一般的な医療機関の職場とは大きく異なる労働環境になるのが美容外科・美容皮膚科で働く看護師です。こうした美容クリニックで働くことについて、怖いと感じる人はそれなりに多いです。
例えば美容クリニックの場合、病院とは違ってノルマありのケースがあります。そのため、美容クリニックで働くことに苦労し、後悔することがあるのです。また美容に興味の薄い看護師では、辛い環境で過ごすようになります。
そうしたとき、美容外科・美容皮膚科への転職後で苦労する理由は「美容クリニックでの働き方を前もって理解していなかったから」といえます。美容クリニックならではの注意点があるため、これらを事前に把握しておかなければいけません。
ここでは美容外科・美容皮膚科の離職率や転職後の後悔を防ぐ方法について、前もって理解しておくべき求人の見方を含めて解説していきます。
もくじ
離職率が20%ほどで辞めやすい美容外科・美容皮膚科
看護師の職場は離職率が高い傾向にあります。これは美容クリニックも同様であり、美容外科・美容皮膚科の離職率は低いというわけではありません。むしろ、美容クリニックの看護師は辞めやすい傾向にあります。
このときの離職率は一般的に20%ほどといわれています。この数字だけを見れば、非常に離職率が高いように思います。実際に離職率が非常に高いのは事実ですが、看護師全体での離職率から考えるとこの数字は一般的です。
以下は日本看護協会がまとめた看護師の離職率の結果です。
このように、中途採用募集で入社した看護師については、離職率が約18%であることが分かります。看護師というのは、病院勤務でも美容クリニックでも辞めやすい傾向にあるのです。
看護師というのは、結婚したり年齢が高くなったりするほど「19:00までには家に帰って子供の面倒を見たい」「土日休みがいい」など勤務条件に制限が出るようになります。その結果、若い看護師よりも年齢の高い中途採用で離職率が高くなりますが、これは美容外科・美容皮膚科でも変わりません。
美容への興味が苦労する一番の理由
そうしたとき、美容クリニックへの転職で苦労した結果、転職を後悔する具体的な理由としては何があるのでしょうか。これについては、職場環境と合っていないことが一番の原因として挙げられます。
美容外科・美容皮膚科では当然ながら、美容に興味のあるお客さんが来院します。エステや脱毛は当然として、その他の美容にも興味があり、自分のコンプレックスを取り除くために美容クリニックでの施術を希望します。
そうしたとき、美容に興味がなくエステすらも通ったことがない看護師はどうでしょうか。お客さんの要望を聞いたとしても、的外れな回答しかすることができず、お客さんからの共感を得ることはできません。
美容クリニックは給料が非常に高く、それでいて夜勤なし・残業なしを実現できます。そのため、優れた雇用条件に惹かれて転職を決意する人はそれなりに多いです。しかし美容への興味がない場合、転職後に苦労するようになり、結果として後悔します。
働く職場というのは、どれだけ興味をもって勤務できるかどうかが重要だといえます。美容への興味が薄い人だと、美容外科・美容皮膚科で働くのは辛いといえます。
美容クリニックは看護内容が特殊であり、一般的な病院やクリニックで通用する看護技術が身につかないことは全員が知っています。ただ、こうした看護師としてのスキルが身に付きにくい環境ではなく、そもそもあなたの性格が美容医療に向いているかどうかが重要といえます。
辛いと感じ、後悔するのは労働環境を理解していないから
ただ美容についてはそれなりに興味関心があるものの、それでも美容外科・美容皮膚科の看護師として働くことを辛いと感じ、後悔する人もいます。これは、美容クリニックの労働環境を理解していないために起こります。
夜勤なし・残業なしというと、非常に優れているように思えてしまいます。ただ美容クリニックは身体が健康な一般顧客が相手のため、営業時間や勤務方法を含めて働き方がまったく異なります。
もちろん「24時間365日の営業であり、無給での勉強会出席」などが存在する病院勤務と比べれば、圧倒的に勤務時の環境が優れるのは変わりません。ただ、それでも美容外科・美容皮膚科ならではの注意点があることは理解しましょう。そこから、あなたにとって働きやすい職場も見えてきます。
この中でも、「美容クリニックで働くのが怖い」「美容外科勤務が辛い」と考える要因としては、以下のポイントを深く考えずに中途採用募集に応募することがあげられます。
- 夜遅くまでの営業時間
- 土日出勤
- 営業ノルマ
それぞれの内容について、より深く解説していきます。
夜遅くまでの営業を辛いと考える
病棟勤務でも勉強会・研修会などを考えると夜遅くまでの勤務になります。ただ美容クリニックの場合、最初から営業時間が夜遅くまでになっているケースがよくあります。「夜の19:00や20:00までの営業時間になるのは普通」と考えるようにしましょう。
