看護師が転職を考えるとき、職務経歴書をどのように書けばいいのかわからない人が多くいます。実際のところ職務経歴書の書き方を知る機会は存在せず、必要な場面についても「社会人での転職」くらいになります。

そうしたとき職務経歴書といっても、その書き方は人によってさまざまです。職務経歴書は決まった書き方がなく自由である反面、応募者の格差が付きやすい書類でもあります。

看護師の経験豊富な人はもちろん、ブランクのある人、年齢相応の看護経験のない人などでも、職務経歴書の正しい書き方を知っておけば他の応募者と差をつけることができます。

そこで、あなたの職務経歴書を見た採用側が「この人とぜひ会って話がしてみたい」と思うような職務経歴書の書き方と例文について解説していきます。

看護師転職での職務経歴書の正しい書き方と例文

職務経歴書の正しい書き方について、いくら経験が豊富で様々な経歴があるからといって、それを時系列でダラダラと書き連ねるような書き方をしてはいけません。それでは採用側の目に留まる「魅力的な職務経歴書」にはならないからです。

採用側は数多くの応募者の職務経歴書に目を通さなければなりません。そのため、職務経歴書はパッと見ただけで「この人に会って、もっと詳しい話を聞いてみたい」と思わせるような魅力的な内容にしてアピールしましょう。

職務経歴書で一番大切なのは、「看護師として、過去の経験から何を得たか」など、自分のアピールポイントを盛り込むことだといえます。

こうした職務経歴書はA4用紙1~2枚ほどにまとめるのが基本であり、自己PRの一種になります。これは履歴書だけの場合、以下のように志望動機や自己PRの欄が非常に狭いため、十分アピールできないからです。

そこで自己PRとして職務経歴書を活用します。求人先によって職務経歴書を求められるかどうかは変わりますが、職務経歴書を確認することで「あなたが過去の職場でどのような経歴を歩んできたのか」が分かるようになるのです。

ダウンロード可能!職務経歴書のテンプレート・サンプル

そうしたとき、看護師はどのような内容を職務経歴書に記載すればいいのでしょうか。一般的な転職では、職務経歴書に「保有資格」「希望職種」を記載します。ただ看護師の場合、看護師資格を活かしての転職だと既に分かっています。そのため、保有資格は書く必要がありません。

また就職先も病院やクリニック、介護施設、企業などある程度まで限定されるため、通常の職務経歴書に比べて記載事項は少なくなります。そこで、以下の項目を記すようにしましょう。

  • タイトル、日付、氏名
  • 職務経歴(勤務先での仕事の概要)
  • 自己PR(または志望動機)

イメージとしては、以下のような感じになります。

このときのテンプレート・サンプルについては、同じものをワードファイルとして「ここからダウンロード」できるようにしています。看護師が職務経歴書を作成するとき、見本を参考にして自分用にアレンジしてみてください。

・手書きである必要はない

なお、職務経歴書は手書きである必要はなく、パソコンで提出して問題ありません。パソコンでは何度も書き直しが可能なので、手書きではなく先ほどのテンプレート・サンプルをダウンロードし、プリントしたものを用意しましょう。

職務経歴書の実際の書き方を例文から理解する

それでは、実際の職務経歴書としてはどのように作成すればいいのでしょうか。これについては、人事担当者の目に留まるようにしなければいけません。

職務経歴書とはいっても、単にそれまで過去の経歴や業務内容を羅列するだけではいけません。例えば、以下のような職務経歴書は意味がないといえます。

職務経歴書の失敗例文

業務内容
期間:〇〇年〇月~〇〇年〇月

医療法人ナース会 看護病院 脳外科配属

期間:〇〇年〇月~〇〇年〇月

同病院 手術室配属

1日に数件のオペ介助を行う

期間:〇〇年〇月~〇〇年〇月

医療法人看護の会 看護ケアクリニック勤務

B外科クリニック院長に引き抜かれ看護師長を行う

このような内容だと、履歴書とほぼ同じ中身になってしまいます。そのため職務経歴書として意味がありません。

そうではなく、職務経歴書では「勤務した医療機関・施設でどのような業務を行い、スキルや知識を得たのか」を記さなければいけません。例文としては、例えば以下のようになります。

職務経歴書の成功例文

業務内容
期間:〇〇年〇月~〇〇年〇月

医療法人ナース会 看護病院 脳外科配属

脳障害や意識障害のある、意思疎通を図りにくい患者様の看護に従事

(獲得したスキル・知識)

脳外科では術後、脳浮腫となり不穏となる患者様や後遺症で全介助を強いられる患者様が多くいました。そのような患者様に対して、細やかな配慮や観察を怠らず、急変には迅速に対応できるよう安全・安心第一で接してきました。

