看護師の求人の中でも「精神科看護であれば、特別な技術や知識が必要なく転職しやすい」と考え、精神科病院や心療内科クリニックなどへ転職を希望する看護師がいます。ただ精神科へ転職希望といっても漠然としたイメージしかもっておらず、履歴書の志望動機を書く段階で筆が止まってしまうことも多いです。

精神科は人手不足であるため条件を広げれば、どこかの精神科の医療機関で採用されるでしょう。

しかし精神科に抱いているイメージだけで転職してしまうと、「このような仕事内容では、やりがいが感じられない」と後悔してしまう可能性が高いです。精神科は独特な雰囲気をもつ科であるため、精神科で働いた経験がなければ、どのような仕事内容か分からず転職で失敗する人が多いです。

そこで精神科看護ならではの特徴や仕事内容を把握したうえで、働きやすく、やりがいを得やすい精神科の看護師求人の選び方について解説していきます。

年収・給料は高いが、精神科の求人は人気がない

総合病院の一般診療科で働く看護師の年収・給料は安いですが、看護技術や知識などのスキルアップを求めて働く人が多く人気があります。外科や内科などで働いてきた実績があれば転職しても歓迎されるケースが多く、基本的にはどこの職場でも通用します。

しかし病院やクリニック、施設を含め、精神科の医療施設での仕事内容だと、医療行為はバイタルサイン測定や採血・点滴ルート確保だけです。主に患者さんとのコミュニケーションや日常生活援助が業務の大半の時間を占めます。

その結果、精神科以外の科へ転職したくても、神科で得られた看護技術や知識を他の診療科で活かせるケースが少なく、採用面では不利になりやすいです。

このような理由から、新卒や20代・30代でキャリアップを望んでいる看護師には精神科は敬遠されやすく、精神科病院や心療内科クリニックは常に人手不足であるケースが多いです。一般診療科と比較すると精神科は人気がないため、必然的に看護師の給料を上げて人材を確保せざるを得ません。

精神科病院・精神科訪問看護ステーションは高収入となる

そのため、精神科病院や精神科訪問看護ステーションでは看護師の給与を高く設定している求人が多いです。例えば、準公務員となる独立行政法人の看護師給料だと一般病棟勤務の看護師にはない、以下のような特殊業務手当が付きます。

常勤であれば月12,500円、非常勤(パート・アルバイト)であれば時給50円分ほど、給料が高くなります。この特殊業務手当を他の精神科病院では、危険手当として10,000円前後上乗せしているところが多いです。

公務員と同じ扱いの病院でもこうした給料の上乗せがあることから、当然ながら一般病院やクリニックなどではより高年収となります。例えば、以下は大阪にある精神科訪問看護ステーションからの看護師求人です。

日勤のみで土日も休めて、月収が37万円からとなっています。精神科の患者を対象としない一般の訪問看護ステーションであれば、いくら訪問看護の給料が高いといっても、月収は30万円には満たないところがほとんどです。

このように給料など待遇面で優れているのが、精神科のある病院や訪問看護ステーションの特徴です。

心療内科クリニック(メンタルクリニック)は待遇が良い

同じことは精神科病院や精神科訪問看護ステーションに限らず、心療内科(メンタルクリニック)などでも当てはまります。やはり精神科ということもあり、スキルアップという点では他の診療科よりも弱いため、特に若い看護師には敬遠されがちです。

なお精神科クリニックは依存症患者さんを対象としているところが多く、看護師はリハビリテーションのサポートが主な仕事となります。例えば、以下は横浜にある精神科クリニックの看護師求人です。

月収は27万円ほどであり、一般のクリニックと比較すると高めの設定となっています。

また、軽症の患者さんを対象とした心療内科クリニックの看護師の仕事は採血・ルート確保などの内科業務全般です。心療内科クリニックだと患者さんは自立していることが多く、体力的につらいことはありません。

また心療内科という看板を掲げているくらいのため、スタッフに対する配慮が行き届いている職場環境が多く、働きやすいのが特徴です。

このような職場環境に加えて、待遇もよい心療内科クリニックが多く、看護技術に関するスキルアップを特に考えていない場合は非常に優れています。例えば、以下は神奈川にある心療内科クリニックの求人です。

常勤ですが、週4日の日勤勤務が可能で月27万円からとなっており、普通では考えられない好待遇の職場環境が整っています。

精神科は病院や訪問看護ステーションに限らず、心療内科クリニックでも年収が高いです。「高度な看護技術は磨けない」のと引き換えに、条件の優れた求人が多い傾向にあります。

