看護師に限らず、労働者である限りは「有給休暇消化率の高い職場に転職したい」と考えるのは当然です。ただ、看護業界はもともと人手が足りておらず、有給休暇を満足に取れていない看護師が多いのが現状です。

当サイトの管理人である私自身、転職をして仕事内容や人間関係には非常に満足しているのですが、有給休暇を取得しにくい状況がいまの職場に対しての唯一の悩みです。

有給休暇を取りにくいこと以外は働きやすい職場であるため、私自身はすぐに転職を考えているわけではありません。しかし有給を取りづらい現状が退職原因のひとつとなり、辞めていったスタッフは多いです。

やはり労働者の権利である有給休暇を満足に取得できなければ、徐々に職場に対する不満となって蓄積し、再度転職する理由になってしまいます。そこで私自身の反省を含め、「有給休暇消化率の高い求人を見抜き、満足いく転職を行うにはどうしたらいいのか」を解説していきます。

有給休暇消化率が高さは求人票から確認する

有給消化率の高い職場を見抜く簡単な方法については、求人票に「有給休暇消化率〇%」などと記載のある職場を見つけることがあげられます。例えば、以下は神奈川県の病院求人ですが、「有給休暇消化率90%以上」と明確な記載があります。

このように有給休暇消化率の高い医療機関に就職したいのであれば、事前に有給休暇消化率を求人票などから確認しなければなりません。

このような確認は当たり前だと思われるかもしれません。しかし大半の応募者は求人を探す際、給与やボーナス、福利厚生、年間休日数など他の希望条件ばかりに目がいって、有給休暇消化率について後回しにしているケースが多いです

特に、前の職場で積極的に有給休暇を取得できていた場合であると「取得できるのは当たり前」と思い込みがちになります。そのため、職場選びの際に有給休暇消化率に目が向かないことが多々起こるのです。まずは、求人票に有給消化率が明確に記載してあるかどうか確認しましょう。

希望する医療機関の職員にも有給消化率を確認する

ただ実際のところ求人票に数字が載っていたとしても、本当にその数字が正しいのかどうかは不明です。そこで有給休暇消化率を確認するもうひとつの方法として、「実際に働いている職員に有給休暇消化率について実情を尋ねる」ことが必須だといえます。そうすれば、「求人票の記載が本当かどうか」を確認できます。

直接その求人先で働いている職員に聞かなければ、求人票に「有給休暇消化率 100%」とあっても、まったく内情が異なるケースは多々あります。

職員に確認する方法は簡単であり、職場見学を実施するだけです。面接時は必ず対象の医療機関へ出向くことになるため、面接前または後に病院見学・施設見学を実施させてもらい、働いている看護師に「実際のところはどうなのか」を聞くようにしましょう。

求人票に記載されている有給休暇の書き方には、特に規定がありません。医療機関によってそれぞれ有給消化率の掲載方法は違います。そのため求人票に有給休暇消化率100%の記載があるからといって、必ずしもその通りであるとは限らないのです。

さらに「実際に有給休暇消化率が100%」だとしても、計画休暇といって雇用主(病院側)の都合で有給休暇を無理やり消化させられているケースもあります。

計画休暇というのは、例えば外部の講習会や研修会への参加、学会への出席など、プライベートとは異なる時間を強制的に有給休暇として計上しているケースです。

他にも、有給休暇消化率 100%と求人記載があっても、実際に入職すると有給休暇はまるで取得できていない場合もあります。不満を漏らすと「それは10年以上も前のことで、そのときは看護師の人数が充足していた。いまは仕方がない」といわれるケースがあります。

こうした転職後のギャップをなくすためにも、事前の確認が必須になると理解しましょう。

有給休暇取得率だけでなく、看護休暇など他の休みも重要

そうしたとき「給料が高くて待遇が良ければ、それほど有給取得率が高くなくても気にならない」と考える人がいるかもしれません。しかし、有給取得率の低い医療機関は他の休暇にも厳しい可能性が高いです。

