転職したい理由は人によって様々です。「人間関係を一から構築し直したい」「今の職場ではやりがいを見いだせない」などが転職理由として挙がります。その中でも特に、看護師が転職したい理由の上位に「労働力に対して給料が見合っていない」という不満があります。

しかし、看護師は転職をきっかけに給料や手取りが下がってしまうことがあります。せっかく転職をするのであれば、「いま働いている職場よりも給料や年収を上げたい」と思うのは当然です。

ただ実際には、転職により給料額は上がるのでしょうか。それとも下がるのでしょうか。これについては、面接での交渉のコツを理解しなければいけません。

ここでは「転職をした看護師の給料が上がるのか下がるのか」について解説していきます。また、給与交渉の方法について事前に知っておけば、転職先での給与面での不満は回避できることになります。そうしたポイントを踏まえて給料交渉のコツについて述べていきます。

転職すると看護師の給与は現状維持か下がるケースが多い

転職時に「新しい職場で、一からのスタートとなると給与は下がるのではないか」と不安に思う人が多いです。これについて、転職した看護師の給与実態は以下のようになっています。

  • 転職で給与が上がった人:2割
  • 現状維持・変わりなし:3~4割
  • 給料が下がった人:4~5割

引用:ナースフル

転職しても給与が上がらないことを疑問視する人がいます。看護師は人材不足の業界であるため、給料の高い職場はたくさんあります。また、多くの夜勤や時間外勤務をこなし、手取りの多い職場も存在します。

しかし看護師として長く勤めると、多くの人が無理な勤務をこなして高い給料をもらうよりも、夜勤や時間外勤務の少ない待遇面を重視する傾向になります。多い手取りよりも職場環境を重視して職場を決める看護師が多くなるのです。

そのため、看護師が転職すると給料は下がるケースが多くなります。

夜勤や残業のない職場に転職すれば、それなりに手取りが下がるのは当然です。例えば、夜勤のある職場だと以下のように、夜勤1回につき12,000円の手当です。こちらは広島県にある総合病院の看護師求人になります。

夜勤が月4~5回だと、夜勤がないだけで月の給料は5万円以上も下がる計算になります。これに時間外勤務の少ない職場を選ぶと、さらに給料の手取りは少なくなります。

ただ、いまの勤務体制(残業などの時間外勤務・夜勤があるなど)のままで、経験を活かして転職を希望する場合は、給料は下がらないケースが多いです。経験を考慮してのスタートとなるため、現状維持か前職よりも給料が上がります。

また勤める職種や地域の選び方でも基本給に違いがあります

前職と同じ仕事量であれば自分の納得する給料額で、以前の職場よりも労働条件の改善された求人先で働きたいものです。そこで次に「看護師で基本給の高い職場」や「都道府県による看護師賃金の違い」について確認していきたいと思います。

中途採用看護師で基本給の高い求人

中途採用看護師の給料が高い求人というのは、夜勤や時間外労働が多いためとされています。ただ、もともと基本給が高く、労働条件の整った職場が存在します。看護師の基本給の高い職場は以下の通りです。

  • 精神科・精神病院
  • 産業保健師・産業看護師
  • 有料老人ホーム
  • 透析クリニック
  • 美容外科クリニック・美容皮膚科クリニック

条件や待遇を変えることなく、基本給の高い中途採用求人を選べば、より満足する働き方を実現できます。それぞれについて説明していきます。

精神科・精神病院は特別手当がつくことがある

精神科・精神病院では、患者さんから暴力や暴言行為を受けるなど危険性のある看護が多いです。そのため特別手当が付与されたり、最初から給料が高めに設定されていたりすることがあります。

例えば同じ病院でも、以下のように精神科に勤める看護師では手当として、基本給に調整額が付加されています。

このように、給料に8%の調整額が追加支給されています。例えば、月収が20万円だとすると、16,000円の上乗せ分があります。ただ、他の一般的な病棟よりも精神科のほうがメンタル的に強い人物でなければ長く勤め続けられないので注意が必要です。