精神科デイケアなどの精神科施設は収入が低い

ただ注意しておきたいのは、精神科の医療機関のすべてが高い給料ではないという点です。精神科デイケアなどの施設は、一般の高齢者デイサービスなどの施設と給料面で変わりない求人が多く、月収20万円前後となっています。

例えば以下は、神奈川にある精神科デイケアの看護師求人です。

こちらの月給は23万です。一般の高齢者デイサービスなどの施設と比べて普通であり、精神科病院や心療内科クリニックのように高い年収になるというわけではありません。

精神科病院や精神科訪問看護ステーションの場合、患者さんの精神疾患は重い傾向にありますが、デイケアを利用する患者さんは比較的軽い傾向にあります。それに伴い、暴言や暴力も少ないです。そのため特別な看護をそれほど必要とせず、このような給与額が設定されています。

同じ精神科領域でも、このように精神科病院や心療内科クリニック、訪問看護ステーション、精神科デイケアによってまったく職場環境や提示される給料額が異なります。自分にはどのような領域が向いていて、どのような条件ならば働けるのかをじっくり考えましょう。

パート・アルバイト(非常勤)や派遣で高時給が可能

なお、精神科病院や心療内科クリニック、訪問看護ステーションの常勤看護師が高年収であるため、当然ながらパート・アルバイトなどの非常勤や派遣看護師として勤務するにしても時給相場は高くなります。

例えば、東京や大阪などの都市部で一般的なパート勤務する場合、時給は1,700円ほどになります。ただ精神科での勤務だと、パート・アルバ一般的にイトなどの非常勤で時給2,000円ほどになるのは普通です。

例えば以下の中途採用募集は大阪から出された時給2,000円の求人になります。

精神科に特化した訪問看護ステーションですが、このように高時給を実現できます。もちろん地域によって差はありますが、非常勤(パート・アルバイト)や派遣をするにしても、一般的なパートや派遣よりも高時給を実現できる点が優れています。

パート・アルバイトや派遣であっても看護技術を磨いていきたい場合、精神科は微妙です。ただそこまで高度な看護技術がなくても問題ない環境にて高い時給を得たい場合、非常勤(パート・アルバイト)や派遣の中でも精神科病院や心療内科クリニック、精神科訪問看護ステーションは条件がいいです。

精神科の業務内容はきつい?暴力や暴言は当たり前?

そうしたとき、このように高年収にも関わらず精神科の看護師求人に人が集まりにくい理由として、「看護技術が身に付きにくい」ことは既に述べました。ただ他にも、暴力などの問題もあります。

精神科の仕事内容は他の診療科のように体力的にきついわけではありません。特に症状の軽い病棟であれば、自立している患者さんが多く仕事内容は大変ではありません。むしろ楽であるケースが多いです。

ただ、仕事内容が「精神的にきつい」と感じる看護師は多いです。精神科と聞いて、まず思い浮かべるのが患者さんの暴行・暴力・暴言です。病気が原因で、暴言を吐いたり暴力をふるったりする患者さんが多いのが現状なのです。

統合失調症や認知症の患者さんであれば、看護師に暴言を吐いたり、暴力をふるってしまったりすることがあります。また、ボーダーといわれる境界性パーソナリティ障害の患者さんに恋愛感情をもたれて付きまとわれたかと思うと、急に悪者に仕立て上げられることもあります。

さらには、症状が改善してきたと感じていた受け持ちのうつ病患者さんの自殺現場に遭遇する看護師もいます。いままで自分がしてきた看護が一瞬にして崩れるのです。

その他には、不潔な環境でも気にしない患者さんも多いです。例として、精神科に特化した訪問看護ステーションで働く友人の話をします。

私の友人看護師が受け持っている男性患者さんの場合、歩けるのにも関わらず寝たきり状態でした。食べたあとのカップラーメンの器に用を済ませて、そのまま片付けないで家の至るところにその容器を置いているそうです。

もっと悪質なケースになれば、暴行を働く患者さんもいます。あまりにも患者さんからの暴行・暴力などの度が過ぎて、怪我や過度な精神的ストレスを負ってしまうと、「病気だから仕方ない」「仕事と割り切って働こう」などと考えることが難しくなります。

