%e7%9c%8b%e8%ad%b7%e5%b8%ab%e3%80%80%e6%b3%a3%e3%81%8f

日本看護協会によると「毎年、常勤看護師で約11%、新卒看護師で約8%が離職している」とされています。夢や希望を抱いて入職した病院であったはずですが、約10人に1人は離職を余儀なくされているのです。

看護師が離職する理由として「自分が描いていたようなスキルアップができなかった」「育児に専念したかった」などが上位に挙げられています。ただそれは、上司に退職理由を伝えるときの建前として使われる場合が多いです。

退職の本音は「人間関係の悪さ(いじめ・パワハラ)」ということが多く、これが看護師の離職理由の実情だといえます。

それでは、看護師が「いじめ・パワハラなどで辞めたい」と悩んだときにどのような対策を講じたらいいのでしょうか。いじめられない方法はあるのでしょうか。ここでは、いじめやパワハラに対する具体的な対処法について述べていきます。

なぜ看護師はいじめやパワハラが起こりやすいのか

まず、「なぜ看護師はいじめやパワハラといった人間関係で悩むことが多いのか」について考えていきたいと思います。看護の職場でいじめやパワハラが起こりやすい原因には、以下の2つがあるとされています。

  • 忙しく、心に余裕のない看護師が多い
  • 看護職は過剰な指導が許される環境にある

それぞれについて説明していきます。

忙しく、心に余裕のない看護師が多い

看護の職場は人材不足や不規則勤務ということもあり、一人ひとりの受けもつ仕事量が許容量を超えており、余裕のない状況に追い込まれることがよくあります。心に余裕のない人の場合、自分より弱い立場の人間を見つけ出して優位に立ち、一時的にでも心にゆとりをもとうとします。

例えば以下のような、立場が弱かったり少数派だったりする人は、いじめのターゲットになりやすいとされています。

  • 1年目の新人看護師
  • パート・派遣看護師
  • ブランクのある看護師
  • 妊婦の看護師

こうした人は、看護の職場ではどうしても少数派になりやすいです。少数派であれば、いじめやパワハラなどを受けても反抗しないことが多く、どうしてもターゲットになりやすいといえます。

看護職は過剰な指導が許される環境にある

また仕事の特性上、経験のある看護師であれば絶対的に立場が上になり、過剰な指導や行き過ぎた教育が許されてしまう傾向にもあります。

私自身、社会人として働き、看護師免許を取得したのは30代後半であるため、一般の新人社会人と新人看護師の教育の違いについて比べてみることができます。

そうしたとき看護師だと、「注射の角度が〇度おかしい」「看護ケアの根拠を述べよ」など、いくらでもあらさがしできる状況にあると感じました。看護ケアは先輩看護師によって言うことが異なるケースが多く、その先輩に合わせた根拠を述べなければいけません。

このように看護師の場合、女性社会であることに加え、いじめやパワハラが発生する条件が揃っているといえます。

実際のところ看護師だと、耳を塞ぎたくなるようないじめのエピソードをもっている人が非常に多いです。悪質な例となると、ナース服や私物が切り裂かれていたり、私物に医療用の針で針山が作られていたりと、壮絶ないじめを経験している看護師もいます。

また当サイトの管理人である私自身も、以前勤めていた眼科クリニックで、お局(おつぼね)化した師長をはじめ、主任や同僚から壮絶ないじめを受けました。無視や聞こえるような陰口は当然で、洗濯物を別に分けられます。さらに昼休憩は私だけ小さな机を用意されるなど、挙げればきりがないくらいです。

誰もいない薄暗い倉庫で深呼吸をして、何度、落ち込んだ気持ちを奮い立たせたか分かりません。

指導とパワハラの線引きは非常に難しいです。ただ「指導だ」「パワハラだ」と争っている時点で、すでに職場で何らかの問題が起きているといえます。

いじめやパワハラを放置していると、もっと問題が複雑化してしまう可能性が高くなってしまいます。そこで、いじめについてどう対処すればいいのか考えなければいけません。

看護師のいじめ・パワハラへの対処法

そこでいじめやパワハラの対処法には、どのようなものがあるのか述べていきます。このときの対策としては、主に以下のような方法があげられます。

  • 自分の言動・行動が正しいか振り返る
  • 「自分が悪い」と思いこまない
  • 相談役となる先輩や上司(師長や主任など)をつくり、3者で話しあう
  • 転職を考え、いまの職場から離れる

