看護師が転職活動をするとき、多くの人は給料に着目しがちです。ただ、提示される年収額と同じくらい重要なポイントが福利厚生です。

福利厚生は第二の給料とも呼ばれています。実際のところ、福利厚生の充実度合いによって手取り年収はまったく異なるようになります。提示される給与額は低くても、福利厚生が優れるため、「実際の手取りは勝っている」などの現状はよくあります。

さらに福利厚生は手取り金額だけでなく、求人先へ転職した後の働きやすさにも大きく影響します。福利厚生まで着目する人は少ないですが、転職時は確認必須のポイントだといえます。

そこでどのように考えて美容外科・美容皮膚科での福利厚生に着目し、転職活動を進めればいいのか解説していきます。

美容外科・美容皮膚科は福利厚生が充実しやすい

看護師が転職するとき医療機関の中でも、病院は福利厚生が充実しやすい傾向にあります。一方でクリニックだと、どうしても福利厚生は手薄になります。

ただクリニックの中でも、美容クリニックは例外的に福利厚生が手厚くなりやすいです。一般クリニックに比べて、美容外科・美容皮膚科は複数店舗を運営しているケースが多くなります。規模が大きくなれば、その分だけ福利厚生は充実しやすいです。

また自費治療のため、通常のクリニックよりもかなり儲かります。その結果、福利厚生として看護師に還元できるというわけです。

このとき、看護師が美容外科・美容皮膚科へ転職するときに考えるべき福利厚生は以下のようになります。

  • 住宅手当・寮(社宅)
  • 美容施術や化粧品の社割
  • 子供がいる場合は託児所・時短勤務の有無
  • 休暇制度

それぞれの注意点について、具体的に確認していきます。

住宅手当・寮付き(社宅)を最初に確認するべき

福利厚生で最も重要といえる項目が住宅手当や寮付き・社宅になります。実家暮らしであったり、持ち家があったりする場合は関係ありません。ただ、実際のところ賃貸に住んでいる人の数のほうが圧倒的に多いため、住居に関する手当てを確認することは非常に重要です。

例えば住宅手当や寮付き・社宅として月4万円分の家賃が負担軽減される場合、これだけで「月4万円 × 12ヵ月 = 年48万円」ものお金が増えることになります。要は、それだけ実質的に年収が増加していると考えて問題ありません。

実際のところ、住宅手当や寮付き・社宅提供は給料と同じです。これが福利厚生で最初に確認するべき項目となる理由です。

例えば、以下の大手美容クリニックでは住宅手当を導入していることが分かります。

東京では月3万円、その他は月2万円の家賃補助になります。会社規定があるのでそれに従う必要があり、さらには正社員で1年終了後からの申請になりますが、それだけ年収が増えるようになります。

または寮付きや借り上げ社宅の制度を整えている美容外科・美容皮膚科でも問題ありません。寮付きや借り上げ社宅だと、非常に低い家賃負担になるので福利厚生の内容としてはこちらのほうが優れています。

寮付きだと求人数は少ないですが、借り上げ社宅なら個人クリニックを含めて福利厚生制度としてよく採用されています。ただ「独身者でなければいけない」などの規定の存在がよくあるため、事前に適用範囲を確認するようにしましょう。

美容施術や化粧品の社割は美容外科・美容皮膚科ならでは

なお美容クリニックならではの福利厚生として、美容施術や化粧品の社割があります。

一般的なクリニックで勤務している看護師であれば、医療受診に関する福利厚生を導入しているケースはよくあります。例えば、「本人が受診する場合は薬代を含めて無料」などです。これが美容クリニックの場合、病気での受診ではなく美容に関する施術に置き換わります。

どうしても高額になるのが美容施術です。ただ美容看護師として転職すれば、美容施術やオリジナル化粧品が大幅値引きとなります。

それでは、福利厚生での社割はどれくらいの割引となるのでしょうか。これについては美容クリニックごとに判断が異なるものの、半額以下になることもあります。例えば、以下は美容クリニックの福利厚生で掲載されている内容です。

