらず、このようなご連絡を差し上げますことを大変申し訳なく感じております。

本来であれば直接お詫びに伺うべきですが、失礼ながらメールにてご連絡させていただきました。貴院には、大変ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんでした。

最後になりますが、貴院の益々のご発展をお祈り申し上げます。

辞退の理由を具体的に述べる必要はありません。もちろん、入職予定の医療機関名を挙げることも必要ないです。

特別な理由がない限り通常は転職サイト経由になりますが、すべて自分で面接をセッティングした場合、ここに記した流れで内定辞退するといいです。

転職は積極的に併願し、内定辞退を行うべき

併願は特に禁止されておらず、むしろ中途入社で転職する場合は併願するメリットのほうが大きいです。単願だと比較対象がなく、本当にその求人先が優れているかどうか判断材料がないため、結果として転職で失敗しやすくなります。

また、看護師・保健師の転職では3つほど併願する人が非常に多く、併願されていることについて採用先は理解しています。そのため他の応募先を聞かれたとしても正直に答えれば問題ありません。

さらに複数から内定をもらったとしても、転職サイトの担当者へメールを送れば、断りの連絡をすべて代行してくれるので楽です。仮に自分で面接をセッティングしたとしても、ここに掲載した内定辞退の連絡方法をそのまま採用すれば問題ありません。

いまから転職活動を始めようとするのであれば、「私にはこの病院しかない」と自分を追い詰めるのではなく、幅広く自分の可能性を信じて複数の希望先に申し込んでみるといいです。そうして求人を比較すれば、どの中途採用募集が最適なのか見えてきます。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

注目の人気記事

・転職サイトを活用した看護師転職の体験談

看護師として活動するうえで、私自身も転職活動をしたことがあります。このときは転職サイト(転職エージェント)を利用したため、そのときの実体験や方法を踏まえ、失敗しない転職について紹介します。

管理人による転職体験記

・看護師転職サイトのお勧めランキング

看護師の転職サイトはそれぞれ特徴があります。「対応地域が限定されている」「取り扱う仕事内容に特徴がある」「非常勤(パート)に対応していない」などサイトごとの特性を理解したうえで活用すれば、転職での失敗を防げます。

お勧め転職サイトランキング

新たな看護師の働き方

・美容クリニック・美容皮膚科への転職

夜勤なしで高年収を実現できる求人として、美容クリニック・美容皮膚科があります。死と隣り合わせの職場ではなく、患者さんを美しくする手伝いを行うのが美容クリニックです。

美容クリニックへ転職する

・単発・日払いの高時給求人を探すには

「今月は苦しいため、もう少し稼ぎたい」「好きなときだけ働きたい」など、こうしたときは高時給を実現できる単発・スポットバイトが適しています。健診やツアーナースなど、看護師ではさまざまな単発案件が存在します。

単発・スポットバイトで働く