これは、昼に働いているOLがメインターゲットの顧客になるからです。時間を持て余している高齢者がメイン顧客ではなく、働いている人を対象にするため、結果として夜遅くまでの営業時間に設定しないとお客さんを取ることができないのです。
そのため美容外科・美容皮膚科の場合、朝は遅くに開院し、夜遅くまで営業しているケースがよくあります。例えば、以下は大阪にある美容クリニックの中途採用募集です。
残業なしではあるものの、10:00~19:00の勤務です。そのため、帰宅時間はどうしても後ろ倒しになってしまう実状を理解しましょう。
特に子供の迎えなどで帰宅時間に制限がある場合、終業時間の遅い美容クリニックで勤務すると、辛いと考えるようになります。看護師によって働きやすい環境は異なりますが、こうした勤務形態になるのが美容外科・美容皮膚科だといえます。
一方で朝に弱い人の場合、むしろ美容クリニックは非常に働きやすい職場だといえます。これについては、やはり求人先に何を求めるのかによって違ってきます。
もちろん数は少ないものの、18:00に閉めるなど一般的な営業時間に設定している美容クリニックも存在します。職場によって勤務条件は異なるため、これについては求人先の雇用条件を事前に確認するようにしましょう。
日曜休みを考える人にはきつい環境
他にも美容外科・美容皮膚科に特徴的なことがあります。それは、土日祝日営業である点です。病院のように24時間営業ではないものの、365日営業という現状は変わらないというわけです。
一般顧客を相手にする以上、土日や祝日に営業しているのは普通です。スーパーやレストランで土日に閉店しているのが基本的にあり得ないのと同じように、サービス業である美容クリニックも土日祝日に開院しているのです。
そのため日曜日や祝日に休みを取りたいと考えている看護師の場合、美容クリニックへの転職は不向きです。サービス業でそうした中途採用はほぼ存在しないからです。
もちろん、数は少ないものの日曜日休みとなる求人は存在します。美容クリニックで土曜日休みの求人はないものの、日祝日休みなら求人を選べば中にはあるのです。例えば、神奈川にある以下の求人がこれに該当します。
このように、木曜と日曜、さらには祝日が固定休日です。ただ、実際のところこうした求人は非常に少ないのが現状であり、美容クリニックで勤務するとなると、土日祝日に関係なく勤務するのが一般的だと理解しましょう。
・パート勤務という方法もある
ちなみに、夜遅くの勤務や土日祝日の勤務が嫌な場合、パート勤務という方法を選択しても問題ありません。子育て中のママ看護師に限らず、独身女性であっても非常勤での勤務を希望しても大丈夫です。
パートの場合、常勤とは違ってフルタイムで時間いっぱい働く必要はありません。勤務する日や時間を自由に選べます。それでいて、時給換算での給料は一般的なクリニックよりも圧倒的に高いです。
そのため労働時間や曜日が原因で労働がきついと思うのであれば、非常勤で働くことを視野に入れても問題ありません。
ノルマの有無で働きやすさが異なる
他には、美容クリニックだとノルマが発生するようになります。病院勤務では絶対に存在しないノルマがあるため、看護師はこれらを達成していかなければいけません。
もちろん、必ずしもノルマの存在が悪いわけではありません。インセンティブという形で給料に反映されるため、より高年収を目指したい看護師はノルマありの職場が優れています。ただ美容看護師への転職が怖いと感じる人では、ノルマの存在がその理由として非常に大きいといえます。
こうしたノルマについては、最適な商品・サービスをお客さんに紹介するのが基本です。訪問営業ではなく、既に美容に興味をもっているお客さんが来院するため、そういう意味では圧倒的に行いやすいといえます。
例えば、施術後に「この商品は傷の修復をより改善するため、多くの人が利用していますが、アフターケアにどうですか?」と聞くだけでいいです。そうすれば、高確率で購入してくれます。強引に商品を売りつける営業ではなく、最適な商品を無理なく勧めるのがキモだといえます。
ただ、それでもノルマありの美容クリニックを怖いと感じる人も多いでしょう。また、実際に働き始めた後にノルマありの現状をきついと考える人がいるのも事実です。その場合、ノルマなしの美容外科・美容皮膚科を考えても問題ありません。
例えば、東京にある以下の美容クリニックが該当します。
こうしたノルマなしでの職場であれば、辛いと感じることは少なくなります。またノルマありの求人と同じくらい、ノルマなしの中途採用も存在しません。
もちろんノルマなしではインセンティブがないため、給料に反映されないことは理解しましょう。実際、ノルマありの職場に比べると全体の年収は低くなるのは当然です。ただ、できるだけストレスがなく働きやすい職場を目指す場合、ノルマなしの求人を考えても問題ありません。
