乳房再建や顔のキズを目立たなくするなど、患者さんに心から喜ばれる仕事として、形成外科への転職を考える看護師は多いです。

形成外科は「身体の表面の欠損」「変形した形態」を再建させる治療を行う領域です。外科や救命救急、ICUなどと比べると、患者さんの死に向きあう機会は少なく、仕事でのストレスは少なくて済みます。

その一方で、満足いく結果を得られた患者さんからは感謝される場合が多く、形成外科看護は大変やりがいを感じられる領域だといえます。美容外科とは少し仕事内容が異なりますが、美容クリニックとは違った環境で活躍できるのです。

そこで形成外科に興味のある方に向けて、形成外科看護師の仕事内容や給料、満足いく求人の見つけ方について解説していきます。

形成外科看護師の仕事内容はどうなっている?

形成外科では、身体の表面にあるさまざまな部位の異常や欠損・変形を治療の対象としています。呼吸器や脳神経、消化器など特定の臓器にできた疾患が治療の対象ではありません。まず、形成外科は一体どのような科であるのか確認していきます。

形成外科では身体の表面の欠損や変形の治療を行うため、「身体の表面の外科」ともいわれています。さらに、形成外科には大きく分けて以下の2つの専門領域があります。

  • 再建外科
  • 美容外科

再建外科は組織の異常、変形や欠損などの疾患を対象として再建を行う治療になります。再建外科は、先天性、もしくは事故の外傷やガン手術などで欠損・変形した体の一部分を正常に近い状態に再建させ、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を高めます。ただ再建外科は一般的に、狭義での形成外科と捉えられている場合が多いです。

このとき美容外科だと「疾患とはいえないけれど、患者さんが気にする細微な形態を外科の手を加えて修復し、美しく整える治療」になります。美容外科は形成外科の領域の一つとされており、この治療を受けることで患者さん自身の満足度を向上させることができます。

このとき、形成外科医の治療・技術サポートを行うのが看護師の仕事内容となります。具体的な内容は、以下の通りです。

  • バイタルチェック
  • 術前術後の説明
  • 外来の補助
  • 採血・点滴

これらの仕事内容は他の病棟とあまり違いありません。ただ形成外科の場合、術後の経過観察や外来の補助業務などが主な仕事であるため、採血や点滴の機会は少ないのが特徴です。

しかし、形成外科では少し特殊な技術を用いることになります。そのため、形成外科へ転職を考えている場合は事前に仕事内容を理解しなければいけません。

傷跡を最小限にするのが形成外科

形成外科の領域では交通事故などで傷ができてしまった患者さんに対して、外科医とともに手術を行います。外科医が大きな傷の治療を行い、形成外科医が傷表面の修復を行います。

ただ、事故で生じた傷の修復だけが形成外科医の仕事ではありません。形成外科医はガン専門医と一緒にガン治療のオペに参加し、ガン患者さんの腫瘍切除部分に、身体の別の一部の皮膚を移植して傷口を修復する施術も行います。

形成外科医の働きによって「がん切除の欠損部分」をできるだけ最小限に留め、もとの皮膚状態に近づけることができるのです。

このように形成外科では、外科のように傷や疾患を治すという目的だけではなく、治療後の生活まで視野に入れ、本来の状態に修復する治療を行うという役割を担っています。

例えば、私がかつて手の手術を受けたときですが、形成外科は不在で手の専門医だけの執刀でした。手術を受けた箇所の機能は改善したのですが、手首に以下のような傷あとが残りました。

外科で一般的な縫い合わせの手術をすると、多くの場合で抜糸後に線路のような傷あとが残ります。これが顔にできた場合、傷跡が気になる人が多いです。この場合、後日レーザー照射などを行えば傷跡を薄くできるのですが、大変な手間と労力がかかり、完全な修復は見込めません。

一方で形成外科では「中縫い」という縫合法を活用し、最初の手術の段階から傷あとが残らないような縫合方法を選択するケースが多いです。形成外科では外科のように上の層の表皮を糸で縫い合わせるのではなく、下の層から筋肉・皮下組織・真皮の組織をそれぞれ縫い合わせていきます。

例えば、以下では「顔にできた傷あとを目立たなくする施術」が行われていることが分かります。

引用:にじが丘皮ふ科形成外科

下層の真皮をしっかり縫い合わせているため、表皮は糸で縫わずテープを貼るだけにします。もし傷口が広くて糸で縫った方がいいと判断した場合でも細い糸を使い、5ミリ間隔で縫い合わせ、3~5日といった短期間で抜糸します。

このように形成外科の技術を駆使すれば、治癒したときに傷がほとんど目立たなくなります。

これをサポートするため、看護師は術前・術後の傷の治り具合を観察したり、異常があれば担当医師にすぐに報告したりします。その他にも、患者さんにリハビリを促し機能の改善維持を図ったり、地域連携室と退院後の連携を図ったりする仕事もあります。

また入退院の短期化により、多くの患者さんは2~3日で退院していきます。そのため、入院の受け入れ業務が多いのも形成外科病棟で働く看護師の特徴です。例えば、以下は県立広島病院形成外科病棟の看護部のモットーになります。