このように、美容外科・美容皮膚科としての施術を半額で受けることができます(脱毛は除く)。お客さんが美容施術を受けるときに比べて、圧倒的な低価格となるのです。

このようにしている理由として、福利厚生の目的以外にも「スタッフが実際に施術を受けることで、お客さんと同じ目線に立ってサービスを勧められる」という狙いもあります。そのため美容外科・美容皮膚科では、むしろ積極的に美容施術を受けることを推奨しているケースがよくあります。

もちろん施術に限らず、美容クリニックが取り扱っているオリジナル化粧品なども社割の対象になります。自分が利用している商品について特徴や注意点を理解しており、お客さんに勧めやすいです。そのため、あらゆる取扱商品が社割の対象となります。

・モニターとして無料施術も可能

または、モニターとして無料(またはほぼ無料)にて美容施術を受けることも可能です。このときは施術前、施術後の写真を公式サイトで掲載することにより、モニターとして無料になるのです。

美容クリニックで重要なのは、ビフォアー・アフターの写真です。リアルな情報が掲載されていることで、お客さんは「施術後はこのような変化があるのか」と納得し、美容クリニックを訪れてくれるようになります。

そこであなた自身がモニターとなれば、無料で美容施術を受けられるようになります。社割だけでなく、金銭的な負担なしに施術を受けられることも可能なのです。

子供がいる場合は託児所や時短勤務を確認する

また美容クリニックで勤務する場合、勤務する看護師はほぼ100%女性になります。メンズクリニックだと例外的に男性看護師を積極的に採用するものの、女性向けの美容外科・美容皮膚科だと、看護スタッフは女性のみとなります。

当然、この中には「妊娠・出産をすることになった」「いま子供がいて育児中」の女性もいます。また、いまは独身でも将来は子供を授かりたいと考える女性看護師は非常に多いです。

そうしたときは託児所を備えていたり、時短勤務が可能だったりする美容クリニックへの転職を考えなければいけません。子育て中であれば、子供の問題を解決できなければ転職できません。

これについて、美容クリニックによっては問題なく託児所を備えているケースがあります。個人クリニックだと厳しいですが、いくつかのクリニックを経営している場合、託児所ありの場合があるのです。

例えば、名古屋にある以下の美容クリニックがこれに該当します。

また福利厚生として託児所を備えていなかったとしても、時短勤務できれば問題なく働き続けることが可能です。ただ時短勤務については、「子供が何歳になるまで利用できるのか」「何時までの勤務になるのか」を確認しましょう。

法律では、「子供が3歳になるまで時短勤務を認めなければいけない」と定められています。つまり時短勤務があるのは当然です。しかし、子供が3歳になれば勝手に自立することなどあり得ないため、「子供が小学生になるまで時短勤務可能」などの職場が優れているといえます。

また美容クリニックは会社帰りのOLがターゲットのため、19:00や20:00など遅くまで営業しているのは普通です。そこで時短勤務中や時短勤務終了後を含めて、何時の帰宅になるのか確認するのは必須です。こうした福利厚生を確認しないと、転職後に後悔することになります。

休暇制度は重要な福利厚生の一つ

また同時に福利厚生では休暇制度の内容も把握しましょう。有給休暇は法律で義務付けられているため、これについては当然の福利厚生だといえます。ただ、有給休暇ではなくその他の休暇制度が美容外科・美容皮膚科への転職で重要となります。

このとき休暇制度の中でも、最も導入の難易度が高いものに看護休暇があります。

看護休暇とは、子供の急な発熱などが起こったとしても休める制度です。長期休暇制度や有給休暇とは異なり、事前に休みの日を伝えるわけではなく、子供の急な発熱によって「今日は休ませてほしい」と申し出ることになります。

そのため福利厚生として看護休暇の制度を整えている美容クリニックであれば、休暇制度としての福利厚生は十分だといえます。例えば、以下の美容外科・美容皮膚科の求人は看護休暇を導入していることが分かります。

