あらゆる業界の中でも、看護師は転職が活発な職業の一つとして知られています。この理由の一つとして、さまざまな医療機関で看護師が足りていない現状が挙げられます。そのため、看護師は転職しやすい職業だといえます。

事実、一般的には35歳を超えた瞬間に転職市場での価値はほぼゼロになります。ただ看護師だと、パート・アルバイトなどの非常勤を含めれば60代であっても問題なく転職できます。

しかし、実際に転職するとなると大きな迷いを生じるのは普通です。また実際に転職するにしても、慣れない職場でどう頑張ればいいのか事前に理解しなければいけません。

転職には正しい手順があります。これらをミスすると、転職を後悔してしまいます。そこでこうした転職への不安を抱える看護師について、どのように悩みを解決し、さらには慣れるまで何を考えて行動すればいいのかまで含めて解説していきます。

転職するかどうか迷う看護師が大多数

いまの職場から転職するかどうかについて、深く悩むことで不安に感じる人が多いです。これについては当然であり、転職はその後の人生を変えるような大きなインパクトをもたらすイベントになります。そのためほとんどの看護師について、慣れない転職活動に悩むのは当然だといえます。

そうしたとき、ほぼ100%の確率でネガティブな原因が転職理由となります。例えば、以下のようになります。

  • 人間関係が悪く、いじめがある
  • 職場でスキルアップできない
  • 子供や親の介護で仕事を続けられない
  • 待遇が明らかに悪い

どれも後ろ向きの要素が強く、「いまの職場が最高の環境だけど転職する」などの看護師は存在しません。こうしたネガティブな要因から、転職が怖いと感じて迷う状況になるのです。

・望みの環境を手にできないなら転職が妥当

そうした迷いがあるとき、転職するべきかどうかの基準は単純です。これについては、いまの環境であなたが望む働き方を実現できるかどうかで考えましょう。

例えば私の場合、最初は総合病院での勤務でした。ただ総合病院の中でも慢性期病棟への配属であり、毎日の作業は移乗やおむつ交換、入浴介助ばかりでした。これがずっと続き、採血すらできない看護師であることに危機感を覚えて新卒後に1年も経たないうちに転職しました。

もちろん不安や迷いはありましたが、前の環境ではスキルや知識を何も身に付けていない看護師として働き続けることが分かっていました。既にある程度の看護経験があるなら慢性期病棟でもいいですが、新卒からそういう状態だったため、環境を変えるために転職したというわけです。

転職に悩む場合、一番の判断基準は「いまと同じように働き続けることで、あなたの望みを叶えられるかどうか」で考えるようにしましょう。私の場合、「いまの職場ではスキルアップが無理」と感じたので転職を選択しました。

怖いと感じ、迷うのは希望や条件が明確でないから

そうしたとき転職に怖いと感じるのは、転職するときの希望が明確でないからだといえます。転職で失敗する人に多い共通点でもありますが、何となく転職すると確実に失敗するといえます。

そこで、転職先に求める希望や条件を具体的に洗い出すようにしましょう。希望や条件は人によって異なりますが、例えば以下のようになります。

  • 常勤看護師で転職
  • 夜勤ありでもいいが、あっても忙しくない夜勤がいい
  • 収入は前職と同じか上がるくらい
  • 循環器科など忙しい職場でなく、精神科や慢性期などゆったりした環境がいい
  • 寮ありだとありがたい

実際にはもっと希望条件を挙げる必要はありますが、これらの希望を出し、それに合致する求人を見つければ問題ありません。常勤でも非常勤(パート・アルバイト)でも、探せば問題なく希望条件に合う中途採用の募集が見つかります。

・転職サイトを利用するときに希望条件を伝える

なお実際に看護師が転職するとき、ほぼ転職サイトを利用することになります。そのとき、ぼんやりとした転職希望条件と伝えると、ぼんやりとした求人票しか提示されません。

そこで年収額や希望する働き方の詳細を伝えるようにしましょう。そうすれば、あなたの希望に合致した中途採用募集のみ紹介されるようになります。

こうして優れた求人のみを紹介され、いま働いている職場よりも明らかに条件がよく、あなたが望む働き方を実現できそうなのであれば「転職が怖い」とは考えなくなります。転職に悩み、失敗する大きな原因は「求人先に望む希望条件を明確にしていないから」だといえます