また、最先端の脳外科医療に関わるため自ら勉強会を開催し、日々看護を磨く努力を続けていました。

期間:〇〇年〇月~〇〇年〇月

同病院 手術室配属

(獲得したスキル・知識)

1日に数件の手術介助を行いました。最初は覚えることが多く、緊張感が続く中での介助であるため、病棟とは異なる細心の注意を払いながら仕事を進めていました。

そのうち、医師との意思疎通が図れるようになり、スムーズな器械出しができるようになりました。手術室看護師のやりがいに気づき始めた頃から、高リスク患者様の手術担当となりました。チームワークを発揮して手術を成功させたときの喜びは何事にも代えられない体験となりました。

期間:〇〇年〇月~〇〇年〇月

医療法人看護の会 看護ケアクリニック勤務

(獲得したスキル・知識)

クリニック院長に引き抜かれ、看護師長を務めました。クリニック立ち上げの際は、多くのトラブルを抱えて大変な思いをしましたが、ひとつずつ問題をクリアしていくことに喜びを感じることができました。

クリニック内でのチームワークをより発揮していくために「看護管理職者のための勉強会」などに参加しました。そのおかげでチームワーク力を伸ばし、お互いに助け合える関係を構築することができました。その結果、開院以来退職した看護師はいません。

また患者様をお待たせしてしまう時間を短縮するための分析を行い、内部改革を図ることにも成功しました。患者様からの口コミや評判も好評です。

このように、一つの職場について学んだことや成果を記すようにしましょう。このとき異動や転職回数が多い人であると、新卒一年目からの業務内容を書き並べてしまいたくなるかもしれません。しかし、それではだらだらと書き連ねるだけで、採用側の記憶には何も残りません。

また反対に、先ほどの失敗例のように簡素に書いてしまえば、スカスカの内容のない職務経歴書になります。このような職務経歴書は、書類選考の時点で「やる気が感じられない」と思われてしまいます。

採用側は職務経歴書を見る以外にも、たくさんの仕事を抱えています。職務経歴書を読むことばかりに時間を割くことはできません。そこでA4で1~2ページにして短くまとめるのです。職務経歴書が3枚以上になってはいけません。

「工夫したこと」「身に付けたスキル」を盛り込む

それでは、具体的にどのような内容を盛り込めばいいのでしょうか。ダメな職務経歴書としては、失敗例文に挙げたように「配属された科」「成果」だけを記す人が多いです。しかし選考する側としては、それだけでは物足りなさを感じてしまいます。

「配属された科」と採用されてから、その職場で「できること・してきたこと」は別だからです。

そこで配属された科での経験を通じて「看護技術」「ノウハウ」「知識」をしっかり自分のものに落とし込んで、「どのように活かしてきたのか」を工夫したことなどで職務経歴書に盛り込みましょう。

この場合は、職務経歴書の下に「身に付けた知識やスキル・資格」などの項目を作り、付記しておくと読みやすい内容になります。

ちなみに面接でその点を問われた時に「どのようなプロセスがあり、何を学んだのか」「どのような資格を取得し、それをどう活かして看護を行っているのか」を具体的なエピソードを交えて話せるように準備しておくと、さらにアピール面で効果的です。

「職務要約」を設けてアピールしたい内容を強調する

なお他にも読みやすく、アピールできる職務経歴書の書き方があります。職務経歴が豊富で長い場合、どうしても記載事項が多くなってしまい、要点がぼやけがちになります。

その場合、職務経歴書の冒頭欄に「職務要約」といった見出しを付け、職歴の要約文を記しましょう。するとアピールしたいことが強調されます。3~5行程度で、自分のアピールしたい職務経歴のハイライトを記す方法です。異動や転職の多い人のやり方になりますが、以下が職務要約の例です。

■ 職務要約

入職以来、脳外科、手術室などを経験し、直近〇年は外科クリニックにて看護師長を務めてきました。配属された部署で専門性を高めつつ、チームワークを重視し、患者様に期待以上の看護を行えるよう実践してきました。

おかげで患者様からの評判は良く、雑誌のコラム「私たちのチームワーク看護力」でインタビューを受けた経験をもちます。

職務要約の内容としては、職務経歴書の中でも「特に自分の強みといえるもの」「注目してほしいと思うところ」などから選びましょう。

自分がもっている強みと、希望する医療機関が求めているものが一致している点について、冒頭で伝えておけば採用側の興味を引き、期待をもって読んでもらえます。

または職務経歴を記したあと、「貴院で活かせる経験・スキル」の欄を設け、相手の医療機関で応用できそうな経験やスキルを箇条書きしてまとめておく方法もあります。

職務経歴書で自己PRを積極的に行う

こうして職務経歴書を書いた後、少し空欄が残ることがあります。そのような場合、迷うことなく自己PRの欄を作り、採用側に自分を売り込むようにしましょう。

履歴書の自己PR欄は小さく狭いです。そこで職務経歴書で再度アピールしておくと、採用側にあなたを知ってもらえるようになります。なお自己PRのボリュームとしては、職務経歴書の全体の3分の1から4分の1くらいに収めるといいです。

