美容外科・美容皮膚科に勤務する看護師では、日々進歩する施術について勉強を深めていく必要があります。知識の多い看護師は患者さんから信頼され、頼られる存在といえます。
しかし美容クリニックだと学生時代や病棟勤務時代とは違って新しいことを覚えなければならず、戸惑ってしまうケースが多くあります。これは、美容外科・美容皮膚科に足を踏み入れた新人看護師なら誰しも経験することです。
美容クリニックに転職すると「おすすめする施術によってお客さんの悩みを本当に解決できるのか」「先輩看護師からは簡単に行える施術と教えてもらったが、注意点はないのか」など、さまざまな疑問が湧いてきます。これらの悩みは、忙しい実際の現場では他の看護師になかなか聞きづらいのが現状です。
そこで、このような美容外科に入職したての新人看護師やこれから美容外科・美容皮膚科に転職を考えている看護師に向けて、美容に関する勉強方法や施術の長所・短所について解説していきます。
もくじ
美容クリニックの看護師が実践するべき即戦力になる勉強方法
美容外科では、新しい知識を山のように吸収しなければなりません。ただ、学生時代と違って仕事で分からないことがあっても、先輩看護師は忙しくて、何度も同じことを教えてもらえないときがあります。
新卒看護師と異なり中途採用の看護師は、未経験であってもできるだけ早く即戦力となる努力を怠らないことが大切です。そのような場合、美容外科の新人看護師として以下のような勉強方法を実践すると、仕事内容をより早く身につけられます。
- ノートをその日のうちにまとめる
- 器械や器具名は写真を撮って反復して覚える
- 手術手順を動画に撮らせてもらい、器具を渡す順番を把握する
- 施術のメリット・デメリットを知る
- 自院の器械だけでなく、多くの美容器械について知る
それぞれについて述べていきます。
自分ノートをその日のうちにまとめる
こまめにメモを取るのは、中途採用の新人看護師の鉄則です。教えてもらったときは理解できたつもりでいても、いざ自分が実践するとなると手が動かなくなることあります。そのようなときに、こまめに見返すことができるのがメモです。
毎日のルーティンワークであれば、頭ではなく体が覚えていってくれますが、ときどきしか行われない仕事であればメモをとり、見返すことが大切です。そのほうが記憶の定着が早くなります。
またメモに取っておいて分からないことがあれば、その日のうちに自分のノートや参考書に書き足しておくことが大切です。私はメモする内容が多かったので、小さなメモ用紙に自分の分かりやすいようにまとめて、参考書やノートに貼っていきました。
勉強すればするほど、参考書やノートが分厚くなっていくのが視覚的に分かるので、どれだけ自分が勉強してきたかが一目で分かります。
この参考書はもともとの厚さから2倍以上に膨れ上がりました。
参考書を持ち歩くのは重いですが、自分がつまずいた箇所をすぐに見返すことができるだけでなく、「大人になって、ここまで勉強する自分はすごい」と勉強を続けるモチベーションを保つのに役立ちました。
器械や器具名は写真を撮って反復して覚える
また美容外科ではさまざまな種類の施術を取り扱うため、看護師はたくさんの器械や器具名を覚えなければなりません。しかし、なかなか一度では覚えきれないため、器具の絵を描いて覚えるのも一つの方法です。
しかし、これでは効率的ではありません。そこで手っ取り早い方法として、スマホで器具を一つひとつ写真撮影して、空き時間にスクロールしながら覚えていきましょう。
例えば私の場合、以前に眼科クリニックで「入社後、1週間経つとオペの介助に就かなければならない」といわれ、寝る前にスマホを確認しながら器具を口に出して覚えました。白内障の介助だけでも覚える器具名は30くらいあり、手術介助も未経験であったため必死で覚えました。
この方法により、30くらいの器具であれば短期間で簡単に記憶することが可能です。
新人看護師でも、オペの介助に遅かれ早かれ入らなければならない場面が訪れます。そのときに医師から器具名をいわれたら、未経験の新人であっても、さっと取り出せるように準備しておくことが大切です。
手術手順を動画に撮らせてもらい、器具を渡す順番を把握する
手術には大体の手順があります。二重まぶた手術など頻繁に行う手術であれば、手順を覚えて医師へ器具を渡すことができるように準備しておく必要があります。
そのためには、オペ介助をしている先輩看護師の動画撮影をさせてもらうといいです。「どのように手術介助すればいいのか」を動画で確認するのです。
この方法で手術手順を頭に入れておくと、次にどの器具を渡せばいいのか分かるだけでなく、自分が介助するときのイメージトレーニングを実践できます。手術介助の手順を把握しておけば、実際に自分が介助を行うときにスムーズに行動できます。