小学校へ入学する前までは、年5日の看護休暇が与えられます。いま子供がいるかどうかに関わらず、こうした美容クリニックの求人を狙えば、休みを取りやすい職場だと判断できます。

もちろん、有給休暇などの制度があるとはいっても「実際には休めない」という職場は、看護現場だとよくあります。そのため面接時などに求人先を訪れたとき、働いている看護師へ「実際のところ現状はどうなのか」などと質問する必要があります。

こうして休暇制度の実情を把握する必要はあるものの、そもそも福利厚生として休みの制度を導入していなければ利用できないため、求人票で判断する段階ではこうした福利厚生を視野に入れておくといいです。

福利厚生の内容は美容クリニックでバラバラ

ここまで、美容外科・美容皮膚科の中途採用募集で注意するべき主な福利厚生の内容について確認してきました。ただ、実際のところ美容クリニックによって福利厚生はバラバラです。

「産休・育休の制度」「有給休暇」などのように、法律で定められている福利厚生が備わっているのは当然であるものの、その他の福利厚生は美容クリニックが独自に決めるようになります。これが、美容クリニックによって福利厚生の内容がまったく異なる理由です。

例えば、東京にある以下の美容外科・美容皮膚科の中途採用募集を確認してみましょう。

福利厚生として退職金支給は5年以上の勤務です。そのため、ある程度の年数を勤務しなければいけません。

ただ年1回の海外研修旅行があり、施術やコスメ購入の社割があります。また小学校3年生になるまで時短勤務が可能であり、フリードリンク制度として飲み物は無料です。長く時短勤務が可能なため、子育てしたい環境には向いているといえます。

しかし、寮付き・社宅などの制度はありません。そのため賃貸住まいの人の実質収入を考えると、賃貸暮らしの独身者に対する福利厚生としての内容が弱いといえます。育児環境の整っている職場への転職なら問題ないですが、そうでない場合は他の福利厚生が整備されている中途採用募集が最適です。

このように福利厚生に着目すれば、どのような人にとって最適な求人なのか見えてきます。看護師によって求めている転職内容は異なるため、年収や勤務条件だけでなく、福利厚生まで着目するようにしましょう。

美容外科・美容皮膚科の中途採用募集で福利厚生は重要

福利厚生の内容は美容クリニックによってまったく異なります。ただ福利厚生の充実度合いによって手取り年収や働きやすさが違ってきます。また福利厚生が充実していれば、それだけ職員を大切にしていることを読み取れます。

一般的なクリニックは福利厚生が手薄になりがちですが、美容外科・美容皮膚科の場合は福利厚生が病院のように手厚いです。そこで、中身がどうなっているのか確認するようにしましょう。

このとき重視するべき項目は既に決まっており、住宅手当・寮や社割、時短勤務、休暇制度などになります。またあなたの状況によって、重視するべき福利厚生の内容が異なるため、優先順位を決めたうえで中途採用募集を確認するようにしましょう。

こうして美容クリニックの福利厚生を見ていけば、あなたにとって働きやすい福利厚生の制度を整えた求人に出会えるようになります。


看護師が求人を探すとき、多くの人が転職サイト(転職エージェント)を活用します。特に美容クリニックは求人自体が特殊であり、自分だけの力で探すのは現実的ではありません。

個々の美容外科・美容皮膚科によって「ノルマの有無」「取り扱う施術」「年齢制限」など基準はバラバラです。また、大手と個人クリニックでも特徴が異なります。そこで、美容クリニックの求人を広く取り扱う転職サイトを利用しましょう。

ただ通常、看護師の転職エージェントは「一般的な医療機関の求人」がメインです。そこで、どの転職サイトを利用すれば美容外科への転職が可能になるのか理解しなければいけません。さらには、転職サイトごとに「対応エリア(応募地域)」「非常勤(パート)まで対応しているか」などの違いもあります。

これらを理解したうえで専門の転職エージェントを活用しましょう。以下のページにて転職サイトの特徴を解説しているため、転職サイトごとの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。