美容外科や美容皮膚科といった美容クリニックは高給与・日勤のみ、残業が少なめなどの高待遇であるため、応募人数が多く面接のハードルが高い傾向にあります。

美容クリニックに転職希望の看護師であれば、書類選考対策も大切ですが、何よりも面接が重要なポイントとなります。採用側は面接を通して、あなたの人柄や雰囲気、看護へ対する姿勢などをかなり細かくチェックします。

また美容外科の場合、普通に落とされることがよくあります。そのため「美容クリニックの面接は大変そう」と思う人がいるかもしれません。しかし面接のハードルが高い分、準備をしっかりしておけば他の応募者と明らかな差異が生まれ、あなたにとって有利になります。

今回、美容クリニックに転職希望の看護師が知っておくべき「採用される面接の秘訣や自己PRの方法」について解説していきます。

面接に落ちた看護師は第一印象が悪い

美容外科や美容皮膚科のような美容クリニックに転職するには、特に第一印象が大切です。これは医療系の病院でも同じことがいえますが、美容クリニックの面接では特に大事です。

もちろん美容クリニックの面接を受けるからといって、何も美人になったり、スタイル抜群になったりする必要はありません。目指すのはモデルではなく第一印象の良い人物です。

このとき美容クリニックとはいっても、流行りのメイク、明るすぎる髪色、奇抜な髪型などは好まれません。看護職に就くため、ネイルは落としていったほうが無難です。つけまつげなども止めましょう。また、外見ばかりを着飾らないシンプルな服装で面接に臨む必要があります。

高価なものでなくても構わないので、自分の着丈に合ったスーツを着用しましょう。次の写真のように、手首が隠れるくらいの袖の長さが適切です。

相手に良い印象を与えるため、こうした意識を心がけて面接に臨む応募者は意外と少ないです。「看護師は多くの医療機関で不足しているので、美容クリニックの面接で落ちることはないだろう」と考えるのです。

ただ美容外科・美容皮膚科などの美を追求する仕事に携わっていきたいのであれば、「他者からみて第一印象で良いイメージを与えられるか」を意識しなければいけません。

美容外科・美容皮膚科の面接対策で情報収集すべき内容

次に、希望する美容外科や美容皮膚科といった、美容クリニックの内部情報を徹底的に収集しましょう。もちろん履歴書を書くとき、ある程度の情報収集は済ませているはずですが、面接まで進んだ段階でさらに詳細に情報収集を重ねていきます。そうすれば、質問内容に対してより具体的に答えることができます。

反対に、たとえ美容外科や美容皮膚科に採用されやすい外科経験やキャリア、経歴があったとしても情報収集が不十分である場合、採用には至りません。

また、このとき面接に落ちた人の多くは、求人票の記載事項である「高収入・好待遇・残業なし」の欄に魅かれ応募します。例えば、以下は年収が約600万円の名古屋にある美容外科クリニックの看護師求人です。

月の給料が38万円であり、賞与(ボーナス)3.5ケ月を入れると年収が約600万円になります。

また求人のコメントでは、以下のように「ブランクOK・未経験者歓迎・主婦看護師OK」となっています。

このようなコメントがあれば、誰もが仕事に興味を持ちます。もちろん本音としては、待遇の良さなどで求人に興味をもつケースが多いですが、それを面接での志望理由にしてはいけません。

「待遇がいいから申し込んだ」という志望動機・自己PRでは、「もっと待遇の良い求人が出たら、そちらにすぐに転職するのではないか」と思われてしまいます。採用側は「なぜこの美容クリニックに勤めたいのか」という強い思いや意欲を知りたいのです。

また、面接で「志望動機を述べてください」といわれたときに、どこの美容クリニックでも通用するような当たり障りのない内容しか述べない人がいます。例えば、「御院で優れた美容スキルを学べる」などの回答です。しかし、これでは不採用として面接に落ちます。

そこで、事前に「希望する美容クリニックでなければ通用しない志望動機・自己PR」を述べる必要があります。そのためには事前の情報収集が必要です。このとき、次のような方法を考えます。

  • 公式サイト : 美容外科・美容皮膚科のホームページ
  • SNS:クリニックが更新するSNS
  • 活字媒体 : 雑誌、院長執筆の論文
  • 転職サイト: 看護師専門の転職サイトから教えてもらう

美容クリニックのホームページに経営方針や院長のコラムが掲載されているようであれば、必ず目を通しておきましょう。また、以下のような書籍や雑誌などのインタビュー記事なども参考になります。