他の休暇とは産休や育休、介護休業、病休、子供の看護休暇などです。労働者にとって当たり前の権利である有給休暇でさえ渋るのに、他の休暇の受け入れが寛容ということはまずありえません。他の休暇に関しても、高い確率でいい顔はされないでしょう。

いまは休暇が必要ないと思っていても、いずれ「子の看護や介護など、家族の面倒を看たい」と休暇を希望する日が来るかもしれません。休みたいときに休める職場環境にあることは非常に重要なのです。

・看護休暇があり、実際に利用できれば完ぺき

そうしたとき、有給休暇だけでなく看護休暇に着目すると、より休みを取りやすい職場であるかどうかが分かります。子供が急に発熱したとき、休みを取らせてくれるのが看護休暇になります。

例えば以下の介護施設から出された中途採用募集では、看護休暇が存在すると分かります。

いま育児中の女性かどうかに限らず、こうした看護休暇が備わっていることは重要です。有給休暇以外のあらゆる休暇の中でも、看護休暇は最も取得のハードルが高いからです。

有給休暇であれば、前もってどこで休みを取るのか知らせておくのが基本です。ただ看護休暇の場合、子供は急に発熱するため、いつ休みを取ることになるのか誰も予測できません。しかも、その日になって「子供が熱を出したので休みたい」と職場に申し出る場合もよくあります。

こうした急な休みであっても広く受け入れてくれる職場であれば、有給休暇についても当然のように取得できます。休みを取りやすい職場で「悪い職場」は基本的にないため、優れた医療機関・施設の求人かどうかの指標としても有給休暇の取りやすさは重要です。

有給休暇日数は何日ある?看護師1年目でも取得可能!

なお有給休暇日数については、何年働けば何日付与されるものなのでしょうか。これについて、以下のグラフが正社員の有給休暇の付与日数になります。

引用:有給休暇の付与日数 – 厚生労働省

有給休暇は労働基準法によって定められており、入職後に6ヵ月経過すると年10日与えられます。つまり新人1年目であっても、転職して勤務を始めて半年後から有給休暇を使えると考えれば問題ありません。

また継続勤務1年経つごとに年1日加算され、3年6ケ月以後になればさらに年2日ずつ加算されます。6年半働けば毎年20日間付与されることになっています。ただし法律上、年間20日以上の有給休暇は付かない決まりになっています。

規模の小さな医療機関は有給休暇を取得しづらい

ただ実際のところ、看護業界は有給休暇を取得しづらい職場が非常に多いです。もともと看護業界は人手不足のため、有給休暇の取得にはあまり寛大ではありません。これが規模の小さな医療機関であり、ぎりぎりの人数で仕事を回しているとなるとなおさらです。

私の勤めるクリニックは冒頭で述べた通り、有給休暇を取得しづらい環境にあります。先代の院長のときから「スタッフが有休休暇を取得する」という概念がなかったそうです。

もちろん子供の運動会や卒業式、親の施設入所日など、どうしても休まなければならない特別な日は有給休暇を使えます。そのため絶対に有給休暇を取得できないことはないのですが、大変言いづらいのが実情です。

クリニックは院長が一国一城の主ですので、「できるだけ院長の機嫌を損ねず、気持ちよく働きたい」と職員の誰もが思っています。そのためクリニックの場合、院長が有給休暇取得に積極的でなければ、非常に取りづらいのが現状です。

・他の看護師の負担を考えると有給休暇を取りにくい

もちろん、クリニックに限らず病院や施設でも同様に看護師は有給休暇を取得しにくい環境となっています。有給休暇の許可が下りたとしても、休んだ穴埋めを他の看護師にしてもらわないといけないからです。

例えば私の勤める職場は午前(8:00~15:00、1時間休憩あり)と午後(12:00~18:00、休憩なし)の二交替勤務であり、ぎりぎりの人数で仕事を回しています。休む看護師の勤務を引き受けた看護師は、午前と午後の勤務を続けて働くことになります(8:00~18:00、休憩1時間半)。