・精神科の訪問看護ステーションも月収が高い

精神科専門の訪問看護ステーションも精神病院と同様に、高給与の求人が多いです。例えば以下は、熊本県にある精神科に特化した訪問看護ステーションの求人案件です。

一般的に、訪問看護ステーションは臨床経験の豊富な看護師を募集する傾向にありますが、未経験でも月収30万円からと高めの給料が設定されています。

訪問看護ステーションの場合、看護師一人で患者さん宅を訪問しなければならず、病棟のような他のスタッフの助けを見込めない場合が多いです。ただ、それでも看護師未経験からこうした高年収が可能なのです。

産業保健師・産業看護師は夜勤や残業が少なく給料が高い

産業保健師・産業看護師も夜勤や体力仕事がなく、残業も少ない割に、基本給の高い求人になります。例えば以下は、東京にあるエンターテインメント会社の産業保健師の中途採用求人になります。

日勤のみの勤務ですが、月給30万円となっています。

ただ産業保健師・産業看護師は人気求人であるため、あなたの条件に合った求人がすぐには見つからない可能性が高いです。3社以上の看護師転職サイトに登録しておいて、こまめに情報収集を行い長期的なスパンで転職活動を行うようにしましょう。

有料老人ホームは基本給・年収が高く、求人数が多い

有料老人ホームで働く看護師の基本給は高いケースが多いです。例えば以下は、兵庫県にある有料老人ホームの看護師求人です。

このように日勤のみですが、月給が30万円以上と給与条件が良いことがわかります。

一般的に高齢者施設と聞くと、入浴介助やおむつ交換などの体力仕事が多そうです。ただ実際は、病棟の看護師仕事とは異なり、高齢者施設のほうが体力仕事は少なくて済みます。介護職のスタッフが入浴介助やおむつ交換などの担当であるため、看護師は胃ろう管理や入浴後の薬塗布などの健康管理が主な仕事となるからです。

そうはいっても、中には介護職の仕事を看護師に任せる職場があります。事前に介護職と看護職の仕事の境界線について情報収集を行い、看護師の仕事内容を確認しておくと良いでしょう。

なお、有料老人ホームの求人数は多いです。あなたの条件に合った求人を選ぶことができるため、事前の情報収集を怠らず、細かい条件まで吟味するといいです。

透析クリニックは手当がつくため手取りが多い

透析クリニックも精神科と同様、手当のつく職場が多いです。透析看護の手当は、血液を扱うためのリスク手当といえます。予約制のところが多く、日勤のみで残業はほとんどないため、待遇の良い求人がたくさん存在します。

以下は茨城県にある内科であり、透析にも力を入れているクリニックです。

透析を扱う病院やクリニックでは、基本給に加えてこのような危険手当や透析手当などの各種手当を設けているところが多いです。ただし、このような手当は各病院や医療機関によって内部規定が異なるため、給与条件を確認する必要があります。

私の友人の勤める透析クリニックでは、「経験年数を積むと基本給は上がっていくが、透析看護手当が下がるというシステムになっている」と友人は語っていました。これでは各種手当が揃っていても、総支給額は変わりません。

このように経験者と新人の間に収入の差がない求人もあるため、内部事情に詳しい転職サイトの担当者に確認する必要があります。

美容外科クリニック・美容皮膚科クリニックは手取りが抜群に良い

美容外科や美容皮膚科などの美容クリニックは日勤のみにも関わらず、基本給が高く、各種手当も充実しているため手取りが多いことで知られています。20代や30代でも実力次第で年収600万円を超える看護師も多く存在します。

美容クリニック未経験でも研修制度が充実している求人であれば、応募に際しても特に問題はありません。例えば以下のような、京都ある美容クリニックの求人がこれに該当します。

このように未経験でも、月給36万円からと高給与になります。

ただし美容クリニックの場合、自院で扱っている施術や化粧品などの売り上げノルマを看護師に課している求人先があります。例えば以下のような掲載内容であれば、ノルマを課す職場だと分かります。