理不尽なクレームは病院・クリニックより少ない
なお、看護師として働く場合は職場の労働環境だけでなく、お客さんとの関係についても理解しなければいけません。これについては、クレームは病院やクリニックよりも少ないといえます。
病院の場合、重い病気を抱える患者さんも多く運ばれてきます。生死に関わるケースがよくあるため、急に容態が悪化して死亡してしまう場合もよくあります。そうしたとき、医療機関側に少しでもミスがあると責められる結果になります。
またクリニックについては、時間を持て余した高齢者が予約なしに毎日大勢押し寄せるようになります。そのため待ち時間が多くなり、理不尽なクレームを受ける状況になりやすいです。
そのため、美容外科・美容皮膚科でクレームがあるとはいっても、病院やクリニックに比べると軽いといえます。
施術後、お客さんが思い描く結果を得られなかったとしても、病院のように患者さんが死亡したり意識不明になったりするわけではありません。クレームがあるにしても、生死に関わる重いクレームではありません。
また健康な人が相手のため、施術のデメリットを説明しておいたり望んでいる施術を事前にヒアリングしたりしておけばクレームを回避できます。クレームについては医療機関に比べると軽く、後はどれだけ美容医療に興味をもち、お客さんに最適な提案を行えるかどうかだといえます。
美容外科と美容皮膚科の違いを理解する
なお、美容クリニックの求人募集を考えているのであれば、美容外科と美容皮膚科のどちらに就職したいのか理解しておくといいです。同じ美容クリニックではあっても、これらの科の間では仕事内容は大きく異なるからです。
美容外科の場合、オペ中心になります。多くは医師が施術することになり、看護師はそのための介助を行います。また脂肪吸引や顔面整形など劇的な変化が多いため、お客さんの感動は大きく、女性のコンプレックスを一緒に取り除きたい場合に向いています。
一方の美容皮膚科では、レーザー照射などがメインになります。そのため医師ではなく、看護師がメインとなってレーザー照射を実施していきます。このときは脱毛を含め、何ヵ月にも渡ってお客さんと長期的な関係性を築いていくようになります。
また仕事の忙しさでいえば、美容外科よりも美容皮膚科のほうが楽です。オペ介助となると、準備やその後の滅菌処理を含めて行うことが非常に多くなります。つまり美容外科のほうが仕事に対する負荷が大きいのです。
美容医療に関わったことのない看護師だと、美容外科と美容皮膚科の違いはよく分かりません。ただ働きやすい職場への転職を考えているのであれば、こうした違いを理解したうえで求人を選ぶ必要があります。
美容クリニックを理解すれば、転職で怖いことはない
通常の医療を提供する病院に比べて、相手にするお客さんの属性も施術内容も大きく異なるのが美容クリニックです。そのため、転職前に怖いと感じるのは当然だといえます。
ただ転職後に後悔し、辞めたいと考える人は夜勤なし・残業なしなどの条件面ばかり着目し、その他の美容クリニックならではの特徴を理解していなかったからだといえます。その結果、働くのがきついと考えて苦労するのです。
そこで美容への興味関心があるのは当然として「営業時間帯が遅い」「土日祝日の営業」「ノルマの存在」について理解するようにしましょう。これら美容クリニックならではの特徴を理解するからこそ、前もって優れた求人を見つけられるようになります。
例えばノルマありが怖いと感じる場合、ノルマなしの求人だけを探しても問題ありません。こうして美容外科・美容皮膚科へ転職するときの条件を絞っていけば、転職後に辛くて辞めたいと思うリスクは少なくなります。
看護師が求人を探すとき、多くの人が転職サイト(転職エージェント)を活用します。特に美容クリニックは求人自体が特殊であり、自分だけの力で探すのは現実的ではありません。
個々の美容外科・美容皮膚科によって「ノルマの有無」「取り扱う施術」「年齢制限」など基準はバラバラです。また、大手と個人クリニックでも特徴が異なります。そこで、美容クリニックの求人を広く取り扱う転職サイトを利用しましょう。
ただ通常、看護師の転職エージェントは「一般的な医療機関の求人」がメインです。そこで、どの転職サイトを利用すれば美容外科への転職が可能になるのか理解しなければいけません。さらには、転職サイトごとに「対応エリア(応募地域)」「非常勤(パート)まで対応しているか」などの違いもあります。
これらを理解したうえで専門の転職エージェントを活用しましょう。以下のページにて転職サイトの特徴を解説しているため、転職サイトごとの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。