具体的にどうなっているのか確認していきます。

自分の言動・行動が正しいか振り返る

まずは自分自身を振り返ってみましょう。もしかしたら、あなたは無意識のうちに職場の上司や医師、先輩、同僚などに対して嫌な思いをさせているのかもしれません。あなたはいじめを受けている被害者ではなく、加害者かもしれないのです。

私の経験談ですが、入職して1ケ月に満たない20代前半の新人看護師が、患者さんから「ここの職場は楽しそうでいいね」といわれたことがありました。すると、周囲に他の患者さんや看護師がいるにも関わらず、その新人看護師は大きな声で「そうでもない。みんな表面上だけ楽しそうなふりをしている」と発言しました。

この発言には、スタッフだけでなく患者さんも驚きました。本人は冗談で言ったつもりかもしれませんが、周囲の人は聞いていて面白くありません。

またこの新人看護師は、「医師(院長)のことは好きだけど、周囲の看護師とはうまくやっていけない」などと悪気もなく、患者さんに愚痴っているのを複数の看護師が耳にしたこともありました。

さすがにその発言を耳にして、見かねた60代のベテラン看護師は、その新人看護師を注意しました。すると泣き出してトイレに閉じこもってしまい、30分以上出てきませんでした。こうして職場はいままでにないほど、嫌な雰囲気に包まれました。

その後、看護副師長である私がフォローに回ったのですが、その新人看護師は「あの先輩看護師は些細なことで注意してくるから怖い」と避けるようになってしまいました。そのベテラン看護師が仕事を頼んでも、2回に1回は聞こえないふりをするようになったので、ベテラン看護師は仕事を頼まなくなりました。

このようなことでは教える側がいくら熱心に教えても「成長がみられない」と感じて、指導を放棄してしまいます。ここまではいかないまでも、この新人看護師のように、あなたも無意識のうちに周囲を嫌な気持ちにさせていないでしょうか。

もし、いじめやパワハラを受ける理由がよくわからないようであれば、上司や先輩、同僚など第三者を介して、「どうして毛嫌いしているのか」について尋ねてみるとよいでしょう。

自分の欠点を指摘されるのは耳が痛いことですが、理由が分かれば、嫌われている行動を慎むようにすれば問題ありません。

「自分が悪い」と思い込まない

しかし、理由なしにいじめやパワハラが続くことは多々あります。仕事ができないから嫌っていじめているのではなく、相手はただ単に「いじめたいという欲求を満たす」ためにしている場合があるのです。

このようなときは「自分が悪い」と思う必要はありません。

もともとパワハラの多くは、職場自体に何らかの原因があることが多いです。相手があなたを攻撃してくることに明確な理由はありません。原因を探って修正するだけ無駄であり、現状は何も変わりません。

それどころかいじめやパワハラを我慢し続けていると、自信を失いはじめ「自分は看護師に向いていない」「仕事ができない自分が悪い」などと思い込んで、精神的に病んでくるなど問題が深刻化してきます。

相談役となる先輩や上司(師長や主任など)をつくり、3者で話しあう

そこで問題が深刻化する前に、職場の中に誰か信頼できる人を見つけて相談しておくことが大切です。「これくらい自分が我慢すれば大丈夫」と思って放置しておくと、大きな問題に発展してしまうことがあります。小さなうちに対処しておけば、解決のときの時間や労力、精神的苦痛はそれほど生じません。

まずは「これはパワハラかもしれない」と感じたら、同僚の中でも信頼できる先輩や上司に相談してみましょう。パワハラは職場に原因があるために生じる問題なので、相談によって問題を客観的に捉えることができます。

もし上司からパワハラを受けているようであれば、その上の上司に相談するとよいでしょう。公正な目で、中立的な立場になってくれる適任者を探すのです。相談相手は看護師長、主任、先輩看護師でも構いません。

そうして3者(あなた・相手・相談役)で話し合う機会を作りましょう。ここでは相談役である第三者が立ち入ることがポイントです。第三者が入るほうが、双方が冷静に話し合いを進めることができます。

ただし暴行や侮辱、名誉棄損などの重大なレベルのパワハラですと、部署内の第三者を交えたとしても、解決は難しい場合が多いです。

転職を考え、いまの職場から離れる

しかし、場合によっては職場自体がダメなケースもあります。過去、私が勤務していた眼科医院がこれであり、私はいじめの標的となってしまいました。それまで一般社会人として勤務し、ある程度のストレス耐性や社会常識はあると思っていましたが、それでも耐えることができませんでした。

