うつ病は、日本人の中で約10人に1人はかかる身近な病気の一つとなりました。

とくに看護師は、命に係わる仕事であるため責任が重いです。さらに夜勤や勉強会、残業などが重なれば、心身ともに疲れが溜まりやすく、強いストレスを感じやすい職業だといえます。

働き盛りで頑張っている看護師ほど、多くの心身の悩みを抱えながらも、誰にも相談できずに苦しんでいる人が多いのです。

また歳を重ねれば重ねるほど夜勤などが辛くなり、心身の不調を感じやすくなってしまいます。日勤だけの看護師より、夜勤をしている看護師のほうが、うつ病を発症するリスクが高いといわれています。

そこで今回は、夜勤のある看護師がうつ病を発症しやすい理由とその対策方法についてお話していきたいと思います。

うつ病は脳の病気

うつ病を発症してしまう原因についてはまだ詳しくわかっていません。しかし、うつ病を発症しやすい人というのは、過剰なストレスを抱えていることが多いです。夜勤は心身にストレスを与えやすい要因の一つです。

よく、うつ病は「精神的に弱いからうつ病になる」と考えられていますが、それは誤解です。

脳の働きに何らかの障害が現れ、それに加えて、もともとの性格や生活環境の変化、体の状態などさまざまな要因が重なり、うつ病という病的な状態を引き起こします。うつ病は心の病気ではなく、脳の病気なのです。

心のもちように原因があるのではなく、「① もともとの性格(心因的要因)」「② 仕事上の問題や健康上の変化(社会的要因)」「③ 体調の変化」などの複合的な要因が重なり、脳の働きに障害が起き、病的な症状を引き起こすのです。

脳の中でうつ病が発生するメカニズムについては、「セロトニン仮説」が有力とされています。セロトニンは、脳の中で情報のやりとりをする神経伝達物質の一つです。興奮や不快感を鎮める働きをもっています。

セロトニンが脳内の細胞から放出されることで、興奮や不快な感情が和らぎます。

他にも、うつ病に関係していると考えられている神経伝達物質として、ドーパミンやノルアドレナリンがあります。

ドーパミンはやる気や意欲、集中力を引き出すほか、運動調節にも関わりをもっています。また、ノルアドレナリンは神経を興奮させる作用があり、不安や恐怖、集中力、記憶などの行動に関わりがあります。

下記は健康な脳の状態です。

正常なときは、このように脳の神経細胞の間でセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の放出と再取り込みが盛んにおこなわれ、情報伝達を行っています。

しかし以下のように脳の働きに何らかの異常が生じると、シナプスが放出される神経伝達物質の量が少なくなり、感情や思考の働きを促す電気信号が弱くなります。

うつ病の症状は、このように脳内の働きが低下することで生じます。

うつ状態を例えると、ガソリン切れなのにアクセルを一生懸命踏んで動かそうとしている車と同じです。ガソリンがないので、車は動きません。本人は頑張ろうとしているのに、「頑張れない、体が動かない」となるのがうつ病の状態なのです。

病気を放ったらかしにしたまま無理をして平静を装っていれば、回復までにかなりの時間を要してしまいます。できるだけ早くうつ病の自覚をもち、現状を変えて気持ちを楽にすることが大切です。

夜勤をする看護師がうつ病になりやすい原因

ではなぜ、夜勤のある看護師はうつ病になりやすいのでしょうか。

本来、人間は日が昇ると活動し、夜になると体を休める体内時計が身についています。

しかし夜勤をすることによって昼夜が逆転し、規則正しい睡眠習慣を取ることが難しくなります。すると体内時計が狂い、睡眠不足となり身体にさまざまな不調をきたしやすくなるのです。

夜勤後、自宅に戻ってすぐに眠り、疲れがすべてとれるような環境にあるでしょうか。

夜勤前後は昼間に仮眠をとることになるため、睡眠時間の確保が難しく熟睡できず、どうしても睡眠不足になりがちです。夜勤後、帰宅して仮眠をとっても「だるさが残る」「体は疲れているはずなのに眠れない」などの慢性的な疲労状態が続くことがあります。

