一般的に看護師学校や大学を卒業すると、病院やクリニック、施設といった医療機関で働き始めることが多いです。
ただ、看護師が活躍できるフィールドは病院などの医療機関に留まりません。看護師免許を活かせば、メーカーなどの一般企業でも多くの中途採用求人があります。
せっかく看護師資格を取得しているのであれば、資格を活かさない「一般的なOLに転職する」のはもったいないです。そうではなく企業に転職するときであっても、看護師経験を必要とする一般企業求人を選ぶほうが、看護師のスキルや知識を活かして待遇の良い給料・条件で働くことができます。
そこでここでは、看護師から一般企業の会社員へ転職したいという方に向けて、「看護師資格を活かした一般企業への転職方法や給料」について解説していきます。
もくじ
看護師からOLで土日休み・日勤が可能
通常だと看護師が病院・クリニックで働く場合は土日休みとはなりません。病院だと365日開いていますし、クリニックでも土曜日は開院しています。また病院だと、土日出勤どころか夜勤をするのが普通です。
そのため一般的な看護師で働く場合、土日休みを実現することは難しいです。また夜勤ありだと、生活リズムがどうしても不規則になります。
ただ企業勤務の場合、そうしたことがありません。看護師・保健師として一般企業にてOLで働けば、一般的な人と同じリズムで生活を送れるようになります。また子供がいたとしても土日休みなので問題なく働くことができますし、定時退社することも可能です。
こうした理由から、看護師資格を活かしてサラリーマン(会社員)としての活躍を考える看護師はそれなりにいます。医療現場からは離れるとはいっても、看護経験があるのでOLとして一般企業にも転職できるのです。
求人先はどこも大企業なので給料・福利厚生はしっかりしている
そうしたとき、一般企業の中でも看護経験者を欲する企業はどこも大企業になります。中小企業が中途採用の看護師求人を出すことはまずありません。
もちろん製薬会社や医療機器メーカー、化学メーカー、保険会社と求人を出す会社の業態はバラバラです。ただいずれにしても、看護師がOLとして働くときはどこも大企業だと考えるようにしましょう。そのため給料規定や福利厚生はかなりしっかりしています。
そうしたとき、以下のような制度があるのは当然です。
- 有給休暇
- 産休・育休
- 時短勤務
- 社宅制度
病院やクリニックだと個人経営が多く、大病院であっても世間一般的には「社員数の少ない弱小組織」に該当します。こうした組織だと、建前としては有給休暇を取得できるとなっていたとしても、実際には誰も休めていないケースはよくあります。
ただ大企業だとそうしたことを行うことはできず、むしろ積極的に社員にとって働きやすい勤務環境を推し進めていかなければいけません。そうした点でも、会社員の看護師は優れているといえます。
看護師免許を活かした中途採用の一般企業求人と給料
ただ看護師免許を活かして転職する場合、具体的にどのような企業求人があるのでしょうか。OLを目指すとはいっても、看護師サラリーマンにはいくつかの種類があり、それぞれ仕事内容はまったく違ってきます。そこで、事前にどのような会社員になるのが可能なのか理解しなければいけません。
そうしたとき応募条件に看護師経験が必要な一般企業の就職先としては、以下のような職種があります。
- 企業内医務室の産業看護師・産業保健師
- 医療関係のDI・メディカルコールセンター
- クリニカルスペシャリスト(フィールドナース)
- 臨床開発モニター(CRA)
どれも看護師としてのスキルや知識があることで有利になる職場ばかりであり、実際に看護師の転職サイトでもこうした中途採用求人が出されています。そうしたことを踏まえ、それぞれのフィールドに転職した場合の年収も一緒に解説していきます。
企業の医務室・健康管理室での産業看護師・産業保健師
看護師免許を活かして一般企業で働く代表的な仕事といえば、企業内医務室や健康管理室で勤務する産業看護師があります。
産業保健師と明記のある求人であれば保健師免許が必要となりますが、「産業看護師」の記載がある求人であれば、保健師免許は特に必要ではありません。ただ、保健師と同様の仕事を任されます。
例えば、静岡県にある化学メーカーでは以下のような内容の求人を出しています。
このように「産業看護師・保健師募集」となっています。こうした表記の場合、保健師に限らず看護師資格だけを有する人でも応募できます。両方の資格を保有する人が申し込めるのは当然ですが、必ずしも保健師資格が必要とは限らないのです。
産業看護師は従業員の健康管理が主な仕事内容です。従業員がスムーズに仕事に取り掛かれるよう、産業看護師は身体的な健康管理だけでなく精神的なケアも担当します。
こうした仕事のため、産業看護師は肉体労働が少なく、体力の限界を感じる人はほとんどいません。
・産業看護師・産業保健師の年収は350~400万円で昇給率が高い
ただ産業看護師や産業保健師は大変人気の高い求人です。ほとんどの企業が土日・祝日休みの週休2日制であり、夜勤がなく、残業・勉強会・委員会などの時間外勤務が少ないにも関わらず給料の高いケースが多いからです。