場合によっては部署移動が可能かもしれませんが、クリニックや中小規模の医療機関では部署異動も難しいです。そこで私の場合、転職をして職場から離れる決断をしました。

いじめやパワハラが原因で転職する看護師は大変多く、看護師の転職理由の上位を占めるのは常に「人間関係」です。そのため、人間関係を理由に転職することを負い目に感じる必要は全くありません。

参考までに私の場合、社会人経験後の30代半ばで新卒看護師として働き始め、わずか1年半の間に2回も病院を変えてしまいました。そのうち一つが眼科医院であり、壮絶ないじめ・パワハラに遭遇したわけですが、最終的には転職サイトの担当者の助けもあって優れた職場に巡り合えました。

いじめやパワハラに悩む看護師の中途採用求人の注意点・対策

なお転職すると、「また同じようないじめやパワハラを受けてしまうのではないか」とトラウマを抱えてしまう人がいます。その場合、私も利用しましたが看護師専用の転職サイトに登録を行い、プロのコンサルタントに頼るのが良いです。

転職サイトや転職コンサルタントによって相性はありますが、「応募先の職場に直接、人間関係などの内情を聞いてくれるスタイル」をとっている転職サイトであれば、入職後のいじめやパワハラで悩むことは少なくなります。

このとき応募先について、担当コンサルタントに尋ねておきたい内容は以下のような事項になります。

  • 職場トップの人柄
  • 患者数に対する看護師数
  • 新人看護師の離職率
  • 辞めた看護師の退職理由
  • 看護師の平均在職年数

これらを確認すれば、応募先の人間関係が掴めてきます。その中でも、職場内でのトップの人柄に問題がなければ、多くの職場ではいじめやパワハラといった問題は起こりにくいとされています。例えば、病院であれば看護師長や看護副師長がトップであるといえます。クリニックなら院長である医師がトップです。

例えば次のようなコメントのある求人を選ぶと、トップがしっかりしているため、安心して働くことが可能です。

こちらは東京にある急性期の病院ですが、超多忙な急性期であっても働きやすさには定評のあるところです。もちろん、面接のときなどでトップと話すことになるため、そのときについても人柄に問題ない上司かどうかを見極めるようにしましょう。

また「求人先が求人を出した理由」について知りたい場合も、転職コンサルタントが求人先から内情を詳しく教えてくれます。例えば訪問看護ステーションや老人ホームなどであれば需要が高まり、事業拡大で看護師を募集していることがあります。以下だと、東京の訪問看護ステーションの求人のコメントです。

欠員となると、「前職者はなぜ辞めたのだろう」と気になるところですが、こちらの求人は増員ですので「誰かが職場を嫌になって辞めたのではない」ことが分かります。他にも、求人先の看護師の退職理由について本音が知りたければ、転職コンサルタントに尋ねてみましょう。

私自身、以前に辞めた眼科クリニックの退職理由は、院長や看護師長には「一身上の都合で」と伝えました。しかし転職コンサルタントにはかなり詳しく、そこで受けたいじめの内容について本音で語りました。

転職コンサルタントに本音を話しても、そのことが外部に漏れることはありません。むしろ、いろいろな愚痴を聞いてもらうことで自分を肯定でき、自分に合った次の転職先を客観的に把握してもらえます。

こうして転職サイトには生の情報が集まってくる構図になっているため、求人先の内情を含めて聞けば教えてくれます。

訪問看護ステーションへ転職し、一人で行動してもいい

または、そもそも人間関係の問題を考えなくてもいい職場へ転職しても問題ありません。例えば訪問看護ステーションであると、基本的に患者さん宅に看護師一人が訪問します。そのため、病棟看護師のように先輩看護師に監視されることはなく、人間関係で悩む時間は少なくなります。

例えば、以下は東京にある訪問看護ステーションの看護師求人になります。

もちろん訪問看護ステーションの場合、医師や看護師での人間関係の悩みは減りますが、患者さんやそのご家族との関係は病棟以上に密なものになります。また所長やケアマネージャーとの関係なども大切です。

訪問看護ステーションで求人を探す場合、トップである所長の人柄やモラルなどを見極め、欠員ではなく増員の求人を見つけるように心がけましょう。

紹介予定派遣で人間関係を見極める

ただ、いくら評判が良い求人案件といっても、あまりにも以前の職場でのいじめやパワハラが辛すぎた場合、いきなり常勤(正社員)として働き始めることに二の足を踏む人がいるかもしれません。また、「人間関係の良い職場といっても、相性があるのではないか」と悩む人もいます。