とくに看護師の夜勤はギリギリの人数で仕事を回す傾向にあり、看護師一人ひとりの責任感が重く、日勤のときより緊張状態にあります。きつい夜勤を終えて家に帰っても、緊張の糸がほぐれるのには時間がかかります。そのため、眠っても充分に疲れが取れないことがよくあります。

例えば看護師でありがちですが、夜勤終了後、家に帰ってからも、「モニターのアラーム音が頭の中でずっと鳴り響いている」など、よく見受けられます。

このような慢性的な疲労が積み重なっていく結果、うつ病を発症するリスクが高まってしまうのです。

初期のうつ病の小さなサインを見逃さない

うつ病の初期サインは、本当に小さな変化です。「このような変化は日常でいくらでもある」と考えて、簡単に見逃してしまいがちです。

しかし、うつ病発症の初期段階で早めに気づいて予防することができれば、生活の質を落とさないで済みます。

ではうつ病の初期サインとはどのようなものでしょうか。

例えば、「仕事で小さなミスをする」「仕事にやる気が起きない」など誰にでもあることです。心も体も元気なら気持ちをすぐに切り替えることができます。

しかし、うつ病の初期は落ち込んだ気持ちを切り替えることができず、長い間、ゆううつな気持ちが続きます。

うつ病の初期に現れる代表的な6つのサインは以下の通りです。

【うつ病の初期の6つのサイン】

  1. 「気分が晴れない」「憂うつだ」など抑うつ的な気持ちが続く
  2. 「どうでもいい」「何もしたくない」など何に対しても意欲がなくなる
  3. 「イライラする」「何もかも心配だ」など焦燥感や不安感が強くなる
  4. 「集中できない」「どうしたらいいのか分からない」など思考力・判断力が低下する
  5. 「自分はダメな看護師だ」「すべて自分が悪い」など自責感が強くなる
  6. 「自分という存在を消したい」「いなくなりたい」など希死念慮をもつ

上記の中で特に注意したいのは、「1」 と「2」 です。これらが2週間以上続く場合は、医学的にうつ病の可能性が高いとされています。誰しも仕事がうまくいかず落ち込んで、憂うつな気持ちになることはあります。

しかし、うつ病の場合はその気持ちが一日中長引くことが特徴といえます。

また、身体症状が出る人もいます。初期のうつ病で身体に現れる症状は次の通りです。

【初期のうつ病の身体症状】

  • 睡眠障害:いままでのように眠れなくなる
  • 食欲低下:何を食べても美味しく感じられなくなる、体重の増減が激しくなる、など
  • 倦怠感・易疲労感:疲れやすく、体が重い感じになる、着替えや入浴などの簡単な動作がこなせなくなる、など
  • 不定愁訴:頭痛・腹痛・腰痛・下痢・便秘・めまい・しびれ・ほてり・動悸・月経不調など自律神経の乱れにより起こる症状が出現する

上記の中でうつ病に多い体調の変化といえば、睡眠障害(不眠)です。うつ病の人の9割が最初に不眠を訴えています。睡眠障害には、入眠障害、中途覚醒、熟眠感の欠如(熟眠障害)、早朝覚醒など、さまざまな種類があります。

どのパターンでも、睡眠不足を伴うため心身ともにストレスが増大してしまいます。

他にも、精神科の看護師でありながら、夜中に胸が締め付けられて痛くなったため、心筋梗塞を疑い、心臓の検査をしたものの異常が発見されず、原因はうつ病だった人もいます。

また急に視力が落ちたため眼科で検査したけれど原因が特定されず、原因はうつ病と分からないために不安でうつ病の症状が悪化した人もいます。

「いつもと違い、何かおかしい。なかなか回復しない」と感じたら、一人で悩まず、まずは職場のカウンセラーやリエゾンナース、もしくは自宅の近くのかかりつけ医に相談することをお勧めします。

それでも原因が特定できないようであれば、うつ病を疑うことが大切です。心療内科か精神科を受診し、専門医に話を聞いてもらうだけで安心できて症状が消失することがあります。

