看護師が働く科の中でも、整形外科やスポーツ整形(スポーツ整形外科)への転職は男性・女性看護師どちらにも人気の求人のひとつです。
整形外科は命に直結するような重大な疾患を抱えている患者さんが少ないため、精神的に楽なだけではありません。日々、回復していく患者さんのサポートを行えるため、看護にやりがいや魅力を感じる場面がたくさんあり、仕事を好きだと思える看護師が多くなるのです。
ただ、「整形外科やスポーツ整形は理想的な職場だろう」と考えて入職してしまうと、イメージと現実とのギャップに悩んでしまう場面が出てくるようになります。まずは仕事内容や給料、履歴書の書き方など、整形外科・スポーツ整形ならではの看護や転職事情について理解しておく必要があります。
そこで、転職前に知るべき整形外科・スポーツ看護に関する仕事内容や成功するためのポイントについて述べていきます。
もくじ
整形外科・スポーツ整形の看護の役割・仕事内容
整形外科はもともと、子供の体の変形予防・矯正・治療を対象とした領域の科でした。その後、骨・関節・筋肉・神経など運動器疾患の治療を行うようになり、扱う領域を広げてきました。
そうしていまでは「股関節外科」「脊椎外科」「肩関節外科」「膝関節外科」「手の外科」「災害外科」「スポーツ外科」と細かく分かれており、さらに「低身長に対する脚延長の治療」などまで取り扱う医療機関があります。
また整形外科医療の場は高齢化に伴い、クリニックや病院といった医療現場から在宅へとシフトしています。整形外科看護は医療施設の整った医療機関だけではなく、介護領域や在宅医療、リハビリテーションなどの領域へ看護業務の拡大があるのです。
そのため整形外科に携わる看護師では、単に整形外科看護の知識だけでなく、内科看護や老年看護、在宅看護、リハビリテーション看護などの領域の知識が必要とされています。
つまり整形外科に転職希望の看護師は、異分野の経験を持ち合わせている人であっても、その力を充分に整形外科で発揮できることを意味します。
整形外科の看護師では「医療機関で疾患の治療を終えたあとは、看護の必要性はない」という考え方ではいけません。治療後まで見据え、在宅で患者さんが安心して生活できるように調整するという視野と幅広い看護知識をもっていることが整形外科の看護師で必須です。
整形外科は理学療法士・作業療法士との協力が不可欠
そうしたとき整形外科では病棟でも外来・クリニックでも、医師以外に理学療法士や作業療法士といった職種と関わるようになります。これらの職種は、術前・術後から看護師と連携してリハビリに介入します。
私自身、転倒して左手の指を粉砕骨折したため、患者として整形外科に入院した経験があります。指の手術だったため、ほとんど自立して行動できていました。そのため、看護師には洗髪の介助をお願いしたくらいで、作業療法士とのやりとりのほうが多くありました。
作業療法士のもと、指を動かす運動を6ヶ月間ほど行いました。
受傷した当初は薬指が腫れ上がり、全く曲がらない状態でした。しかし入院して手術を受け、入院中や退院後もリハビリを実施したおかげで、いまは受傷前のように指を問題なく動かすことができています。
ちなみに、このときは左手首の軟骨を「受傷した薬指の関節」に移植する手術でした。
このように整形外科では、看護師以外にも患者さんの近くでサポートを行う職種が存在します。理学療法士や作業療法士と情報交換を行いながら、それぞれの専門性を発揮して患者さんのために仕事をするのです。
ちなみに他にも、整形外科クリニックではレントゲンやCT検査を行う機会が多く、放射線技師と一緒に仕事をする場面が多々あります。つまり、多様な医療関係者と一緒に仕事をすると考えましょう。
整形外科で働く看護師の中途採用募集や仕事内容
それでは、実際に整形外科で仕事を行う看護師としては、どのような求人が存在するのでしょうか。また、仕事内容はどうなるのでしょうか。
これについて、整形外科での看護師の仕事内容は病棟とクリニックで異なります。また、必ずしも病院やクリニックでの募集とは限らず、他にも多くの求人が出されます。メインとしては、以下のような募集になります。