ノルマを達成できれば、さらに給料は上がります。ただ営業活動が苦手な方は、転職サイトの担当者から給与条件の詳細を聞き出し、仕事内容までしっかり確認しましょう。

看護師給料の高い県・低い県の地域差がある

ちなみに看護師の平均年収は都道府県によって地域差があります。看護師の平均年収の高い都道府県は首都圏・関西・東海などの都市圏です。反対に平均年収の低い都道府県は、東北・中国・四国・九州などの地方です。

厚生労働省が発表した都道府県別の看護師平均年収では、1位の東京都(534.7万円)と47位の福島県(402.8万円)で132万円の差があります。

もちろん平均年齢などの条件が異なるため、都道府県の違いだけで一概には分かりませんが、同じ規模の病院で同じような仕事内容であっても、地域別で年収に差が生じるのです

例えば、看護師転職の人気ランキングで常に上位に位置している東京の順天堂大学医学部付属順天堂医院での給料は以下の通りです。

初任給は21万円からと給料は安い印象を受けますが、賞与が6.2ヵ月分(128万円)あります。すると、新卒でも年収は450万円程度になります。

他にも看護師の人気病院ランキングにいつも掲載される、慶応義塾大学病院の看護師の給料は以下の通りです。

こちらも基本給は21万円ですが、諸手当を含めると初任給が30万以上あります。さらに賞与は年3回、6.4ヵ月分支給されるため、年収は500万円を超えます。

一方で、県別で看護師の給与相場の低い四国の愛媛大学付属病院だと、看護師の給料は以下の通りです。

東京にある大学病院と比較すると初任給が1万円低く、さらに賞与は4.3ケ月分です。夜勤を月に4回を行い手当1万円だとして、年収計算すると380万円くらいになります。

このように都道府県によって、看護師の年収には地域差が生じます。隣の県まで足を伸ばせば、同じ仕事内容でも手取りが多くなることがあるので、確認しておくとよいでしょう。

給料アップにつながる給与交渉のコツ

ただ同じ求人へ転職する場合であっても、面接時を含めてどのように給料交渉するのかによって年収額が変わるようになります。そこで、条件の合う求人に出会えた場合の給与交渉のコツについて解説していきます。

このとき、内定の方向に話が進んでいる段階で強引に年収交渉をしてしまうと、せっかく採用してもらえそうな段階にあったにもかかわらず、採用に至らなくなるケースがあります。特に医師は「お金のことでうるさい人」を嫌う傾向にあります。

もちろん採用側も、応募者にとって給与は「生活を支えるうえでの重要な事柄」という認識はあります。退職前に働いていた病院での収入額を前提として、教育ローンや住宅ローンなどを組んでいる人もいるでしょう。また中には、母子家庭で生活費を自分が補填している人もいるでしょう。

あなたが抱えている生活面の事情を話せば、採用側も理解や共感を示してくれることはあります。

しかし、ローンや自分一人が生活費を補填している諸事情があっても、採用側としてはしょせん関係のない話です。「収入額を増やしてほしい」とするあなたの切実な願いに理解や共感を示すものの、「規定額に上乗せした年収を提示するほどの価値が、この人にあるのだろうか」と採用側は冷静に見極めます。

仮にあなたと同じような経歴をもち、強引な給与交渉をしない別の看護師がいれば、採用側はあなたの採用を見送る可能性が高くなります。

もちろん給料は誰でも多いほうが良いですが、個人的に給料交渉するのは大変危険です。そうしたとき、給料交渉前に求人について見極めておく必要があります。

希望する給与額が通りにくい中途採用求人とは

つまり給料交渉して年収を挙げるにしても、あなたの希望する給与額が通りにくい求人が存在するのです。

採用側から提示された給与額に対して、交渉での上乗せが難しいとされるのは、給与体系や給与テーブルが固定で決められている総合病院や国立・公立病院、国立病院機構などです。これらの病院では院内規定があり、給与面で融通の利かない職場が多くあります。

規模の大きな病院求人であれば、いくら給与交渉しても希望額が通りにくい可能性が高いことを知っておきましょう。

一方、個人が経営している民間病院や町医者などの開業医クリニックなどでは、中途採用者の給与額に対して柔軟に対応してくれるケースがあります。

このようなところでは、高度な看護スキルや「認定看護師」「専門看護師」などのさまざまな資格を積極的に取得してきた人材であれば、高い給与額を提示してくれるケースがあるのです。これらはすべて「決定権を持つ人(医師)の一声」で給与額が決まります。

収入を上げる年収交渉の方法とは?