最近では心療内科よりもさらに気軽に相談しやすいメンタルクリニック、睡眠専門外来なども増えてきています。これらを上手に利用すると良いでしょう。

自分でできるうつ病の対策3つ

夜勤をするとどうしても睡眠不足となり、うつ病の発症リスクを高めてしまいます。そこで、睡眠不足を補う対策をとることが大切です。

睡眠日誌をつける

夜勤は仕事であるため、仕方ないとあきらめがちですが、普段から睡眠不足に陥っていないか把握しておくことが大切です。この場合、睡眠日誌を活用すると自分の睡眠状態を客観的に見直すことができ、対策を立てることができます。

以下が睡眠日誌の一例です。

出典:田辺三菱製薬「ヤマネ先生の睡眠日誌」

睡眠専門医は、問診で患者さんの訴えに耳を傾け、どのような睡眠パターンを取っているのかチェックします。これを自分でまず行ってみるのです。睡眠日誌をつけることで、自分の睡眠状態を客観的にとらえ、悩みの原因や問題点を把握しやすくなります。

例えば、休日になると7~8時間眠る人は、もともと本人が必要とする睡眠時間はこのくらい必要であることが分かります。

夜勤前や夜勤後の仮眠で、本来あなたに必要である睡眠時間を確保できているのか確認してみましょう。もし十分な睡眠時間を確保できていないのであれば、睡眠環境を整える必要があるということになります。

また自分では「睡眠が足りていない」と思っていても、日誌をみてみると十分な睡眠時間を確保できている場合もあります。その場合、睡眠の質に問題があることがわかります。それならば、睡眠の質を改善する対策を取れば良いということになります。

このように睡眠に関して問題を抱えている場合は、まずは睡眠日誌をつけてみることが大切です。自分の睡眠パターンを客観的にみて、対策を立てると良いでしょう。

ちなみに女性の場合、月経前になると体温が高くなり、過眠になりやすくなるなど睡眠パターンが変わる場合があります。毎朝、基礎体温を測定しておくと、一ケ月の睡眠状態を把握することができるので、さらに対策を講じやすくなります。

月経前に睡眠パターンが変わりやすいと感じるのであれば、意識して日中に太陽光を浴び、活動的でメリハリのある生活を心がけましょう。

また月経前にイライラやうつ的な気持ちが強く出て日常生活に支障をきたすような人は、心療内科やメンタルクリニックに相談するのも一つの方法です。

悩みの原因に睡眠不足が感じられる場合は、睡眠専門医に相談すると良いでしょう。このような場合でも、睡眠日誌は非常に役に立ちます。

眠りが足りないと感じたら、仮眠をとる

夜勤での睡眠不足の弊害を防ぐには、できれば勤務形態を、「日勤 → 準夜勤 → 夜勤」という順番にしてもらうことをお勧めします。体内時計を早めるよりも、後ろにずらしたほうが心身の抵抗が少なくて済むからです。

また自分でできる対策としては、仮眠のとり方を工夫しましょう。「睡眠が足りてなく、体がきつい」と感じた場合は、効率よく仮眠をとることが大切です。

・夜勤前

夜勤前は、数時間の睡眠をとります。仮眠は、仕事の始まる時間に近ければ近いほど、その後の仕事中の眠気を防ぎやすくなります。この方法により、1日分の睡眠時間の確保もしやすくなります。

・夜勤中

夜勤中は小刻みに30分以内の仮眠を何回かに分けてとるのがベストです。「仮眠をとると、頭がぼーっとして体がだるくなるので、仕事を再開するのがきつい」という人は、仮眠後に紅茶やコーヒーなどのカフェインを摂取すると良いでしょう。

・夜勤後

夜勤明けが休日であれば、体内時計を狂わせないために、昼まではできるだけ眠らず活動的に過ごし、午後の早い時間に30分程度の仮眠をとると良いです。このとき疲れに任せて長時間寝てしまうと、夜中に眠れなくなり、結果として睡眠不足を助長してしまうことになります。