他にも希望する美容クリニックで働いている看護師と知り合いであれば、話を聞いてみるのも良いでしょう。

なおこれらの情報収集の方法の中で最も簡単で効率の良い方法は、転職エージェントの活用になります。過去、あなたの希望する美容クリニックへの転職を成功させた看護師がいれば、採用に至った経緯を教えてもらえるだけでなく、そこに勤めている看護師から生の情報を手に入れることができます。

また、「今回の募集でどのような看護師を選考したいのか」などの内容から、「希望する美容クリニックの面接で好まれる服装やメイク」まで細かな情報を教えてもらえます。これらの情報を入手しておけば、面接でどのように対応すればいいのかが分かるようになります。

また、志望動機を聞かれた際にも「御院は〇〇といった経営方針であるため、私の看護観である△△と合致すると考え、入職したいと強く思うようになりました」などと、詳細にアピールすることができます。

採用側は「絶対にここのクリニックでないといけない」と感じさせる熱意のある人を採用する傾向にあります。このため美容クリニックに転職希望の際は、転職サイトに登録して細かな情報を入手することが採用の決め手となるのです。

転職理由は自分の経験と関連付ける・質問項目と回答例

それでは次に、実際に美容クリニックの面接で質問されやすい内容とその回答例について述べていきます。一般病院から転職するのであれば、「なぜ美容業界に転職しようと思ったのか」という質問は、面接で必ず聞かれる内容になります。

美容クリニックは一般の医療系のクリニックとは違うため、看護師としての技術が身につかないとの理由でやりがいを感じることができず、辞める方が多い業界でもあります。

そのため、美容クリニックに入職しようとする理由を採用側は聞きたいと考えます。もちろん「夜勤がない」「高給与」「好待遇」などの正直な理由はあると思いますが、それだけでは長続きしません。また「美容に興味がある」「新たな挑戦」も気持ちとしては純粋な理由になりますが、ほかの応募者と差をつけることはできません。

他の応募者と差をつける回答にしたいのであれば、「どのような経験から、この業界に飛び込みたいと思ったのか」という転職理由を話すようにしましょう。

このとき皮膚科や外科、形成外科での経験があれば、業務と関連付けて志望動機を話せます。ただ、そうではない人が多いです。そこで美容クリニック業界の詳しい内容を把握し、自分のもっている知識や技術、経験を関連付けて「何ができるのか」「どれくらい貢献できるのか」を訴えるといいです。

そこで面接での転職理由の回答例を下に記します。

私は小児科に勤務しています。そのとき、顔に大きなアザがある思春期の患者様が入院してきました。本人は病気よりもアザをすごく気にされており、私が入室すると、いつもアザを隠すような仕草をしていました。

そこで担当の医師が「美容形成外科でアザを薄くするレーザー治療を受けてみないか」と提案しました。そうして患者様は治療の合間に美容クリニックで治療を受けることになりました。

数ヵ月後、その患者様が外来に来られたときアザはかなり薄くなっており、表情も見違えるほどに明るくなっていました。その様子を見て、「病気ではなくてもコンプレックスを取り去ることで、人は生まれ変わることができる」という事実に驚き、美容業界に入職したいと考えました。

いままでの経験は無駄ではなく、美容業界への転職のきっかけを作った貴重な体験であったという事例になります。美容業界に転職を考えるのであれば、小さなきっかけでもいいので、そこを切り口にして自分の体験から回答を作ると良いでしょう。

今回は小児科を例にしましたが、整形・リハビリや精神科を含め、あなたの経験を美容外科の転職理由につなげるようにしましょう。

志望動機・志望理由については入念な情報収集を行う

ただ美容業界を志望した理由だけでなく、面接では「美容業界の中でも、なぜ当院を希望しているのか」といった志望動機を頻繁に聞かれるため、このときの回答や自己PRについて考えるようにしましょう。この質問の本音では「当院についてどのくらい情報収集しているか」を図っています。さらにいえば、この質問は「当院の良いところを述べてください」という意味も含まれています。

また「数多くの美容クリニックの中から、なぜそのクリニックを選択したのか」の理由が明確に答えられない希望者では、「本気で入職したいと考えていない」と判断されて落ちてしまいます。

そこで志望先クリニックの良いところを見つけたのであれば「なぜその点をいいと思ったのか」の具体的な理由付けを行いましょう。さらに志望理由に個人的なエピソードを合わせて話すことができれば、それが入職の希望理由になります。