- 病院
- クリニック
- スポーツ整形
それぞれ、どのような仕事内容になっているか確認してきます。
病院での専門的な治療はスピードが求められる
整形外科の病棟では、看護対象が手術を必要とする患者さんであるため、手術前後の看護や固定・整復の介助を行うケースが多いです。具体的には、手術後の硬膜外麻酔のドレーン管理や、早期離床の手伝い、ギブス固定やコルセット、弾包固定などのサポートを実施します。
例えば、以下は広島にある総合病院の整形外科での手術件数です。
引用:尾道総合病院 整形外科
年間手術件数が900件以上と1日に3件ほどの手術を実施していることが分かります。そのため手術から退院の日数は短く、仕事の早さが求められます。
例えば脊椎の内視鏡下手術の場合、ほとんどの病院が入院期間を4日と設定しています。そのため、入院時から退院指導を行うなど、看護師はかなりのスピードの手際さを求められるので素早く仕事を進める必要があります。
参考までに私の場合、先ほどの手の手術では「手術を受けた次の日には退院」など、すぐに退院することになりました。
そうしたとき整形外科の専門病院はそれなりにたくさん存在します。例えば、以下は千葉にある「整形外科やリウマチなどを取り扱う病院」の看護師求人です。
骨折や人工関節置換に限らず、リウマチを含めて整形・リハビリに関する幅広い仕事内容となります。ただ手や足など特定の部位を動かすことはできなくても、脳や体はしっかりしている人が多く若い患者さんもたくさんいるため、そういう意味では仕事をやりやすいのが整形外科の病棟です。
整形外科クリニックで外来業務を行う
一方、整形外科クリニックの外来では、保存治療や腰痛・膝関節痛などの慢性的な痛みを抱えて来院する患者さんが多いです。そのため、主な仕事の一つが注射です。例えば、看護師は膝に貯留した関節液を抜く介助をしたり、ブロック注射(膝や肩などの痛みを取る注射)を打ったりする仕事を行います。
例えば以下は、東京にある整形外科クリニック求人の仕事内容です。
こちらの求人では、求人票に記載がある通り採血や注射がメインとなっています。一方で整形外科の処置やレントゲンポジショニング(患者の体位の取り方)の仕事は存在しません。診察の補助や採血・注射などを毎日行うと考えましょう。
・仕事内容はしっかり確認するべき
ただ、多くの整形外科求人では具体的な仕事内容が書かれていない求人票が多いため、応募前に仕事内容を確認する必要があります。
例えば以下のような東京にある整形外科クリニックの求人がこれに該当します。
このように、仕事内容に看護一般業務としか掲載がない場合、どのような仕事を行うのか分からず、具体的な内容を確認しなければいけません。このとき聞きづらい場合、転職サイトの担当者に尋ねると、求人先に問い合わせて具体的な仕事内容について教えてもらえます。
ちなみに中には放射線技師を雇用せず、レントゲンポジショニング(患者の体位の取り方)を看護師に行わせるクリニックがあります。その場合、看護師であってもレントゲンポジショニングについての勉強が欠かせません。
またCT検査などで、狭所を怖がる患者さんや耳の遠い患者さんがいる場合は防護服を着て、検査の間、中に入って患者さんの介助をするように指示される職場もあります。安全基準値内には入っているとはいわれていますが、不安の方はこのような職場は避けるのが無難です。
スポーツ整形でプロ選手とも関われる
なお整形外科病院・クリニックの中には、スポーツ整形に強みをもつ医療機関があります。もちろんスポーツ整形だけに特化しているわけではなく、スポーツ整形に関われる医療機関でも、関節・脊椎疾患をもつ患者さんが広く来院することになります。
つまりスポーツ整形を広く取り扱う医療機関だと、一般患者へのケアをメインとして、プロのスポーツ選手を含めたサポートまで関われます。
もちろんスポーツ選手とはいっても、整形外科なので膝前十字靭帯損傷(膝のスポーツ外傷)などのケガを負った選手が患者さんとなります。万全な状態のスポーツ選手は来院しません。