引用:県立広島病院 南6病棟

このように形成外科に勤める看護師は、患者さんの術後の経過を細かく観察し、異常の早期発見が重要な仕事となります。

形成外科クリニックでオペ看護は必須!美容外科も関わる

なお個人経営の形成外科クリニックの看護師であれば、さらにオペ室業務が加わります。例えば、以下は奈良にある形成外科クリニックの仕事内容です。

手術介助が加わることで、オペの器械出し、オペ介助(医師に順番通りに器具を渡すなど)、オペの器械洗浄・殺菌など多くの業務が増えることになります。

私は眼科クリニックで手術介助につく業務があり、オペで使う器具名や器械を出す順番、器械の洗浄方法など覚えることがたくさんありました。毎日、寝る前に器具の写真をみて名前をすぐにいえる練習をしていました。

また個人クリニックであると、形成外科という看板は掲げていても美容整形・美容皮膚科などの美容関連の施術も実施しているクリニックがほとんどです。以下は東京にある形成外科クリニックの看護師求人で、保険診療と自費診療の両方を手掛けています。

この場合、レーザー脱毛照射やシミ・しわ取りなど仕事は多岐に及ぶケースがあります。病院での形成外科病棟よりも形成外科クリニックのほうが業務内容は増えて覚えることが多く、最初は大変になります。

ただ、将来的に美容外科や美容皮膚科といった美容クリニックへの転職を考えている方などであれば、形成外科での経験を活かすことができるためおすすめです。

形成外科のすべての治療が保険適用ではない

ちなみに、総合病院や大学病院の形成外科は「美容」という言葉が付いていないので、健康保険の適用内の範囲でのみ治療を行うイメージがあるかもしれません。しかし、形成外科が取り扱うすべての施術や治療が健康保険の適用というわけではありません。

例えば、「先天性の病気による変形・欠損の再建治療」「がん切除後の乳房再建術」などは保険適用となります。一方、フェイスリフトや脂肪吸引、シワ・タルミとり術、豊胸術、脱毛術など、美容外科の要素を含む手術は自費診療になります。

同じレーザー治療でも太田母斑、異所性蒙古斑、扁平母斑などは保険適用ですが、加齢性色素沈着(一般的な加齢によるシミ)や入れ墨などは自費診療となります。喧嘩や交通事故など第三者の行為によって起こったケガも健康保険の適用外です。

このように総合病院や大学病院の形成外科では、保険適用外の施術も実施しています。

大学病院・総合病院では、形成外科は混合病棟が多い

またクリニックなら関係ないですが、総合病院で形成外科を希望する場合、注意してもらいたい点があります。それは多くの場合で、形成外科がその科だけの病棟というわけではなく、混合病棟となっている点です。そのため配属によっては、整形外科や口腔外科など他の科の勉強も必要となります。

例えば、以下は大阪にある急性期病院の看護師求人の一部です。

こちらの病棟では、整形外科や代謝内分泌内科、皮膚科と混合病棟になっています。つまり、形成外科だけに関与するわけではありません。総合病院へ転職を希望する場合、形成外科とは一見関係のなさそうな内科の看護も勉強しなければなりません。

ちなみに総合病院では募集時に希望の科を一応聞かれるケースが多いですが、形成外科看護師の人数が足りていれば、他の科に回される場合が多々あります。

特に診療科が多い病院の場合、形成外科への配属にならない可能性が高くなるため、事前に転職コンサルタント(転職エージェント)に希望を伝えて、採用担当者への念押しをお願いしておくことが大切です。

形成外科看護師の年収・給料

それでは、形成外科の看護師ではどのような収入になるのでしょうか。まず総合病院などの形成外科であると、他の領域の看護師と給料は変わりません。年収にすると、看護師平均給与の480万円前後(夜勤あり)とされています。

一方で形成外科クリニックの看護師の給料では、月に25万円前後となります。これは、一般のクリニックの給料と比べると高い傾向にあるといえます。その理由は、多くの形成外科クリニックが美容外科も並行して実施しているためです。

美容外科が診療内容に加わると自由診療になるため、クリニックの収入は増えます。その結果、そこで働く看護師に給与として還元できるのです。例えば、以下は東京にある形成外科クリニックの看護師求人になります。

こちらの求人であると毎週水曜と木曜が休みであり、年間休日数が175日もあるにも関わらず、月収が26万円以上となっています。このように多くの形成外科クリニックの看護師求人は、看護師の給与を高く設定できたり、高待遇であったりするケースが多いです。

ただ、美容外科クリニックの看護師給与と比較すると、形成外科クリニックの看護師の収入は下がります。美容外科クリニックの中にはインセンティブやノルマ達成手当などで月収30万円や40万円を越えるところもあるくらいです。例えば、以下のような美容クリニックです。