求人先の内情を理解しないとギャップを生じ、悩むことになる

なおこのとき、転職サイトを通じて希望に合致する求人票を提示してもらうのは当然ですが、これに加えて求人先の内情を理解するようにしましょう。実際のところ、転職時に聞いていた条件と違うためにギャップを生じ、転職後に悩むことがよくあるからです。

多くの医療機関で看護師不足ですし、病院の師長(クリニックなら院長)は良いことをメインで述べるようになります。

また転職サイトの担当者が給料や勤務体制などの条件交渉を調整してくれるにしても、条件交渉する相手側は師長や院長など上の立場の人になります。これでは医療現場の隠れた現状はつかめません。

そこで面接時、将来の同僚になるであろう応募先の看護師に「実際のところ医療現場の実態はどうなのか」を確認しておくようにしましょう。必ず職場見学をすることになるため、そのときにぶっちゃけ話を聞いておくのです。

休みの状況(有給休暇の取得)や夜勤の様子、仕事内容など、下の立場の看護師がどのように考えて業務に当たっているのかなどの内情を把握することが最重要だといえます。

このとき、「この職場は何か違う気がする」と払しょくできない不安が心の中に残る場合、その不安はだいたい当たっています。

一方で何も問題なさそうであり、迷う気持ちがなくなったのであれば、面接先の医療機関へ転職することで、優れた環境で勤務できる可能性が非常に高いといえます。

転職前の漠然とした不安や怖いという感情については、どのような環境で勤務するのか分からないために生じます。そのために転職条件を詳細に挙げ、それに見合う求人を転職サイトから紹介してもらい、実際の職場見学でも内情がどうなっているのか確認するようにしましょう。ここまで実践すれば、転職への迷いはなくなります。

中途採用の職場で認めてもらい、不安をなくす

なお転職時の条件面については、正しく希望条件を述べてある程度の内情を理解したうえで転職すれば、基本的には問題ないといえます。転職後のギャップを感じることはなく、優れた環境で働けるようになります。

ただそれと同時に重要なのは、新しい職場に慣れるまでの数ヵ月の間にどのような態度で臨むかだといえます。そこで中途採用の看護師として新しく入職するとき、職場での心得について理解しなければいけません。

このとき第一の心得として、焦らないことが挙げられます。新人として中途入社すると、誰もが以下のように考えてしまいます。

  • 周囲から認められないといけない
  • 仕事を早く覚え、一人前にならないといけな
  • 人間関係で失敗してはならない

しかし最初から全てのやり方をマスターし、新しい職場の雰囲気や文化までを瞬時に理解し、完ぺきに仕事をこなせる新人はいません。同じ看護業界で同じ科であっても、使用する器械が違えば、採血の方法もケアの進め方も異なるケースがよくあるからです。

それよりも慣れるまでは、長いスパンでゆっくりと一つひとつの仕事をミスのないよう、こなしていくくらいの気持ちで構えているほうがいいです。

ただいつまで経っても同じ失敗を繰り返していれば、先輩方も怒ってしまいます。同じ失敗を繰り返さないよう、「失敗をメモしておく」「昼休憩に先輩に再度確認してみる」などの対応により、新しい仕事や環境に慣れていくほかありません。

慣れない職場で雑用を率先して行うのは非常に重要

なお、私もこれまでに何度も看護師として転職してきましたが、慣れるまでに雑用を率先して行うのは非常に重要だと感じています。

実際のところ、どれだけ経験を積んだとしても雑用は嫌です。ただキャリアがある人ほど転職後も腰が低く、雑用でも進んで行う傾向にあります。ケアで使った物品の片づけや汚物の処理、おむつ交換など、みんなが敬遠して後回しになりそうな作業を率先して行うのです。

また、いまの私はクリニックで副師長という立場ですが、新人で入ってきた看護師について、積極的に雑用を担ってくれるとやはりうれしいです。みんなやりたくない仕事なので、それをしてもらうだけでも「新しく入ってきてくれた人が嫌な作業を率先してやってくれるので助かる!」と感じます。

もしそのような作業が見つからない場合も、「なにかお手伝いできることがあったら、教えてもらえませんか」と声をかけ、積極的に行動しましょう。あなたの意欲が伝われば、いろいろな仕事を任せてもらえる可能性が高くなってきます。

最初は雑用かもしれませんが、それらを丁寧にこなしていくことであなたの仕事ぶりが認められてきます。「雑用なんて嫌だな。前の職場ではあまり雑用をしたことがなかったのに」と思うかもしれませんが、新人は全員が通る道です。そこで、積極的に雑用を引き受けましょう。