このように精神科となると、看護師は患者さんとの距離感を掴みにくいです。そのため、仕事上で気を付けなければならないことが増えます。言い換えると、精神科は一般病院の患者さんと比べると面倒な患者さんが多いのです。

患者さんに気を使う部分が増えるのに加え、一般病院と比較すると看護技術・スキル・知識が身に付きづらく、刺激の少ない職場という一面をもっているのが精神科だといえます。

そのために精神科には人が集まりにくい原因が多々あります。ただその分、給与水準が高くなっているので、その点を考慮してみるといいでしょう。

精神科病院・クリニックで職場環境を改善した働きやすい求人を探す

ただ、精神科ならではの「人が集まりにくい原因」について、職場環境から改善しており、働きやすくなっている求人もあります。

例えば、精神科の訪問看護ステーションに転職希望の場合、患者さん宅へ一人で訪問するのは不安と感じている看護師が多いです。このような場合、以下のように看護師は必ず2名体制で訪問しているなど、働き手の立場になって何らかの対策を取っている優良な求人を探しても問題ありません。

一人だと危険でも、このように二人体制なら大きな問題にはなりません。もちろん、患者さんからの暴力を防ぐこともできます。

・精神科にて看護技術を磨ける求人

また、スキルが身につかないことを心配しているのであれば、スーパー救急病棟が整備されている精神科病院を選ぶといいです。スーパー救急病棟とは、精神科急性期治療病棟をしのぐ精神科救急入院料病棟のことであり、急性期の集中的な治療を必要とする精神疾患を抱えた患者さんを受け入れています。

スーパー救急病棟が設置された精神科病院であれば、看護師としての自分の成長を実感でき、やりがいを感じやすい環境が整えられています。

例えば、以下は東京にあるスーパー救急を備える精神科病院です。

このような職場であれば忙しい反面、精神科看護のスキルアップを図れるだけでなく、一般的な看護技術や知識を得られる機会が多いです。

精神科での履歴書・面接で行う志望動機や自己PRの方法

なお、精神科病院や心療内科クリニックの常勤やパート・アルバイト(非常勤)として実際に転職するとき、履歴書や面接での志望動機・自己PRはどのように考えればいいのでしょうか。

精神科に転職希望の看護師であれば、「高収入を実現できる」「看護知識や技術が必要なく、未経験でも問題ない」というのも大きな転職理由のひとつです。しかし、それらを志望動機や自己PRとして書くのは微妙です

また、「自分も精神疾患に悩まされたので、患者さんの気持ちが理解できる」という志望動機も、採用側からすると長期的に働くことができるのか多少の不安が残ります。

ただ精神科の求人は人気がないので、履歴書作成や面接対策で深刻になりすぎる必要はありません。結論からいえば、志望動機は応募先の精神科で「何がしたいのか」「自分は何ができるのか」を素直に述べればいいです。

精神科看護の志望動機の例文については、「精神科病棟」「心療内科クリニック外来」での事例を紹介していきます。

【精神科病棟への志望動機例文】

前職は、外科病棟でオペ後の患者様の看護をしていました。術後せん妄で、幻覚や妄想を体験する患者様が多く、事故が起こっては危険なので身体拘束をしてきました。ただ身体拘束の講習会を体験したとき、「身体拘束は辛く苦しい」ことを自ら実感しました。

貴院では妄想のある患者様であっても、そのような患者様の話をじっくり傾聴し、身体拘束をしないことを知りました。「その人らしく生きてもらう」ことをモットーとしている貴院で外科看護の経験を活かし、患者様に寄り添った看護をしていきたいと考えています。

【心療内科クリニック外来への志望動機例文】

小児科病棟で長年看護をしてきました。そうしたとき引きこもりを含め、小児病棟でサジを投げた精神疾患を抱える患児が「精神科外来のクリニックに通院し、社会復帰を果たした」ことを聞きしました。

この話に驚くとともに感動し、私もそのような現場に携わってみたいと強く感じるようになりました。今後は貴院の一員となり、小児看護の経験を活かしながら活躍していきたいです。

このように、いままでの自分の看護経験を活かしつつ、「前職での看護は達成できなかったことを精神科で身につけていきたい」という志望動機・自己PRにしましょう。そうすれば、仕事上での壁に今後ぶち当たっても、「長く勤めてくれる良い人材へ成長してくれるだろう」と好印象を与えることができます。