こちらは福岡にある美容クリニックであり、月収は33万円となっています。

美容クリニックよりも、形成外科クリニックで保険診療メインに携わっていきたい方は、美容外科よりも収入は少ない現実を念頭に置いておくといいです。

ただ、保険診療だけの形成外科クリニックの場合、看護師の給料はそれほど高く設定されていません。例えば、以下は福岡にある形成外科クリニックの看護師の給料です。

月給が22万円のため、整形外科や内科、耳鼻科といった夜勤のない一般のクリニックと大差ありません。形成外科クリニックの看護師の給料は、自由診療を取り入れているかどうかで年収に大きな差が出てしまうのが特徴です。

転職前に「どのような仕事内容なのか」「オペを行うのか」「保険診療・自由診療の両方を行うのか」など事前の情報を入手し、月収にどのように反映されるのか確認しておきましょう。

形成外科看護師の中途採用求人の探し方

このとき形成外科看護師求人の効率の良い探し方ですが、看護師転職サイトを利用するのが一般的です。先述の通り、総合病院の形成外科病棟は他の科との混合病棟である場合が多いです。

また形成外科は他の科と比べると緊急入院などの残業の発生が少なく働きやすいため、診療科の中では人気が高く、人手不足であるケースが少ないです。そのため形成外科を希望したとしても、自分の力だけで転職した場合、形成外科への配属は難しいです。

そこで大学病院や総合病院で形成外科を希望するのであれば、転職サイトを介して以下のような「形成外科・口腔外科などの専門病棟をもつ病院」を紹介してもらうとよいでしょう。あなたの代わりに転職コンサルタントが病院側へ交渉してくれるので、面接前に希望する科への配属状況を教えてもらえます。

また、形成外科クリニックへ転職希望であれば、求人先によって給与や待遇の差が大きいです。求人の診療科目に形成外科だけでなく美容外科などが含まれているか確認し、給与に反映されているか事前に確認してみましょう。当然、仕事内容の範囲を確認しなければいけません。

以下は東京にある形成外科と美容外科の両方を手掛けるクリニック求人になります。

常勤だと月の給料は30万円であり、パート(非常勤)でも時給1,900円と高いです。形成外科だけでなく、美容外科・美容皮膚科が診療科目に含まれることで、仕事に慣れるほど給料に反映されやすくなってやりがいを感じやすくなります。

ただ、このようなクリニックを個人で探す場合、仕事内容や人間関係が分からない場合が多く、転職に失敗する可能性が高くなります。個人クリニックは院長の考え方次第で、看護師の働きやすさが全く異なってくるため、事前に詳しい内情を知っておく必要があります。

このように形成外科は総合病院でもクリニックでも他の診療科とは異なり、特殊な点が多いです。そのため、第三者である転職サイトのコンサルタントに仲介してもらい、転職を成功させるほうが効率的なのです。

なお中には、募集を出していないクリニックに採用の交渉をしてくれたり、あなたを売り込んでくれたりする場合もあります。例えば私が勤める医療機関には転職サイトから、以下のようなFAXが届きます。

このFAXには、転職希望の看護師の年齢や経験年数、就業状況などが記載されています。

私の勤めるクリニックでは、過去に妊娠している看護師が切迫早産で急に入院することとなり、緊急で看護師を充足しなければならなかったことがありました。そのとき、院長はこちらのFAXを持ち出し、転職サイトへすぐに電話をしていました。

タイミング次第では求人を出していなくても、転職サイト経由で病院やクリニックのほうから声が掛かることがあるのです。看護師側でも転職サイトの利用は一般的であり、プロの手によりマッチングしてもらうほうがより満足いく転職を実現できます。

形成外科転職の成功は口コミを含めた情報集めが必須

「形成外科への満足する転職」を実現するためには、口コミを含めた情報収集を行い、転職後に「このようなはずではなかった」という想定外の事態が起こらないように注意しなければいけません。

特に形成外科は勤め先によって、仕事内容や収入などが全く異なる場合が多いです。まず、病院を目指すのかクリニックなのかによって異なってきます。またクリニックでも、美容外科を含めるのかによって仕事内容や年収は大きく変動します。

また形成外科をメインで取り扱っている医療機関はどうしても少なくなりますし、例えば病院の場合「転職したけど形成外科に関われない」ことも頻繁に発生します。

そこで事前にどのような形成外科にて勤務し、活躍したいのか考えるようにしましょう。そうしたうえで転職サイトを利用することで、ようやく満足する求人募集を見つけられるようになります。


看護師が求人を探すとき、多くの人が転職サイト(転職エージェント)を活用します。特に美容クリニックは求人自体が特殊であり、自分だけの力で探すのは現実的ではありません。

個々の美容外科・美容皮膚科によって「ノルマの有無」「取り扱う施術」「年齢制限」など基準はバラバラです。また、大手と個人クリニックでも特徴が異なります。そこで、美容クリニックの求人を広く取り扱う転職サイトを利用しましょう。

ただ通常、看護師の転職エージェントは「一般的な医療機関の求人」がメインです。そこで、どの転職サイトを利用すれば美容外科への転職が可能になるのか理解しなければいけません。さらには、転職サイトごとに「対応エリア(応募地域)」「非常勤(パート)まで対応しているか」などの違いもあります。

これらを理解したうえで専門の転職エージェントを活用しましょう。以下のページにて転職サイトの特徴を解説しているため、転職サイトごとの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。