もちろん企業の規模などによっても給与額は異なり、年収には幅があります。ただ平均年収は350~400万円(月収にすると30万円ほど)となります。例えば、以下は仙台にある中途採用の産業保健師求人です。
このように、年収は400万円からのスタートになります。
ちなみに病棟で働く看護師の平均月収は夜勤手当を含めて月32万円、平均年収は470万円だとされています。夜勤がないのでさすがに病院勤務よりは年収は下がります。ただ産業看護師・産業保健師の場合、時間外労働がないのにも関わらずそれなりの高年収を実現できることから、待遇の良い職場だと分かります。
また、産業看護師・産業保健師として経験を積んでいけば、病棟看護師より高い昇給を得られる会社が多く存在します。一般企業勤めになるため、その企業の会社員と同じように昇給を見込めるため、勝手に年収は高くなっていきます。
産業看護師・産業保健師を続けていけば高い昇給が可能なため、将来的には夜勤なしであっても病院勤務の看護師と同等、またはそれ以上の給料を実現できるといえます。
医療関係のDI・メディカルコールセンターで相談を受ける
一方で看護師が企業勤めをする場合、本当の意味でのオフィスワークを考えるのであれば医療関係の学術・DIやコールセンターを目指しても問題ありません。
会社員としてのオフィス勤めというと、コールセンターでひたすら電話業務を受けるだけのように思ってしまいます。ただ製薬企業の学術・DI部門だと、「MRへの学術的な支援」「医師・薬剤師への回答」など、かなり高度な知識を有したうえで回答していくことになります。
またこうした医療関係の学術だと、英語の文献に接する機会もあります。そのため、英語力のある看護師だと製薬企業や医療機器メーカーのDIへ転職・活躍しやすいといえます。
例えば、東京の大手製薬会社から出されている以下のような求人がこれに該当します。
「お薬相談室」という言葉が求人票で使われているものの、電話の相手はMRや医師・薬剤師なのでかなり高度な情報提供となる仕事なのは理解しましょう。事実、英語スキルが必須だと記されています。
製薬会社や医療機器メーカーのDI業務がデスクワークになるとはいっても、かなり専門性が高くなると理解しましょう。そのために看護師経験のある人材が求められるわけです。
一般人相手のコールセンターも存在する
ただ看護師で英語が得意な人は少ないです。そうしたとき、製薬企業や医療機器メーカーではなく「一般人を相手に広く健康を提供している会社のコールセンター」で勤務することも可能です。これであれば、同じオフィスワークのコールセンターであっても英語力は要求されません。
例えば、以下は大阪にあるヘルスケア会社から出された中途採用募集です。
この会社が独自に開発した生活指導プログラムを用いて、面談や電話指導による予防医学の仕事を担当することになります。
生活指導の会社であるため、日ごろから看護師として患者さんを指導している人材を広く募集しています。こうした求人であればこれまで経験してきた知識やスキルだけで問題ないですし、年齢制限のないケースも多く、さらにはOLとして座っての業務となります。
ただ収入については、オフィスワークだと「年収350万円からスタート」などのように、どうしても低めになりがちです。
確かに看護経験のある人を広く求めているものの、看護師資格がなかったとしても問題ない職種がデスクワーク業務になるからです。またメーカー勤務の中でもオフィスのみで働き、定時退社が可能なことも給料が低めの理由となります。
クリニカルスペシャリスト(フィールドナース)で医療機器を支援する
他には医療機器の営業サポートとして、会社員勤務する方法もあります。こうした職業にクリニカルスペシャリストがあり、別名でフィールドナースともいわれます。
クリニカルスペシャリストは医療機器製品の営業やアフターフォローに従事するのが主な仕事です。勤務先は医療機器メーカーであり、医療施設へ自社の医療機器を販売することになります。
自社製品についてのプレゼンテーションを実施したり、製品説明を伝えたりする仕事になるので、「プレゼンテーション能力・営業能力に自信のある人」「英語の医療機器の取扱説明書を解読できる人」「医療機器に興味のある人」などにおすすめの職場です。
外勤メインになるため、いわゆるOLのようにメーカーオフィス内にてずっと勤務するわけではありません。むしろ、日本全国を飛び回るようになります。
ただ営業とはいっても、MRのように売り込みをするわけではなく、あくまでも営業補佐になります。営業先である相手側から頼まれて医療機器の説明をしたり、アフターフォローをしたりするのが仕事のため、そういう意味では一般的な営業職よりも働きやすいといえます。
なおクリニカルスペシャリストは外回りの会社員であるため、病棟勤務の同年代の看護師よりも高給与のケースが多いです。平均年収は450~550万円程度であり、平均月収にすると25~35万円という求人が多くあります。
またより高い年収を設定している企業もあります。例えば、以下は愛知県にある外資系企業のクリニカルスペシャリストの求人です。