なお、医師が「この器具が必要だ」と思ったとき、医師から指示されなくても器具を取り出せるくらいの力が付けば、一人前のオペ看護師としてみなされます。
未経験とはいっても、中途採用の看護師にはある程度の看護能力が既に備わっているはずなので即戦力が求められます。周囲が期待する以上の力を身につけ、早めに一人前になれるように努力しなければいけません。
施術のメリット・デメリットを知るべき
そうしたときどのような施術にも、必ずメリット・デメリットがあります。施術のサポートを行う看護師がメリットしか知らないようでは勉強不足です。メリット・デメリットの両方を把握しておき、どちらの面も説明できるように心がけておかなければいけません。
多くのお客さんは、ネットなどで自分が受ける施術を調べて知識を入れています。その中で、「調べても分からず、理解できなくて不安になった疑問点」を看護師に尋ねます。「今から受ける施術に間違いはない」と納得した上で受けたいのです。
中には勉強不足であるにも関わらず、浅い知識で適当な受け答えをする看護師がいます。そのような看護師は知識の無さをお客さんに見破られて信頼を失うだけでなく、クリニック自体の評判を下げることにつながります。
そのためメリットだけでなく、デメリットについてもしっかり理解し、「この施術をお客さんにおすすめできる理由」を明確に述べられるようにしておきましょう。
例えば美容外科で良く行われる「ヒアルロン酸注射」を挙げ、メリット・デメリットをどの程度、把握しておけばいいか述べていきます。
【例:ヒアルロン酸注射のメリット・デメリット】 気になる部分に不足したヒアルロン酸を注入し、肌の張りを保つのがヒアルロン酸注射です。以下は鼻とあごにヒアルロン注射を注入した事例です。 引用:城本クリニック ヒアルロン酸注射はほうれい線を目立たなくするだけでなく、あごをシャープにさせたり、唇をふっくらさせたりするときにも使われます。ヒアルロン酸はもともと関節や皮膚など人体に広く存在している物質のためで、副作用が少なく安全性が高いのがメリットです。 また、万が一施術が失敗したとしてもヒアルロン酸を分解する酵素があるので、その酵素を施術部位に注入することで、数日で元に戻すことが可能です。 これらのことからヒアルロン酸は安全であり、失敗しても対処方法があるため安心といえます。 一方で間違えて動脈に注射してしまうと、ヒアルロン酸が血管に注入され、血管壁を圧迫してしまい、その部分の皮膚が壊死してしまうことになります。これを治療するには、自分の皮膚を移植するしか方法はありません。 また注入量が少ないと効果は見られず、反対に多すぎるとシワの部分が凹凸になってしまい不自然な見え方になってしまいます。 |
施術を受けるお客さんのなかには、過去に他院の美容外科で起こしたミスなどまで調べていて、不安になる方がいます。
そのような方に安心してもらうためには、過去のbefore afterの写真などを提示して、皮膚が壊死していないことやシワの部分が凹凸になっていないことを示しましょう。
「ヒアルロン酸注射は高度な技術を必要とするが、注射担当の医師は失敗したことがない」などの事実を告げ、お客さんに安心してもらうよう心がけるのです。顧客の不安に対して的確に答えられる看護師ほど、お客さんにとっては心強いのです。
自院の器械だけでなく、多くの美容器械について知る
またさらに一歩進んで、自院で扱っている器械だけでなく、他院で使っている美容器械などについても知っておくと、お客さんは満足した施術を受けることができます。
例えば私は以前、美容皮膚科クリニックでしみのレーザー除去を施術してもらったことがあります。その際、看護師に「レーザーの中でもヤグレーザーとルビーレーザーのうち、どちらが効果的か」について質問したことがありました。
その美容皮膚科クリニックにはルビーレーザーしか置いていなかったのですが、そこに勤める看護師はヤグレーザーとルビーレーザーの長所・短所をわかりやすく教えてくれました。
おかげで私は納得してルビーレーザー治療を受けられただけでなく、「このクリニックを選んだ自分の選択は正しかった」と施術に満足して帰ることができました。
ちなみにレーザー脱毛なども、各美容外科クリニックによって扱う器械が異なります。「あなたのむだ毛除去には、なぜここに置いてあるマシンが最適なのか」の理由を説明できれば、お客さんは費用以上の価値に納得でき、施術を満足して受けることができます。
他の美容外科クリニックで扱っている器械にも興味をもち、幅広い知識を獲得していきましょう。日々の小さな努力を積み重ねることで、一流の美容外科看護師へステップアップしていくことができるのです。
