病棟で毎日ハードな勤務をしている看護師であれば、夜勤や残業が少なく、高給与・好待遇の美容外科・美容皮膚科の仕事にあこがれることがあります。
しかし実際に美容クリニックへ転職するとなると、「容姿に自信がない私でも美容クリニックに転職できるの?」「美容の知識も経験もないけれど問題ない?」「美容クリニックの情報は少なくて不安」と心配になります。
知らない業界へ転職するのは大変な勇気を必要とします。ただ美容外科・美容皮膚科といった美容クリニックへの転職はあなたが思っているよりも敷居が低く、満足いく働き方を実現できる方が多いです。
そこで「美容外科に転職するメリット・デメリット」「美容外科・美容皮膚科の看護師に求められる能力や転職成功ポイント」について解説していきます。
もくじ
給料は基本的に高年収となる美容整形外科のメリット
美容クリニックに転職するメリット・デメリットとはいったい何でしょうか。最大のメリットは高給与・好待遇である点です。病棟勤務と比較すると、美容クリニックは「夜勤がなく、残業も少なく、有給消化率も高い」といったメリットがあるため、身体面・精神面のストレスが軽減されます。
さらに、残業がなく日勤だけの勤務にも関わらず、夜勤のある病棟勤務よりも収入が増える看護師が多いです。
給与額は個々の美容クリニックや看護師としての経験・スキルによって異なりますが、ベースとなる基本給が一般診療クリニックと比べると格段に高い傾向にあります。
具体的な給与額は、月給で最低でも25万円からスタートというクリニックが多いです。ただ中には以下のように、40万円に近い給料を得られる求人があります。
静岡県にある美容外科クリニックであり、東京や大阪など都市部でないにも関わらずこうした給料です。また高収入なのに年間休日数が110日あります。
ちなみに美容外科・美容皮膚科は保険適用外の自由診療が基本のため、その月に美容クリニックが売り上げた分(業績給)が基本給に加算されることもあります。例えば、以下のような内容が掲載されている中途採用募集になります。
自分がどのくらい働いたのかにより、収入アップの可能性が出てくるのが美容クリニックです。自分が仕事を頑張った分だけ認められるため、やりがいの得られる職場であるといえます。
美容クリニックは夜勤なし・日勤のみの勤務が可能
また美容クリニックは高給料以外にも好待遇です。美容整形外科での施術は日帰り手術であり、入院がないため、夜勤なしが基本です。また完全予約制の美容クリニックが多く、以下のように残業も少ないケースが多いです。
こちらは東京にある美容皮膚科クリニックの求人募集です。時間通りに帰れるため、仕事と家庭の両立を行いやすく、自分の自由な時間を確保できるため規則正しい生活を送れます。
さらに、美容外科・美容皮膚科は上の求人にもあるように有給休暇取得率が高いことでも知られています。実際のところ、多くの美容クリニックは有給休暇取得率が80%以上だとされています。
一方、一般病院や内科などのクリニックに勤める約半数の看護師は平均有給休暇取得率が20%以下です。それに比べると、美容クリニックは有給休暇取得率が高いことが分かります。このように美容外科や美容皮膚科は働きやすい職場環境が整えられているといえるのです。
年齢の近いスタッフが多く、死と直結しない
年齢の若い看護師が美容整形外科・美容皮膚科に転職するメリットとしては高給与・好待遇のほかにも、同年代の看護師が多いことがあげられます。
20~60歳代まで幅広い年代が働いている一般的な病院やクリニックとは違い、美容クリニックや美容皮膚科は平均年齢が若いです。例えば、以下は東京にある美容クリニックでの看護師求人の応募条件です。
応募条件として、20~35歳までとなっています。幅広い年代が同じ職場にいるとどうしてもお互いに遠慮してしまい、「コミュニケーションを取りにくい」といった問題が発生します。また、お局(おつぼね)によるいじめなども多々起こります。
その点、美容外科は同年代の看護師が多く在籍しているため、スタッフ同士でのコミュニケーションを取りやすく、活気のある雰囲気の中で仕事を行える職場が多いのが特徴的です。
・死と隣り合わせの職場ではない
また一般病棟で勤務していると、急変を起こすなど、緊急性の高い患者さんの看護が多くなります。常に死と隣り合わせの職場では常時集中力を切らさず、緊張感を持って仕事に取り組まなければなりません。
病棟での仕事が終わると、肉体的にも精神的にも疲れが押し寄せ、何もする気が起こらないことはよくあります。