そのようなケースであれば、紹介予定派遣という働き方をおすすめします。

紹介予定派遣とは、派遣看護師としての働き方のひとつです。3~6ヵ月ほどで雇用契約を結び、その間は派遣看護師として働くことになります。主に3ケ月といった雇用期間を設けているところが多く、その間に職場内の人間関係や仕事内容を見極めることができます。

その職場が気に入れば直接雇用となり、気に入らなければ断ればいいだけなので問題は生じません。例えば、以下は東京の有料老人ホームの求人です。

この求人では、雇用形態は常勤または紹介予定派遣であす。いきなり常勤雇用で働いてもいいし、とりあえず紹介予定派遣で働くことも可能です。

このとき6ヵ月ほど紹介予定派遣として働き続けてもいいですが、求人先の職場の雰囲気が悪ければ、半年も我慢した後に次の職場を探さなければなりません。最初に締結した雇用期間は守らなければならないので、いくら辛くなっても途中で辞めることはできません。

実際のところ、2~3ヵ月ほどそこで働いていれば、仕事内容や上司や同僚の性格などは分かり、自分にとって働きやすい環境かどうかを把握できます。そのため、2~3ケ月間の紹介予定派遣をおすすめします。

ただ派遣看護師求人を取り扱っている転職エージェントや人材紹介会社でなければ、紹介予定派遣という雇用形態で働けません。そのため紹介予定派遣に興味をもった方は、派遣看護師を取り扱っている人材派遣会社を選ぶようにしましょう。

ちなみに紹介予定派遣は双方の合意で正社員への登用が決まります。いくらあなた(応募者)が気に入っていても、働きぶりなどから断られることもあります。「正式採用の対象になるのか」を判断されていると常に考え、派遣期間中の言動には注意が必要です。

看護師なら次の求人を見つけることができる

前述の通り、私は看護師になって1年半で2回の転職を繰り返し、ようやく自分に合った病院に巡り会え、充実した日々を過ごしています。そして現在、「看護師を辞めないでよかった」と改めて思います。

私の場合は眼科医院でのいじめ・パワハラに疲れ切ったわけですが、ある日、前の眼科クリニックでお世話したことのある患者さんが私を探し、いまの病院までわざわざ菓子折りを届けにきてくれたことがありました。このときは「あなたにしてもらった看護が忘れられなかった。何かお礼がしたかった」といってくれました。

私は普段、菓子折りなどは受け取らないことにしていますが、そのときは私の背中をさすってもらえたようで、嬉しくて自然と涙がこぼれたことを思い出します。頂いたお菓子は職場のみんなで分け、お菓子の入っていた缶箱は私の宝物となりました。いまでも大切に保管しています。

いじめに遭っているにしても、あなたは一人ではありません。あなたの周りにはあなたを応援してくれている人がいます。あなたの看護を待っている患者さんもいます。

ちょっとしたミスをオーバーに責められて落ち込んだり、パワハラを受けて悩んだりしても現状は改善しません。いじめやパワハラにくじけず、転職まで視野に入れて新しい一歩を踏み出しましょう。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

注目の人気記事

・転職サイトを活用した看護師転職の体験談

看護師として活動するうえで、私自身も転職活動をしたことがあります。このときは転職サイト(転職エージェント)を利用したため、そのときの実体験や方法を踏まえ、失敗しない転職について紹介します。

管理人による転職体験記

・看護師転職サイトのお勧めランキング

看護師の転職サイトはそれぞれ特徴があります。「対応地域が限定されている」「取り扱う仕事内容に特徴がある」「非常勤(パート)に対応していない」などサイトごとの特性を理解したうえで活用すれば、転職での失敗を防げます。

お勧め転職サイトランキング

新たな看護師の働き方

・美容クリニック・美容皮膚科への転職

夜勤なしで高年収を実現できる求人として、美容クリニック・美容皮膚科があります。死と隣り合わせの職場ではなく、患者さんを美しくする手伝いを行うのが美容クリニックです。

美容クリニックへ転職する

・単発・日払いの高時給求人を探すには

「今月は苦しいため、もう少し稼ぎたい」「好きなときだけ働きたい」など、こうしたときは高時給を実現できる単発・スポットバイトが適しています。健診やツアーナースなど、看護師ではさまざまな単発案件が存在します。

単発・スポットバイトで働く