夜勤がもう一日続く場合は、昼までは活動的に過ごし、勤務時間前の時間帯に数時間の睡眠を確保するようにしましょう。

夜勤明けの午前中に眠っておきたいけれど寝付きが悪く悩んでいる場合は、夜勤中から徐々に休息モードに体調を整えておくことが大切です。

具体的には、夜間はできるだけナースステーションを明るく保ち、覚醒を促し、日中の環境に近づけます。そして、明け方帰宅するときには、できるだけ太陽の光を浴びないよう、サングラスをつけるなどし、覚醒しないようにします。

帰宅したら遮光カーテンやアイマスク、耳栓などを使い、静かな環境を作り、眠りにつくようにしましょう。ただし、その日の夜が眠れないほど寝すぎてしまうと、そのこともまた睡眠不足に陥る原因の一つになってしまいますので、適度な時間で起きることが大切です。

中には、帰宅してから寝酒に頼る看護師がいます。アルコールは中途覚醒を引き起こしたり、トイレが近くなり睡眠の質を低下させたりしてしまいます。眠りが浅く、お酒にどうしても頼ってしまうようであれば、睡眠専門医に相談してみるのも一つの方法です。

ストレスを溜めない思考を身につける

また睡眠不足対策のほかにも、ストレスを溜めない思考を身につけておくことも、うつ病対策になります。

うつ病の患者さんは次に紹介するような思考パターンに陥りやすい傾向にあります。

  • 100%完璧にこなさなければ、失敗と考えてしまう:「私のケアで患者さんは痛がった。私は看護師としてダメなんだ」
  • ひとつの失敗をすべての出来事に当てはめてしまう:「だから私はいつもダメなんだ…… 」
  • 嫌なことにしか目がいかない:「仕事に楽しいことなど何もない」
  • どのような出来事もマイナスに捉える:「妻が友人夫妻の旅行の話をしてきた。自分の給料に不満があるのか」
  • 些細なことでも、一番悪い結論に導いてしまう:「あの人と目が合った。いつも私を見張っているのではないか」
  • 自分を否定するレッテルを貼っている:「自分はどうせ嫌われ者だから、放っておいてほしい」
  • 「~すべき」という自分で作ったルールに縛られている:「看護師はこうあるべきだ」
  • 失敗は大きく捉え、成功は小さく考える:「上司に褒められた。無能な私に気をつかっただけだ」
  • 感情で物事を判断してしまう:「うつ病になって仕事のやる気がなくなった。一生看護師には戻れないだろう」
  • 自分に関係ないことまで自分の責任と考える:「先輩が怒られたのは私のようなダメな後輩がいるからだ」

このような思考であると、同じ出来事が起こっても、ほかの人より大きなストレスを抱えやすくなってしまいます。うつ病になると、他人の評価を気にしたり、自分を犠牲にしてまで他人に気をつかったりしやすくなってしまいます。

人は生まれ育った生活環境や価値観、人生観が異なります。「人それぞれ、意見や考え方が異なるのは当たり前」と考えられるようになると、気持ちが楽になります。

また、言葉に出さずにコミュニケーションを取ろうとしても、誤解を生じやすくなります。自分の気持ちを伝えるときも、相手の気持ちを聞くときも、言葉に出して伝えると誤解を防ぐことにつながります。

そのため以下のような点に注意して、人間関係を保つと良いでしょう。

  • 相手の言いたいことを憶測しない:相手の言いたいことが理解できないときは、直に相手の言葉の意図を確認しましょう。勝手に自分の憶測だけで考えると誤解が生じ、落ち込んでしまうことが出てきます
  • 他人や自分の良いところに目を向ける:誰にでも欠点があります。しかし誰しも長所もあります。その長所に目を向けるよう心がければ、人間関係のストレスは和らぎます
  • 自分の気持ちは言葉で伝える:親しい間柄だからといって「話さなくても大丈夫」ということはありません。自分の気持ちは必ず言葉で伝え、理解してもらうように努めましょう
  • 他人と意見の食い違いは当たり前:すべてを他人と合わせる必要はありません。食い違うということは、自分を理解してほしいと思う気持ちの表れです。意見の食い違いを経て、お互いを理解できるようになり、きずなが深まることもあります

このように日頃から職場でコミュニケーションを十分とっておけば、自分で働きやすい環境を作り出すことにつながります。

辛いときに上司や同僚に相談できたり、自分で自分を追い詰めて頑張りすぎているときに誰かがストップをかけてくれたりします。また、心身が不調のときに、ただの怠けものという誤解をされなくて済みます。