「なぜ、当院を希望しているのか」という質問に対する具体的な回答例を次に挙げます。

私の知り合いの女性が御院で、数十万円の費用が必要となる脂肪吸引を希望されたそうです。しかし、A先生はその女性の相談に丁寧に乗り、脂肪吸引を行わなくて済む1万円前後の費用しかかからないインディバやエンダモロジーのほうを勧めたといっていました。

そうして数ヵ月かけて基礎代謝をあげる治療を行い、食事・運動療法まで指導され、納得のいく結果を得られたと聞きました。

その女性に久々に会うとさらに美しくなっており、「先生がおっしゃった通り脂肪吸引をせずに、運動や軽い施術を継続的に行うことで自分の力で外見に変化をもたらしたこと。それが美しさを引き出すモチベーションとなった」と嬉しそうに話していました。

すべての美容クリニックとはいいませんが、より高額な施術を勧めることが多い業界である中、御院の「患者様の健康を考え、運動や食事療法も併用して治療を行う」という方針に敬服しております。

前職では糖尿病の入院治療に関わっており、A先生のおっしゃる「患者様自身の力で美しさを引き出す」という理念に貢献できると思い、応募させていただきました。

具体的に感銘した事例などを出し、「この美容クリニックでなければならない理由」を明確に提示しましょう。さらに、自分の看護師経験が希望する美容クリニックの利益につながることを述べるといいです。「どの分野でどのくらいの貢献ができるのか」を具体的に伝えられると、より説得力が増します。

希望するクリニックの魅力を率直に伝え、自分の強みをアピールできると、優れた志望動機の回答例になります。

退職理由は前向きな姿勢を示す

また面接では「なぜいまの病院を辞めたいと思うのか」という退職理由も必ず聞かれる質問になります。この質問は、「採用したあと勤続を続けてくれるか」について確認することが主な理由です。

「応募者本人に何か問題があって辞めざるを得なかったのではないか」という疑いを採用側にもたれてしまうと、不採用に直結してしまいます。また、答えをはぐらかすような曖昧な回答をしてしまうことも、「なにか隠し事をしているのではないか」と考えられてしまいます。

そこで退職理由を述べる一番いい方法は、志望動機につながる前向きな理由を明確に伝えることです。

退職理由を聞かれたとき、決して弱気になったり、目を泳がせたりすることなく、終始一貫した回答を続けるといいです。退職理由を聞かれたときの回答例は次の通りです。

呼吸器外科病棟から神経筋疾患病棟の異動に伴い、興味のあった美容業界へ転職する良い機会と考え、退職を決心いたしました。なお前々職で形成外科に関わっていたことから、以前より美容系のクリニックの転職を視野に入れておりました。

もちろん呼吸器外科での3年間は貴重な経験でした。

ただ、手術を行うことで患者様の気持ちが明るくなっていく形成外科での看護に私はやりがいや興味を感じることが多かったです。そこで、形成外科をさらに応用させた技術を必要とする美容外科クリニックでの看護に就いてみたいと考えるようになりました。

技術のあることで有名な御院の美容外科クリニックにて、さまざまな悩みを抱えた患者様の笑顔を引き出すお手伝いをさせていただきたいという思いを抱くようになり、応募に至った次第です。

このように、「もともと転職を考えていたが、きっかけがあったので転職することを決断した」という自然な流れであると、退職理由に対して採用側に納得してもらうことができます。退職の経緯や転職理由・志望動機について、すべて関連付けられた回答を事前に考えておきましょう。

長所や短所は自己分析し、自己PRや自己紹介をする

なお中には、「自己PRや自己紹介、長所・短所を述べてほしい」といった質問をされることがあります。この質問で採用側は「仕事への適性」と「職場環境への適性」の2つを確認しています。

また採用側は、あなた自身の性格を説明してもらうことによって、「しっかりと自己分析を行えているか」「マイナス思考を抱えていないか」「向上心をもっているか」についてもチェックしていると考えておくと良いでしょう。

他の質問と同様に、長所についてはエピソードを交えて具体的に答えるようにしましょう。また短所を述べるときには、マイナスイメージを強調しすぎないように注意します。

このとき長所を述べたあとで短所を述べると、印象が悪くなってしまいがちです。そのため、短所を述べた後は必ず前向きな表現で締めくくるようにしましょう。以下に自己PRや自己紹介に対する回答例を示します。

私は看護師の仕事に妥協をしたくありません。この姿勢が長所であると同時に短所であると思っています。

看護はミスの許される仕事ではないと考え、万が一の事態まで想定して確認を徹底しています。そのため同じ仕事を繰り返したときに、「他の看護師よりも時間がかかる」と指摘されることがあります。これが、私の短所です。