一方、美容クリニックだとお客さんは病気で来院するわけではなく、「美しくなるため」に訪れているため、緊急性の高い方の看護を行うことはありません。そのため、来院された方の悩みにゆっくり向き合い、看護を行えるメリットがあります。
看護技術が身につかないのはデメリット
それでは次に、美容クリニックに転職するデメリットについて解説していきます。美容外科で勤めるデメリットとは以下の通りです。
- 看護師のスキルが身につかない
- ノルマ営業を課しているクリニックがある
- 土日の休みが取りづらい など
それぞれについて説明していきます。
・看護師のスキルが身につかない
美容整形外科や美容皮膚科では点滴・採血はあるものの、病棟ほど頻繁に行わないため、看護師としてのスキルが身につかないデメリットがあります。美容クリニックで勤務していると、一般病院では当たり前の看護スキルが定着しない恐れがあるのです。
「将来的には医療関係の看護師に戻りたい」と考えている方であると、美容外科での看護経験はプラスに働かないことがあります。一般病院の中には、「美容外科から転職してきた」となると、美容外科でのキャリアを考慮してくれないケースがよくあるのです。
しかし、これには本人のやる気も大きく関わります。潜在ナース(看護師免許はあるものの働いていない看護職員)とは異なり、美容クリニックであっても看護師として勤務していることには変わりません。
また「特殊な看護を行うため、看護スキルが身につかない」という実状は、耳鼻科や眼科、保健師などでも同様です。高齢者介護施設や精神科などは採血などの医療行為自体がないので、こちらも条件は同じだといえます。
そのため再び転職して一般病棟へ再就職したとしても、勉強しつつ早めに勘を取り戻して、医療を扱う看護師に戻れる方は多いです。要は「自分のやる気次第」といえるのです。
ノルマ営業の可能性があり、土日休みを取りにくい
先ほど、「売り上げた分だけ業績給として給料に加算される求人が存在する」と記しました。これはつまり、「美容クリニックによっては看護師一人ひとりにノルマが設定されているところがある」ことを意味しています。
来院した方についてカウンセリングから契約締結まで看護師が行う場合も多く、契約を取れるとインセンティブが支給されます。
しかし契約を取れないと、インセンティブが発生しないばかりか、徐々にそのクリニックに居づらくなるケースも起こります。
もし、あなたが美容クリニックに興味はあるけれど、契約を取ることに自信がないようなら、ノルマ設定がない美容クリニックへの転職を考慮してみるといいでしょう。例えば、広島にある以下のような中途採用求人がこれに該当します。
求人情報にノルマの有無が掲載されていない場合、メールや電話で直接問い合わせるか、転職サイトのコンサルタントに確認してもらうといいでしょう。
・土日の休みがとりづらい
また美容クリニックは、働く女性をターゲットにしているところが多いため、大手となると年中無休で土日も開院しています。
土日は予約が埋まり、むしろ一番忙しい曜日ともいえます。平日だと公休を取得しやすいですが、土日はできるだけ勤務に出てほしいと考えるクリニックが多いです。もしお子さんがいると、土日に休みを取りづらいため、働きにくさを感じてしまう可能性が高くなります。
美容外科・美容皮膚科での看護師に求められる能力
そうしたとき、美容クリニック看護師に求められる能力には何があるのでしょうか。美容クリニックへの転職となると、「自分は病棟やクリニックでの臨床経験しかなく、美容の知識や技術に乏しい」と考える人が多いです。しかし美容クリニックへの転職を成功させた看護師の多くは、美容業界未経験の状態からの転身です。
美容クリニック看護師に求められる一番の能力は接遇力(相手に好印象を与える接客スキル)です。美容整形外科の場合、来院された方を「患者」ではなく「お客さん」として対応します。例えば、以下は東京にある美容外科クリニックの求人の詳細です。
「話を親身になって聞ける方」「人の役に立つ仕事がしたい方」「コミュニケーションスキルがある方」というように、知識や技術ではなく人柄に重きを置いていることが分かります。
また東京都内を中心とした美容皮膚科クリニックのホームページでも、採用する人物として以下のような掲載があります。
引用:アリシアクリニック
仕事ができることよりも、まずは挨拶や清潔感を重視していることが分かります。