そうしたときラグビーなどの接触型のスポーツは当然として、野球やサッカーなどで関節を強くひねったり、疲労が蓄積したりしてケガをしたりするのは普通のため、ケガで来院したときにスポーツ整形の看護師が活躍します。
例えば、以下は東京にあるスポーツ整形に強い病院の求人です。
病院やクリニックとはいっても、スポーツ整形まで診察できる医療機関は少ないです。そこでスポーツ医学まで学びたい場合、求人を選ばなければいけません。
特に学生時代にスポーツを本気で頑張ってきた看護師であれば、こうしたスポーツ整形にて「プロアスリートをサポートできる医療機関」の中途採用は大きなやりがいをもてるといえます。
生命直結の仕事が少なく、残業がほぼないメリット
そうしたとき、整形外科やスポーツ整形で活躍する看護師求人のメリットには何があるのでしょうか。これについては以下の通りです。
- ボディメカニクスが上手になる
- 生命に直結する仕事が少ない
- 患者さんの回復の手助けを行える
- 残業が少なめ
整形外科看護では車いすなどへの移乗などの仕事が多く、障害部位に合わせて姿勢を調整したり、無理のない体位変換をしたりしなければなりません。
このとき、ボディメカニクスを駆使しなければ移乗が難しい状況が多いため、必然的に上手になっていきます。これは、他の科に転職したとしても汎用性の高い技術になります。
そうしたとき整形外科では患者さんが亡くなることは少なく、回復の過程を見守ることができます。多くの場合、退院時に患者さんは回復している場合が多く、一番近い存在である看護師は感謝されるケースが多々あります。そのためやりがいや魅力を感じながら仕事に取り組むことができます。
整形外科はICUや救命救急など緊迫した他領域の看護と比べると、精神的に楽だといえます。
さらに重症患者が少ないため、夜勤のときに急な対応を必要としたり、急患が入って残業となったりすることがありません。特にリハビリテーション病院での整形外科病棟であれば、計画通りに仕事が進むことが多く、残業は少なめです。
例えば以下は、愛知県にあるリハビリを中心としたケアミックス病棟での看護師求人になります。
残業は他病棟と比べると10時間ほどと少なめであり、しかも看護師だと取りにくい有給休暇も多くのスタッフが取得できています。
ただ二次救急のある病院では、事故などで受傷した患者さんを受け入れるため、緊急入院が発生します。そのため、残業で遅くなることもあるので注意が必要です。病院の形態によって残業の有無が変わってくるため、これについては事前に確認しましょう。
腰痛やナースコールの多さがデメリット
ただ当然ながら、整形外科の中途採用募集とはいってもメリットばかりではありません。デメリットも存在しますが、これには以下があります。
- 腰痛になる可能性が高い
- ナースコールの回数が多い
- 入退院が頻繁
整形外科の多くの患者さんは運動器に障害が起こっているため、介助を必要としています。ボディメカニクスを駆使するといっても、体格の大きな患者さんの体位変換や移乗となると、腰を痛めてしまう可能性が高くなってしまいます。
また整形外科病棟だと、ナースコールの回数が他の病棟よりも異常に多いのが一般的です。整形外科の患者さんは体の自由が利かないため、トイレ介助はもちろん、「ベッドの下に物が落ちた」「テレビをみたい」など少しの動作でもナースコールで呼ばれるからです。
急な手術は少ないものの、「頻回なナースコールのせいで、なかなか計画通りに仕事をこなすことができない」と考えてしまう看護師は多いです。
他にも慢性期病棟とは異なり、手術が終わるとすぐに退院や転院していく患者さんが多く、毎日の数名の入院記録や退院記録の作業を行う必要があります。患者さんが回復して退院する姿を見送ることにやりがいを感じるのですが、患者さん一人ひとりと信頼関係を作り、じっくり関わる看護は少ないです。
整形で働く看護師の年収・給料
それでは、収入面ではどうなのでしょうか。整形外科・スポーツ外科で働く看護師の年収・給料は、他科と比較して多くも少なくもなく、平均額といっていいです。
整形外科に関わらず、都市部のほうが給料は高い傾向にあります。例えば以下は東京都内にある、中規模整形外科病院の看護師求人です。