しかし、この確認を行うおかげで患者様の重大な疾患の早期発見に一役買うことができていました。また患者様のいつもと違う表情からも具合が悪いかどうかを読み取り、率先して声掛けなどをし、安全に過ごしていただけるよう心がけています。

長所・短所は表と裏の関係にあります。看護業務を行う上で、あなたが抱えている短所はプラスになる素質をもっていることがほとんどです。そのことを活かして具体的に述べるようにしましょう。

逆質問は意欲をアピールできるチャンス

面接の最後に「質問があれば教えてください」などのように、逆質問を受けることがよくあります。質問の有無を聞いているにもかかわらず、「質問がない」となると入職したときのイメージをもっていないと捉えられ、意欲の足りなさや真剣さに欠けると判断されてしまいます。

逆質問は、入職する意欲を伝える最後のチャンスです。

もちろん「給与や残業など、面接ではあまり触れられなかった内容について尋ねてみたい」と思うかもしれません。ただ面接の逆質問では、入職後の仕事内容について尋ねるほうが得策です。

最後に給与や残業の質問をすると、「この人は職務内容より、待遇や労働条件を入職の判断基準にしている」と採用側に思われ、好印象をもたれることはありません。年収や勤務条件に関する質問はあなたの印象を下げることになります。

これらの疑問点は、転職サイトのコンサルタントから採用側に対して間接的に尋ねてもらいましょう。それよりも入職したあとをイメージしてみて、不安な点や疑問に思う点について質問してみるといいでしょう。

逆質問に関する回答例を以下に示します。

ご縁があって御院に入職することが決まった場合、入職日までに身に付けておきたい知識などがございましたら教えていただけたらと思います。

または、ただ質問をするだけでなく、自分なりに考えた答えを述べてみるのも好印象を与えられます。次にその回答例を挙げてみます。

御院は高い顧客満足度をキープされています。その秘訣についてお教えいただけませんでしょうか。

御院では医師の施術はもちろん、お客さん対応についても丁寧で安心できる説明をしていると感じていますが、具体的な内容として何を実践しているのでしょうか。

なお、質問がなければお礼を丁寧に述べるようにしましょう。安易に雇用条件に記載されている業務内容などの初歩的な質問をして、「情報収集能力が欠如している」と思われるくらいなら、簡単なお礼を言うほうが良い印象を与えます。

こちらも回答例を示します。

ご丁寧な説明をいただきましたので、御院の業務内容もよく理解することができました。このような場を設けていただき、改めて御院で働きたいと思いました。本日はどうもありがとうございました。

お礼を述べる場合は、採用側の説明によってすべての疑問を解決することができた(あらかじめ考えてきた質問の答えが明確になった)ときに使えます。しかし、できれば質問を2~3個考えておくほうがいいでしょう。

美容外科・美容皮膚科の面接を乗り切る

一般的な医療機関で面接を受ける場合、落ちるケースは少ないです。ただ美容クリニックだと、面接で落ちた看護師は非常に多くなります。美容外科・美容皮膚科というだけで転職の難易度が非常に高くなるのです。

そこで、事前に美容クリニックの面接で聞かれる項目が何になるのかを把握し、面接対策を練っておくようにしましょう。

面接対策なしに面接を受けたとしても、うまく答えることはできません。その結果、面接後に落ちてしまいます。そうした事態を防ぐため、志望動機や自己PRの内容、さらにはその他の質問内容を含めて何を回答するべきなのか把握するのです。

このようにして美容外科・美容皮膚科の面接を乗り切るようにしましょう。面接で落ちた看護師はそれなりに多いため、面接落ちをなくすように事前の対策を考えておくといいです。


看護師が求人を探すとき、多くの人が転職サイト(転職エージェント)を活用します。特に美容クリニックは求人自体が特殊であり、自分だけの力で探すのは現実的ではありません。

個々の美容外科・美容皮膚科によって「ノルマの有無」「取り扱う施術」「年齢制限」など基準はバラバラです。また、大手と個人クリニックでも特徴が異なります。そこで、美容クリニックの求人を広く取り扱う転職サイトを利用しましょう。

ただ通常、看護師の転職エージェントは「一般的な医療機関の求人」がメインです。そこで、どの転職サイトを利用すれば美容外科への転職が可能になるのか理解しなければいけません。さらには、転職サイトごとに「対応エリア(応募地域)」「非常勤(パート)まで対応しているか」などの違いもあります。

これらを理解したうえで専門の転職エージェントを活用しましょう。以下のページにて転職サイトの特徴を解説しているため、転職サイトごとの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。