新型うつ病を知っておこう

最後に、新型うつ病についてお話しておきます。

この新型うつ病は少々厄介で、精神科専門医の間では「自己愛型」「逃避型」などと呼ばれることもある新しいタイプのうつ病です。10代後半から20代、30代前半の若い看護師に増加傾向があります。

医学的な定義はまだ定まっていないのですが、自己愛が強い人に発症しやすいうつ病です。

好きなことや興味のあることには意欲的に取り組めるのですが、自分にとってストレスを感じるような環境では憂鬱になったり、倦怠感を覚えたりするなどのうつ症状が現れます。また他人に攻撃的になる傾向があります。

新型うつ病は、抗うつ薬を服用したとしても効果が発現するまでには時間を要してしまうので、初期段階で気づくことが非常に重要となります。

新型うつ病の初期サインは次の通りです。

  • 仕事をしようとすると途端に体調が悪くなる
  • 嫌なことがあると、周囲を責めてしまう
  • 休日になると、元気が出て意欲的になる
  • 上下関係や集団のなかでの仕事を苦手と感じる
  • 周囲からわがままだといわれる
  • 自己愛が強く、自分には才能があるので、何でもできると考えている

また、新型うつ病には以下のようにさまざまなタイプがあります。

【新型うつ病のタイプ】

逃避型うつ病

一般的なうつ病と異なり、自責感が強くありません。責任を他に転嫁し、死にたいと訴える希死念慮がありません。

未熟型うつ病

依存的、わがまま、自己中心的な性質がみられます。自分の思い通りにいかなければ、不満が爆発し、不適応を繰り返し、うつ症状が現れます。

不安・焦燥、パニック発作、身体的な不調の訴えなどがみられ、強い自殺衝動を生じることもあります。他人を責め、自己愛的な傾向が強いとされています。

職場結合性うつ病

仕事量が多く、さらにスピードが要求される職場であればあるほど、発症しやすいとされています。

不眠、心身疲労、頭痛、肩こり、イライラ、不安、焦燥などの症状があります。無理をしてでも仕事をしようとするのですが、自分の能力に限界を感じて追い込まれている状態にあります。

衝動的に死にたいと考えることがあり、パニック発作や過換気発作を起こし、救急外来から心療内科や精神科を受診するケースが多いです。

もし、自分は「この新型うつ病に当てはまるのではないか」と感じたら、できるだけ早く専門医に相談することをお勧めします。

私の看護大学時代の友人でこの新型うつ病(職場結合性うつ病)で苦しんだ人がいます。

その友人は、脳外科で働いていました。友人は休日に気分が高揚しており、掃除や洗濯を楽しくできるのですが、職場に出ると急にだるくなり気分が滅入ってしまうそうです。

特に夜勤に出る前になると、全身に砂袋を置かれたかのように動けなくなってしまい、急に勤務の変更を願い出るようになりました。

そのようなことが続き、職場の上司の勧めもあり、友人は心療内科を受診し、抗うつ薬を服用するようになりました。しかし、薬の効果を感じることはできず、友人は「なぜだろう?」と焦る日々が続いたといいます。

そのうち職場だけでなく、家族とのもめごとも増えるようになりました。些細なことでイライラし、つい相手を攻撃するようなきつい口調になって後悔する日々が続きました。

自責の念から、友人は一旦退職して現状をリセットしようと、心療内科の専門医に相談しました。

するとその専門医は、「新型うつ病の場合、仕事を辞めたり、長く休職したりすると、もうストレス環境には戻りたくないとの思いが強くなり、社会復帰が難しくなる」との見解を示しました。

そこで医師の勧めもあり2週間休職し、友人は「振り返りノート」をつけるようにしました。自分がどういったときにイライラするのかをノートに書きこみ、うつ症状のきっかけとなるストレスについて整理し、自分の考え方のクセに気づいたそうです。