キャリアアップ制度や研修制度のある求人へ転職する看護師は多い
なお、実際に美容外科クリニックの看護師へ転職するとき、教育制度・キャリアアップ制度や研修制度が整っている職場を選ぶ場合が多いです。
例えば、プリセプター制度が整っていたり、内部の勉強会を開催していたり、外部の勉強会に参加していたりする美容外科クリニックが該当します。例えば以下は、京都にある大手美容外科クリニックの看護師求人です。
研修制度やプリセプター制度が整っていれば、オペ室経験がなく美容外科未経験でも安心してステップアップできます。
総合病院はほとんどのところで、新人教育・研修制度が整っています。ただ個人クリニックでは教育制度が整っているところと、そうでないところが混在しています。つまり、新人育成に関する考え方がクリニックによってまったく異なっています。
美容外科クリニックの場合、全国展開している大手では教育制度・キャリアアップ制度が整っているところが多いです。
ただ大手の場合はマニュアルに沿った新人教育であるケースが多いです。身についていない技術については、未経験であるにもかかわらず「机上のテストを実施して基準点に達したので修得した」などとみなす場合があります。
そのため大手の美容外科に転職希望であれば、どのような教育制度を採用しているのか、その中身まで確認しておく必要があります。例えば、以下は美容外科グループの新人看護師教育の手順です。
このように段階を追って少しずつ任される仕事内容が増えていけば、無理なくステップアップできます。
一方、大手ではなく個人美容外科クリニックを希望する場合、まずは教育制度・研修制度があるかどうかを事前に確認しましょう。教育制度が整っていないクリニックでは、新人看護師は困難な状況に追いつめられる可能性が高いです。
例えば、以下は私の勤めるクリニックで使っている新人看護師チェックリストになります。
入職後、3ヵ月と6ヵ月ごろにプリセプターによってチェックしてもらい、看護技術が習得できているかどうかを確認してもらうことになります。このチェックリストの存在によって、知識や技術があいまいなままであったり、自己流になったりすることが起こりません。
また週に1回、勉強会も開催されており、常に新しい看護の知識や技術をブラッシュアップしています。さらに、外部の勉強会にも積極的に参加するよう促されます。このようなことから、近隣のクリニックや医院の看護師よりも自分たちのほうが高い看護技術を身につけていると自負できています。
特に美容外科への転職においては、手術介助やレーザー照射脱毛、お客さんへの整形施術に対するメリット・デメリットの説明など覚えることが多いです。そのため、教育制度が整っている求人を選びましょう。
美容外科・美容皮膚科で経験を積み、勉強を継続する
一般的な看護師とは異なる環境の職場が美容クリニックです。もちろん手術室などでの経験が過去にあれば有利になるものの、実際のところ美容外科・美容皮膚科へ転職希望の人では、必ずしもこのようなオペ経験があるとは限りません。
そのため、どうしても覚えることが多くなります。また美容クリニックだと「看護師による営業」もあるため、施術のメリット・デメリットや注意点を含めて勉強しなければいけません。
こうして勉強を重ね、経験を積んでいくことで中途採用の転職であっても素早く仕事を覚えられるようになります。
ただ申し込む求人先は非常に重要なので、教育体制に問題のない美容外科・美容皮膚科へ転職するようにしましょう。正しい勉強方法を理解したうえで、美容に関わる看護師としてステップアップしていきましょう。
看護師が求人を探すとき、多くの人が転職サイト(転職エージェント)を活用します。特に美容クリニックは求人自体が特殊であり、自分だけの力で探すのは現実的ではありません。
個々の美容外科・美容皮膚科によって「ノルマの有無」「取り扱う施術」「年齢制限」など基準はバラバラです。また、大手と個人クリニックでも特徴が異なります。そこで、美容クリニックの求人を広く取り扱う転職サイトを利用しましょう。
ただ通常、看護師の転職エージェントは「一般的な医療機関の求人」がメインです。そこで、どの転職サイトを利用すれば美容外科への転職が可能になるのか理解しなければいけません。さらには、転職サイトごとに「対応エリア(応募地域)」「非常勤(パート)まで対応しているか」などの違いもあります。
これらを理解したうえで専門の転職エージェントを活用しましょう。以下のページにて転職サイトの特徴を解説しているため、転職サイトごとの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。