看護師の態度や接遇が悪く、商品や施術を強引に勧められたと感じたお客さんは、その美容外科にリピートすることはありません。反対に看護師の対応が良ければ、「また何かあれば相談したい」と感じ、美容外科の評判が上がってお客さんが増えます。
そのため、どの美容外科や美容皮膚科でも採用のときに重視しているのが人柄であり、接遇力なのです。このときは丁寧な接遇を心がけ、お客さんの話を自分のことのように耳を傾け、医療従事者としての信頼を得られるように努力します。
例えば、以下のようなカウンセリングシートや会話の中からお客さんの要望を引き出していきます。
一般の病院やクリニックよりも美容外科・美容皮膚科クリニックのほうが、「面接では接客対応能力の有無が採用可否を左右する」ようになります。
しかし、「私には接遇力・接客対応能力はない」と考えたとしても不安に思う必要はありません。これらの能力は美容外科・美容皮膚科で仕事を開始してから十分身についていくものだからです。
ただ、これらの能力について「伸びしろがあると感じられる人」でないと採用は難しいでしょう。伸びしろを感じる人物とは、第一印象が良く、明るく、美容に興味があり、積極的に仕事ができる人です。
もしあなたがこれらに当てはまるのであれば、美容外科への転職は成功しやすくなります。
仕事内容を理解し、転職後の働き方を学ぶ
そうしたとき、美容外科・美容皮膚科など美容クリニックで行う看護師の仕事内容は一般病棟と比較するとどう違うのでしょうか。美容外科の看護師には以下のような仕事があります。
- 受付や電話対応
- 美容カウンセリング
- 手術の準備・介助
- レーザー脱毛
- 診療の介助
メリットやデメリットを把握するためには、仕事内容を理解しなければいけません。そこで、それぞれについて述べていきます。
・受付や電話対応
美容クリニックや美容皮膚科によっては、受付のスタッフが本来行う受付業務や電話対応を看護師が行うことがあります。電話内容としては、お客さんからの予約や施術内容の問い合わせだけでなく、美容の悩みや施術に関する質問などがあります。
来院される方にとっては、電話応対が美容クリニックとの最初の接点となるケースもあるため、失礼のない受付や電話対応の接客スキルが求められます。
・美容カウンセリング
個々の美容外科クリニックによって異なりますが、美容カウンセリングを看護師が行う場合と、カウンセリング専門のスタッフ(美容カウンセラー)が行う場合があります。
美容クリニックにおけるカウンセリングとは、一般診療の「問診」にあたります。病棟での看護業務と違い、カウンセリング業務は美容外科・美容皮膚科の看護師の主要な仕事となります。専門のカウンセラーに任せるのではなく、看護師がカウンセリングを担ったほうが患者さんの施術に対する不安を把握することができます。
また、施術中にそばで声かけを行うことでお客さんにリラックスしてもらうことができます。
・手術の準備・介助
オペの準備から介助まで、一連の流れに看護師が携わります。そのため美容外科の募集要項には、看護師経験として外科やオペ室勤務があると優遇されるケースがあります。例えば、以下のような東京の個人美容外科クリニックの看護師求人です。
美容業界は一般的に未経験OKとなっていますが、この求人では外科やオペ室での経験者を求めていることが分かります。美容皮膚科であれば医療脱毛照射が主な看護師の仕事となりますが、美容整形外科クリニックの看護師では、さまざまなオペの介助は避けては通れない仕事となります。
一方で、外科や手術室での介助経験を問わない美容クリニックもあります。例えば、以下のような東京にある美容皮膚科求人です。
このような場合は事前に指導してくれるので、経験がないことを必要以上に気にする必要はありません。ちなみに美容整形を実施する美容整形外科よりも、美容皮膚科のほうが未経験者可の求人が多いです。
・レーザー脱毛照射・ピーリング施術など
また美容クリニックによっては、ヒアルロン酸注射やプラセンタ、ボトックス、美肌成分の点滴など独自の美容施術を行うことがあります。これらの美容クリニックの施術はどれも医師の指導のもとで、看護師がレーザー脱毛照射やピーリング施術などを行います。
例えば、以下は静岡県にある美容外科クリニックの看護師の仕事内容です。
オペ介助だけでなく、レーザー照射やフェイシャル施術なども看護師の仕事内容となっています。看護学校で勉強してきたことや病棟で経験してきたこと以外にも、特殊な美容クリニックの施術技術や知識の習得が必要になります。
・診療の介助