そして以前より興味のあった地域のバレーボールにも参加するようになると、バレーボールで汗をかいた日はよく眠れるようになったと喜んでいました。

それから友人は、夜勤は心身ともにきつく限界を感じたため、夜勤のない外来に移動させてもらいました。仕事に復帰した友人は、同僚から「以前より表情が柔らかくなった」と言われ、うつ症状が徐々に和らいでいったそうです。

友人が行った「振り返りノート」とは認知行動療法の一つで、「行動記録表」ともいいます。自分の行動を書き込むことで、客観的に自分をみつめることができ、「その対処法は間違っていなかったのか」を自分自身に問いかけることができます。

振り返りノートの一例です。

5月14日(月)雨

睡眠:午後11時~午前6時まで

食事:()カフェオレ グラノーラ ヨーグルト バナナ半分

)おにぎり つけもの リンゴ半分 クッキー1枚

)ごはん 味噌汁 納豆 生姜焼き サラダ 酢の物 パイナップル3切れ


出来事(状況)

副師長が看護研究の打合せの時間をいきなり終業後に変更した。予定外であったので断ると「今夜打合せしないと、するときがなくなる」と怒りをぶつけてきた。無視して帰った (怒り 80% くやしさ 70% 屈辱感 80% )


自分の気持ち・考え(自動思考)

打合せの時間を勝手に急に変更して、怒ってくるなんてありえない。仕事で疲れているのに、その上、打合せなんて…… 私に意地悪をしたくて、副師長は時間変更をしたのではないか。私は悪くない


なぜそのように考えたか(根拠)

仕事で疲れていたため、早く家に帰って好きなDVDを鑑賞する予定だった。それを楽しみに仕事をがんばっていた。けれど、副師長が突然打合せの変更を告げてきて、一方的に従わせようとする態度に怒りを感じた


自分の考えが合っていない点(反証)

副師長は私たちが行う看護研究のために、わざわざ時間を空けてくれた。副師長が私に嫌がらせをしたいのであれば、 打合せ自体開かないのではないか


新しく浮かんできた考え(適応的思考)

今日は終業後、DVDを鑑賞する以外に特に重要な予定は入っていなかった。また他でその時間を取られるくらいなら、今日打合せをしておけば、さらに看護研究を進めて早く終わらせることができた。

ただ私は、副師長の言われたことに素直に従うのが嫌だったのかもしれない。私は自分の思い通りにならないと、カっとするところがあるな…… 明日、副師長に謝罪し、今度は打合せの時間をちゃんと合わせよう

このように自分の思考と行動パターンに気づくことができれば、それとは別の考え方ができないかを検討してみます。この記録をつけ、繰り返し自分の思考パターンを振り返ってみれば、柔軟な考え方を行えるようになっていきます。

夜勤を辞めるのも一つの方法

今回の心身の不調の原因は夜勤だと分かっているのであれば、夜勤からいったん離れてみることも一つの方法です。夜勤をしながらの治療は困難であり、回復したようにみえても、再発を繰り返してしまうことも少なくないからです。

うつ病になる看護師は、まじめな人が多いだけに、「私が職場を抜けてしまうと周囲に迷惑をかけることになる」など考え、夜勤を辞めることに大きな抵抗を持つかもしれません。看護師のキャリアアップのレールから、自分ひとりが取り残された気持ちになるのです。

しかし、ものは考えようです。夜勤などで自分の時間を取れなかった生活から離れ、自分を取り巻く家族や、仕事以外の社会とのかかわりを見直す絶好の機会でもあるのです。

いま勤めている職場にあなたの心身の状態を説明し、日勤のみの勤務に変更させてもらえるかどうか尋ねてみましょう。また、外来勤務に興味があれば、そちらに移動させてもらう方法もあります。

うつ病の要因となった夜勤業務以外にも、視野を広げてみれば、看護には多くの仕事の種類ややりがいがあることに気づくことができます。夜勤をしないとなると、経済的な心配はありますが、まずはあなた自身の心身の健康を考えることが大切です。

看護師としての働き方は病院だけに留まらず、保育園や企業、クリニック、健診ナースなどさまざまに存在します。あなたがその気になれば、いくらでも転職の道はあるのです。より広い視野で看護を考え、自分なりに最適な働き方を手に入れるようにしましょう。


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