整形外科の看護師の平均年収は他の看護師と同様、420~450万円くらいだと考えておいて良いでしょう。
一方、クリニックや外来であると夜勤がないのでどうしても収入は下がります。以下であれば、三重県にある整形外科クリニックの求人になります。
この求人票では、月収で28万円ほどとなっています。これは他クリニックと比較すると高めに設定されています。ただ整形外科クリニックの場合、院長の方針次第で給与差を生じることがあるので注意する必要があります。
パート・アルバイトの非常勤の時給も普通
なお整形外科で勤務する場合、都市部だとパート・アルバイトは時給が平均1,700円ほどになりますが、田舎だと時給1,500円ほどになるケースが多いです。
つまり非常勤での勤務についても、一般的な時給となります。例えば以下は、神奈川県横浜市にある整形外科クリニックの看護師パート求人です。
このくらいの時給が平均なので、参考にすると良いでしょう。
パート・アルバイトとしての時給は、あなたの経験や病院・クリニックの忙しさにもよります。そのため一概にはいえませんが、整形外科の非常勤だと時給1,500~1,700円くらいを目指しましょう。
履歴書での志望動機の書き方を理解する
そうして希望する整形外科が決まったら、次に「どのような志望動機を書いていけば良いのか」を考えなければいけません。
志望動機を書くにあたって重要なポイントは、あなたが入職を希望した医療機関の整形外科で、「自分は何ができるのか」「何を実現していきたいのか」といった、将来に向けて前向きでポジティブな意志表示をすることにあります。
そこで必ず自分の言葉で考え、あなたの意志を志望動機に盛り込むようにしましょう。ちなみに履歴書の志望動機欄は以下のように非常に狭いです。
この欄に、小さい文字でダラダラと書き連ねる人がいます。そうしたことはやめ、志望動機・自己PRは200字前後でまとめるように心がけましょう。
そうしたとき、志望動機例文としては例えば以下のようになります。
オペ室で勤務していますがその中で整形外科の手術を行い、身体機能の改善を期待できなくても笑顔を取り戻される患者様と関わる中で「整形外科に携わっていきたい」と強く感じるようになりました。 オペ室看護の経験を活かし、「外来・病棟・回復室・ICUなど多部門と患者様間」の的確で正確な情報交換を行い、オペ前後の患者様の不安な気持ちに寄り添える看護を実践していきたいと考えています。貴院にて術前・術中・術後の全期間を通して、患者様に一貫した看護ケアを提供できるよう努力していきます。 |
オペ室から整形外科と全く異なる領域からの転職でも、「多部門との連携を大切にする」などオペ室看護師ならではの視点をもって仕事を遂行していけることを述べています。
これと同じように、いままでの経験から自分の強みを述べて、採用側にあなたを採用するメリットの具体的な材料を提供しましょう。
観察力と判断力のある整形外科看護師を目指す
看護をするにしても、患者さんの生死に関わることなく、精神的なプレッシャーを受けなくてもいいのが整形外科で働く看護師です。回復していく患者さんを見守り、笑顔で退院する患者さんを見送るたびに整形外科看護師としてのやりがいや魅力を感じ、仕事を楽しいと思うことができるといえます。
ただ整形外科の領域では、障害部位以外は健康体である患者さんを「どのように身体的・精神的にサポートしていくのか」など、観察力や判断力が問われます。
そうした整形外科を目指すに当たり、病院やクリニックを含めて医療機関によって仕事内容は大きく変わります。そこで、どのような整形外科の看護師を目指したいのか最初に見定めるようにしましょう。
こうして転職活動を進めることで、ようやく整形外科の看護師として優れた中途採用募集を見つけられるようになります。
求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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