しかし、一方的に「これだけの収入額にしてほしい」と希望の給与額を採用側へ直訴するのはおすすめできません。

給与交渉を行いたい場合は「これだけの年収額を貰うためには、どれだけの成果を挙げればいいか」という聞き方をすると良いでしょう。

または、あなたより前に入職した中途採用者がいるのであれば、転職サイトの担当者に「その方はどのようにして給与アップを実現したのか」という実例を聞いてみる方法もあります。

ただ、あなたが面接時に給与交渉をして希望額が叶えられたとしても、過度に高い収入額だと入職後に辛くなってしまう場合があります。病院やクリニック側は通常の給与規定よりも多い給与を出しているため、他の看護師よりもあなたに高いパフォーマンスを期待するからです。

そこで、採用時に「好印象を与えやすい年収交渉の方法」を実践するといいです。

これについては最初から給与交渉をするのではなく、「最初はあなたの経歴に合わせた妥当な給与額からスタートして実績を上げていき、その実績をもとに給料交渉をする」という実践方法です。

明確に目標を見据えるためにも、「どのような成果を挙げたら、希望する給与額を実現できるのか」を病院やクリニック側から確認しておきましょう。例えば、「入職する先で必要となる資格を取得できたら、基本給を1万円増やす」といった具合です。

この交渉の方法であれば、入職後に「結果を出していくという覚悟と意欲」が採用側に伝わりやすくなります。「結果を出していくことで収入が徐々に上がっていくように交渉したほうが、仕事へのモチベーションも保て、看護師としてのスキルアップにもつながっていきます。

自分ではなく、転職サイト経由で給与交渉を行う

ただこうした年収の交渉について、通常は自分自身が行うものではありません。採用側としては、自ら積極的に給料交渉してくる人については「お金のことばかり考える人」と判断してしまい、不採用となるリスクが高まります。

そのためほとんどの人が転職サイトを利用します。転職エージェントの担当者が年収交渉を含め、あなた自身が直接聞き出しにくい金銭的な交渉を代行するのです。

もちろん、このときは単に給料を上げるだけが交渉ではありません。例えば、「年収アップの代わりに、家賃補助などの福利厚生を手厚くできないか」「入職後にどのような成果を挙げれば、希望額まで引き上げてもらえるのか」といった交渉まで含まれます。

「応募者と希望する病院について、双方の希望や意見を聞き出しながら互いの着地点を見つけていく」という交渉は、素人には難しいです。そこで、プロに任せてしまうというわけです。

給料交渉とはいっても、実際のところ自分だけで行うのは難しいため、面接の場面や事前交渉を含め、最も確実なのが転職サイトの利用だといえます。

給料交渉を上手に行えば、満足する転職になる

転職で給料が下がると、「いままでの経験や知識は何だったのだろう」と自分を過小評価するようになり、仕事へのモチベーションが下がる人が多いです。

ただ、夜勤や時間外勤務のない雇用条件で働こうとすれば、どのような立派なキャリアを積んできた看護師でも給料は下がります。しかし、職種を選べば高給料の求人募集に申し込むことは可能です。

また転職時には、給料アップの方法を知っておくことも重要です。「新しい職場でどのように行動して仕事で認められて、給与を上げていけばいいのか」などを前向きに整理し、これをもとに給料交渉していけば新しいスタートを切ることができます。

なおこうした給料交渉には、転職サイトのコンサルタントの存在が不可欠です。給料交渉はデリケートな問題ですが、転職するには大切なポイントになります。転職サイトの担当者を利用し、再出発を満足できるようにしましょう。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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