もともと来院患者数が多く、体力的に大変という理由で二交替にしているのに、「代打要員として一日ずっと出勤するのは疲れる」というのは職員全員が分かっています。そのため休まなければならなくなって、誰かに「一日ずっと仕事に出てほしい」とお願いするのは大変気が引けます。

このように看護師だと、自分が休む代わりに他の看護師に頑張ってもらわなければならないことから、有給休暇を取得しにくい現状があります。

大学病院・総合病院は有給休暇を取得しやすくても意味がない

しかしそうした中でも大学病院や総合病院の場合、全看護師の見本となる働き方を推進しているところが多く、ワークライフバランスを重視している傾向にあります。有給休暇は入職初年度から20日間付与されている病院があり、長期休暇を取得しやすい環境にあるといえます。

ただ、これは世間一般的に表に出されている情報になります。

実情をいうと大学病院・総合病院の場合は時間外労働が多いため、長期間の休暇を取得できたとしても、普段が忙しく過酷な労働環境に晒されています。また勉強会などへの参加を考えると、むしろ休みの日のほうが少ないといえます。

つまりワークライフバランス重視を推進しているといいながらも、まるで実行されていないのが現状です。そのため有給休暇を取得できるとはいっても、別の労働時間が多く意味を成していないといえます。

いくら総合病院などで有給休暇消化率が高かったとしても、その他の勉強会や残業を含め、総合的に判断しなければいけません。求人票に掲載されている情報だけを見ても意味がなく、やはり現場で働く看護師に対して、病院見学のときに実態をヒアリングするのが正しいといえます。

職場の雰囲気で休みの取りやすさが決まる

なお実際のところ、看護師転職で休みを取りやすい職場に当たるかどうかについては、職場の雰囲気を見なければ分からないといえます。

例えば給料や勤務時間、配属される科などについては、事前の交渉によって希望条件を明らかにすることができます。転職サイトを利用すれば、あなたが交渉しなくても優れた条件を引き出すことも可能です。

しかし、実際に職場見学しなければ分からないことは多いです。例えば、師長(または院長)の人柄や職場の実態、患者さんの様子は求人を見てもまったく分かりません。実際に面接し、病院見学するからこそ理解できる事柄だといえます。

同じように、休みの取りやすさを含めた職場の雰囲気は実際にその場に出向き、現場で働く看護師にヒアリングしてみなければ分かりません。

そこで看護師が転職するとき、ほとんどの人が併願します。複数の職場の中途採用募集に申し込むわけですが、実際に面接や病院見学・施設見学を通して「実際はどうなのか」を確認するのです。これを実施しなければ求人同士を比較できず、有給休暇の取りやすさを含め、本当に優れた職場への転職はできないと考えましょう。

有給休暇取得率の高い求人へ転職する

私の勤める職場では有給休暇消化率は非常に低く、おそらく今後も有給休暇を取得しにくい状況が変わることはないでしょう。この点を除けば仕事はやりがいがあり、人間関係も良好なので非常に優れている職場といえます。

ただ、「もっと有給休暇を取得しやすい職場環境であれば、早期に退職してしまう看護師が減るのに」とも感じています。

給与や福利厚生、仕事内容、人間関係などのほかにも、有給休暇取得率を職場選びの条件に加えると、満足いく転職につながっていきます。このときは求人票で確認するだけでなく、実際に病院見学・施設見学などで現場の看護師から生の声を聞き、どのような実態になっているのかヒアリングするようにしましょう。

そうしたうえでいくつもの職場を比較すれば、どの中途採用募集が優れているのか見えてきます。こうして長く勤められる職場をみつけるように最善を尽くしましょう。


看護師転職での失敗を避け、理想の求人を探すには

求人を探すとき、看護師の多くが転職サイト(転職エージェント)を活用します。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できます。このとき、病院やクリニック、その他企業との年収・労働条件の交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「対応エリア(応募地域)」「取り扱う仕事内容」「非常勤(パート)まで対応しているか」など、それぞれ違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページでは転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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