それでは自己PR欄にはどのようなことを書けばいいのでしょうか。自己PR欄に記入する内容としては、以下のようなものが挙げられます。

  • これまでの看護経験を通じて身に付けたスキル
  • 看護をする上でこだわっていること、自分のポリシー
  • 性格面での長所(スポーツ、趣味、院外活動と掛け合わせても可)
  • これまでの失敗経験から活かしたこと

ちなみに、自己PRは抽象的な言葉ではなく、具体的なエピソードを盛り込むようにしましょう。それによって自己PRに説得力が増し、採用側の心に響く内容になります。

看護師として働いていれば、自分はこのように看護をしていきたいという思いがあるはずです。その思いを自己PRにまとめるのです。職務経歴書に記載する自己PRについて、ダメな例文と問題ない例文を次に挙げます。

自己PR:ダメな例文

患者さんに声掛けを行い、様子を細かく観察することを意識して看護をしています。私は、患者様の安全・安心を第一に考えております。

自己PR:問題ない例文】

患者様に声掛けを行い、「以前に実施した生活指導は守れているか」など、その患者様の注意すべき看護点を普段の会話から確認するようにしていました。

もし患者様が指導内容を実践できていないと感じた場合は、「まずは何から実践したら取り組むことができるのか」を患者様自身に具体的に考えてもらうようにしました。そうすることで、患者様に苦痛を与えることなく生活改善していただくことができ、病状の安定につなげる成果となりました。

このように私は患者様に働きかけを行い、自ら気づける看護を実践しております。

ダメな例文は簡潔すぎで物足りません。また、この文章だけでは「あなたの看護に対する姿勢」も頭に浮かんできません。採用側の印象にも残らないでしょう。

一方で問題ない例文では、具体的なエピソードを盛り込むことで「応募者のアピールしたいこと」を採用側が明確にイメージできます。具体的なエピソードを盛り込みながら、自己PRを作成するようにしましょう。

・自己PR欄に失敗経験を書くのも問題ない

なお自己PRというと、一般的には成功体験について記載します。それは当然のことであり、実際に大変有効な方法です。しかし成功体験よりも「失敗体験や挫折経験を書き、それをどう乗り越えてきたのか」を記すほうが、高評価を得やすい病院やクリニックが多いです。

あなたはピンチに直面したとき、壁にぶつかったとき、どのような努力と工夫と精神力で乗り越えてきたのでしょうか。失敗したとき、どのようにそれを活かして看護をしてきたのでしょうか。

ギャップに直面し、苦しみ悩んだときに、それをどう受け止めて克服・成長していけるのかを採用側はみているのです。そこで、あなたが困難に対する強い精神力と立ち向かう姿勢で臨んだ具体的な出来事を記しましょう。

例文として、自己PR欄への失敗経験を以下に記します。

【自己PR】

前病院の救急病棟でリーダーを務めていたとき、私の担当していた新人看護師が10時間で落とさなければならない点滴を誤って4時間で落としてしまうインシデントがありました。

仕事の忙しさにかまけて、新人看護師が行った看護業務を確認しなかった私の責任です。これを機に、新人看護師が行った看護業務は、指導をした看護師が必ず再確認を行うことを徹底しました。

この結果、新人看護師自身も大きなトラブルを二度と起こさないようになりました。何かトラブルが起きた際は、その原因となった人の責任だとは考えず、「自分にも病棟全体としても改善するところは無かったか」を省みて行動することが大切だと考えております

このような失敗や経験を活かして、うまく次につなげることができる人を採用側は望んでいます。誰しも失敗はつきものなので、そこから何を得ることができたのかが重要です。もし失敗から学んだ例があれば、そちらを自己PRに採用すると良いでしょう。

職務経歴書を最大限活用して面接につなげる

職務経歴書は書き方がよく分からず、面倒くさい書類と捉えられがちです。しかし、今回のように利用することで「自分の強みをより強調できる」「ブランクなどの弱みをフォローできる」などのような補完資料になります。

この観点で職務経歴書を仕上げていけば、あなたの面接までのサポートをしてくれる強い味方となります。

そこで、あなた独自の職務経歴書を作成するようにしましょう。事前に書き方を理解して、どのような経験をしてきたのか記すのです。

ここでは具体的な書き方や記すべき内容、ダウンロード可能なテンプレートを含めて提示してきました。こうした例を参考にして、採用側に響く職務経歴書を作るといいです。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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