必須条件は看護師資格と臨床経験、そして運転免許だけです。このように探せば、年収500万円からの求人もたくさんあります。
看護師として病院・クリニック勤務の経験があれば、医師や看護師がどのように考えて医療業務を実践しているのか理解できているはずです。そうした業務経験は医療機器メーカーで活かすことができます。
臨床開発モニター(CRA)は製薬会社の花形職業
また治験に携わる会社員看護師でも問題ありません。臨床開発モニター(CRA)と呼ばれますが、製薬会社ではMRや研究開発職と同様に花形ともいえる職業になります。
中途採用求人を出している先はCRO(医薬品開発支援会社)や製薬メーカー(医薬品会社)です。CRC(治験コーディネーター)は病院側を支援しますが、CRAは製薬メーカー側を支援します。もちろん製薬メーカーは資金力が豊富であるため、CRAは必然的に高給取りになります。
なお臨床開発モニターは研修制度が整っている企業が多く、未経験でも採用の枠があります。例えば以下のような、東京にある企業のCRA求人です。
ただ臨床開発モニターへ転職する場合、条件があります。それは以下のようなものです。
看護師の場合、「看護師や保健師の資格を有しており、2年以上の実務経験をもっている大卒以上の人」が対象となります。
なお臨床開発モニター(CRA)の場合、治験を実施している病院やクリニックを訪問するため、全国を飛びまわる仕事になります。出張だらけになり、日本全国だけでなく、場合によっては海外へ出向となるチャンスもあります。
例えば以下は、東京にある臨床開発モニター求人の海外出向制度です。
グローバルな視点で看護師資格を活かして働いてみたい方だと、臨床開発モニターへの転職をおすすめします。
なお臨床開発モニター(CRA)は英語力が要求される職業になります。そのため英語を話せると転職に有利です。また製薬会社で花形の職業のため、20代など年齢が若いほど有利になります。遅くても35歳より前に転職する必要があり、それ以降だとかなり厳しくなります。
ちなみに先ほど少し触れましたが、新薬開発に携わる職業のため臨床開発モニター(CRA)は高年収であることが製薬業界の中でも知られています。例えば以下は、臨床開発モニターとしての経験が1年程度ある方のスタート年収になります。
東京と大阪にオフィスを持つ会社ですが、臨床開発経験が1年以上あれば、年収は600万円からと飛躍的に高くなっていることが分かります。このように臨床開発モニターであれば、一般企業の中でも非常に優れた年収となります。
一般企業で会社員になるには転職サイトが必須
ただ看護師免許を活かして一般企業で会社員として働くのであれば、いままでとはまったくの畑違いの職場のため、転職のための対策を行えていない看護師がほとんどです。
看護師として転職を考えた場合、病院であればそのまま即戦力として他の病院で働くことが可能です。慢性的に人手不足の看護師業界のため、職場さえ選り好みしなければ、どのような田舎でも何らかの看護募集があります。
しかし、企業求人は「夜勤なし」「土日休み」となっており、それでいて給料は優れている場合がよくあるため、非常に狭き門となります。さらに、学術(コールセンター)や臨床開発モニター(CRA)を含め、看護師に限らず薬剤師や臨床検査技師などその他の職種の人と競わなければいけないケースがほとんどです。
当然、一般企業に申し込むにしても不採用は普通です。それでいて人気のためすぐに募集が埋まり、さらには求人自体が少ないのが現状です。
そのため、特別な理由がない限りは看護師専門の転職サイトを利用して転職活動を進めましょう。3社以上の転職サイトを利用し、自分の経験やスキルを活かせるメーカー求人が出たとき、すぐに申し込みできるように備えておく必要があるのです。
看護師免許を活かして会社員として働ける
看護師免許を活かして一般企業の会社員になりたい場合、多くの選択肢があることが分かります。ただサラリーマンとはいっても、オフィス内だけで働くOL求人があれば、外勤で出張メインとなる仕事もあります。そこで、これらの中からどの職種がいいのか事前に目星をつけるようにしましょう。
実際のところ、病院で働くことが看護師のすべてではありません。病院やクリニックという枠にとらわれず、会社員として一般企業の求人募集に応じて転職している看護師はたくさんいます。もちろん土日休みを実現しながら、それでいて高年収のサラリーマン看護師になります。
看護師としての経験があれば、看護知識やスキルを必要としている会社に申し込み、転職すれば重宝されるようになります。
しかしメーカーで働く看護師だと、かなりの人気にも関わらず求人数は少ないです。また一般企業という特徴から不採用になるのも普通のため、できるだけ早めに転職サイトを活用して、いまから準備しなければいけません。そうすれば、メーカーへの転職を実現できるようになります。
求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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