仕事のアピールはせず、前職と比較しない

なお新卒で入職した看護師と、中途で入職した看護師では立場が異なります。「新しい環境に身を置く」という点ではどちらも同じですが、受け入れる側からすると新卒と中途では受け入れ方が全く異なることを理解しておきましょう。

新卒で入職した看護師であれば、看護に関してまっさらな状態であるため、先輩看護師は「すべての事柄をゆっくり教えてあげないといけない」と思っています。

しかし中途で入職した看護師の場合は、「ある程度までは即戦力として採用された」といえます。たとえ慢性期病棟のみの経験で採血すらできなかったとしても、看護師として勤務している以上は患者さんへの声掛けなど、これらの経験を活かすことができるといえます。

そこで前職での能力やスキルなどは一切話さず、雑用も積極的に引き受けるようにしましょう。

・言葉遣いは気を付けるべき

また同時に前職と比較するのも厳禁です。実際のところ、「以前の職場と比較して、いまどう?」と既存の看護師から聞かれることがあります。そのようなとき、とくに気を付けておきたいのは、「前の職場よりも、こちらの職場のほうが楽」という「楽」というキーワードです。

あなたは「良い意味で楽、楽しい」といったのかもしれませんが、聞いている側からすると「楽な職場を選んだ」とネガティブな意味で捉えられてしまう場合が多々あります。

他にも「ここは命に直結するような看護が必要なくていいです」などの発言も同様です。「看護技術をあまり必要としない職場だからスキルが身に付かない」と思い悩んでいる看護師からすると、新人中途採用のあなたが発した言葉は既存看護師へ矢のように突き刺さることもあるのです。

そこで「前職と比べてどう?」と聞かれたら、比較することなく「大変ですが、素敵な職場です」と答えるのが適切だといえます。看護師では人間関係に悩む人が多いため、慣れない職場では言葉を選ばなければいけません。

うまくいったとき・褒められたときは謙虚な姿勢で接する

なお新人として入職したあと、なにか事がうまく進んだり褒められたりしたときは、謙虚な姿勢を示しましょう。

新人が謙虚に「運が良かったです」「教えてくれた先輩のおかげです」などというと、既存の人たちは祝福する気持ちが強まります。

反対に新人が「猛勉強したので、うまくいきました」などと自分ひとりの手柄にして自慢げに語ると、既存の人たちは妬む気持ちが強くなります。看護師は女性社会のため謙虚な姿勢で臨まなければ、「攻撃の対象」となる場合があるので注意が必要です。

ただ謙虚すぎるのも問題です。「自分は看護師としての能力が低い」などが口癖だと、任してもらえそうな仕事も「あの人に頼むのは止めておこう」と思われてしまいます。それではいつまで経っても看護スキルを磨くことができません。

いくら新人だからといって、必要以上に自分を卑下する必要はありません。

看護ケアに不安があるときは、先輩看護師の手が空いているときに「自分ひとりでしてみたいのですが少し自信がありません。もし時間があれば、私のケアをみてもらってもいいでしょうか」などと声をかけてみましょう。

先輩看護師も「自分を信頼してもらっている」と分かるので嬉しくなりますし、あなた自身も新しい職場での看護に自信がついてきます。謙遜しすぎず、積極的に仕事を覚えていく姿勢をみせましょう。

事前に調べ、悩みやギャップを解消して転職する

当然ですが、転職を楽しいと感じる人はいません。何らかのネガティブな理由があって転職するのが基本だからです。そのため転職というイベントに対して怖いと感じたり、不安に思ったりするのは当然です。

そこで、事前にあなたが望む勤務方法を書きだし、それに見合う求人を選びましょう。また面接時は職場見学が可能なため、そのときに現場の看護師にヒアリングし、すべての悩みが解消されるまでいろいろ聞いてみるといいです。

そうして迷いが晴れたのであれば、内定をもらった後に転職すればいいです。ただ実際に転職したあと、慣れるまでの態度や言動も非常に重要なため、これについて事前に何に注意すればいいのか理解しましょう。

そうして雑用を積極的に引き受けるなど、入職後に重宝される存在になるといいです。他の人が嫌がることを率先して行うだけでもありがたい存在となるため、これら基本的なポイントを理解したうえで実践すれば転職で失敗しなくなります。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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