診察の介助は一般的なクリニックでも看護師が行います。医師が事前のカウンセリング内容を確認し、診察をするのです。
ただ、美容外科・美容皮膚科などの美容クリニックの場合、二重まぶたの手術ひとつにせよ、男性医師では20代の若いお客さんの要望を100%理解できないときがあります。
このような場合、お客さんと年齢の近い看護師が間に入って、要望の橋渡しをする役目を担うことがあります。この点が一般クリニックでの診察の介助とは異なる点だといえます。
美容クリニックの転職成功は美容や接客への興味が重要
美容クリニックは一般病院だとありえない高給与や好待遇を実現できるため、いくつかデメリットはあるものの、やはり人気のある中途採用求人です。そのため、一般の病院やクリニックよりも採用へのハードルが高いです。
そうしたとき美容クリニックへの入職を希望するのであれば、美容に対して興味を持つことが必須です。以下は大手の美容外科クリニックの看護師求人にある応募内容の一部です。
出典:湘南美容外科 中途採用HP
美容外科と美容皮膚科のどちらも美容が好きな人物を求めています。美容クリニックでは、仕事内容が看護学校で習ってきたことや一般医療機関の臨床経験とは異なるケースが多く、美容に対してゼロから学びなおす姿勢が必要です。
また同時に、美容クリニックは接客が好きな人に向いています。患者さんではなく、来院する人はお客さんだからです。美しさを追求するために来院された女性の不安を取り除けるように、美容に関する意識を高くもって転職に臨みましょう。
多くの美容外科求人情報をもつべき
また美容クリニックへの転職成功のカギは情報量です。そのため美容整形外科や美容皮膚科への転職を考えているのであれば、情報量の豊富な転職サイトを経由して就職するのが一般的です。
つまり転職エージェントから求人先の情報(ノルマの有無、離職率、面接の方法など)を教えてもらい、転職に活かすのです。
美容クリニックの面接は他の医療機関に比べて面接が厳しいです。さらに、選考ポイントや採用時の基準が美容クリニックによってばらばらです。例えば面接時の化粧ひとつにしても、しっかりとしたメイクを好むクリニックがあれば、薄い化粧を好むクリニックもあり、美容クリニックごとに特色が全く違います。
さらに美容クリニックの情報は一般の医療機関よりも少ないため、入職できたとしても情報不足によって「思っていた職場とは違っていた」などの事態が多々起こります。そこで美容外科の場合は特に専門の転職サイトを上手く利用して、自分の希望に合ったクリニックを選びましょう。
メリットやデメリットを理解したうえで転職する
美容外科クリニックで勤務する看護師は少し特殊な存在だといえます。一般的な病院やクリニックとは異なり、患者さんではなくお客さんを相手にすることになります。そのため、事前にメリットやデメリットを含めて美容外科クリニックの実態を詳しく理解しておかなければいけません。
そこで、美容クリニックでの仕事内容や美容看護師に要求されるスキルを学んでおくようにしましょう。
高い給料となるにも関わらず、夜勤なしという大きなメリットを得られるのが美容外科・美容皮膚科です。美容クリニックによってはノルマがあるものの、不安な場合はノルマなしの美容外科を考えても問題ありません。
そうして美容クリニックごとの特徴を見極め、優れた求人を探すようにしましょう。多くの選択肢の中から自分に合った中途採用募集を見つけることで、最適な美容クリニックの求人募集に応募できるようになります。
看護師が求人を探すとき、多くの人が転職サイト(転職エージェント)を活用します。特に美容クリニックは求人自体が特殊であり、自分だけの力で探すのは現実的ではありません。
個々の美容外科・美容皮膚科によって「ノルマの有無」「取り扱う施術」「年齢制限」など基準はバラバラです。また、大手と個人クリニックでも特徴が異なります。そこで、美容クリニックの求人を広く取り扱う転職サイトを利用しましょう。
ただ通常、看護師の転職エージェントは「一般的な医療機関の求人」がメインです。そこで、どの転職サイトを利用すれば美容外科への転職が可能になるのか理解しなければいけません。さらには、転職サイトごとに「対応エリア(応募地域)」「非常勤(パート)まで対応しているか」などの違いもあります。
これらを理解したうえで専門の転職エージェントを活用しましょう。以下のページにて転職サイトの特徴を解説しているため、転職サイトごとの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。