反対に「高給与で時間外勤務(残業)が少なめ」という志望動機では、採用側にとって何ら印象に残ることはありません。

常勤でも非常勤(パート・アルバイト)でも、履歴書や面接にて志望動機を述べるのが必須です。そこで、転職活動を開始すると共に自己PRの内容を考えるようにしましょう。

精神科の優良な中途採用選びで転職サイトを活用する

精神科への転職では事前に情報を仕入れておいて、「精神疾患の中でも、どのような患者さんを対象としているのか」「看護師の仕事内容はどのようなものなのか」を徹底的に知る必要があります。実際のところ精神科では、その病院の方針によって、まったく看護内容が異なるからです。

ある精神科病院では問題のある患者さんだと判断したら、その患者さんを拘束したり、閉鎖病棟にすぐに閉じ込めたりするのを当たり前としているところがあります。一方で、患者さんの自立を促すために解放感ある空間で過ごしてもらえるよう、看護の力を駆使している医療機関もあります。

また精神科訪問看護ステーションについても、それぞれの施設で看護の方法が異なります。未経験の新人看護師に充分な教育をしないまま、一人で訪問看護に向かわせるステーションもあります。他にも男性看護師であれば、暴言・暴力をあびせる患者さんの担当を一手に任される職場があります。

ただ、これらの精神科の情報を集めようと思っても、パンフレットや医療機関のサイトは長所ばかりを並べており、詳しい実態を十分に把握できません。それぞれの求人について長所・短所を見極めたうえで、精神科求人をじっくり選ぶ必要があります。

そのためには、転職サイトを活用することが何よりも重要です。あなたの具体的な勤務条件を告げて、優良な精神科求人を紹介してもらいましょう。さらには面接時に職場見学を実施してもらい、その職場に勤める看護師から実際の生の声を広い集めるといいです。

そうすれば職場に関して働いているときのイメージが湧き、ミスマッチが起こりにくくなります。多くの求人の中から選択肢を広げることが重要なため、どのような精神科で働きたいのか考えたうえで、転職サイトから条件に合う求人を紹介してもらう必要があります。

あなたに向いている精神科求人にて転職を成功させる

看護師として精神科への転職を成功させるには、「満足いく給料体系」「働きやすい労働環境」「患者さんへの看護理念」「暴力などへの対応」などのポイントを確認しましょう。そうして、あなたに向いている職場へ転職するのです

長期的な視野で看護を続けなければ、精神疾患の患者さんはすぐに症状が悪化してしまい、「いままでの看護は何だったのか」と考えさせられる場面が多くなります。一般病院のように検査数値や自立度合いなどから症状改善が明確に分かるものではなく、目に見えにくい部分が多分にあります。

ただ看護の関わり方によっては、患者さんの症状を改善させるケースに遭遇する場面も多く、やりがいを感じることもあるでしょう。さらにはスタートの段階で給料が高く、「定時で帰れる」「残業が無い」といった良い待遇になるのも魅力的です。

このような精神科看護師を目指すのであれば、精神科病院や心療内科クリニック、精神科訪問看護ステーション、精神科デイケアのうちどれに興味があるのかを考えましょう。そうして常勤や非常勤(パート・アルバイト)、派遣として活躍するといいです。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

注目の人気記事

・転職サイトを活用した看護師転職の体験談

看護師として活動するうえで、私自身も転職活動をしたことがあります。このときは転職サイト(転職エージェント)を利用したため、そのときの実体験や方法を踏まえ、失敗しない転職について紹介します。

管理人による転職体験記

・看護師転職サイトのお勧めランキング

看護師の転職サイトはそれぞれ特徴があります。「対応地域が限定されている」「取り扱う仕事内容に特徴がある」「非常勤(パート)に対応していない」などサイトごとの特性を理解したうえで活用すれば、転職での失敗を防げます。

お勧め転職サイトランキング

新たな看護師の働き方

・美容クリニック・美容皮膚科への転職

夜勤なしで高年収を実現できる求人として、美容クリニック・美容皮膚科があります。死と隣り合わせの職場ではなく、患者さんを美しくする手伝いを行うのが美容クリニックです。

美容クリニックへ転職する

・単発・日払いの高時給求人を探すには

「今月は苦しいため、もう少し稼ぎたい」「好きなときだけ働きたい」など、こうしたときは高時給を実現できる単発・スポットバイトが適しています。健診やツアーナースなど、看護師ではさまざまな単発案件が存在します。

単発・スポットバイトで働く